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第31話:なぜそうなった?
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「エドワード様、この鍵穴は!」
「もしかしたらこの箱の中に、何かが隠されているのかもしれないね。マリー、鍵のありかなどを、夫人から何か聞いていないかい?」
鍵のありかか…
正直お母様が亡くなった事がショックすぎて、お母様が亡くなる前後の記憶はあまり残っていないのだ。それでも必死に思い出してみる。でも…
「申し訳ございません、心当たりがありませんわ。思い返してみれば、私は母が亡くなったショックで、あの頃の記憶がすっぽりと抜け落ちておりまして…ただ、父が頑なに母の亡骸に会わせてくれなかった事だけは覚えておりますが…」
私の唯一の味方だったお母様。そんなお母様が亡くなってから、私の地獄が始まったのだ。その地獄を生き抜くためだったのか、私はいつの間にかお母様との記憶を封印する様になっていた。もしかするとその心理が、エドワード様や奥様の事も忘れてしまっていた原因なのかもしれない。
だとすると、あの地獄から解放された今、何か思い出すかもしれない。そんな思いから、必死にお母様が亡くなる寸前の事を思い出す。
う~ん、確かにお母様に何か大切な事を言われたような気がするわ…でも…
「マリー、そんなに必死に思い出さなくても大丈夫だよ。とにかくこのオルゴールの箱に何か大切な物が入っているかもしれない。鍵師に開けられるか依頼してみよう」
「ありがとうございます、エドワード様。母が亡くなる少し前に、大切な事を言っていた気がするのですが…どうしても思い出せなくて…」
「いいんだよ。マリーにとって夫人の死は、それほどまでにショックな出来事だったのだろう。無理に思い出す必要は無い。さあ、今日は色々あって疲れただろう。ゆっくりお休み。僕はもう帰るから」
エドワード様が家から出ようとした時だった。ドアがノックされる音が聞こえたと思ったら、扉からルーマさんが顔を出した。
「マリアナちゃん、帰っているのかい?今日は随分…あら?あなた様は、お屋敷のお坊ちゃん」
エドワード様の姿を見て驚いて固まっているルーマさん。
「今日はちょっと用事があって少し早めに帰って来ましたの。エドワード様、彼女が私がお世話になっているルーマさんです。私の事を、本当の娘の様に大切にしてくれている方ですわ」
「あなたがルーマさんですか!マリーがいつもお世話になっています。本当にありがとうございます」
そう言うと、ルーマさんに深々と頭を下げるエドワード様。
「あの、エドワード様…」
「お坊ちゃん、頭を上げて下さい。こちらこそ、マリアナちゃんと仲良くしてくれてありがとうございます。この子、本当に本当に今まで苦労してきた様で…だから、どうかマリアナちゃんの事、幸せにしてあげて下さい。もし泣かせたら、いくらお坊ちゃんでも、私が許しませんからね!」
「もちろんです。マリーには今まで辛い思いをさせてしまった分、これからは全力で彼女を幸せにしていくつもりです。ですから、安心してください」
ちょっと、ルーマさんもエドワード様も、一体何を言っているの?それじゃあまるで、私がエドワード様に嫁ぐみたいじゃない!なんだか恥ずかしくなってきて、1人俯いてしまう。
「マリアナちゃん、素敵な男性でよかったね。それで、いつ結婚をするのだい?」
「ちょっと、ルーマさん。どうして私とエドワード様が結婚なんて言う話が…」
「あら?違うのかい?メイド長が、2人は本当に仲睦まじくて、使用人一同見守っていると言っていたから、私はてっきり…それに、家にも入れているみたいだし…」
「あの…これには…」
「僕はいずれ、マリーと結婚したいと考えているのです。実はマリーとは、子供の頃に会っていて、その時に結婚の約束もしておりました。マリーはよく“大きくなったら僕のお嫁さんになりたい”って、言っていたもんね」
そう言うと、エドワード様が嬉しそうに微笑んだ。
「そんな昔の事…」
「まあ、お坊ちゃんとマリアナちゃんは、昔からの知り合いだったのですか?それなら話しは早いですわね。マリアナちゃん、結婚を約束していた男性が現れてよかったわね。もしかして、彼を追ってこの地に来たのかい?」
なぜか嬉しそうにそんな事を聞いてくるルーマさん。
「私は本当に何も知らずにこの地に来ました。本当にたまたまなのです」
「たまたまだなんて!まさに運命だね。マリアナちゃん、よかったわね。辛い思いをした分、幸せになるんだよ」
そう言うと、私の肩を叩くルーマさん。
なぜそう言う話になったのだろう…
ただ、大好きな2人が嬉しそうに私の事を話している姿を見たら、心が温かいもので包まれていくのを感じた。本当はこの地で、ルーマさんやその家族、メイド長や使用人たち、それに奥様、そして大好きなエドワード様とずっと一緒に暮らせたら…そんな思いもある。
でも…
それはきっと、叶わないだろう…
