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第39話:久しぶりの王宮です
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「セイラ、本当に今日から王宮に通うのかい?」
「はい、もちろんですわ。私はまだ、ロイド様の婚約者なのでしょう?立派な王妃になるために、いつまでも寝ている訳にはいきませんわ。それにお医者様からも、アザが完全に消えたので、もう大丈夫だとお墨付きを頂きましたし。ロイド様も、今日から王宮で生活してください。私のせいで、公務も滞っているでしょうし」
「いくら医者が完治したと言っても、僕は心配だ。万が一また発病して、命の危険に晒されたら…」
「治療法も分かっておりますし、それにもう発病する事はありませんわ。もしまた発病したらそれはきっと、もうロイド様が私に興味がなくなった時ですわ。もしかしてロイド様は、既に私への興味が…」
「そんな訳がないだろう。セイラ、ごめんね。僕は君を失うかもしれないと思って過ごした3ヶ月が辛すぎて、冷静な判断が出来なくなっていたのだよ。僕がセイラに興味を抱かなくなる日など一生来ることはないから、安心して欲しい」
「私の方こそ、意地悪な事を申し上げてごめんなさい。この1ヶ月、四六時中愛情を注いでくださったロイド様には感謝しておりますし、もう不安に思う事はありませんから」
この1ヶ月、本当にずっと傍にいてくれたのだ。それこそ一度も王宮には戻っていない。ロイド様に用事がある人達は、皆我が家に足を運んでくれた。陛下や王妃殿下までも。我が家に尋ねて来てくださる方たちは、皆私のお見舞いも兼ねて来てくださるのだ。
ただ、ラファエル様だけは、なぜか会う事が出来なかった。彼には色々とお世話になったから、お礼を言いたいのだが…
さらにこの1ヶ月で、色々な事が起きていたらしい。お父様の話では、王宮の使用人の多くが入れ替わり、私の教育係も代わったとの事。ミーア様は修道院に向かわれたそうだ。
どうやらミーア様は王宮使用人や私の教育係を買収して、間接的に嫌がらせをしていたらしい。特に嫌がらせをされた覚えはないのだが…
お父様は
「これでセイラも少しは快適に王宮で過ごせるだろう」
と言っていた。
私が病に倒れ治療に集中している間に、色々な事ががらりと変わったらしい。
ただ、私の中で一番変わった事は、ロイド様とお父様だが。
そんな事を考えている間に、王宮が見えてきた。久しぶりの王宮、ここには辛い事も多かった。それでも私は、ロイド様と生きると決めたのだ。もう逃げだす訳にはいかない。
「セイラ、本当に無理をしなくてもいいのだよ」
「平気ですわ。それでは参りましょう」
すっと立ち上がり、馬車から降りた時だった。
「セイラ嬢、元気そうでよかった」
「セイラちゃん、いらっしゃい。あなたが来るのを心待ちにしていたのよ。さあ、こっちよ」
馬車から降りると、陛下と王妃様、お父様、さらに沢山の使用人たちも待っていてくれていた。確かに見た事のない使用人が、多くいる。
「国王陛下、王妃様、ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。これからはまた、王妃教育を再開し、ロイド様を支えられる様に精進して参ります。どうかよろしくお願いいたします」
王妃教育…正直自信はないが、やるしかない。
「セイラちゃん、無理をしなくてもいいのよ。あなたも随分辛い思いをしたのね。完治してよかったわ。ロイド、セイラちゃんは完治したのでしょう。あなたは大量に溜まった公務を片づけなさい。セイラちゃん、行きましょう」
私の手を引き、王妃様が歩き出したのだが、反対の手をがっちりロイド様に捕まれている。
「母上、セイラをどこに連れていくつもりですか?セイラは王宮にはいい思い出がないのです。僕が傍にいないと…」
「病気は完治したのでしょう?それならあなたが傍にいる理由はないはずよ。そもそも、あなたの愛情不足が原因で、セイラちゃんは命を一度落としたのよ。とはいえ、私も配慮が足りなかったわ。セイラちゃんが苦しんでいるのに、気が付かなかったのだから。とにかくセイラちゃんは連れていくわね。あなた達、ロイドをお願い」
「ロイド、母さんは怒らせるとものすごく怖いんだ。さあ、行くぞ」
「殿下、参りましょう」
「父上、公爵、離してくれ。僕はセイラと一緒にいるんだ。もしまた発作が起こったら」
「発作はもう起きませんので、ご安心を」
傍に控えていた公爵家専属のお医者様が、はっきりと告げた。
