余命3ヶ月を言われたので静かに余生を送ろうと思ったのですが…大好きな殿下に溺愛されました

Karamimi

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第11話:辛い現実~ロイド視点~

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 セイラ嬢に会って以降、僕の心はすっかりセイラ嬢の虜になっていた。セイラ嬢が王宮に遊びに来る日を、心待ちにしていた。

 とはいえ、セイラ嬢は1ヶ月に1回程度しか来てくれない。他の令嬢たちは、積極的に王宮に来てくれるのに。

 そんな中、僕は1人の令嬢と仲良くなった。彼女はキャロッティ侯爵家のミーア嬢だ。彼女は少し変わっていて、僕に全く興味がない様だ。

「殿下、正直私は、全くあなた様に興味がありません。ですので、あなた様の恋の相談役にして頂けると嬉しいですわ」

 そう言って来たのだ。この女、信じていいのか?最初は警戒していたが、本当に僕に興味がない様で、令嬢たちの色々な情報を仕入れてくれるのだ。

 そんなミーア嬢に、思い切ってセイラ嬢の事を相談した。

「まあ、殿下はセイラ様に好意を抱いていらっしゃるのですか?セイラ様は、あまり公の場に姿を現さないので、あまり情報は…ですが、なんとか仕入れてみますわ」

 そう言ってくれたミーア嬢。確かにセイラは、あまり公の場に姿を現すことはない。とはいえ、人当たりがよく情報通のミーア嬢ならきっと、セイラ嬢の情報を仕入れてくれるはずだ。

 ミーア嬢と話をしたことで、心が軽くなった僕は、今日もセイラ嬢が来るのを待っていた。

 いつもの中庭に向かおうとした時だった。

 なんとセイラ嬢の姿が。

 嬉しくて声をかけようとした時だった。

「どうしてセイラ嬢とラファエルが一緒にいるのだ?」

 中庭で楽しそうに立ち話をしているセイラ嬢とラファエルの姿が、目に飛び込んできたのだ。ラファエルはフォリスト公爵家の次男。非常に優秀で、僕の右腕として期待されている人物。

 ただ彼は、感情に乏しく、何を考えているか分からない。


 そんなラファエルが、セイラ嬢と楽しそうに話しているのだ。ラファエルがあんな風に笑った顔、初めて見た。

 セイラ嬢も、とても楽しそうだ。まるで恋人の様に…

 2人の姿を見た時、胸が張り裂けそうになった。2人の姿を見ていられなくて、急いでその場を去った。

 落ち着け、落ち着くんだ。セイラ嬢とラファエルは、たまたまあの場所で鉢合わせしただけかもしれない。そうだ、きっとそうだ。

 そう自分に言い聞かせた。

 でも…

「ロイド様、落ち着いて聞いて下さい。どうやらセイラ様は、ラファエル様に好意を抱いている様なのです。そしてラファエル様もセイラ様の事を。とはいえ、2人は正式に婚約を結んでいる訳ではありませんので、まだロイド様にもチャンスはありますわ」

「ミーア嬢、その話は本当なのかい?本当に2人は、その…」

「ええ、私、セイラ様の口からはっきりとお伺いしましたから。“私はラファエル様に好意を抱いております。王宮に通うのも、ラファエル様に会いたいがためです”と。ラファエル様にも聞いてみましたが、あちらは顔を赤くするばかりで何も話してくれませんでしたが、表情からみて、セイラ様に好意を抱いている事は明白でしょう」

 はっきりと告げるミーア嬢。

 確かにラファエルなら、はっきりと言葉にする事はないだろう。でも、顔を赤くしたという事は。それにセイラ嬢の口から、はっきりとラファエルが好きだと聞いたという事は、そういう事なのだろう。

「教えてくれてありがとう。僕はこれから用事があるから、もう行くよ」

「ロイド様、どうかお気を確かに。辛くなったら、私をいつでも呼んでください。私はロイド様の味方ですから」

 ミーア嬢と別れ、急いで部屋へと向かった。

 ポロポロと溢れ出す涙を、抑える事が出来ない。セイラ嬢は、僕ではなくラファエルが好きだっただなんて…何となくわかっていたけれど、辛くて悲しくてたまらなかった。

 セイラ嬢の気持ちを知ってしまった僕は、彼女とどう接していいか分からなくなってしまった。

 そんな中、僕とセイラ嬢との婚約が決まったのだ。本来なら嬉しくてたまらないはずなのに、僕の心は複雑だ。

 きっとセイラ嬢は、陰で泣いているのだろう。これでラファエルと結ばれる事は無くなったのだから。

 そう思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

 僕は結局、愛する人を間接的に不幸にしてしまった。その罪悪感が、僕の心を支配していった。
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