余命3ヶ月を言われたので静かに余生を送ろうと思ったのですが…大好きな殿下に溺愛されました

Karamimi

文字の大きさ
上 下
1 / 46

第1話:孤独です

しおりを挟む
 “セイラ、あなたは愛する人とではなく、あなたを愛してくれる人と幸せになりなさい。いいわね、分かったわね…”

 ベッドに横たわり、私の頭を撫でながら、何度も呟くお母様。

 “分かりましたわ。私、必ず私の事を愛してくれる人と幸せになります。ですから、どうかお母様も元気になってください”

 必死に訴えるが、にっこり微笑むとそのままお母様は瞼を閉じてしまった。お母様の瞳からは、一筋の涙が…

 次の瞬間、ぱちりと目が覚めた。またあの夢を見たのね…

 10年前、私が5歳の時に病気で亡くなったお母様。最近なぜか、毎日の様にお母様の最期の瞬間の夢を見る。まるで今の私を、お母様が戒めるかのように…

「お嬢様、やっとお目覚めになられましたね。早くご準備を。今日も王宮に向かわれるのでしょう」

 王宮…

 私は3年前、この国の王太子殿下でもある、ロイド様と婚約を結んだ。と言っても、お互い愛し合っている訳でなく、お父様と陛下が勝手に決めた婚約なのだ。とはいえ、私は初めて会った時から、ロイド様の事が大好きだ。

 口数は少ないが、それでも私を気遣って下さっていたロイド様が。

「お嬢様、朝食を召し上がっている時間はありません。馬車の中で軽食を召し上がってください」

 使用人に連れられ、そのまま馬車に乗り込んだ。そして、サンドウィッチを手渡される。1口で食べられる様な、小さなサンドウィッチ。

「ありがとう、でも、なんだか食欲がなくて…」

 最近食欲が全くないのだ。食欲どころから、体もだるい。もしかして私、何らかの病気にかかっているのかしら?最近頭がボーっとするし、胸も苦しい。

 ふとそんな事を考える。そしてそっと窓の外を見た。

 たとえ私が病気にかかったとしても、誰も心配しないか…お父様もロイド様も、私に興味がないのだから…

 お母様が亡くなってから…いいや、物心ついた時から、お父様はあまり屋敷にいなかった。公爵の仕事と、陛下の補佐の仕事が忙しいと執事は言っていたが、お父様は昔から私とお母様に興味がない。

 お父様は私を、政治の道具としか思っていないのだ。最近お父様と話したのは、3年前、ロイド様と婚約した時。あの時以来、全くと言っていいほど話をしていない。

 お母様が亡くなってから、ずっと孤独だった。だからこそ、ロイド様と婚約できた時、嬉しかった。これで私も、愛する人と幸せになれる。この孤独からも、解放されると。

 でも、そううまくはいかなかった。ロイド様は私になど、眼中にないのだから…

「お母様の最期の願い、結局叶えられそうにありませんわ…」

 空を見上げながら、そっと呟いた。

「お嬢様、王宮に着きましたよ。さあ、参りましょう」

 使用人たちと一緒に、今日も王妃教育を受けるため準備された部屋へと向かった。ロイド様の為に、必死に頑張っている王妃教育。ただ、私は要領があまり良くない様で

「セイラ様、そこは昨日教えたところでしょう?いい加減、マスターしてください」

 はぁっと先生にため息をつかれるばかり。先生もきっと、私の出来の悪さを呆れているのだろう。

 なんとか王妃教育が終わり、部屋を出る。今日も大好きな中庭に行こう。そう思い、中庭に向かった。

 私が王宮で唯一心穏やかにいられる場所。それがバラ園なのだ。中庭の奥にある、私の為に作られたバラ園。その場所が、唯一の居場所。

 今日もそこに向かおうとしたのだが…

「どうして私のバラ園に、お2人が?」

 私のバラ園で、楽しそうに話しをしているのは、侯爵令嬢のミーア様と、ロイド様だ。私には笑顔一つ向けないクールなロイド様、でもなぜかミーア様には時折笑顔を向けるのだ。ミーア様とロイド様は、子供の頃から仲が良かったらしく、ロイド様はミーア様と婚約を結びたかったらしい。

 でも、父親でもある陛下から私と婚約する様に強要されたと、王宮のメイドが噂で話をしていたのだ。

 楽しそうに話しをしているロイド様とミーア様を見たら、一気に胸が張り裂けそうになり、クルリと反対側を向くと、そのままその場を走り去った。


 ~あとがき~
 新連載始めました。
 よろしくお願いします。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

契約婚なのだから契約を守るべきでしたわ、旦那様。

よもぎ
恋愛
白い結婚を三年間。その他いくつかの決まり事。アンネリーナはその条件を呑み、三年を過ごした。そうして結婚が終わるその日になって三年振りに会った戸籍上の夫に離縁を切り出されたアンネリーナは言う。追加の慰謝料を頂きます――

幼馴染が夫を奪った後に時間が戻ったので、婚約を破棄します

天宮有
恋愛
バハムス王子の婚約者になった私ルーミエは、様々な問題を魔法で解決していた。 結婚式で起きた問題を解決した際に、私は全ての魔力を失ってしまう。 中断していた結婚式が再開すると「魔力のない者とは関わりたくない」とバハムスが言い出す。 そしてバハムスは、幼馴染のメリタを妻にしていた。 これはメリタの計画で、私からバハムスを奪うことに成功する。 私は城から追い出されると、今まで力になってくれた魔法使いのジトアがやって来る。 ずっと好きだったと告白されて、私のために時間を戻す魔法を編み出したようだ。 ジトアの魔法により時間を戻すことに成功して、私がバハムスの妻になってない時だった。 幼馴染と婚約者の本心を知ったから、私は婚約を破棄します。

【完結済】政略結婚予定の婚約者同士である私たちの間に、愛なんてあるはずがありません!……よね?

