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第23話:これでもう逃げられない様です
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なんだか嫌な予感がして、リアム様にギューッとしがみつく。しばらくすると、お医者様がやって来た。
「あの…リアム殿下。本当に彼女にこのチップを埋め込むのですか?」
「ああ、頼む。出来るだけ痛くないようにしてやってくれ」
何なの?チップって何?私は今から何をされるの?恐怖でさらにリアム様にしがみつく。
「レティシア、今から君の居場所が特定できるチップを埋め込むよ。とても小さなチップだから、注射器で入れるんだ。少し痛いかもしれないが、我慢してね」
そう言うと、私の体を強く抑え込むリアム様。
「嫌、怖いわ。リアム様、お願いします!どうかお止めください」
必死に抵抗するが、強く体を抑え込まれている為身動きが取れない。恐怖から瞳から涙がポロポロと流れる。
「大丈夫だよ、すぐに終わるからね。おい、レティシアが怯えている。さっさと行え!」
「かしこまりました」
今までに見た事がないほど、太い針が付いた注射器を持った先生が、こちらに近づいてきた。私の髪を持ち上げると、首辺りを消毒している。そして次の瞬間
「痛い!嫌、止めて!嫌!」
首に激痛が走る。さらに瞳から涙が溢れる。
「よく頑張ったね。レティシア。もう終わったよ。でもね、君が僕から逃げ出したのがいけないんだよ。君が逃げさえしなければ、さすがにここまではしなかったんだ。自業自得って奴だね」
そう言うと、頬を伝う涙をペロリと舐めたリアム様。一体どうしてしまったと言うの?恐怖と痛みから、震えが止まらない。そんな私を抱きしめると、首と腕に付いている鎖を外してくれた。
「とりあえず、もう痛い事はしないから大丈夫だよ。さあ、晩ご飯にしよう。せっかくだから、夜景が見える窓側に準備してもらうからね」
とりあえずって何よ。まだ何か痛い事をするつもりなのかしら?あまりにも変わり果てたリアム様に、さらに混乱する。しばらくして、食事の準備が整ったとの連絡を受けた。再び私を抱っこして、隣の部屋に移動する。
と言っても、部屋からそのまま移動できるため、一度廊下に出る必要はない。大きなテーブルに、沢山の料理が並んでいる。でもなぜか、2つの椅子がくっ付いて置かれていた。そのまま椅子に降ろされ、すぐ隣の椅子にリアム様が座る。
「さあ、食事にしようか。レティシア、僕はね。君がいなくなってから、半年以上ろくに食事が摂れなかったんだよ。正直自分で食事をする気が起きなくてね。だから今日からは、レティシアが僕に食べさせてくれ。もちろん、レティシアには僕が食べさせてあげるからね」
そう言うと、私の口に食事を運ぶリアム様。私の食事より、やつれたリアム様に沢山食事をしてもらわないと。そんな思いから、リアム様に食事を運ぶ。嬉しそうに食べるリアム様。その顔を見たら、なんだか昔のリアム様を思い出した。
昔も私が食べさせると、嬉しそうに笑ってくれていたわね。そう思ったら、つい私も笑みがこぼれる。デザートまでしっかり食べた。久しぶりの豪華な食事。でも私は、リリアンさんが作った料理が一番好きだわ。
そうだ、王宮に戻ったらリアム様にも私の手料理を食べさせてあげよう。リリアンさんほどではないけれど、私の料理の腕も随分上達したしね。
きっと喜んでくれるわ。なんだなんだ言って、やっぱり私はリアム様が好きなのだ。それに私がいなくなったせいで、こんなにもやつれてしまったのだ。罪悪感もかなり感じている。
「リアム様、王宮に戻ったらお料理をしてもいいですか?平民として暮らしていた半年間で、料理の腕も随分と上がったのですよ。リアム様の好きな、お肉料理も作れますわ」
