37 / 46
第37話:治療法が見つかりました
しおりを挟む
「公爵、気持ちは分かりますが、今日はそれくらいにしたらどうですか?セイラは一命は取り留めましたが、まだ症状が改善した訳ではありません。ある意味、予断を許さない状況なのですから」
「そうだね、セイラは完治した訳ではないのだから、あまり無理をさせてはいけないね。セイラ、こうやって君と話せる日がくるだなんて。これからはセイラの幸せを、傍で見守らせてほしい」
お父様が優しい眼差しで私を見つめている。まだお父様のこの様な表情を見るのが、不思議でたまらない。それでも、嬉しいのは確かだ。
「はい、もちろんですわ。きっと天国のお母様も、今頃喜んで…ゴホゴホゴホ…」
「セイラ!大丈夫かい?」
「セイラ、しっかりしてくれ。セイラが吐血した。すぐに医者を呼んでくれ」
少し前から、胸が苦しいと思っていたが、まだ完全に治った訳ではないようだ。なんだか体中が痛い。
「とにかく横になりなさい。可哀そうに、血を吐いて。殿下、あなた様の力でセイラは回復したのではなかったのですか?」
「ですから、予断を許さない状況だと、今説明したばかりでしょう。セイラ、大丈夫かい?苦しいね。可哀そうに」
ギュッと私を抱きしめてくれるロイド様。それでも苦しさは治まる事はない。次第に息遣いも荒くなってきた。
「お嬢様、どうされましたか?これは大変です。症状がまた悪化している様です。やはりあの病を改善させるのは難しいのかもしれません」
「それはどういうことだ。それではセイラは、命を落とすというのかい?そんな…」
フラフラと倒れ込むお父様。私の事は心配しないで、そう伝えたいが、異常なまでに胸が苦しくて言葉が出ない。命を落とす瞬間ですら、こんなに苦しくはなかったのに。
「セイラ、なんて事だ。一体どうすればいいんだ?」
「殿下、セイラ様が命を落とした時と、同じ行動をすればよいのではないでしょうか?」
「そうだね、やってみよう。セイラ、こっちを向いて。僕はセイラを誰よりも愛しているよ。だからどうか、僕を残して逝かないでほしい。ずっと一緒僕の傍にいて欲しい」
ロイド様、私もあなた様の傍にいたいです。そう言いかけた時だった。唇に温かくて柔らかい感触が。その瞬間、一気に息苦しさが和らいでいく。
もっとロイド様の温もりを感じたい。そんな思いで、ロイド様の首に手を回し、自ら求めた。どんどん体が楽になり、呼吸もしやすくなった。
「セイラ、大丈夫かい?どうだい、体の調子は」
「はい、その…ロイド様が口づけをしてくれた瞬間、体中の痛みがスッと引いていきました」
皆が見ている前で口づけだなんて、恥ずかしい。でも、本当に楽になったのだ。
「確かにお嬢様の体調も明らかによくなっている様ですし、恋焦がれ病の証でもあるアザも、再び薄くなっております。という事は、殿下からの口づけが治療法と言う事なのでしょう」
「口づけが治療法か…父親としては娘が男性と口づけをする姿なんて見たくないが…治療なら致し方ないな…」
お父様が肩を落としている。こんなお父様、初めて見た。今日のお父様の姿には、まだ慣れない。
「公爵、まずはセイラの治療に専念しましょう。この短期間でセイラの症状は一気に悪化するという事は、またいつセイラの症状が悪化し、命を落とす危険性を伴うか分かりません。今から僕は、セイラと一緒に生活します。客間なんかで寝ていたら、セイラの異変にも気が付けません。セイラの治療のためにも、今日からセイラの部屋で寝泊まりいたします。よろしいですね」
「…承知いたしました。とはいえ、節度は保って下さい」
「分かっていますよ、公爵。それじゃあ、早速部屋を整えてくれ。それから、セイラに何か食べさせたい。果物とか食べやすいものを準備してくれ。公爵、後は僕がセイラを見ますから、どうかお仕事をこなしてください」
