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第10話:おじい様もおばあ様もいい人です

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お母様とおじい様、おばあ様の感動の再開を見守っていると…

「あなたがオリビアちゃんね。なんて可愛らしいのかしら?オーフェンによく似ているわ」

おばあ様が私に気が付くと、こちらにやってきた。さらにおじい様も

「銀色の髪に赤い瞳。私と同じだな。どれ、抱っこしてやろう」

そう言って私を抱っこしようとしたのだが…

「おっとっと…」

「父上、オリビアはもう9歳なのですよ。さすがに父上には抱っこは厳しいですよ。歳を考えて下さい」

私を抱っこしようとしたおじい様が、転びそうになっていた。すかさずおじい様から私を奪い取るお父様。確かに私はもう9歳だ。本来なら抱っこされる年齢ではない。でも、なぜかお父様は私を軽々と抱き上げるから、つい抱っこされてしまう。

「可愛らしいから、私にも抱っこできると思ったのだが。いやぁ、歳には勝てないな。オリビア、怖い思いをさせてしまって悪かったね」

そう言って笑っているおじい様。

「もう、あなたったら。それにしても、本当に可愛らしい子だわ。こうもオーフェンに似ていると、なんだか初対面に感じられないわね。オリビアちゃん、私があなたのおばあ様よ。仲良くしましょうね。そうだわ、せっかくだから、お話をしましょう。すぐにお茶の準備を」

おばあ様が近くにいたメイドに指示を出している。

「母上、もう晩御飯の時間です。せっかくなので、今日は5人で食べましょう。さあ、食堂へ」

すかさずお父様が食堂へと案内した。そして5人で食事をする。いつもは1人かお父様と2人で食べているが、今日はお母様もいる。それにおじい様やおばあ様も。そういえば、エレフセリア王国にいるときは、お母様と2人だった。こんなに大勢で食べるのは、お誕生日パーティー以来ね。

それにおじい様もおばあ様もとても気さくで、私の話を嬉しそうに聞いてくれた。それが嬉しくて、私も色々と話をしてしまう。

結局この日は、2時間以上も楽しくお話をして過ごしたのだった。

翌日、またお母様が姿を現さなくなってしまった。それでもおばあ様やおじい様がいるため、食事は比較的賑やかだ。ただ…やっぱり私は、お母様が恋しいわ。

そんな日々が数日続いたある日。

午前中のお勉強を終え、1人中庭を散歩する。今日はいい天気だし、中庭で本でも読もうと思ったのだ。すると

「オリビアちゃん、ここにいたのね。一緒にお茶でもしましょう」

私の元にやって来たのは、おばあ様だ。嬉しそうに私の方にやって来た。

「オリビアちゃんは、もうこの国での生活にもすっかり慣れた様ね。それでも、エレフセリア王国が恋しくなることもあるでしょう。何か困っている事はない?おばあ様に出来る事があれば、何でも言ってちょうだい」

お優しいおばあ様。どうしよう…お母様の事を言おうかしら?でも、おばあ様に心配を掛けたくはないし。

「オリビアちゃんは、本当に優秀で、教えた事をすぐに覚えてしまうと、家庭教師に聞いたわ。それに礼儀も正しい様だし。ねえ、オリビアちゃん、どうしてそんなにも悲しそうな顔をしているの?やっぱり何か無理をしているのではなくって?私はね、あなたが悲しそうな顔をしていると、胸が締め付けられる様に苦しいの。どんな些細な事でもいいから、おばあ様に話してくれないかしら?」

優しい眼差しで私を見つめるおばあ様。そんなおばあ様を見ていたら、今まで抑えていた感情が溢れ出した。

「この国に来てから、お母様がなぜか私にあまり会ってくれなくて…私、今までずっとお母様と一緒にいたから、寂しくてたまらないのです。もちろん、お父様やおじい様、おばあ様、メイドたち、たくさんのかけがえのない人たちが出来ました。でも…私にとってお母様は、今までずっと傍にいてくれた、大切な人なのです。そんなお母様と、中々会えなくて、それで寂しくてたまらなくて…もしかしたらお母様は、私の事を嫌いになってしまったのかと思ったりもして…私…」

ポロポロと溢れる涙を抑える事が出来ずに、声をあげて泣いた。そんな私を、優しく包み込む様に抱きしめてくれるおばあ様。

「可哀そうに。急に異国に連れてこられたと思ったら、母親からも引き離されて…オーフェンがきっとシャリーちゃんを閉じ込めているのね…本当に嫉妬深くて嫌になるわ、一体誰に似たのかしら?」

「お父様がお母様を閉じ込めている?」

一体どういう事かしら?

「ごめんなさい、何でもないのよ。きっとあなたのお母様は、今まで必死にあなたを育ててきたでしょう。そんな中、自分の生まれ育った国に帰って来て、ホッとしたのね。それで、体調を崩してしまったのよ。でも大丈夫、しばらくすれば元気になるわ。それにオリビアちゃんは、こんなにも可愛いのですもの。こんな可愛らしい子、誰が嫌いになるものですか」

「本当に?お母様は私の事、嫌いじゃないのですか?」

「ええ、もちろんよ。私たちに会った時のシャリーちゃん、オリビアちゃんの事、本当に愛おしそうに見つめていたもの。早く元気になって、オリビアちゃんとずっと一緒にいたいと思っていると思うわ」

私の頭を撫でながら、優しく語り掛けてくれるおばあ様。その優しい眼差しを見ていたら、なんだかそんな気がして来た。

「ありがとうございます、おばあ様。なんだか気持ちが軽くなりましたわ」

「そう、それは良かったわ。それじゃあおばあ様と一緒に、お茶を飲みましょう。お菓子もあるわよ。オリビアちゃんのお話、もっと色々と聞かせてくれる?」

「はい、もちろんですわ」

その後なぜかおじい様も加わり、3人で楽しい時間を過ごした。さらに2人は、私が極力寂しくないようにと、滞在中はずっと傍にいてくれた。

そのお陰で、お母様に会えない寂しさを、少しだけ紛らわせることが出来た。優しいおじい様やおばあ様が、私は大好きになった。

ただ、そんな2人も、2週間くらい滞在したら帰って行った。それでも、またすぐに遊びに来てくれると約束してくれた。

今度は私が、おじい様とおばあ様に会いに行けたらいいな。
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