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第39話:王都に向かいます
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「マリー、あまり身を乗り出すと危ないよ。さあ、こっちにおいで」
エドワード様に促され、イスに座る。そして、溢れる涙をハンカチで拭いてくれた。私の涙がまだ止まっていないうちに、屋敷に着いてしまった。
「キャンキャン」
嬉しそうに私の元にやって来たのは、ジャミン様だ。今回ジャミン様も一緒に、王都に戻る事になっている。
「ジャミン様、おはようございます。今日から長旅になりますが、一緒に頑張りましょうね」
ジャミン様を抱きかかえながら、そう伝えた。私が泣いていたからか、私の涙を舐めてくれるジャミン様。きっと慰めてくれているのだろう。
「マリーちゃん、ルーマさんとの別れ、辛かったでしょう」
そう言って私を抱きしめてくれたのは、奥様だ。
「ご心配をおかけしてごめんなさい。でも、しっかりお別れをしてきましたので、大丈夫ですわ」
「それじゃあ、そろそろ王都に向かおうか」
立派な馬車が3台も準備されている。ただ、家紋などは付いていないから、誰が乗っているのか分からない様にはなっている。
私は見送りに来てくれた使用人たちの方を向き直した。昨日まで、私の仕事仲間だった人たち。
「皆様、本当にお世話になりました。いつも私に優しく指導してくださり、ありがとうございました。皆様と共に働けたこと、とても幸せに思いますわ」
「私たちもだよ。マリアナちゃんはどこかの貴族ではないかと、薄々感じていたのだけれど、まさか元公爵令嬢だっただなんてね。これから大変な事があるだろうが、マリアナちゃんなら大丈夫だよ。私達はこの屋敷にずっといるから、いつでも遊びにおいで」
「ありがとうございます、皆さま」
使用人の方たちとの挨拶も終わり、馬車へと乗り込んだ。快適に過ごせるように、かなり広めの馬車だ。
「ジャミンは私と乗りましょうね」
そう言って奥様がジャミン様を抱きかかえようとしたのだが…
「キャンキャン」
奥様の腕からスルリと抜けると、そのまま私たちの馬車に乗り込み、クッションの上で丸くなった。
「ジャミン、君は母上の馬車だよ。君が快適に過ごせるよう、あっちの馬車には色々と設備も整っているのだよ」
そうエドワード様が伝えたのだが、全く動こうとしない。
「ジャミンはマリーちゃんが大好きだから、マリーちゃんと乗りたいのよ。マリーちゃん、ジャミンをお願いしていいかしら?」
「ええ、もちろんですわ。では、馬車を交換しましょう」
クッションに座っているジャミン様を抱き上げ、隣の馬車へと移動した。隣の馬車は座るスペースが狭い分、ジャミン様のベッドやおもちゃ、さらに少し走れるスペースも完備されている。
なるほど、1人で馬車に乗る奥様なら十分座れるが、このイスに2人で座るのは少し窮屈ね。エドワード様も同じ事を思ったのか
「ジャミンのせいで、僕たちが窮屈な思いをしないといけないじゃないか!」
と怒っていたが、本人は知らん顔をして、私の膝の上で丸くなっていた。
「いいではありませんか。ジャミン様にとっても、長旅は負担が大きいのです。ジャミン様優先で行きましょう」
そう伝えた。
そしていよいよ、馬車が王都に向け出発した。王都まで馬車で大体6日程度、汽車などを乗り継いでいくよりも、少しだけ早く王都に着けるのだ。
何度も休憩を挟みながら王都へと向かう。ジャミン様が少しでもストレスがたまらない様に、定期的に自然豊かな場所でジャミン様に運動をさせながら進む。行きはほとんどが夜行汽車の中で過ごしたが、今回はホテルだ。
ちなみにホテルでは、私とジャミン様が同じ部屋になった。
「本当は僕がマリーと同じ部屋が良かったのに、婚約を結んでいない男女が同じ部屋で寝るのは良くないというから泣く泣く諦めたのに。どうしてジャミンがマリーと一緒の部屋なんだ!」
そう言って怒っていたが、知らんぷりをして私の部屋に入って来るジャミン様。ちなみに、ジャミン様は雄らしい。
その日はジャミン様を抱きしめながら、ゆっくり眠った。
翌日も同じ様に移動しながら進んだ。今日もジャミン様の柔らかくて温かい感触を楽しみながら眠ろうと思ったのだが…
「ジャミンは今日からいつも通り僕の部屋で寝るんだ!」
そう言ってジャミン様を連れて行ってしまったエドワード様。ジャミン様は必死に抵抗していたが、連れ去られてしまった。やっぱりエドワード様も、ジャミン様のあの柔らかくて温かな感触を手放したくないのね…そう思って、諦めた。
そんな日々を送っているうちに気が付くと6日目に入っていた。
「マリー、王都の街だ、懐かしいな。でも、随分と変わってしまったのだね」