「…殿下、あなたって人は…セイラ、また明日来るから、今日はゆっくり休みなさい。殿下に何か嫌な事をされたら、すぐに報告するのだよ。それじゃあ、お休み」
「おやすみなさい、お父様」
こんな風にお父様に、お休みが言える日が来るだなんて、やっぱり不思議だ。
「公爵め、散々セイラを避けていたくせに。こんな事なら、そっとしておけばよかったな」
「ロイド様?何かおっしゃいましたか?」
「いや、何でもないよ。さあ、夕食にしよう。果物なら食べられるよね。僕が食べさせてあげるよ」
そう言って私の口に、苺を入れてくれたロイド様。甘酸っぱくて美味しい。
その後ロイド様と一緒に、楽しい夕食の時間を過ごしたのだった。
「そうだね、セイラは完治した訳ではないのだから、あまり無理をさせてはいけないね。セイラ、こうやって君と話せる日がくるだなんて。これからはセイラの幸せを、傍で見守らせてほしい」
お父様が優しい眼差しで私を見つめている。まだお父様のこの様な表情を見るのが、不思議でたまらない。それでも、嬉しいのは確かだ。
「はい、もちろんですわ。きっと天国のお母様も、今頃喜んで…ゴホゴホゴホ…」
「セイラ!大丈夫かい?」
「セイラ、しっかりしてくれ。セイラが吐血した。すぐに医者を呼んでくれ」
少し前から、胸が苦しいと思っていたが、まだ完全に治った訳ではないようだ。なんだか体中が痛い。
「とにかく横になりなさい。可哀そうに、血を吐いて。殿下、あなた様の力でセイラは回復したのではなかったのですか?」
「ですから、予断を許さない状況だと、今説明したばかりでしょう。セイラ、大丈夫かい?苦しいね。可哀そうに」
ギュッと私を抱きしめてくれるロイド様。それでも苦しさは治まる事はない。次第に息遣いも荒くなってきた。
「お嬢様、どうされましたか?これは大変です。症状がまた悪化している様です。やはりあの病を改善させるのは難しいのかもしれません」
「それはどういうことだ。それではセイラは、命を落とすというのかい?そんな…」
フラフラと倒れ込むお父様。私の事は心配しないで、そう伝えたいが、異常なまでに胸が苦しくて言葉が出ない。命を落とす瞬間ですら、こんなに苦しくはなかったのに。
「セイラ、なんて事だ。一体どうすればいいんだ?」
「殿下、セイラ様が命を落とした時と、同じ行動をすればよいのではないでしょうか?」
「そうだね、やってみよう。セイラ、こっちを向いて。僕はセイラを誰よりも愛しているよ。だからどうか、僕を残して逝かないでほしい。ずっと一緒僕の傍にいて欲しい」
ロイド様、私もあなた様の傍にいたいです。そう言いかけた時だった。唇に温かくて柔らかい感触が。その瞬間、一気に息苦しさが和らいでいく。
もっとロイド様の温もりを感じたい。そんな思いで、ロイド様の首に手を回し、自ら求めた。どんどん体が楽になり、呼吸もしやすくなった。
「セイラ、大丈夫かい?どうだい、体の調子は」
「はい、その…ロイド様が口づけをしてくれた瞬間、体中の痛みがスッと引いていきました」
皆が見ている前で口づけだなんて、恥ずかしい。でも、本当に楽になったのだ。
「確かにお嬢様の体調も明らかによくなっている様ですし、恋焦がれ病の証でもあるアザも、再び薄くなっております。という事は、殿下からの口づけが治療法と言う事なのでしょう」
「口づけが治療法か…父親としては娘が男性と口づけをする姿なんて見たくないが…治療なら致し方ないな…」
お父様が肩を落としている。こんなお父様、初めて見た。今日のお父様の姿には、まだ慣れない。
「公爵、まずはセイラの治療に専念しましょう。この短期間でセイラの症状は一気に悪化するという事は、またいつセイラの症状が悪化し、命を落とす危険性を伴うか分かりません。今から僕は、セイラと一緒に生活します。客間なんかで寝ていたら、セイラの異変にも気が付けません。セイラの治療のためにも、今日からセイラの部屋で寝泊まりいたします。よろしいですね」
