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第26話:幸せな時間ももうすぐお終いです
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「セイラ、おはよう。今日は天気がいいよ。窓を開けようね」
「ありがとうございます。ロイド様。朝から来てくださったのですね。公務は大丈夫なのですか?」
「ああ、昨日の夜に片づけたから、大丈夫だよ。それよりも、調子はどうだい?胸は苦しいかい?昨日の夜、2回も吐血したと聞いたが」
「今のところ、胸の痛みもそこまで強くはありませんわ。ロイド様、申し訳ございません。私の為にいつも足を運んでくださって。お陰様で、余命3ヶ月を過ぎてもまだ、生きる事が出来ております。私はもう、いつ逝っても心残りはありません」
余命宣告をされてから、3ヶ月が過ぎた。ロイド様が傍にいてくれるお陰か、余命期間を過ぎた今でも、何とか命を取り留めている。
とはいえ、既に起き上がる事が出来ない状況まで体は弱っている。きっともうすぐ、私の命は尽きるだろう。
早くミーア様の元に向かいたいだろうに、私の命が尽きるまで私に付き合ってくれるロイド様には、本当に感謝しかない。
「セイラ、そんな悲しい事を言わないでくれ。最近少しずつ、外も暖かくなり始めているよ。セイラの体調が良いときに、また外に散歩に行こう」
そう言うと、ロイド様が窓を開けた。暖かい空気が、一気に部屋の中に入って来る。
「随分と暖かくなってきたのですね。気持ちいいですわ」
心地よい風が、私の頬を撫でる。こんなに穏やかな気持ちで過ごせるのは、きっとロイド様のお陰だろう。彼が傍にいてくれるから。
以前はほぼ無表情だったロイド様も、今は比較的柔らかな表情をしている。とはいえ、どこか寂し気で、たまに窓の外を見つめている時がある。きっと愛するミーア様を思っているのだろう。
ロイド様の事を考えると、早く解放してあげたいと思う反面、もう少しだけ、彼の傍にいたい、独り占めしたいという思いもわいてくるのだ。
人間とは、本当に勝手で我が儘な生き物よね…
たとえ自分が愛されていないとわかっていても、相手が自分の死を心のどこかで望んでいると知っていても、それでも生きている間は、私を見て欲しいの願ってしまうのだから…
「ゴホゴホゴホ…」
「セイラ、大丈夫かい?」
「ええ…大丈夫ですわ…急に体調が悪くなってしまいました…お医者様を呼んでいただけますか?」
「分かった、すぐに医者を連れて来てくれ!」
「はい、ただいま」
使用人たちが、あわただしく部屋から出ていく。あの子たちにも、随分と心配をかけたわね。私の専属使用人たちは、私がいなくなったらどうなるのかしら?
きっと公爵家にはいられなくなるわね。私ったら、どうして今こんな重要な事に気が付いたのかしら?本当に愚か者だわ…
「ロイド様…お願いがあります…」
「何だい?何でも言ってくれ」
「もし私の命が尽きたら…どうか私の侍女たちを王宮で…雇ってください…父はきっと、彼女たちをクビにするでしょう…この子たちが、路頭に迷わない様に…」
「今その様な事を言わなくても…」
「いいえ、大事な話です…どうかお願いします」
もう私には、ロイド様に頼むしかないのだ。
「分かったよ、彼女たちは王宮で面倒を見る。だから安心してくれ」
「ありがとうございます…」
これで心置きなく旅立てるわ。
「セイラ、セイラ!」
「どうされましたか?」
「いや…今セイラが、消えてしまいそうだったから…」
消えてしまう?そういえば昔、お母様が亡くなる前日だったかしら?お母様が一瞬透明になり、消えてしまいそうになったことがあったわね。
それじゃあ、私も後少しね。
「お医者様を連れて参りました」
「お嬢様、体調が悪化したとお伺いいたしました。すぐに診察を行います」
専属医師が、私の様子を確認する。色々と診察しているように見えて、彼女が見ている場所はただ1つ。私の首の後ろだ。この首の後ろにあざが出ているのだが、この色で私の命の尽きる時が分かるようだ。
