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第36話:まだぎこちないけれど
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「お父様、謝らないで下さい。こうやってお父様とお話しが出来ただけで、私は幸せですから。今日はお部屋に来てくださり、ありがとうございます」
唯一の肉親でもあるお父様と、こんな風に話しが出来ただけでも、十分幸せだ。嬉しくて涙が溢れる。
「セイラ!ああ、私のセイラ。私は君から母親を奪ったというのに…さっき全てを聞いた。君の母親は、私を思い亡くなったんだ。私は醜い嫉妬心から、愛する妻を死に至らしめたのだよ。本当は誰よりも、彼女を愛していたのに」
「お父様もお母様を愛していらしたのですか?お母様、きっと天国で喜んでいらっしゃいますわ。今ここで、お父様の気持ちを聞く事が出来たのですもの」
「セイラは、私の事を軽蔑しないのかい?私のせいで、君の母親は命を落としたのだよ」
「確かにお母様が亡くなって、寂しい思いもしました。ですがお父様も、ずっと苦しんできたのですよね。それにお母様は、お父様の幸せを誰よりも望んでいましたわ。私も一度命を失ったのでわかるのです。愛する人には、幸せになって欲しい、私もそう願い、命を落としたので」
「セイラ…」
「意識が戻る寸前、お母様に会ったのです。お母様は“お父様の事をお願いね”とおっしゃっておりました。きっと今でもお母様は、お父様の事を心配していらっしゃるのでしょう。どうかお父様も、お母様の為に幸せになってください」
恋焦がれ病にかかり、一度命を落とした私には、お母様の気持ちが痛いほどわかる。私がロイド様には絶対に幸せになって欲しいと望んだように、お母様もお父様の幸せを強く望んでいたのだろう。
現にお母様は、闘病中一度もお父様のことを悪く言わなかった。それどころか、愛おしそうにお父様の話をしていた。正直当時の私には、お母様の気持ちが理解できなかった。あの時の私はまだ、子供だったのだ。
「セレイナがそんな事を…セレイナ、本当にすまなかった。君に寂しい思いをさせてしまって。君はどんな時でも、私を心配してくれているのだね。セレイナ、愛しているよ、セレイナ」
お父様が何度も何度も叫んでいる。今まで溜め込んでいた思いを、一気にぶつけるように。きっとお母様も、今頃喜んでいる頃だろう。
「セイラ、改めて今まで本当にすまなかった。セイラを見ると、亡くなったセレイナへの罪悪感から、つい君を避けてしまっていた。でもそれは、間違いだった。今更遅いかもしれないが、今からでも父親としてセイラと親子の関係を築いてくれるかい?」
「もちろんですわ。私はずっと、お父様とこうやってお話がしたかったのです。だから、まるで夢の様で。また目を覚ましたら、いつものお父様に戻ってしまうのかしら?」
これは全て私の望みが夢となって表れているだけで、目を覚ましたら元通りという事はないかしら?そんな不安が、私を襲う。
「セイラは本当に優しい子だ。そんな事はないから、安心してくれ。せっかくだから、今日は傍にいてもいいかい?セイラの事、たくさん教えて欲しい」
「ええ、もちろんですわ。私もお父様の事、もっともっと知りたいです。それにお母様の事も…申し訳ございません、何でもありません」
ここでお母様の話はまずかっただろう。慌てて口をさえた。
「そうだね、セレイナは美しいのはもちろん、優しくて正義感が強くて、私には勿体ないほど素敵な女性だったよ」
少し寂しそうに、それでもなんだか嬉しそうなお父様の顔を見た瞬間、胸が締め付けられた。お父様は、本当にお母様を愛していたのだろう。
もしお母様が生きていた時に、お互いの気持ちを知っていたら…そう思うと、いたたまらない気持ちになった。
お父様はお母様の病名を知って、さぞ無念だっただろう。お父様の顔を見ていたら、泣きそうになった。せめて私が、お父様を支えたい。
その後は、お父様と沢山お話をした。15年間、まともに話してこなかったお父様。今すぐ親子の関係が改善する事はないだろう。
