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第25話:船に乗って帰ります
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次に目を覚ました時には、既にリアム様が帰ってきていた。
「レティシア、やっと目が覚めたんだね。もう夜だよ」
そう言うと、ギューッと私を抱きしめる。そういえば私、薬を飲まされて眠っていたのよね。
「リアム様、あの薬は…」
「ああ、ただの睡眠薬だよ。でもあまり頻繁に使うと、薬なしでは眠れなくなってしまうからね。今回だけ特別に使ったんだよ。他国で逃げ出されたら大変だからね。ねえレティシア、今日はこのままずっとベッドの中で過ごそう。パンドラ王国に帰ったらきっと、こんなにゆっくりできないからね。食事もベッドで食べよう。たまにはこういう生活もいいだろう?」
そう言うとベットから抜け出し、外に待機している執事と話をし始めたリアム様。なんだかまだ頭がぼーっとするわ。暗くなった外の様子を窓から見ていると、リアム様が戻ってきた。
「なんだか元気がないみたいだけれど、どうしたんだい?そうだ、いいものを見せてあげる。僕の宝物をね」
何かを思い出したかのように、急にカバンの中をあさりだしたリアム様。そして私にあるものを渡してきた。
「これは、ミミちゃん…まだ持っていてくださったのですか?」
私が5歳の時にリアム様にあげたミミちゃんだ。まさかまだ持っていてくれたなんて…
「当たり前だろう?これはレティシアと初めて会った時に貰った、僕の宝物なのだから。あの日僕は、レティシアに恋をした。あの日からずっと君だけを好きでいたんだ」
そう言うと、リアム様は少し恥ずかしそうに笑った。そうか、あの頃からずっと愛されていたのね。でも婚約を申し込んだのは家からよね。一体どういうことなのかしら?
「リアム様の言う事が本当なら、どうしてリアム様から婚約を申し込んでくださらなかったのですか?」
「あの頃君の実家は、ものすごく権力を持っていたからね。きっと申し込んだところで、断られると思ったんだ。しつこくして公爵を怒らさせでもしたら、君とは二度と婚約できないと思ったし。まあ、僕に勇気がなかっただけなんだけれどね…」
少し恥ずかしそうに笑ったリアム様。確かにお父様なら、リアム様の申し出を断りそうね…
でも、リアム様がそんな昔から私を好きでいてくれていたなんて嬉しいわ。それにミミちゃんもこんなに大事にしてくれていたなんて。急にリアム様がいとおしくなって、ギューッと抱きしめた。
「リアム様、私をずっと愛してくれて、ありがとうございます。私もリアム様に助けてもらった7歳の時からずっとリアム様が大好きです。もう二度と離れたりはしませんわ!」
「ありがとう、レティシア。でも、一度逃げている君から言われても、100%信用は出来ないな。とにかくしばらくは、僕のいう事を聞いてもらうからね。いいかい?」
「…わかりましたわ」
リアム様の目の色が途中で変わった事に気が付いたため、ここは大人しく返事をしておくことにした。リアム様は急にスイッチが入ったかのように、苛立ちを露わにすることがあるため、注意が必要なのだ。
その後2人で食事をし、湯あみをすると再びベッドに戻って愛し合ったのであった。
翌日
「レティシア、今日乗る船はあれだよ」
港にはパンドラ王国の船が待機していた。さすが王族でもあるリアム様。わざわざ王宮の船を準備した様だ。
「早速船に乗ろう」
リアム様に連れられ、船に乗り込もうとした時だった。
「リアム殿下!!」
声の方を振り向くと、そこには1人の男性が立っていた。彼は誰かしら?ふとリアム様の方を見ると、明らかに嫌そうな顔をしている。
「ディカルド殿下、こんな場所まで一体どうされたのですか?」
ディカルド殿下ですって。確かアモーレ王国の王太子殿下の名前がディカルド様だった気がする。という事は、この人がアモーレ王国の王太子殿下なのね。
「今日帰国すると聞いたから、見送りに来たんだよ。彼女がレティシア嬢だね。君が隠したがる理由がわかったよ。とても美しい女性だ。それにしても、本当にピンクの髪をしているんだね。初めて見たよ」
上から下までジロジロと私を見るディカルド殿下。女性を凝視するなんて、失礼な人ね。でも、一応挨拶をしておかないと。
「ディカルド殿下、お初にお目にかかります。レティシアと申します。私の為に動いて下さり、ありがとうございました」
王妃教育で培った渾身のカテシーを決めると、そのままリアム様の背中に隠れた。ちょっと感じが悪かったかもしれないが、どうしてもあのいやらしい視線が耐えられなかったのだ。
「ディカルド殿下、なめます様ないやらしい視線で、レティシアを見るのはやめて下さい。レティシアも嫌がっています。それでは私たちはこれで。さあ、レティシア、おいで」
なぜか嬉しそうな顔のリアム様に連れられ、そのまま船へと乗り込んだ。
「レティシア、嫌な思いをさせてごめんね。なぜかあの男、物凄くレティシアの事が気になっていたようでね。絶対に会わせないようにしていたのだが、まさか港に来るなんて。でも、僕の後ろに隠れて偉かったよ。これからも、ああやって対応するのだよ」
どうやら私がリアム様の後ろに隠れたのがよかったらしく、物凄く上機嫌だ。とにかく、リアム様が喜んでくれたのならよかったわ。
その後はデッキからアモーレ王国を見つめる。半年間、お世話になったアモーレ王国。本当にこの国の人は親切だった。
リリアンさん、それに村の皆、さようなら。そしてありがとうございました。
どんどん小さくなっていくアモーレ王国を見つめながら、心の中でそっと呟いたレティシアであった。
