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第4話:幼馴染が我が家に来ました
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熱が下って前世の記憶を全て取り戻した翌日、1人静かに中庭でお茶を飲む。今日も朝からアルト様が我が家を訪ねてきてくれた様だが、会わなかった。
もうアルト様には近づかない、そう決意したものの、やはり私にとって、アルト様はかけがえのない大切な人。
彼の傍を離れるというのは、想像以上に辛いものだ。そっと空を見上げ、ついため息をつてしまう。
「はぁ~、どうして私は、カナリアに転生してしまったのかしら?」
私が彼の事を好きでいればいるほど、アルト様は不幸になる。そんな事は分かっている、でも、頭では理解しているのだが、どうしても心が付いていかないのだ。
気が付くと涙が溢れていた。こんなに辛いのなら、アルト様に出会わなければよかったのに…
その時だった。
「お嬢様、シモン様がいらしておりますが、どうされますか?」
「えっ、シモン様が?すぐに行くわ」
急いでシモン様の元へと向かう。彼は我が家の隣に住んでいる公爵令息で、子供の頃はとても仲が良かった幼馴染なのだ。
「シモン様、あなた様が我が家を訪ねてくるだなんて、珍しいですね。一体どうされたのですか?」
優美にお茶を飲んでいるシモン様に声をかけた。
「カナリア嬢、急に押しかけて申し訳ございません。実はアルトが泣き付いてきまして。カナリア嬢に会いに行っても、会わせてもらえない。高熱を出したせいで、自分の事を嫌いになったのではないかと…とにかくビービーうるさいので、何とかしてほしくて参りました」
はぁ~っと、ため息をつくシモン様。相変わらずよそよそしいわね。子供の頃は“カナリア、シモン”とお互い呼び捨てにするほど仲が良かったのに…
いつからこんなに、よそよそしくなったのかしら?彼がよそよそしくなってから、ほとんど話をする事もなくなった幼馴染。彼も結局、私の事が好きではないのだろう。皆私から離れていく…きっとアルト様も…
ちなみにシモン様とアルト様は親友だ。まさかシモン様に泣きついていくだなんて。
「ご迷惑をおかけして、申し訳ございません。まさかシモン様のところに行かれるだなんて。別に私は、アルト様を避けている訳ではありませんわ。ただ…熱を出した事で、ちょっと心が弱っていただけです」
「それなら今すぐ、アルトに会ってやってくれますか?あの男、君に婚約解消をされるのではないかと不安で、食事も喉を通らない様なのです。その上公務も手つかずで…本当にどうしようもない男だ」
再びシモン様が、はぁっとため息をついている。
アルト様ったら、そこまで私の事を大切に思って下さっているのなら、どうして他の令嬢を好きになるのよ!結局私を裏切る癖に!
アルト様に対する怒りと苛立ちが、体中から湧き上がってくる。でも…私はこれでも公爵令嬢。自分の感情は後回しにしないといけないことくらい、分かっている。
それに幼馴染のシモン様が困っているのだから、助けてあげたいし。どんな形であれ、幼馴染に頼りにされるのは嬉しい。
「分かりました。すぐにアルト様と会って参りますわ。王宮にいらっしゃいますよね?」
「いや…その…」
なぜかシモン様が困った顔をしている。一体どうしたのかしら?
「殿下、勝手にお部屋に入られては困ります」
「どうしてだい?今カナリアの許可を取ったのだから、問題ないだろう。カナリア!やっと会えた」
なぜか護衛やメイドたちを押しのけ、アルト様が部屋へと入って来た。そして、私をギューギュー抱きしめている。
「申し訳ない、カナリア嬢。アルトが俺とカナリア嬢を絶対に2人きりにはしたくない、でも、俺に君を説得してきて欲しいと、あまりにも我が儘なお願いをしてきまして…」
「それで盗聴器か何かを持って、我が家にやって来たという事でよろしいでしょうか?」
アルト様とシモン様の口ぶりから、何となくそんな気がしたのだ。
「カナリアがいけないのだよ。僕の事を避けるから。僕の可愛いカナリア。公爵が“カナリアは厳しい王妃教育で疲れが出た”と言っていただろう。だから、もう王妃教育はしなくてもいいよ。君はもうほとんどマスターしたし、何よりもカナリアに負担になる事はしたくないからね。ただ、王宮には毎日来て欲しい。君のこれからの使命は、僕との仲をもっともっと深める事だよ」
ものすごい勢いで、アルト様が話している。私は別に、王妃教育が嫌な訳ではないのだが…
「殿下、勝手に我が家に入り込んでは困ります!シモン殿、お久しぶりですね。さあ、お2人とも、帰ってください」
護衛たちと共にやって来たのは、カルアお兄様だ。
「僕はちゃんと、カナリアの許可を取ってここにきたんだ。文句を言われる筋合いはない。そうだろう?シモン」
「…まあ…」
「シモン殿が言葉を濁しているではないですか?とにかく、まだカナリアは病み上がりなのです。今日はお引き取り下さい」
「またそうやって、僕からカナリアを取り上げて!僕は正式に、カナリアと婚約を結んでいるのだぞ。離せ!」
