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第2話:苦しいです
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一気に涙が溢れだす。私ったら、何を泣いているのだろう。いつもの光景じゃない。2人が楽しそうに会っているのなんて。
2人は愛し合っているけれど、私がいるせいで決して結ばれる事はない。そう、私は決してロイド様から愛してもらえることはないのだ。それでも私は、ロイド様を愛している。
2番目でもいい、そう思っていた。でも…
「やっぱり辛いわね。いっその事、婚約を解消して…もらえる訳がないか…私は所詮、政治の道具なのだから」
お父様にとって、私はただの政治の道具なのだ。私がいくら泣いて訴えてもきっと、あしらわれて終わりだ。私はただ、別に好きな人がいる男性を思いながら、一生孤独の中生きていかないといけないのだろう。
それが公爵令嬢として生まれた、私の宿命なのだから…
その時だった。メイドたちの話し声が聞こえてきたのだ。
「セイラ様が泣きながら走って行った姿、私見ちゃったの。そりゃそうよね、婚約者が別の、それも自分よりも美しい女性と密会している姿を見せられたのですもの」
「私も見たわ。ロイド殿下も罪よね。セイラ様が一番好きな場所でもあるバラ園で、恋人と密会するだなんて。それだけロイド殿下は、セイラ様の事を軽視しているという事よね」
「ロイド殿下とミーア様、どうするのかしら?セイラ様がいる限り、2人は結ばれる事はないのよね」
「セイラ様が消えてくれたら、そう願っているのではなくって?セイラ様も辛いわよね。別に好きな令嬢がいる殿方と、結婚しないといけないだなんて」
「私なら耐えられないわ。でも、それだけセイラ様に魅力がないという事だもの。仕方がないわ。あの人、王妃教育も全然進んでいないそうよ。教育係の伯爵夫人が嘆かれていたわ」
「セイラ様はやはり、次期王妃の器ではないのよね。公爵様も、自分の娘を次期王妃にしたいのは分かるけれど、国の事を考えて行動してほしいものよね」
「ロイド殿下は非常に優秀だし、このままセイラ様との結婚は考えてないかもしれないわね。あれだけミーア様を愛していらっしゃるのだから」
メイドたちがかなり盛り上がっている。確かに私より、美しくて聡明なミーア様の方が、私よりずっと次期王妃殿下に向いているだろう。ロイド様だって、ミーア様の方が…
考えれば考えるほど、胸が苦しくなる。ダメだ、これ以上彼女たちの噂話を聞いている訳にはいかない。
そう思い、再び立ち上がり歩き出した。辛い現実を突き付けられ、胸が増々苦しい。
「セイラ嬢、どうされたのですか?顔色が悪いですよ」
声の方を振り向くと、そこにはフォリスト公爵家の次男、ラファエル様の姿が。彼は優秀なラドル様の右腕で、彼自身も非常に優秀な方だ。ロイド様の婚約者でもある私を、たびたび気遣って下さる優しい方。
「ラファエル様、こんにちは。特に体調が悪い訳ではありませんので。お気遣いありがとうございます。それでは私は…」
「お待ちください。やはり顔色があまり宜しくありません。さあ、こちらへ」
私を椅子に座らせてくれたラファエル様が、お茶を手渡してくれた。
「ありがとうございます、ラファエル様は、相変わらずお優しいのですね。せっかくなので、頂きますわ…ゴホゴホゴホ…」
えっ…
「セイラ嬢、大丈夫ですか!何てことだ、すぐに医者を!」
お茶を飲もうとした拍子にせき込んでしまったのだが、手に大量の血が付いている。もしかして私、血を吐いたの?