「レティシアが作ってくれるのかい?それは嬉しいな。それじゃあ、レティシアの部屋にキッチンを作らないといけないね」
「部屋にですか?さすがにそこまでしていただかなくても大丈夫ですわ。厨房をお借りできれば問題ないです」
「王宮の厨房は人が多いし、君がウロウロしたら皆気を使うからね」
確かに私がウロウロしたら邪魔か。まさか部屋に厨房を付けて貰えるなんて、なんだか申し訳ないわね。
食後は2人でお茶を飲んで過ごす。こうやってリアム様とお茶を飲んでゆっくり過ごすなんて、いつぶりかしら?なんだか懐かしいわ。
「レティシア、そろそろお風呂に入ろうか」
「えっ?一緒に入るのですか?」
さすがにそれは恥ずかしすぎる。
「そうだよ。さっきも言ったけれど、僕はもうレティシアと1秒も離れたくはないんだよ。心配しなくても大丈夫だよ。今日中に初夜も済ませてしまうからね」
「お待ちください、リアム様。初夜って新婚初日に行うものですよね?今日だなんて、さすがに良くないですわ」
結婚していない男女がつながる事は、ふしだらだと言われている。それを王太子のリアム様が行うなんて…
「大丈夫だよ。僕とレティシアはもう結婚している様なものだからね。誰も咎めたりしないよ。それに、帰ったらすぐに婚姻届けを提出するつもりだし。数日早く行っても、問題はないよ。さあおいで」
さすがにそれは恥ずかしすぎる!そんな思いから、無意識に逃げようとする私をすかさず捕まえるリアム様。
「レティシア、また僕から逃げるつもりかい?それは頂けないな…悪い子はどうなるか、体で教えあげないといけないね」
全く笑っていないリアム様の瞳を見た時、これはまずいと本能的に感じ取った。
「ごめんなさい。逃げるつもりはなかったのです。さあ、早く湯あみを済ませましょう!」
きっともう逃げられない。それなら、腹をくくるしかない。そう思ったのだ。
「さすがレティシア、賢いね。それじゃあ行こうか」
リアム様に連れられ、浴槽へと向かったのであった。
「あの…リアム殿下。本当に彼女にこのチップを埋め込むのですか?」
「ああ、頼む。出来るだけ痛くないようにしてやってくれ」
何なの?チップって何?私は今から何をされるの?恐怖でさらにリアム様にしがみつく。
「レティシア、今から君の居場所が特定できるチップを埋め込むよ。とても小さなチップだから、注射器で入れるんだ。少し痛いかもしれないが、我慢してね」
そう言うと、私の体を強く抑え込むリアム様。
「嫌、怖いわ。リアム様、お願いします!どうかお止めください」
必死に抵抗するが、強く体を抑え込まれている為身動きが取れない。恐怖から瞳から涙がポロポロと流れる。
「大丈夫だよ、すぐに終わるからね。おい、レティシアが怯えている。さっさと行え!」
「かしこまりました」
今までに見た事がないほど、太い針が付いた注射器を持った先生が、こちらに近づいてきた。私の髪を持ち上げると、首辺りを消毒している。そして次の瞬間
「痛い!嫌、止めて!嫌!」
首に激痛が走る。さらに瞳から涙が溢れる。
「よく頑張ったね。レティシア。もう終わったよ。でもね、君が僕から逃げ出したのがいけないんだよ。君が逃げさえしなければ、さすがにここまではしなかったんだ。自業自得って奴だね」
そう言うと、頬を伝う涙をペロリと舐めたリアム様。一体どうしてしまったと言うの?恐怖と痛みから、震えが止まらない。そんな私を抱きしめると、首と腕に付いている鎖を外してくれた。
「とりあえず、もう痛い事はしないから大丈夫だよ。さあ、晩ご飯にしよう。せっかくだから、夜景が見える窓側に準備してもらうからね」
とりあえずって何よ。まだ何か痛い事をするつもりなのかしら?あまりにも変わり果てたリアム様に、さらに混乱する。しばらくして、食事の準備が整ったとの連絡を受けた。再び私を抱っこして、隣の部屋に移動する。