だからこそ、今だけは、大好きな人たちの笑顔を見ていたい。
2人が話す姿を見つめながら、そう思ったのだった。
「もしかしたらこの箱の中に、何かが隠されているのかもしれないね。マリー、鍵のありかなどを、夫人から何か聞いていないかい?」
鍵のありかか…
正直お母様が亡くなった事がショックすぎて、お母様が亡くなる前後の記憶はあまり残っていないのだ。それでも必死に思い出してみる。でも…
「申し訳ございません、心当たりがありませんわ。思い返してみれば、私は母が亡くなったショックで、あの頃の記憶がすっぽりと抜け落ちておりまして…ただ、父が頑なに母の亡骸に会わせてくれなかった事だけは覚えておりますが…」
私の唯一の味方だったお母様。そんなお母様が亡くなってから、私の地獄が始まったのだ。その地獄を生き抜くためだったのか、私はいつの間にかお母様との記憶を封印する様になっていた。もしかするとその心理が、エドワード様や奥様の事も忘れてしまっていた原因なのかもしれない。
だとすると、あの地獄から解放された今、何か思い出すかもしれない。そんな思いから、必死にお母様が亡くなる寸前の事を思い出す。
う~ん、確かにお母様に何か大切な事を言われたような気がするわ…でも…
「マリー、そんなに必死に思い出さなくても大丈夫だよ。とにかくこのオルゴールの箱に何か大切な物が入っているかもしれない。鍵師に開けられるか依頼してみよう」
「ありがとうございます、エドワード様。母が亡くなる少し前に、大切な事を言っていた気がするのですが…どうしても思い出せなくて…」
「いいんだよ。マリーにとって夫人の死は、それほどまでにショックな出来事だったのだろう。無理に思い出す必要は無い。さあ、今日は色々あって疲れただろう。ゆっくりお休み。僕はもう帰るから」
エドワード様が家から出ようとした時だった。ドアがノックされる音が聞こえたと思ったら、扉からルーマさんが顔を出した。
「マリアナちゃん、帰っているのかい?今日は随分…あら?あなた様は、お屋敷のお坊ちゃん」
エドワード様の姿を見て驚いて固まっているルーマさん。
「今日はちょっと用事があって少し早めに帰って来ましたの。エドワード様、彼女が私がお世話になっているルーマさんです。私の事を、本当の娘の様に大切にしてくれている方ですわ」
「あなたがルーマさんですか!マリーがいつもお世話になっています。本当にありがとうございます」
そう言うと、ルーマさんに深々と頭を下げるエドワード様。
「あの、エドワード様…」
「お坊ちゃん、頭を上げて下さい。こちらこそ、マリアナちゃんと仲良くしてくれてありがとうございます。この子、本当に本当に今まで苦労してきた様で…だから、どうかマリアナちゃんの事、幸せにしてあげて下さい。もし泣かせたら、いくらお坊ちゃんでも、私が許しませんからね!」
「もちろんです。マリーには今まで辛い思いをさせてしまった分、これからは全力で彼女を幸せにしていくつもりです。ですから、安心してください」
ちょっと、ルーマさんもエドワード様も、一体何を言っているの?それじゃあまるで、私がエドワード様に嫁ぐみたいじゃない!なんだか恥ずかしくなってきて、1人俯いてしまう。
「マリアナちゃん、素敵な男性でよかったね。それで、いつ結婚をするのだい?」
「ちょっと、ルーマさん。どうして私とエドワード様が結婚なんて言う話が…」
「あら?違うのかい?メイド長が、2人は本当に仲睦まじくて、使用人一同見守っていると言っていたから、私はてっきり…それに、家にも入れているみたいだし…」
「あの…これには…」
「僕はいずれ、マリーと結婚したいと考えているのです。実はマリーとは、子供の頃に会っていて、その時に結婚の約束もしておりました。マリーはよく“大きくなったら僕のお嫁さんになりたい”って、言っていたもんね」
そう言うと、エドワード様が嬉しそうに微笑んだ。
「そんな昔の事…」
「まあ、お坊ちゃんとマリアナちゃんは、昔からの知り合いだったのですか?それなら話しは早いですわね。マリアナちゃん、結婚を約束していた男性が現れてよかったわね。もしかして、彼を追ってこの地に来たのかい?」
なぜか嬉しそうにそんな事を聞いてくるルーマさん。
「私は本当に何も知らずにこの地に来ました。本当にたまたまなのです」
「たまたまだなんて!まさに運命だね。マリアナちゃん、よかったわね。辛い思いをした分、幸せになるんだよ」
そう言うと、私の肩を叩くルーマさん。
なぜそう言う話になったのだろう…
ただ、大好きな2人が嬉しそうに私の事を話している姿を見たら、心が温かいもので包まれていくのを感じた。本当はこの地で、ルーマさんやその家族、メイド長や使用人たち、それに奥様、そして大好きなエドワード様とずっと一緒に暮らせたら…そんな思いもある。
でも…
それはきっと、叶わないだろう…
だからこそ、今だけは、大好きな人たちの笑顔を見ていたい。
2人が話す姿を見つめながら、そう思ったのだった。
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