なぜか抵抗するアルト様。この人、やっぱりこんな性格だったかしら?そうか、小説ではシャーラ様とアルト様の出会いから書かれていたから、それ以前のお話しは分からないのだったわ。
もうアルト様には近づかない、そう決意したものの、やはり私にとって、アルト様はかけがえのない大切な人。
彼の傍を離れるというのは、想像以上に辛いものだ。そっと空を見上げ、ついため息をつてしまう。
「はぁ~、どうして私は、カナリアに転生してしまったのかしら?」
私が彼の事を好きでいればいるほど、アルト様は不幸になる。そんな事は分かっている、でも、頭では理解しているのだが、どうしても心が付いていかないのだ。
気が付くと涙が溢れていた。こんなに辛いのなら、アルト様に出会わなければよかったのに…
その時だった。
「お嬢様、シモン様がいらしておりますが、どうされますか?」
「えっ、シモン様が?すぐに行くわ」
急いでシモン様の元へと向かう。彼は我が家の隣に住んでいる公爵令息で、子供の頃はとても仲が良かった幼馴染なのだ。
「シモン様、あなた様が我が家を訪ねてくるだなんて、珍しいですね。一体どうされたのですか?」
優美にお茶を飲んでいるシモン様に声をかけた。
「カナリア嬢、急に押しかけて申し訳ございません。実はアルトが泣き付いてきまして。カナリア嬢に会いに行っても、会わせてもらえない。高熱を出したせいで、自分の事を嫌いになったのではないかと…とにかくビービーうるさいので、何とかしてほしくて参りました」
はぁ~っと、ため息をつくシモン様。相変わらずよそよそしいわね。子供の頃は“カナリア、シモン”とお互い呼び捨てにするほど仲が良かったのに…
いつからこんなに、よそよそしくなったのかしら?彼がよそよそしくなってから、ほとんど話をする事もなくなった幼馴染。彼も結局、私の事が好きではないのだろう。皆私から離れていく…きっとアルト様も…
ちなみにシモン様とアルト様は親友だ。まさかシモン様に泣きついていくだなんて。
「ご迷惑をおかけして、申し訳ございません。まさかシモン様のところに行かれるだなんて。別に私は、アルト様を避けている訳ではありませんわ。ただ…熱を出した事で、ちょっと心が弱っていただけです」
「それなら今すぐ、アルトに会ってやってくれますか?あの男、君に婚約解消をされるのではないかと不安で、食事も喉を通らない様なのです。その上公務も手つかずで…本当にどうしようもない男だ」
再びシモン様が、はぁっとため息をついている。
アルト様ったら、そこまで私の事を大切に思って下さっているのなら、どうして他の令嬢を好きになるのよ!結局私を裏切る癖に!
アルト様に対する怒りと苛立ちが、体中から湧き上がってくる。でも…私はこれでも公爵令嬢。自分の感情は後回しにしないといけないことくらい、分かっている。
それに幼馴染のシモン様が困っているのだから、助けてあげたいし。どんな形であれ、幼馴染に頼りにされるのは嬉しい。
「分かりました。すぐにアルト様と会って参りますわ。王宮にいらっしゃいますよね?」
「いや…その…」
なぜかシモン様が困った顔をしている。一体どうしたのかしら?
「殿下、勝手にお部屋に入られては困ります」
「どうしてだい?今カナリアの許可を取ったのだから、問題ないだろう。カナリア!やっと会えた」
なぜか護衛やメイドたちを押しのけ、アルト様が部屋へと入って来た。そして、私をギューギュー抱きしめている。
「申し訳ない、カナリア嬢。アルトが俺とカナリア嬢を絶対に2人きりにはしたくない、でも、俺に君を説得してきて欲しいと、あまりにも我が儘なお願いをしてきまして…」
「それで盗聴器か何かを持って、我が家にやって来たという事でよろしいでしょうか?」
アルト様とシモン様の口ぶりから、何となくそんな気がしたのだ。
「カナリアがいけないのだよ。僕の事を避けるから。僕の可愛いカナリア。公爵が“カナリアは厳しい王妃教育で疲れが出た”と言っていただろう。だから、もう王妃教育はしなくてもいいよ。君はもうほとんどマスターしたし、何よりもカナリアに負担になる事はしたくないからね。ただ、王宮には毎日来て欲しい。君のこれからの使命は、僕との仲をもっともっと深める事だよ」
ものすごい勢いで、アルト様が話している。私は別に、王妃教育が嫌な訳ではないのだが…
「殿下、勝手に我が家に入り込んでは困ります!シモン殿、お久しぶりですね。さあ、お2人とも、帰ってください」
護衛たちと共にやって来たのは、カルアお兄様だ。
「僕はちゃんと、カナリアの許可を取ってここにきたんだ。文句を言われる筋合いはない。そうだろう?シモン」
「…まあ…」
「シモン殿が言葉を濁しているではないですか?とにかく、まだカナリアは病み上がりなのです。今日はお引き取り下さい」
「またそうやって、僕からカナリアを取り上げて!僕は正式に、カナリアと婚約を結んでいるのだぞ。離せ!」
なぜか抵抗するアルト様。この人、やっぱりこんな性格だったかしら?そうか、小説ではシャーラ様とアルト様の出会いから書かれていたから、それ以前のお話しは分からないのだったわ。
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