そんな私の姿を見たラファエル様が、慌てて医者を呼ぶ様に叫んだ。
「ラファエル様、落ち着いて下さい。せき込んだ拍子に、もしかしたら喉が切れて血が出てしまったのかもしれません。何でもないので、気にしないで下さい」
「喉が切れて血だって?これはどう見ても、吐血しているではないか。とにかく医者に」
「きっと最近、色々とあって疲れが出たのでしょう。今日はもう、屋敷に戻り医者に診てもらいますわ。ラファエル様、お気遣いありがとうございます。それでは私はこれで」
すっと立ち上がり、頭を下げた。ただ、体がフラフラしている。
そんな私を抱きかかえたラファエル様。
「私が公爵家まで送りましょう」
「お待ちください、ラファエル様。本当に大丈夫です。歩けますから」
「フラフラの令嬢を、1人で屋敷に帰す訳には行きません。とにかくすぐに公爵家に戻りましょう」
2人は愛し合っているけれど、私がいるせいで決して結ばれる事はない。そう、私は決してロイド様から愛してもらえることはないのだ。それでも私は、ロイド様を愛している。
2番目でもいい、そう思っていた。でも…
「やっぱり辛いわね。いっその事、婚約を解消して…もらえる訳がないか…私は所詮、政治の道具なのだから」
お父様にとって、私はただの政治の道具なのだ。私がいくら泣いて訴えてもきっと、あしらわれて終わりだ。私はただ、別に好きな人がいる男性を思いながら、一生孤独の中生きていかないといけないのだろう。
それが公爵令嬢として生まれた、私の宿命なのだから…
その時だった。メイドたちの話し声が聞こえてきたのだ。
「セイラ様が泣きながら走って行った姿、私見ちゃったの。そりゃそうよね、婚約者が別の、それも自分よりも美しい女性と密会している姿を見せられたのですもの」
「私も見たわ。ロイド殿下も罪よね。セイラ様が一番好きな場所でもあるバラ園で、恋人と密会するだなんて。それだけロイド殿下は、セイラ様の事を軽視しているという事よね」
「ロイド殿下とミーア様、どうするのかしら?セイラ様がいる限り、2人は結ばれる事はないのよね」
「セイラ様が消えてくれたら、そう願っているのではなくって?セイラ様も辛いわよね。別に好きな令嬢がいる殿方と、結婚しないといけないだなんて」
「私なら耐えられないわ。でも、それだけセイラ様に魅力がないという事だもの。仕方がないわ。あの人、王妃教育も全然進んでいないそうよ。教育係の伯爵夫人が嘆かれていたわ」
「セイラ様はやはり、次期王妃の器ではないのよね。公爵様も、自分の娘を次期王妃にしたいのは分かるけれど、国の事を考えて行動してほしいものよね」
「ロイド殿下は非常に優秀だし、このままセイラ様との結婚は考えてないかもしれないわね。あれだけミーア様を愛していらっしゃるのだから」
メイドたちがかなり盛り上がっている。確かに私より、美しくて聡明なミーア様の方が、私よりずっと次期王妃殿下に向いているだろう。ロイド様だって、ミーア様の方が…
考えれば考えるほど、胸が苦しくなる。ダメだ、これ以上彼女たちの噂話を聞いている訳にはいかない。
そう思い、再び立ち上がり歩き出した。辛い現実を突き付けられ、胸が増々苦しい。
「セイラ嬢、どうされたのですか?顔色が悪いですよ」
声の方を振り向くと、そこにはフォリスト公爵家の次男、ラファエル様の姿が。彼は優秀なラドル様の右腕で、彼自身も非常に優秀な方だ。ロイド様の婚約者でもある私を、たびたび気遣って下さる優しい方。
「ラファエル様、こんにちは。特に体調が悪い訳ではありませんので。お気遣いありがとうございます。それでは私は…」
「お待ちください。やはり顔色があまり宜しくありません。さあ、こちらへ」
私を椅子に座らせてくれたラファエル様が、お茶を手渡してくれた。
「ありがとうございます、ラファエル様は、相変わらずお優しいのですね。せっかくなので、頂きますわ…ゴホゴホゴホ…」
えっ…
「セイラ嬢、大丈夫ですか!何てことだ、すぐに医者を!」
お茶を飲もうとした拍子にせき込んでしまったのだが、手に大量の血が付いている。もしかして私、血を吐いたの?
そんな私の姿を見たラファエル様が、慌てて医者を呼ぶ様に叫んだ。
「ラファエル様、落ち着いて下さい。せき込んだ拍子に、もしかしたら喉が切れて血が出てしまったのかもしれません。何でもないので、気にしないで下さい」
「喉が切れて血だって?これはどう見ても、吐血しているではないか。とにかく医者に」
「きっと最近、色々とあって疲れが出たのでしょう。今日はもう、屋敷に戻り医者に診てもらいますわ。ラファエル様、お気遣いありがとうございます。それでは私はこれで」
すっと立ち上がり、頭を下げた。ただ、体がフラフラしている。
そんな私を抱きかかえたラファエル様。
「私が公爵家まで送りましょう」
「お待ちください、ラファエル様。本当に大丈夫です。歩けますから」
「フラフラの令嬢を、1人で屋敷に帰す訳には行きません。とにかくすぐに公爵家に戻りましょう」
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