正直まだぎこちない。それでも今のお父様とならきっと、いつか親子として良好な関係が築ける。なんだかそんな気がしたのだった。
唯一の肉親でもあるお父様と、こんな風に話しが出来ただけでも、十分幸せだ。嬉しくて涙が溢れる。
「セイラ!ああ、私のセイラ。私は君から母親を奪ったというのに…さっき全てを聞いた。君の母親は、私を思い亡くなったんだ。私は醜い嫉妬心から、愛する妻を死に至らしめたのだよ。本当は誰よりも、彼女を愛していたのに」
「お父様もお母様を愛していらしたのですか?お母様、きっと天国で喜んでいらっしゃいますわ。今ここで、お父様の気持ちを聞く事が出来たのですもの」
「セイラは、私の事を軽蔑しないのかい?私のせいで、君の母親は命を落としたのだよ」
「確かにお母様が亡くなって、寂しい思いもしました。ですがお父様も、ずっと苦しんできたのですよね。それにお母様は、お父様の幸せを誰よりも望んでいましたわ。私も一度命を失ったのでわかるのです。愛する人には、幸せになって欲しい、私もそう願い、命を落としたので」
「セイラ…」
「意識が戻る寸前、お母様に会ったのです。お母様は“お父様の事をお願いね”とおっしゃっておりました。きっと今でもお母様は、お父様の事を心配していらっしゃるのでしょう。どうかお父様も、お母様の為に幸せになってください」
恋焦がれ病にかかり、一度命を落とした私には、お母様の気持ちが痛いほどわかる。私がロイド様には絶対に幸せになって欲しいと望んだように、お母様もお父様の幸せを強く望んでいたのだろう。
現にお母様は、闘病中一度もお父様のことを悪く言わなかった。それどころか、愛おしそうにお父様の話をしていた。正直当時の私には、お母様の気持ちが理解できなかった。あの時の私はまだ、子供だったのだ。
「セレイナがそんな事を…セレイナ、本当にすまなかった。君に寂しい思いをさせてしまって。君はどんな時でも、私を心配してくれているのだね。セレイナ、愛しているよ、セレイナ」
お父様が何度も何度も叫んでいる。今まで溜め込んでいた思いを、一気にぶつけるように。きっとお母様も、今頃喜んでいる頃だろう。
「セイラ、改めて今まで本当にすまなかった。セイラを見ると、亡くなったセレイナへの罪悪感から、つい君を避けてしまっていた。でもそれは、間違いだった。今更遅いかもしれないが、今からでも父親としてセイラと親子の関係を築いてくれるかい?」
「もちろんですわ。私はずっと、お父様とこうやってお話がしたかったのです。だから、まるで夢の様で。また目を覚ましたら、いつものお父様に戻ってしまうのかしら?」
これは全て私の望みが夢となって表れているだけで、目を覚ましたら元通りという事はないかしら?そんな不安が、私を襲う。
「セイラは本当に優しい子だ。そんな事はないから、安心してくれ。せっかくだから、今日は傍にいてもいいかい?セイラの事、たくさん教えて欲しい」
「ええ、もちろんですわ。私もお父様の事、もっともっと知りたいです。それにお母様の事も…申し訳ございません、何でもありません」
ここでお母様の話はまずかっただろう。慌てて口をさえた。
「そうだね、セレイナは美しいのはもちろん、優しくて正義感が強くて、私には勿体ないほど素敵な女性だったよ」
少し寂しそうに、それでもなんだか嬉しそうなお父様の顔を見た瞬間、胸が締め付けられた。お父様は、本当にお母様を愛していたのだろう。
もしお母様が生きていた時に、お互いの気持ちを知っていたら…そう思うと、いたたまらない気持ちになった。
お父様はお母様の病名を知って、さぞ無念だっただろう。お父様の顔を見ていたら、泣きそうになった。せめて私が、お父様を支えたい。
その後は、お父様と沢山お話をした。15年間、まともに話してこなかったお父様。今すぐ親子の関係が改善する事はないだろう。
正直まだぎこちない。それでも今のお父様とならきっと、いつか親子として良好な関係が築ける。なんだかそんな気がしたのだった。
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