あなたの事は好きですが私が邪魔者なので諦めようと思ったのですが…様子がおかしいです

Karamimi

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第18話:準備を進めます

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「カナリア、こんなところで何をしているのだい?どうして泣いているのだい?」

 私の元にやって来たのは、アルト様だ。心配そうな顔で私を抱きしめて来たのだ。シャーラ様を愛していらっしゃるのに、どうして私を抱きしめるの?

 もうあなたの心は、シャーラ様のものなのでしょう?それなら、私に優しく何てしないで欲しい。

 すっとアルト様から離れると、涙をぬぐった。

「何でもありませんわ。アルト様こそ、どうしてここに?」

「僕は…その…カナリアの姿が見えないから心配で探していたのだよ」

 嘘ばっかり…

 さっきまでシャーラ様と一緒にいたじゃない。でもきっと、私にはバレていないと思っているのだろう。

「そうだったのですね。それは申し訳ございませんでした。それでは私は、教室に戻りますので」

 アルト様に頭を下げて、そのまま小走りで教室に向かおうとしたのだが、アルト様に腕を掴まれたのだ。

「待って、カナリア。どうしてそんな悲しそうな顔をしているのだい?顔色もあまり良くないし。とにかく一度医務室に…」

「私は大丈夫ですわ。今は1人にして下さい。どうかお願いします」

 アルト様を振り払い、そのまま必死に走った。

「待って、カナリア…」

 後ろからアルト様の声が聞こえるが、これ以上アルト様の顔を見ていたら、涙が溢れだすだろう。現に今も、涙が溢れている。さすがに教室になんて行けない。

 そのまま門を目指し、公爵家の馬車に乗り込んだ。

「お嬢様、どうされたのですか?とにかく一度、公爵家に戻りましょう」

 私の異変に気が付いた御者が、そのままドアを閉めてくれ、公爵家に向かって走り出したのだ。

 ふと窓の外を見ると、こちらにやって来るアルト様の姿が…

 あの人、どうして私を追いかけてきたのかしら?シャーラ様が好きなら、いっその事私を突き放してくれたらいいのに…そうよ、いっその事

 “僕はシャーラが好きだ。もうカナリアの事なんて好きじゃない!”

 と、はっきりと言ってくれたら、私の心はどんなに楽になるだろう。それなのに、どうして優しくするの?もう私の事は、放っておいて欲しい。

 2人が既に仲を深めているのなら、私がやる事は決まっている。ただ、まだ他国の情報もきちんと調べられていない。アルト様と婚約を解消した後、すぐに船で旅に出られる様に、準備をしておかないと。

 準備が整い次第、お父様にアルト様との婚約解消のお願いと、国を出たい旨を伝えよう。その為にも、泣いてなんていられない。

 スッと涙をぬぐう。ただ、さすがにこのまま貴族学院に戻る勇気はない。今はアルト様の顔を見るのも辛いのだ。

 明日からまた、貴族学院に通おう。ただし、既にシャーラ様と恋仲になったアルト様と、今までの様に仲良くなんてさすがに出来ない。ある程度距離をとりつつ、アルト様がスムーズにシャーラ様に会える様に、さりげなくサポートしよう。

 この3ヶ月、ずっとアルト様と過ごしていたのよね…でも、これ以上アルト様に依存していてはダメだ。1人でも生きていけるように、もっともっと強くならないと。

 屋敷に着くと、お母様が飛んできた。

「カナリア、こんな時間に帰って来て、一体どうしたの?」

「ちょっと体調が悪くなってしまって…部屋で休みたいのですが…」

「それは大変だわ。すぐに医者を…」

「お医者様は大丈夫です。きっと休めばすぐに元気になりますから。ただ、もしアルト様が訪ねていらしたら、申し訳ないのですが、帰ってもらう様に頼んで頂けますか?」

 今はどうしてもアルト様に会う勇気がない。


「…分かったわ。今日はゆっくり休みなさい」

 お言葉に甘えて自室に向かったのだが、このままじっとなんてしていられない。早くアルト様を解放してあげないと。

 着替えを済ませると、そのまま公爵家の図書館に向かうため、部屋用とした時だった。

「お嬢様、どこに出掛けられるのですか?体調はよろしいのでしょうか?」

 心配そうにメイドが話しかけて来た。

「ちょっと図書館で調べ物をしたくて。体調も馬車に乗っている間に、随分落ち着いたから。心配をかけてごめんなさい」

「そうでしたか。わざわざお嬢様が足を運ばなくても、私が本をお持ちいたします」

「ありがとう、でも、どんな本があるのか自分で確かめたいの。だから、ちょっと行ってくるわね」

 そう伝え、公爵家にある図書館へと向かった。図書館に向かう途中、アルト様の声が聞こえた気がするが、きっと気のせいだろう。
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