「…承知いたしました。とはいえ、節度は保って下さい」
「分かっていますよ、公爵。それじゃあ、早速部屋を整えてくれ。それから、セイラに何か食べさせたい。果物とか食べやすいものを準備してくれ。公爵、後は僕がセイラを見ますから、どうかお仕事をこなしてください」
「…殿下、あなたって人は…セイラ、また明日来るから、今日はゆっくり休みなさい。殿下に何か嫌な事をされたら、すぐに報告するのだよ。それじゃあ、お休み」
「おやすみなさい、お父様」
こんな風にお父様に、お休みが言える日が来るだなんて、やっぱり不思議だ。
「公爵め、散々セイラを避けていたくせに。こんな事なら、そっとしておけばよかったな」
「ロイド様?何かおっしゃいましたか?」
「いや、何でもないよ。さあ、夕食にしよう。果物なら食べられるよね。僕が食べさせてあげるよ」
そう言って私の口に、苺を入れてくれたロイド様。甘酸っぱくて美味しい。
その後ロイド様と一緒に、楽しい夕食の時間を過ごしたのだった。
934
お気に入りに追加
2,884
あなたにおすすめの小説

【完結】「お前とは結婚できない」と言われたので出奔したら、なぜか追いかけられています
21時完結
恋愛
「すまない、リディア。お前とは結婚できない」
そう告げたのは、長年婚約者だった王太子エドワード殿下。
理由は、「本当に愛する女性ができたから」――つまり、私以外に好きな人ができたということ。
(まあ、そんな気はしてました)
社交界では目立たない私は、王太子にとってただの「義務」でしかなかったのだろう。
未練もないし、王宮に居続ける理由もない。
だから、婚約破棄されたその日に領地に引きこもるため出奔した。
これからは自由に静かに暮らそう!
そう思っていたのに――
「……なぜ、殿下がここに?」
「お前がいなくなって、ようやく気づいた。リディア、お前が必要だ」
婚約破棄を言い渡した本人が、なぜか私を追いかけてきた!?
さらに、冷酷な王国宰相や腹黒な公爵まで現れて、次々に私を手に入れようとしてくる。
「お前は王妃になるべき女性だ。逃がすわけがない」
「いいや、俺の妻になるべきだろう?」
「……私、ただ田舎で静かに暮らしたいだけなんですけど!!」

【完結】愛しき冷血宰相へ別れの挨拶を
川上桃園
恋愛
「どうかもう私のことはお忘れください。閣下の幸せを、遠くから見守っております」
とある国で、宰相閣下が結婚するという新聞記事が出た。
これを見た地方官吏のコーデリアは突如、王都へ旅立った。亡き兄の友人であり、年上の想い人でもある「彼」に別れを告げるために。
だが目当ての宰相邸では使用人に追い返されて途方に暮れる。そこに出くわしたのは、彼と結婚するという噂の美しき令嬢の姿だった――。
これは、冷血宰相と呼ばれた彼の結婚を巡る、恋のから騒ぎ。最後はハッピーエンドで終わるめでたしめでたしのお話です。
第22回書き出し祭り参加作品
2025.1.26 女性向けホトラン1位ありがとうございます
2025.2.14 後日談を投稿しました

公爵令嬢は逃げ出すことにした【完結済】
佐原香奈
恋愛
公爵家の跡取りとして厳しい教育を受けるエリー。
異母妹のアリーはエリーとは逆に甘やかされて育てられていた。
幼い頃からの婚約者であるヘンリーはアリーに惚れている。
その事実を1番隣でいつも見ていた。
一度目の人生と同じ光景をまた繰り返す。
25歳の冬、たった1人で終わらせた人生の繰り返しに嫌気がさし、エリーは逃げ出すことにした。
これからもずっと続く苦痛を知っているのに、耐えることはできなかった。