懐かしそうに王都の街を眺めるエドワード様。正直言って、私はこの街にいい思いではないが、エドワード様の嬉しそうな顔を見たら、なんだか私も嬉しくなってきた。
エドワード様に促され、イスに座る。そして、溢れる涙をハンカチで拭いてくれた。私の涙がまだ止まっていないうちに、屋敷に着いてしまった。
「キャンキャン」
嬉しそうに私の元にやって来たのは、ジャミン様だ。今回ジャミン様も一緒に、王都に戻る事になっている。
「ジャミン様、おはようございます。今日から長旅になりますが、一緒に頑張りましょうね」
ジャミン様を抱きかかえながら、そう伝えた。私が泣いていたからか、私の涙を舐めてくれるジャミン様。きっと慰めてくれているのだろう。
「マリーちゃん、ルーマさんとの別れ、辛かったでしょう」
そう言って私を抱きしめてくれたのは、奥様だ。
「ご心配をおかけしてごめんなさい。でも、しっかりお別れをしてきましたので、大丈夫ですわ」
「それじゃあ、そろそろ王都に向かおうか」
立派な馬車が3台も準備されている。ただ、家紋などは付いていないから、誰が乗っているのか分からない様にはなっている。
私は見送りに来てくれた使用人たちの方を向き直した。昨日まで、私の仕事仲間だった人たち。
「皆様、本当にお世話になりました。いつも私に優しく指導してくださり、ありがとうございました。皆様と共に働けたこと、とても幸せに思いますわ」
「私たちもだよ。マリアナちゃんはどこかの貴族ではないかと、薄々感じていたのだけれど、まさか元公爵令嬢だっただなんてね。これから大変な事があるだろうが、マリアナちゃんなら大丈夫だよ。私達はこの屋敷にずっといるから、いつでも遊びにおいで」
「ありがとうございます、皆さま」
使用人の方たちとの挨拶も終わり、馬車へと乗り込んだ。快適に過ごせるように、かなり広めの馬車だ。
「ジャミンは私と乗りましょうね」
そう言って奥様がジャミン様を抱きかかえようとしたのだが…
「キャンキャン」
奥様の腕からスルリと抜けると、そのまま私たちの馬車に乗り込み、クッションの上で丸くなった。
「ジャミン、君は母上の馬車だよ。君が快適に過ごせるよう、あっちの馬車には色々と設備も整っているのだよ」
そうエドワード様が伝えたのだが、全く動こうとしない。
「ジャミンはマリーちゃんが大好きだから、マリーちゃんと乗りたいのよ。マリーちゃん、ジャミンをお願いしていいかしら?」
「ええ、もちろんですわ。では、馬車を交換しましょう」
クッションに座っているジャミン様を抱き上げ、隣の馬車へと移動した。隣の馬車は座るスペースが狭い分、ジャミン様のベッドやおもちゃ、さらに少し走れるスペースも完備されている。
なるほど、1人で馬車に乗る奥様なら十分座れるが、このイスに2人で座るのは少し窮屈ね。エドワード様も同じ事を思ったのか
「ジャミンのせいで、僕たちが窮屈な思いをしないといけないじゃないか!」
と怒っていたが、本人は知らん顔をして、私の膝の上で丸くなっていた。
「いいではありませんか。ジャミン様にとっても、長旅は負担が大きいのです。ジャミン様優先で行きましょう」
そう伝えた。
そしていよいよ、馬車が王都に向け出発した。王都まで馬車で大体6日程度、汽車などを乗り継いでいくよりも、少しだけ早く王都に着けるのだ。
何度も休憩を挟みながら王都へと向かう。ジャミン様が少しでもストレスがたまらない様に、定期的に自然豊かな場所でジャミン様に運動をさせながら進む。行きはほとんどが夜行汽車の中で過ごしたが、今回はホテルだ。
ちなみにホテルでは、私とジャミン様が同じ部屋になった。
「本当は僕がマリーと同じ部屋が良かったのに、婚約を結んでいない男女が同じ部屋で寝るのは良くないというから泣く泣く諦めたのに。どうしてジャミンがマリーと一緒の部屋なんだ!」
そう言って怒っていたが、知らんぷりをして私の部屋に入って来るジャミン様。ちなみに、ジャミン様は雄らしい。
その日はジャミン様を抱きしめながら、ゆっくり眠った。
翌日も同じ様に移動しながら進んだ。今日もジャミン様の柔らかくて温かい感触を楽しみながら眠ろうと思ったのだが…
「ジャミンは今日からいつも通り僕の部屋で寝るんだ!」
そう言ってジャミン様を連れて行ってしまったエドワード様。ジャミン様は必死に抵抗していたが、連れ去られてしまった。やっぱりエドワード様も、ジャミン様のあの柔らかくて温かな感触を手放したくないのね…そう思って、諦めた。
そんな日々を送っているうちに気が付くと6日目に入っていた。
「マリー、王都の街だ、懐かしいな。でも、随分と変わってしまったのだね」
懐かしそうに王都の街を眺めるエドワード様。正直言って、私はこの街にいい思いではないが、エドワード様の嬉しそうな顔を見たら、なんだか私も嬉しくなってきた。
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