と言っても、部屋からそのまま移動できるため、一度廊下に出る必要はない。大きなテーブルに、沢山の料理が並んでいる。でもなぜか、2つの椅子がくっ付いて置かれていた。そのまま椅子に降ろされ、すぐ隣の椅子にリアム様が座る。
「さあ、食事にしようか。レティシア、僕はね。君がいなくなってから、半年以上ろくに食事が摂れなかったんだよ。正直自分で食事をする気が起きなくてね。だから今日からは、レティシアが僕に食べさせてくれ。もちろん、レティシアには僕が食べさせてあげるからね」
そう言うと、私の口に食事を運ぶリアム様。私の食事より、やつれたリアム様に沢山食事をしてもらわないと。そんな思いから、リアム様に食事を運ぶ。嬉しそうに食べるリアム様。その顔を見たら、なんだか昔のリアム様を思い出した。
昔も私が食べさせると、嬉しそうに笑ってくれていたわね。そう思ったら、つい私も笑みがこぼれる。デザートまでしっかり食べた。久しぶりの豪華な食事。でも私は、リリアンさんが作った料理が一番好きだわ。
そうだ、王宮に戻ったらリアム様にも私の手料理を食べさせてあげよう。リリアンさんほどではないけれど、私の料理の腕も随分上達したしね。
きっと喜んでくれるわ。なんだなんだ言って、やっぱり私はリアム様が好きなのだ。それに私がいなくなったせいで、こんなにもやつれてしまったのだ。罪悪感もかなり感じている。
「リアム様、王宮に戻ったらお料理をしてもいいですか?平民として暮らしていた半年間で、料理の腕も随分と上がったのですよ。リアム様の好きな、お肉料理も作れますわ」
「レティシアが作ってくれるのかい?それは嬉しいな。それじゃあ、レティシアの部屋にキッチンを作らないといけないね」
「部屋にですか?さすがにそこまでしていただかなくても大丈夫ですわ。厨房をお借りできれば問題ないです」
「王宮の厨房は人が多いし、君がウロウロしたら皆気を使うからね」
確かに私がウロウロしたら邪魔か。まさか部屋に厨房を付けて貰えるなんて、なんだか申し訳ないわね。
食後は2人でお茶を飲んで過ごす。こうやってリアム様とお茶を飲んでゆっくり過ごすなんて、いつぶりかしら?なんだか懐かしいわ。
「レティシア、そろそろお風呂に入ろうか」
「えっ?一緒に入るのですか?」
さすがにそれは恥ずかしすぎる。
「そうだよ。さっきも言ったけれど、僕はもうレティシアと1秒も離れたくはないんだよ。心配しなくても大丈夫だよ。今日中に初夜も済ませてしまうからね」
「お待ちください、リアム様。初夜って新婚初日に行うものですよね?今日だなんて、さすがに良くないですわ」
結婚していない男女がつながる事は、ふしだらだと言われている。それを王太子のリアム様が行うなんて…
「大丈夫だよ。僕とレティシアはもう結婚している様なものだからね。誰も咎めたりしないよ。それに、帰ったらすぐに婚姻届けを提出するつもりだし。数日早く行っても、問題はないよ。さあおいで」
さすがにそれは恥ずかしすぎる!そんな思いから、無意識に逃げようとする私をすかさず捕まえるリアム様。
「レティシア、また僕から逃げるつもりかい?それは頂けないな…悪い子はどうなるか、体で教えあげないといけないね」
全く笑っていないリアム様の瞳を見た時、これはまずいと本能的に感じ取った。
「ごめんなさい。逃げるつもりはなかったのです。さあ、早く湯あみを済ませましょう!」
きっともう逃げられない。それなら、腹をくくるしかない。そう思ったのだ。
「さすがレティシア、賢いね。それじゃあ行こうか」
リアム様に連れられ、浴槽へと向かったのであった。
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