鳴宮野々花@書籍2冊発売中
恋愛
「どうせ互いに望まぬ政略結婚だ。結婚までは好きな男のことを自由に想い続けていればいい」「……あらそう。分かったわ」婚約が決まって以来初めて会った王立学園の入学式の日、私グレース・エイヴリー侯爵令嬢の婚約者となったレイモンド・ベイツ公爵令息は軽く笑ってあっさりとそう言った。仲良くやっていきたい気持ちはあったけど、なぜだか私は昔からレイモンドには嫌われていた。  そっちがそのつもりならまぁ仕方ない、と割り切る私。だけど学園生活を過ごすうちに少しずつ二人の関係が変わりはじめ…… ※※ファンタジーなご都合主義の世界観でお送りする学園もののお話です。史実に照らし合わせたりすると「??」となりますので、どうぞ広い心でお読みくださいませ。 ※※大したざまぁはない予定です。気持ちがすれ違ってしまっている二人のラブストーリーです。 ※この作品は小説家になろうにも投稿しています。

身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~

湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。 「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」 夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。 公爵である夫とから啖呵を切られたが。 翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。 地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。 「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。 一度、言った言葉を撤回するのは難しい。 そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。 徐々に距離を詰めていきましょう。 全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。 第二章から口説きまくり。 第四章で完結です。 第五章に番外編を追加しました。

【完結】愛しき冷血宰相へ別れの挨拶を

川上桃園
恋愛
「どうかもう私のことはお忘れください。閣下の幸せを、遠くから見守っております」  とある国で、宰相閣下が結婚するという新聞記事が出た。  これを見た地方官吏のコーデリアは突如、王都へ旅立った。亡き兄の友人であり、年上の想い人でもある「彼」に別れを告げるために。  だが目当ての宰相邸では使用人に追い返されて途方に暮れる。そこに出くわしたのは、彼と結婚するという噂の美しき令嬢の姿だった――。  これは、冷血宰相と呼ばれた彼の結婚を巡る、恋のから騒ぎ。最後はハッピーエンドで終わるめでたしめでたしのお話です。 第22回書き出し祭り参加作品 2025.1.26 女性向けホトラン1位ありがとうございます 2025.2.14 後日談を投稿しました

白い結婚のはずでしたが、王太子の愛人に嘲笑されたので隣国へ逃げたら、そちらの王子に大切にされました

ゆる
恋愛
「王太子妃として、私はただの飾り――それなら、いっそ逃げるわ」 オデット・ド・ブランシュフォール侯爵令嬢は、王太子アルベールの婚約者として育てられた。誰もが羨む立場のはずだったが、彼の心は愛人ミレイユに奪われ、オデットはただの“形式だけの妻”として冷遇される。 「君との結婚はただの義務だ。愛するのはミレイユだけ」 そう嘲笑う王太子と、勝ち誇る愛人。耐え忍ぶことを強いられた日々に、オデットの心は次第に冷え切っていった。だが、ある日――隣国アルヴェールの王子・レオポルドから届いた一通の書簡が、彼女の運命を大きく変える。 「もし君が望むなら、私は君を迎え入れよう」 このまま王太子妃として屈辱に耐え続けるのか。それとも、自らの人生を取り戻すのか。 オデットは決断する。――もう、アルベールの傀儡にはならない。 愛人に嘲笑われた王妃の座などまっぴらごめん! 王宮を飛び出し、隣国で新たな人生を掴み取ったオデットを待っていたのは、誠実な王子の深い愛。 冷遇された令嬢が、理不尽な白い結婚を捨てて“本当の幸せ”を手にする

おさななじみの次期公爵に「あなたを愛するつもりはない」と言われるままにしたら挙動不審です

あなはにす
恋愛
伯爵令嬢セリアは、侯爵に嫁いだ姉にマウントをとられる日々。会えなくなった幼馴染とのあたたかい日々を心に過ごしていた。ある日、婚活のための夜会に参加し、得意のピアノを披露すると、幼馴染と再会し、次の日には公爵の幼馴染に求婚されることに。しかし、幼馴染には「あなたを愛するつもりはない」と言われ、相手の提示するルーティーンをただただこなす日々が始まり……?

お認めください、あなたは彼に選ばれなかったのです

めぐめぐ
恋愛
騎士である夫アルバートは、幼馴染みであり上官であるレナータにいつも呼び出され、妻であるナディアはあまり夫婦の時間がとれていなかった。 さらにレナータは、王命で結婚したナディアとアルバートを可哀想だと言い、自分と夫がどれだけ一緒にいたか、ナディアの知らない小さい頃の彼を知っているかなどを自慢げに話してくる。 しかしナディアは全く気にしていなかった。 何故なら、どれだけアルバートがレナータに呼び出されても、必ず彼はナディアの元に戻ってくるのだから―― 偽物サバサバ女が、ちょっと天然な本物のサバサバ女にやられる話。 ※頭からっぽで ※思いつきで書き始めたので、つたない設定等はご容赦ください。 ※夫婦仲は良いです ※私がイメージするサバ女子です(笑)

処理中です...