何も持たず公爵家の門をくぐるエリーが向かった先にいたのは…
完結済ですが、気が向いた時に話を追加しています。
【完結】恋は、終わったのです
楽歩
恋愛
幼い頃に決められた婚約者、セオドアと共に歩む未来。それは決定事項だった。しかし、いつしか冷たい現実が訪れ、彼の隣には別の令嬢の笑顔が輝くようになる。
今のような関係になったのは、いつからだったのだろう。
『分からないだろうな、お前のようなでかくて、エマのように可愛げのない女には』
身長を追い越してしまった時からだろうか。
それとも、特進クラスに私だけが入った時だろうか。
あるいは――あの子に出会った時からだろうか。
――それでも、リディアは平然を装い続ける。胸に秘めた思いを隠しながら。

【完結】婚約破棄?勘当?私を嘲笑う人達は私が不幸になる事を望んでいましたが、残念ながら不幸になるのは貴方達ですよ♪
山葵
恋愛
「シンシア、君との婚約は破棄させてもらう。君の代わりにマリアーナと婚約する。これはジラルダ侯爵も了承している。姉妹での婚約者の交代、慰謝料は無しだ。」
「マリアーナとランバルド殿下が婚約するのだ。お前は不要、勘当とする。」
「国王陛下は承諾されているのですか?本当に良いのですか?」
「別に姉から妹に婚約者が変わっただけでジラルダ侯爵家との縁が切れたわけではない。父上も承諾するさっ。」
「お前がジラルダ侯爵家に居る事が、婿入りされるランバルド殿下を不快にするのだ。」
そう言うとお父様、いえジラルダ侯爵は、除籍届けと婚約解消届け、そしてマリアーナとランバルド殿下の婚約届けにサインした。
私を嘲笑って喜んでいる4人の声が可笑しくて笑いを堪えた。
さぁて貴方達はいつまで笑っていられるのかしらね♪

騎士の妻ではいられない
Rj
恋愛
騎士の娘として育ったリンダは騎士とは結婚しないと決めていた。しかし幼馴染みで騎士のイーサンと結婚したリンダ。結婚した日に新郎は非常召集され、新婦のリンダは結婚を祝う宴に一人残された。二年目の結婚記念日に戻らない夫を待つリンダはもう騎士の妻ではいられないと心を決める。
全23話。
2024/1/29 全体的な加筆修正をしました。話の内容に変わりはありません。
イーサンが主人公の続編『騎士の妻でいてほしい 』(https://www.alphapolis.co.jp/novel/96163257/36727666)があります。

白い結婚のはずでしたが、王太子の愛人に嘲笑されたので隣国へ逃げたら、そちらの王子に大切にされました
ゆる
恋愛
「王太子妃として、私はただの飾り――それなら、いっそ逃げるわ」
オデット・ド・ブランシュフォール侯爵令嬢は、王太子アルベールの婚約者として育てられた。誰もが羨む立場のはずだったが、彼の心は愛人ミレイユに奪われ、オデットはただの“形式だけの妻”として冷遇される。
「君との結婚はただの義務だ。愛するのはミレイユだけ」
そう嘲笑う王太子と、勝ち誇る愛人。耐え忍ぶことを強いられた日々に、オデットの心は次第に冷え切っていった。だが、ある日――隣国アルヴェールの王子・レオポルドから届いた一通の書簡が、彼女の運命を大きく変える。
「もし君が望むなら、私は君を迎え入れよう」
このまま王太子妃として屈辱に耐え続けるのか。それとも、自らの人生を取り戻すのか。
オデットは決断する。――もう、アルベールの傀儡にはならない。
愛人に嘲笑われた王妃の座などまっぴらごめん!
王宮を飛び出し、隣国で新たな人生を掴み取ったオデットを待っていたのは、誠実な王子の深い愛。
冷遇された令嬢が、理不尽な白い結婚を捨てて“本当の幸せ”を手にする
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる