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第22話:僕が愚かだった~ロイド視点~
しおりを挟む「分かった、今日は帰るよ。ただ、君と少し話がしたい。ちょっといいかな」
「私とですか?承知いたしました」
一旦医者と一緒に外に出た。そして客間に通された。
「セイラは公爵夫人と同じ不治の病と聞いている。夫人の家に代々伝わる遺伝性の病気だと聞いた。一体どんな病気なのだい?その病気は、本当に治らないのかい?」
真っすぐ医者の瞳を見つめながら、問いかけた。明らかに動揺している医者。
「はい、セイラお嬢様は、奥様と同じ病気にかかっております。遺伝性の要素は強いですが、必ずしも皆発病する訳ではありません。むしろ、発病する人間はとても稀なのです」
「そんな稀な病気に、セイラはかかってしまったというのかい?どうしてセイラが…」
「ロイド殿下は、セイラお嬢様の事をどうお考えなのですか?セイラお嬢様の事を、助けたいと考えていらっしゃるのですか?」
「当たり前だろう。セイラは僕にとって…いや、何でもない」
医者の前で、僕は何を言おうとしているのだ。そもそも、男が簡単に愛しているなどと、他人に伝えるだなんて…
「奥様は愛するセイラお嬢様が、自分と同じ病気を患わない様にと、セイラお嬢様にある忠告をいたしました。ですがセイラお嬢様は、その忠告を守る事が出来なかったのです。その結果、病気を患ってしまいました。一度患ってしまったら、生存率はほぼゼロです。今まで同じ病に罹られた方で、生き残れた方は一人もおりませんでしたから」
切なそうに呟く医者。
「それならせめて、あの苦しそうな状況をなんとかできないのかい?そもそも、どうして余命3ヶ月になるまで気が付かなかったのだい?」
「私共も、そこは不思議なのです。きっとお嬢様が病気を患っていたのは、もっと前からでしょう。前から激しい胸の痛みや息苦しさなどがあったはずです。きっと我慢していらしたのでしょう。お嬢様は周りに迷惑をかけることを、極端に嫌うところがあります。自分が我慢すれば、丸く収まると考えている節がありまして」
自分が我慢すれば、丸く収まるか…確かにセイラは、そんな節がある。きっと我が儘を言える環境になかったことが、大きいのだろう。
せめて僕の前では、我が儘を言える環境を作ってあげたかった。でも僕は、その環境を作ってあげる事が出来なかったのだ。今さらながら、後悔しかない。
「もう一度聞くが、セイラが助かる方法は本当に一ミリもないのかい?もし少しでも可能性があるのなら、その可能性を試したい」
セイラがこのまま苦しみながら命を落とすだなんて、耐えられない。少しでも可能性があるのなら、その可能性にかけたい。
「全くない訳ではありません。ですが、私共医者が、どうこう出来る問題でもありません。実際助かった人間がいない限り、具体的にこうすればいいという方法も分かりません」
「君は何を言っているのだい?全くない訳ではないとは、どういう意味だい?」
「ですから、助かった人間がいないため、方法が分からないのです。申し訳ございません、私が答えられることは、この程度です。それではお嬢様が心配ですので、これで失礼します」
そう言うと、足早に去って行った医者。
あの医者が言っている意味が、さっぱり分からない。あの医者は一体、何を言っていたのだ?ただわかる事は、助かる方法がない訳ではないが、その方法が分からないという事なのだが…
一体どういう意味なのだろう…
その後僕は、何度も公爵家の医者に接触したが、僕が納得する答えは得られなかった。
そんな中、セイラは日に日に弱っていった。このままセイラが息をひきとったら…そう考えると、生きた心地がしなかった。
セイラが苦しんでいるのに、僕は何もできない。それがもどかしくてたまらなかった。何もできないまま、セイラが余命宣告を受けて、1ヶ月が過ぎようとしていた頃、執事が書類を持ってやってきたのだ。
「お待たせいたしました、これがミーア嬢とラファエル殿に関する資料でございます」
執事が集めてきた資料は、かなり膨大だった。さすが執事、徹底的に調べてきたのだろう。
早速ミーア嬢の方から、情報を見ていく。その情報は、僕の想像をはるかに超える恐ろしい内容だった。そしてラファエルの方は…
「これが真実だと?そんな…それじゃあ僕は…」
資料を読みながら、ボロボロと涙が溢れだす。それと共に、怒りがこみ上げてきた。
この3年、いいや、セイラに出会ってからの6年、僕は何をしていたのだろう。
資料に目を通しながら、自分の愚かさに絶望したのだった。
「私とですか?承知いたしました」
一旦医者と一緒に外に出た。そして客間に通された。
「セイラは公爵夫人と同じ不治の病と聞いている。夫人の家に代々伝わる遺伝性の病気だと聞いた。一体どんな病気なのだい?その病気は、本当に治らないのかい?」
真っすぐ医者の瞳を見つめながら、問いかけた。明らかに動揺している医者。
「はい、セイラお嬢様は、奥様と同じ病気にかかっております。遺伝性の要素は強いですが、必ずしも皆発病する訳ではありません。むしろ、発病する人間はとても稀なのです」
「そんな稀な病気に、セイラはかかってしまったというのかい?どうしてセイラが…」
「ロイド殿下は、セイラお嬢様の事をどうお考えなのですか?セイラお嬢様の事を、助けたいと考えていらっしゃるのですか?」
「当たり前だろう。セイラは僕にとって…いや、何でもない」
医者の前で、僕は何を言おうとしているのだ。そもそも、男が簡単に愛しているなどと、他人に伝えるだなんて…
「奥様は愛するセイラお嬢様が、自分と同じ病気を患わない様にと、セイラお嬢様にある忠告をいたしました。ですがセイラお嬢様は、その忠告を守る事が出来なかったのです。その結果、病気を患ってしまいました。一度患ってしまったら、生存率はほぼゼロです。今まで同じ病に罹られた方で、生き残れた方は一人もおりませんでしたから」
切なそうに呟く医者。
「それならせめて、あの苦しそうな状況をなんとかできないのかい?そもそも、どうして余命3ヶ月になるまで気が付かなかったのだい?」
「私共も、そこは不思議なのです。きっとお嬢様が病気を患っていたのは、もっと前からでしょう。前から激しい胸の痛みや息苦しさなどがあったはずです。きっと我慢していらしたのでしょう。お嬢様は周りに迷惑をかけることを、極端に嫌うところがあります。自分が我慢すれば、丸く収まると考えている節がありまして」
自分が我慢すれば、丸く収まるか…確かにセイラは、そんな節がある。きっと我が儘を言える環境になかったことが、大きいのだろう。
せめて僕の前では、我が儘を言える環境を作ってあげたかった。でも僕は、その環境を作ってあげる事が出来なかったのだ。今さらながら、後悔しかない。
「もう一度聞くが、セイラが助かる方法は本当に一ミリもないのかい?もし少しでも可能性があるのなら、その可能性を試したい」
セイラがこのまま苦しみながら命を落とすだなんて、耐えられない。少しでも可能性があるのなら、その可能性にかけたい。
「全くない訳ではありません。ですが、私共医者が、どうこう出来る問題でもありません。実際助かった人間がいない限り、具体的にこうすればいいという方法も分かりません」
「君は何を言っているのだい?全くない訳ではないとは、どういう意味だい?」
「ですから、助かった人間がいないため、方法が分からないのです。申し訳ございません、私が答えられることは、この程度です。それではお嬢様が心配ですので、これで失礼します」
そう言うと、足早に去って行った医者。
あの医者が言っている意味が、さっぱり分からない。あの医者は一体、何を言っていたのだ?ただわかる事は、助かる方法がない訳ではないが、その方法が分からないという事なのだが…
一体どういう意味なのだろう…
その後僕は、何度も公爵家の医者に接触したが、僕が納得する答えは得られなかった。
そんな中、セイラは日に日に弱っていった。このままセイラが息をひきとったら…そう考えると、生きた心地がしなかった。
セイラが苦しんでいるのに、僕は何もできない。それがもどかしくてたまらなかった。何もできないまま、セイラが余命宣告を受けて、1ヶ月が過ぎようとしていた頃、執事が書類を持ってやってきたのだ。
「お待たせいたしました、これがミーア嬢とラファエル殿に関する資料でございます」
執事が集めてきた資料は、かなり膨大だった。さすが執事、徹底的に調べてきたのだろう。
早速ミーア嬢の方から、情報を見ていく。その情報は、僕の想像をはるかに超える恐ろしい内容だった。そしてラファエルの方は…
「これが真実だと?そんな…それじゃあ僕は…」
資料を読みながら、ボロボロと涙が溢れだす。それと共に、怒りがこみ上げてきた。
この3年、いいや、セイラに出会ってからの6年、僕は何をしていたのだろう。
資料に目を通しながら、自分の愚かさに絶望したのだった。
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