何色に変わったら私の命が尽きるのかは知らないが、そろそろだろう。
「ありがとうございます。ロイド様。朝から来てくださったのですね。公務は大丈夫なのですか?」
「ああ、昨日の夜に片づけたから、大丈夫だよ。それよりも、調子はどうだい?胸は苦しいかい?昨日の夜、2回も吐血したと聞いたが」
「今のところ、胸の痛みもそこまで強くはありませんわ。ロイド様、申し訳ございません。私の為にいつも足を運んでくださって。お陰様で、余命3ヶ月を過ぎてもまだ、生きる事が出来ております。私はもう、いつ逝っても心残りはありません」
余命宣告をされてから、3ヶ月が過ぎた。ロイド様が傍にいてくれるお陰か、余命期間を過ぎた今でも、何とか命を取り留めている。
とはいえ、既に起き上がる事が出来ない状況まで体は弱っている。きっともうすぐ、私の命は尽きるだろう。
早くミーア様の元に向かいたいだろうに、私の命が尽きるまで私に付き合ってくれるロイド様には、本当に感謝しかない。
「セイラ、そんな悲しい事を言わないでくれ。最近少しずつ、外も暖かくなり始めているよ。セイラの体調が良いときに、また外に散歩に行こう」
そう言うと、ロイド様が窓を開けた。暖かい空気が、一気に部屋の中に入って来る。
「随分と暖かくなってきたのですね。気持ちいいですわ」
心地よい風が、私の頬を撫でる。こんなに穏やかな気持ちで過ごせるのは、きっとロイド様のお陰だろう。彼が傍にいてくれるから。
以前はほぼ無表情だったロイド様も、今は比較的柔らかな表情をしている。とはいえ、どこか寂し気で、たまに窓の外を見つめている時がある。きっと愛するミーア様を思っているのだろう。
ロイド様の事を考えると、早く解放してあげたいと思う反面、もう少しだけ、彼の傍にいたい、独り占めしたいという思いもわいてくるのだ。
人間とは、本当に勝手で我が儘な生き物よね…
たとえ自分が愛されていないとわかっていても、相手が自分の死を心のどこかで望んでいると知っていても、それでも生きている間は、私を見て欲しいの願ってしまうのだから…
「ゴホゴホゴホ…」
「セイラ、大丈夫かい?」
「ええ…大丈夫ですわ…急に体調が悪くなってしまいました…お医者様を呼んでいただけますか?」
「分かった、すぐに医者を連れて来てくれ!」
「はい、ただいま」
使用人たちが、あわただしく部屋から出ていく。あの子たちにも、随分と心配をかけたわね。私の専属使用人たちは、私がいなくなったらどうなるのかしら?
きっと公爵家にはいられなくなるわね。私ったら、どうして今こんな重要な事に気が付いたのかしら?本当に愚か者だわ…
「ロイド様…お願いがあります…」
「何だい?何でも言ってくれ」
「もし私の命が尽きたら…どうか私の侍女たちを王宮で…雇ってください…父はきっと、彼女たちをクビにするでしょう…この子たちが、路頭に迷わない様に…」
「今その様な事を言わなくても…」
「いいえ、大事な話です…どうかお願いします」
もう私には、ロイド様に頼むしかないのだ。
「分かったよ、彼女たちは王宮で面倒を見る。だから安心してくれ」
「ありがとうございます…」
これで心置きなく旅立てるわ。
「セイラ、セイラ!」
「どうされましたか?」
「いや…今セイラが、消えてしまいそうだったから…」
消えてしまう?そういえば昔、お母様が亡くなる前日だったかしら?お母様が一瞬透明になり、消えてしまいそうになったことがあったわね。
それじゃあ、私も後少しね。
「お医者様を連れて参りました」
「お嬢様、体調が悪化したとお伺いいたしました。すぐに診察を行います」
専属医師が、私の様子を確認する。色々と診察しているように見えて、彼女が見ている場所はただ1つ。私の首の後ろだ。この首の後ろにあざが出ているのだが、この色で私の命の尽きる時が分かるようだ。
何色に変わったら私の命が尽きるのかは知らないが、そろそろだろう。
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