男性陣たちに連れていかれるロイド様を、私は静かに見送ったのだった。
「はい、もちろんですわ。私はまだ、ロイド様の婚約者なのでしょう?立派な王妃になるために、いつまでも寝ている訳にはいきませんわ。それにお医者様からも、アザが完全に消えたので、もう大丈夫だとお墨付きを頂きましたし。ロイド様も、今日から王宮で生活してください。私のせいで、公務も滞っているでしょうし」
「いくら医者が完治したと言っても、僕は心配だ。万が一また発病して、命の危険に晒されたら…」
「治療法も分かっておりますし、それにもう発病する事はありませんわ。もしまた発病したらそれはきっと、もうロイド様が私に興味がなくなった時ですわ。もしかしてロイド様は、既に私への興味が…」
「そんな訳がないだろう。セイラ、ごめんね。僕は君を失うかもしれないと思って過ごした3ヶ月が辛すぎて、冷静な判断が出来なくなっていたのだよ。僕がセイラに興味を抱かなくなる日など一生来ることはないから、安心して欲しい」
「私の方こそ、意地悪な事を申し上げてごめんなさい。この1ヶ月、四六時中愛情を注いでくださったロイド様には感謝しておりますし、もう不安に思う事はありませんから」
この1ヶ月、本当にずっと傍にいてくれたのだ。それこそ一度も王宮には戻っていない。ロイド様に用事がある人達は、皆我が家に足を運んでくれた。陛下や王妃殿下までも。我が家に尋ねて来てくださる方たちは、皆私のお見舞いも兼ねて来てくださるのだ。
ただ、ラファエル様だけは、なぜか会う事が出来なかった。彼には色々とお世話になったから、お礼を言いたいのだが…
さらにこの1ヶ月で、色々な事が起きていたらしい。お父様の話では、王宮の使用人の多くが入れ替わり、私の教育係も代わったとの事。ミーア様は修道院に向かわれたそうだ。
どうやらミーア様は王宮使用人や私の教育係を買収して、間接的に嫌がらせをしていたらしい。特に嫌がらせをされた覚えはないのだが…
お父様は
「これでセイラも少しは快適に王宮で過ごせるだろう」
と言っていた。
私が病に倒れ治療に集中している間に、色々な事ががらりと変わったらしい。
ただ、私の中で一番変わった事は、ロイド様とお父様だが。
そんな事を考えている間に、王宮が見えてきた。久しぶりの王宮、ここには辛い事も多かった。それでも私は、ロイド様と生きると決めたのだ。もう逃げだす訳にはいかない。
「セイラ、本当に無理をしなくてもいいのだよ」
「平気ですわ。それでは参りましょう」
すっと立ち上がり、馬車から降りた時だった。
「セイラ嬢、元気そうでよかった」
「セイラちゃん、いらっしゃい。あなたが来るのを心待ちにしていたのよ。さあ、こっちよ」
馬車から降りると、陛下と王妃様、お父様、さらに沢山の使用人たちも待っていてくれていた。確かに見た事のない使用人が、多くいる。
「国王陛下、王妃様、ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。これからはまた、王妃教育を再開し、ロイド様を支えられる様に精進して参ります。どうかよろしくお願いいたします」
王妃教育…正直自信はないが、やるしかない。
「セイラちゃん、無理をしなくてもいいのよ。あなたも随分辛い思いをしたのね。完治してよかったわ。ロイド、セイラちゃんは完治したのでしょう。あなたは大量に溜まった公務を片づけなさい。セイラちゃん、行きましょう」
私の手を引き、王妃様が歩き出したのだが、反対の手をがっちりロイド様に捕まれている。
「母上、セイラをどこに連れていくつもりですか?セイラは王宮にはいい思い出がないのです。僕が傍にいないと…」
「病気は完治したのでしょう?それならあなたが傍にいる理由はないはずよ。そもそも、あなたの愛情不足が原因で、セイラちゃんは命を一度落としたのよ。とはいえ、私も配慮が足りなかったわ。セイラちゃんが苦しんでいるのに、気が付かなかったのだから。とにかくセイラちゃんは連れていくわね。あなた達、ロイドをお願い」
「ロイド、母さんは怒らせるとものすごく怖いんだ。さあ、行くぞ」
「殿下、参りましょう」
「父上、公爵、離してくれ。僕はセイラと一緒にいるんだ。もしまた発作が起こったら」
「発作はもう起きませんので、ご安心を」
傍に控えていた公爵家専属のお医者様が、はっきりと告げた。
男性陣たちに連れていかれるロイド様を、私は静かに見送ったのだった。
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