余命3ヶ月を言われたので静かに余生を送ろうと思ったのですが…大好きな殿下に溺愛されました

Karamimi

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番外編:君はどうしてそんなに優しいのだろう

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 王妃教育が終わると、すぐにセイラを迎えに行き、セイラとの時間を楽しむ。一歩出遅れると、母上にセイラをとられてしまうため、早めに行ってセイラを待つのが僕の日課だ。

 そんなセイラとの時間は、あっと言う間。夕食が終わると、そろそろセイラが帰り支度を始める。この時間が、僕にとって一番辛い時間だ。

「セイラ、もう帰ってしまうのかい?寂しいな」

 つい本音が漏れる。

 そんな僕に、いつも困り顔のセイラなのだが、今日ななぜかニコニコしている。

「ロイド様、今日は公爵家には帰りませんわ」

「えっ?公爵家に帰らないとは、一体どういう意味だい?」

「執事のライト様から話しを聞きました。夜な夜な酷い悪夢にうなされていらっしゃると。このままでは、ロイド様のお体が心配だとの事でした。どうやら私と一緒に寝ていた時は、悪夢にうなされる事はなかったとの事なので、お父様にお願いして、しばらく王宮でお世話になる事にしたのです」

 にっこりとほほ笑んだセイラ。

「それは本当かい?でも、公爵がよく許したね」

 今ではすっかりセイラを大切に思っている公爵の事だ。絶対に反対するだろう。

「お父様は私の意見を尊重してくださいますので、殿下の事を話したら“セイラがそうしたいのなら、私は反対しない。陛下にも話を付けておくよ”とおっしゃってくださいましたわ。ですので、ご安心ください」

 なるほど、今まで散々セイラに酷い事をして来た公爵だ、セイラの気持ちを尊重したという訳か。

「セイラ、ありがとう。それじゃあ、今日から僕と一緒に寝てくれるという事だよね。すぐに湯あみを済ませてくるから、セイラも湯あみを済ませて来て」

「はい、分かりましたわ。それでは後程」

 まさかセイラが僕の為に、王宮に泊まってくれるだなんて。セイラは優しいな。ただ。セイラに僕の状況を話してくれたのは…

「君がセイラに話しをしてくれたのだね。ありがとう」

 近くに控えていた執事にお礼を言った。

「私はお礼を言われる事はしておりません。殿下に許可なく、セイラ様にお話ししてしまい、申し訳ございませんでした。私は殿下の執事失格です」

「君が執事失格なら、僕は主失格だね。君にまで心配をかけてしまったのだから。僕は本当に愚かで、どうしようもない主だ。こんな主に使えるのは嫌になるかもしれないが、これからもどうか僕を支えてくれるかい?」

「はい、もちろんです」

 いつも通り真顔だが、それでもなんだか嬉しそうな執事。昔の彼なら、決してこのような事をしなかっただろう。そんな彼が、僕の事を思い、自ら動いてくれるだなんて。それが何だか嬉しい。

 セイラの事があってから、少しずつだが執事との距離も縮まって来たような気がする。セイラは僕と執事の関係も変えてくれたのだな。

「殿下、早く湯あみを済ませて、セイラ様の元に向かいましょう」

「そうだね、セイラを待たせる訳にはいかないからね」

 急いで湯あみを済ませ、寝室へとやって来た。セイラはまだ来ていないようだ。

 しばらくすると、セイラもやって来た。

「お待たせして申し訳ございません。それでは休みましょうか」

 少し恥ずかしそうに、セイラがベッドに入って来た。そんなセイラを、ギュッと抱きしめた。この感じ、懐かしいな…

「やっぱりロイド様の腕の中は、温かくて落ち着きますわ。私の病気が完治するまで、ずっとロイド様と一緒に寝ていたから、最近なんだか寂しかったのです」

「セイラも寂しい思いをしてくれていたのかい?それは嬉しいな。それじゃあ、これからはずっと2人でこうやって一緒に寝よう。どうせ後半年もすれば、僕たちは結婚するのだから」

「そうですね、私もその方が、安眠できますわ。なんだか眠くなってきました。ロイド様、おやすみなさい」

「お休み、セイラ」

 セイラをぎゅっと抱きしめ、僕も瞼を閉じた。まさかセイラも、僕と同じように寂しさを感じていてくれていただなんて。たとえ僕への気遣いでの言葉だったとしても、嬉しくてたまらない。

 この日僕は、セイラの温もりを感じられた事で悪夢を見る事はなかった。それどころか、ぐっすり眠る事が出来た。

 これからはずっとセイラと一緒に寝られる、そう思っていたのだが…

 1週間後
「殿下、随分と顔色が戻られましたね。よかったです。今日からセイラは、公爵家に戻しますので」

 公爵の悪魔のつぶやきにより、再び僕は、セイラの温もりを奪われたのだった。でも、また悪夢にうなされれば、セイラが心配して一緒に寝てくれる。そう思っていたのだが…

 なぜかその日以降、悪夢を見る事は無くなったため、その後結婚するまで、セイラが僕と寝てくれることはなかったのだった。
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