「レティシア、やっと目が覚めたんだね。もう夜だよ」
そう言うと、ギューッと私を抱きしめる。そういえば私、薬を飲まされて眠っていたのよね。
「リアム様、あの薬は…」
「ああ、ただの睡眠薬だよ。でもあまり頻繁に使うと、薬なしでは眠れなくなってしまうからね。今回だけ特別に使ったんだよ。他国で逃げ出されたら大変だからね。ねえレティシア、今日はこのままずっとベッドの中で過ごそう。パンドラ王国に帰ったらきっと、こんなにゆっくりできないからね。食事もベッドで食べよう。たまにはこういう生活もいいだろう?」
そう言うとベットから抜け出し、外に待機している執事と話をし始めたリアム様。なんだかまだ頭がぼーっとするわ。暗くなった外の様子を窓から見ていると、リアム様が戻ってきた。
「なんだか元気がないみたいだけれど、どうしたんだい?そうだ、いいものを見せてあげる。僕の宝物をね」
何かを思い出したかのように、急にカバンの中をあさりだしたリアム様。そして私にあるものを渡してきた。
「これは、ミミちゃん…まだ持っていてくださったのですか?」
私が5歳の時にリアム様にあげたミミちゃんだ。まさかまだ持っていてくれたなんて…
「当たり前だろう?これはレティシアと初めて会った時に貰った、僕の宝物なのだから。あの日僕は、レティシアに恋をした。あの日からずっと君だけを好きでいたんだ」
そう言うと、リアム様は少し恥ずかしそうに笑った。そうか、あの頃からずっと愛されていたのね。でも婚約を申し込んだのは家からよね。一体どういうことなのかしら?
「リアム様の言う事が本当なら、どうしてリアム様から婚約を申し込んでくださらなかったのですか?」
「あの頃君の実家は、ものすごく権力を持っていたからね。きっと申し込んだところで、断られると思ったんだ。しつこくして公爵を怒らさせでもしたら、君とは二度と婚約できないと思ったし。まあ、僕に勇気がなかっただけなんだけれどね…」
少し恥ずかしそうに笑ったリアム様。確かにお父様なら、リアム様の申し出を断りそうね…
でも、リアム様がそんな昔から私を好きでいてくれていたなんて嬉しいわ。それにミミちゃんもこんなに大事にしてくれていたなんて。急にリアム様がいとおしくなって、ギューッと抱きしめた。
「リアム様、私をずっと愛してくれて、ありがとうございます。私もリアム様に助けてもらった7歳の時からずっとリアム様が大好きです。もう二度と離れたりはしませんわ!」
「ありがとう、レティシア。でも、一度逃げている君から言われても、100%信用は出来ないな。とにかくしばらくは、僕のいう事を聞いてもらうからね。いいかい?」
「…わかりましたわ」
リアム様の目の色が途中で変わった事に気が付いたため、ここは大人しく返事をしておくことにした。リアム様は急にスイッチが入ったかのように、苛立ちを露わにすることがあるため、注意が必要なのだ。
その後2人で食事をし、湯あみをすると再びベッドに戻って愛し合ったのであった。
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「レティシア、今日乗る船はあれだよ」
港にはパンドラ王国の船が待機していた。さすが王族でもあるリアム様。わざわざ王宮の船を準備した様だ。
「早速船に乗ろう」
リアム様に連れられ、船に乗り込もうとした時だった。
「リアム殿下!!」
声の方を振り向くと、そこには1人の男性が立っていた。彼は誰かしら?ふとリアム様の方を見ると、明らかに嫌そうな顔をしている。
「ディカルド殿下、こんな場所まで一体どうされたのですか?」
ディカルド殿下ですって。確かアモーレ王国の王太子殿下の名前がディカルド様だった気がする。という事は、この人がアモーレ王国の王太子殿下なのね。
「今日帰国すると聞いたから、見送りに来たんだよ。彼女がレティシア嬢だね。君が隠したがる理由がわかったよ。とても美しい女性だ。それにしても、本当にピンクの髪をしているんだね。初めて見たよ」
上から下までジロジロと私を見るディカルド殿下。女性を凝視するなんて、失礼な人ね。でも、一応挨拶をしておかないと。
「ディカルド殿下、お初にお目にかかります。レティシアと申します。私の為に動いて下さり、ありがとうございました」
王妃教育で培った渾身のカテシーを決めると、そのままリアム様の背中に隠れた。ちょっと感じが悪かったかもしれないが、どうしてもあのいやらしい視線が耐えられなかったのだ。
「ディカルド殿下、なめます様ないやらしい視線で、レティシアを見るのはやめて下さい。レティシアも嫌がっています。それでは私たちはこれで。さあ、レティシア、おいで」
なぜか嬉しそうな顔のリアム様に連れられ、そのまま船へと乗り込んだ。
「レティシア、嫌な思いをさせてごめんね。なぜかあの男、物凄くレティシアの事が気になっていたようでね。絶対に会わせないようにしていたのだが、まさか港に来るなんて。でも、僕の後ろに隠れて偉かったよ。これからも、ああやって対応するのだよ」
どうやら私がリアム様の後ろに隠れたのがよかったらしく、物凄く上機嫌だ。とにかく、リアム様が喜んでくれたのならよかったわ。
その後はデッキからアモーレ王国を見つめる。半年間、お世話になったアモーレ王国。本当にこの国の人は親切だった。
リリアンさん、それに村の皆、さようなら。そしてありがとうございました。
どんどん小さくなっていくアモーレ王国を見つめながら、心の中でそっと呟いたレティシアであった。
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