余命3ヶ月を言われたので静かに余生を送ろうと思ったのですが…大好きな殿下に溺愛されました

Karamimi

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第37話:治療法が見つかりました

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「公爵、気持ちは分かりますが、今日はそれくらいにしたらどうですか?セイラは一命は取り留めましたが、まだ症状が改善した訳ではありません。ある意味、予断を許さない状況なのですから」

「そうだね、セイラは完治した訳ではないのだから、あまり無理をさせてはいけないね。セイラ、こうやって君と話せる日がくるだなんて。これからはセイラの幸せを、傍で見守らせてほしい」

 お父様が優しい眼差しで私を見つめている。まだお父様のこの様な表情を見るのが、不思議でたまらない。それでも、嬉しいのは確かだ。

「はい、もちろんですわ。きっと天国のお母様も、今頃喜んで…ゴホゴホゴホ…」

「セイラ!大丈夫かい?」

「セイラ、しっかりしてくれ。セイラが吐血した。すぐに医者を呼んでくれ」

 少し前から、胸が苦しいと思っていたが、まだ完全に治った訳ではないようだ。なんだか体中が痛い。

「とにかく横になりなさい。可哀そうに、血を吐いて。殿下、あなた様の力でセイラは回復したのではなかったのですか?」

「ですから、予断を許さない状況だと、今説明したばかりでしょう。セイラ、大丈夫かい?苦しいね。可哀そうに」

 ギュッと私を抱きしめてくれるロイド様。それでも苦しさは治まる事はない。次第に息遣いも荒くなってきた。

「お嬢様、どうされましたか?これは大変です。症状がまた悪化している様です。やはりあの病を改善させるのは難しいのかもしれません」

「それはどういうことだ。それではセイラは、命を落とすというのかい?そんな…」

 フラフラと倒れ込むお父様。私の事は心配しないで、そう伝えたいが、異常なまでに胸が苦しくて言葉が出ない。命を落とす瞬間ですら、こんなに苦しくはなかったのに。

「セイラ、なんて事だ。一体どうすればいいんだ?」

「殿下、セイラ様が命を落とした時と、同じ行動をすればよいのではないでしょうか?」

「そうだね、やってみよう。セイラ、こっちを向いて。僕はセイラを誰よりも愛しているよ。だからどうか、僕を残して逝かないでほしい。ずっと一緒僕の傍にいて欲しい」

 ロイド様、私もあなた様の傍にいたいです。そう言いかけた時だった。唇に温かくて柔らかい感触が。その瞬間、一気に息苦しさが和らいでいく。

 もっとロイド様の温もりを感じたい。そんな思いで、ロイド様の首に手を回し、自ら求めた。どんどん体が楽になり、呼吸もしやすくなった。

「セイラ、大丈夫かい?どうだい、体の調子は」

「はい、その…ロイド様が口づけをしてくれた瞬間、体中の痛みがスッと引いていきました」

 皆が見ている前で口づけだなんて、恥ずかしい。でも、本当に楽になったのだ。

「確かにお嬢様の体調も明らかによくなっている様ですし、恋焦がれ病の証でもあるアザも、再び薄くなっております。という事は、殿下からの口づけが治療法と言う事なのでしょう」

「口づけが治療法か…父親としては娘が男性と口づけをする姿なんて見たくないが…治療なら致し方ないな…」

 お父様が肩を落としている。こんなお父様、初めて見た。今日のお父様の姿には、まだ慣れない。

「公爵、まずはセイラの治療に専念しましょう。この短期間でセイラの症状は一気に悪化するという事は、またいつセイラの症状が悪化し、命を落とす危険性を伴うか分かりません。今から僕は、セイラと一緒に生活します。客間なんかで寝ていたら、セイラの異変にも気が付けません。セイラの治療のためにも、今日からセイラの部屋で寝泊まりいたします。よろしいですね」

「…承知いたしました。とはいえ、節度は保って下さい」

「分かっていますよ、公爵。それじゃあ、早速部屋を整えてくれ。それから、セイラに何か食べさせたい。果物とか食べやすいものを準備してくれ。公爵、後は僕がセイラを見ますから、どうかお仕事をこなしてください」

「…殿下、あなたって人は…セイラ、また明日来るから、今日はゆっくり休みなさい。殿下に何か嫌な事をされたら、すぐに報告するのだよ。それじゃあ、お休み」

「おやすみなさい、お父様」

 こんな風にお父様に、お休みが言える日が来るだなんて、やっぱり不思議だ。

「公爵め、散々セイラを避けていたくせに。こんな事なら、そっとしておけばよかったな」

「ロイド様?何かおっしゃいましたか?」

「いや、何でもないよ。さあ、夕食にしよう。果物なら食べられるよね。僕が食べさせてあげるよ」

 そう言って私の口に、苺を入れてくれたロイド様。甘酸っぱくて美味しい。

 その後ロイド様と一緒に、楽しい夕食の時間を過ごしたのだった。
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