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第34話:準備は念入りに~レオナルド視点~

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陛下から許可が下りた事もあり、僕は毎日オリビアに会いに行った。もちろん、丘の上ではなく、王宮の一室で会う事が多い。

オリビアは本当に表情豊かでよく笑う。この笑顔を見ると、僕まで笑顔になると同時に、その笑顔を僕以外に見せたくないと言う感情が溢れ出す。

オリビアが僕に笑いかけてくれるだけで、僕はとても幸せなんだ。そんなオリビアが可愛くて、つい抱きしめてしまう。そんな中、オリビアに弟が生まれた。オリビアは弟にメロメロの様で、よくシャルルの話をする。

それがどうしても面白くない僕は、シャルルを可愛がり、僕に懐かせた。オリビアは頬を膨らませ怒っていたが、たとえ実の弟でも、オリビアを取られたくなかったのだ。

そして月日は流れ、僕たちは14歳になった。

元々可愛らしい顔をしていたオリビアは、すっかり美しい令嬢になった。さらに出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいる。そういえば母上が言っていたが、オリビアの母親も若い頃から非常に美しく、かなりの令息から求婚されていたらしい。そんな中、他の令息たちを蹴落としものにしたのが、今の国王だったらしい。

あの男、オリビアの母親の父でもある、ヴァーズ元侯爵を味方につけ、まんまとオリビアの母親を手に入れたらしい。結局色々とあり、オリビアの母親は国王の元を去ってしまったらしいが…て、話しはそれてしまった。

神的に美しいオリビアを他の令息たちが見たら、きっと惚れるだろう。もしかしたら、オリビアを他の令息に取られるかもしれない。そんな思いから、国王をうまく誘導し、未だに王宮の外から出さないようにしている。

ただ…
問題は目の前まで迫った貴族学院入学だ。この国では14歳になると、貴族と王族は貴族学院というところで、2年間勉強をしないといけないルールがある。僕は何が何でも美しいオリビアを、令息どもが溢れかえる学院なんかに行かせたくない。そんな思いから国王に

「陛下、貴族学院は危険です。純粋なオリビアを騙す人間が沢山いるのですよ。どうか、オリビアの入学を阻止してください」

そう訴えたのだ。国王も納得してくれたのだが…
どうやら王妃様や家臣たちに説得された様で、オリビアの学院入学が正式に決まってしまったのだ。

国王め、いざという時に役に立たないのだから!
とにかくオリビアは人懐っこくて、美しい。きっと貴族学院に入学したら、あっという間に人気者になるだろう。それに、オリビアに近づく輩も増えるだろう。

オリビアは僕だけのものだ!何とかしないと!

そして入学まで2ヶ月に迫ったある日。

「レオナルド様、私、2ヶ月後から貴族学院というところに行くのよ。お母様の話では、とても素敵な場所なのですって。あぁ、今から楽しみだわ」

嬉しそうに貴族学院の話をしている。どうやらオリビアに貴族学院の話をした様だ。目を輝やかせて話をするオリビア。そりゃそうだろう、5年もの間、ずっと王宮に閉じ込められてきたのだ。喜ぶなという方が無理だろう。

でも僕は!
とにかく僕は、オリビアがいかに世間知らずで、オリビアの行動1つで両親の評価も下がってしまう事を、何度も何度も言い聞かせた。そうする事で家族思いのオリビアは、貴族学院でも慎重に行動すると思ったのだ。

さらに、僕以外の人間に抱き付いたり口づけしたり、手を握ったりしてはいけないという事も言い聞かせた。もちろん、男どもには極力話したり笑顔を向けてはいけないとも教えた。

まだ婚約者のいないオリビアに、男たちが群がるのを避けるためだ。実際オリビアの母は、かなりの令息たちから婚約申込書が来たらしい。

まあ、あの国王の事だから、オリビアに婚約申込書が来たところで、破り捨てるだろうが…問題はオリビアの母親だ。ここにきて、随分と自分の意見を言う様になってきた。元々オリビアの母親は、自分の意見をはっきり言うタイプの人間だと母上から聞いている。

そうでなければ、わざわざ1人で国を出たりはしないだろう。だたオリビアの母親は、僕とオリビアを結婚させたいみたいだから、他の令息からの婚約申込書が来ても、よほどの事がない限りは問題ないだろう。

とにかく、オリビアは僕のものだという事を、貴族学院中に知らしめないと!そういえば、国王は王妃様に居場所の特定や盗聴機能が付いたアクセサリーを付けさせていると聞いた。

早速僕も、オリビアに贈ろう。そうだ、せっかくなら指輪がいい。オリビアのいたエレフセリア王国では、婚約者や結婚相手に指輪を贈る習慣があると本で読んだ。早速指輪を作らせ、そこに居場所を特定できる機能なども合わせて付けないと。


すぐに執事に依頼した。でも…

「お坊ちゃま…さすがにそれは…」

「どうしていけないんだ?陛下も同じことをしているではないか?」

「陛下と王妃殿下は夫婦でございます。でも、坊ちゃまとオリビア殿下は、まだただのお友達でしょう?とにかく、そのような事は出来ません!」

そう言うと、去って行った。クソ、執事め!

仕方ない、指輪だけでも準備しよう。そう思っていたのだが…その日の夜、父上が僕の部屋を訪ねて来た。

「レオナルド、執事に居場所特定と盗聴機能が付いた指輪を作らせようとしているらしいね。それをオリビア殿下に贈るつもりかい?」

執事め、父上に報告したのか!おしゃべりな奴だ。

「はい、でも執事に断られてしまったので、とりあえず指輪だけ贈ろうかと思っております」

だから僕に文句を言うのは止めてくれ!そんな思いで伝えたのだが…

「はぁ~、レオナルドは本当にオーフェンにそっくりだ。その機械、私が何とかしてやろう」

「それは本当ですか?父上」

「ああ、レオナルドには散々寂しい思いをさせたからね。君がオリビア殿下に執着する様になったのは、もしかしたら幼少期に寂しい思いをさせてしまったのも原因かもしれない。その点に関しては、オーフェンもレオナルドに申し訳なく思っている様だし…」

「父上、ありがとうございます!」

まさか父上が準備してくれるだなんて!

その後母上も交えて、指輪のデザインを考えた。ちなみに父上から国王に、オリビアにそういった指輪を贈る事を了承してもらったそうだ。

最初は物凄く怒っていた国王だったが“お前だって似たような事をしていただろう。そもそも私がレオナルドの傍にずっといてあげていたら、こんな執着心の強い子にはならなかったかもしれないんだぞ!”と、強く言ったら、引き下がったらしい。

ただし、録音機能に関しては、いつでも聞けるわけではなく、埋め込んである石を回収し、機械にセットしないと聞けない様にしてあるらしい。さらに、指輪の居場所特定機能は、国王と共有する事になった。

本当は僕だけがチェックしたいのだが、致し方ない。

こうして僕は、入学の準備を着々と進めたのであった。
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