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第20話:ご両親との楽しい時間はあっという間です
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お義母様と一緒に屋敷に戻ると、怖い顔をした旦那様が待っていた。
「母上、あれほど彼女を勝手に連れていくなと言ったのに!それも窓から侵入したそうじゃないか。万が一落ちたら、どうするつもりなんだ。大体あなたは思った通りに行動しすぎなんだ!」
お義母様に詰め寄り、怒鳴る旦那様。
「お待ちください旦那様。お義母様は私の為に、危険を冒してまで部屋まで来てくださったのです。それに、今日のお出かけはとても楽しかったです。ぜひまたお義母様とお出掛け出来たら嬉しいですわ」
「ほら見なさい。マリアンヌちゃんも楽しんでくれているじゃない。そもそもあなたが、私とマリアンヌちゃんを会わせない様にするからいけないのよ。それにあなた、マリアンヌちゃんと一緒にお出掛けをしたり、贈り物をしたりしているの?」
「それは…」
「夫婦なのだから、もっとマリアンヌちゃんを大切にしなさいよ!さあ、マリアンヌちゃん。一緒に夕食を食べましょう」
私の手を引き、屋敷に入ろうとするお義母様。でも…
「旦那様、勝手に出かけてごめんなさい。私は旦那様と結婚できただけで、十分幸せです。さあ、旦那様も一緒に食事にしましょう。お土産もたくさん買って来たのですよ」
旦那様の手を取った。
「マリアンヌちゃんは本当に優しいのね。どうしてあなたの元婚約者は、マリアンヌちゃんと婚約破棄したのかしら?」
コテンと首をかしげるお義母様。相変わらず思った事を言ってしまうところは、健在の様だ。すかさず旦那様が
「母上!どうしてあなたは、そんな言わなくてもいい事を言うんだ。そもそも、彼女の元婚約者は大バカ者なんだ。そんな事はわかりきっている事だ!」
そう言って怒っていた。
その後は4人で夕ご飯を食べた。相変わらず無口な旦那様と旦那様のお父様。そんな2人をよそに、私とお義母様が、話しに花を咲かせた。
「グリム、あなたも一度領地にいらっしゃい。もちろん、マリアンヌちゃんを連れて。マリアンヌちゃん、随分と領地に興味を持っていたわよ。ねえ、マリアンヌちゃん」
「はい、海で泳いだり、綺麗な魚を見たり、考えただけでワクワクしますわ」
「そうか…君がそう言うなら、領地に行くのもいいかもしれないな。落ち着いたら一度、領地に行くよ」
「まあ、本当ですか!それは楽しみですわ」
そんな話をしながら、食事をする。こうやって皆で楽しくお話をしながら食事をするなんて、実家にいた時以来ね。
翌日も、その翌日も、お義母様や旦那様、旦那様のお父様と一緒に過ごした。結局お義母様たちは2週間滞在して、領地に戻る事になったのだ。
そして今日は、ご両親が領地に帰る日。
「マリアンヌちゃん、この2週間、とても楽しかったわ。必ず領地にも遊びに来てね。待っているから」
「私の方こそ楽しかったです。ありがとうございました。必ず旦那様と一緒に、領地に遊びに行きますわ」
この2週間、本当に楽しかった。ずっといてくれてもいいくらいだけれど、そういう訳にもいかないのだろう。
その時だった。
「マリアンヌ嬢、息子は私に似て口下手だ。でも、私に似て誠実な男だ。どうか息子を信じて、付いて行ってやってほしい」
この2週間、ほとんど話さなかった旦那様のお父様が、話しかけて来たのだ。真っすぐ私を見つめる旦那様のお父様の瞳は、真剣そのものだった。
「はい、もちろんです。私にとって旦那様は、誰よりも大切な人ですから」
旦那様のお父様の目を見て、そう伝えた。
まだまだ旦那様とはぎこちない部分も多い。でも、これからもっと距離を縮めて行けたらと考えている。
「ありがとう、マリアンヌ嬢」
ふと笑った旦那様のお父様。その笑顔は、まるで旦那様の様だった。無口な方だけれど、きっととても優しい方なのだろう。その瞳を見たら、なんだかそんな気がした。
「それじゃあ、私たちはもう行くわね。2人とも、仲良くね」
「ありがとうございます。また王都にも遊びに来てください」
ご両親を乗せた馬車が、ゆっくりと走り出した。窓を開け、大きく身を乗り出し、手を振ってくれるお義母様。もちろん、私も手を振り返した。馬車が見えなくなるまで、ずっと。
「さあ、そろそろ屋敷に入ろう。君もこの1週間、母上の相手で疲れただろう。ゆっくり休んでくれ」
「ありがとうございます、旦那様。でも、私はこの1週間、とても楽しかったですわ。侯爵家の領地にも増々興味が湧きましたし」
「そうか。君が望むなら、時間を見て必ず領地に足を運ぼう…」
ポツリと旦那様が呟いた。いつも旦那様は、私が望むことを一番に考えてくれている。きっと領地にも、連れて行ってくれるのだろう。
「ありがとうございます、楽しみにしていますね」
どちらともなく手を繋ぐと、そのまま屋敷に入った。そうだ!
「旦那様、今日まで騎士団はお休みですよね。宜しければ、今から王都のレストランに行きませんか?領地の魚を食べられるレストランです」
お義母様と一緒に行ったあのレストランに、旦那様と一緒に行きたいと思っていたのだ。
「君は領地の魚料理を随分と気にいっていた様だな。わかった、早速行こう。君と街に行くのは初めてだね」
「はい、楽しみですわ」
その後2人で仲良くレストランに向かい、魚料理を堪能したのだった。
「母上、あれほど彼女を勝手に連れていくなと言ったのに!それも窓から侵入したそうじゃないか。万が一落ちたら、どうするつもりなんだ。大体あなたは思った通りに行動しすぎなんだ!」
お義母様に詰め寄り、怒鳴る旦那様。
「お待ちください旦那様。お義母様は私の為に、危険を冒してまで部屋まで来てくださったのです。それに、今日のお出かけはとても楽しかったです。ぜひまたお義母様とお出掛け出来たら嬉しいですわ」
「ほら見なさい。マリアンヌちゃんも楽しんでくれているじゃない。そもそもあなたが、私とマリアンヌちゃんを会わせない様にするからいけないのよ。それにあなた、マリアンヌちゃんと一緒にお出掛けをしたり、贈り物をしたりしているの?」
「それは…」
「夫婦なのだから、もっとマリアンヌちゃんを大切にしなさいよ!さあ、マリアンヌちゃん。一緒に夕食を食べましょう」
私の手を引き、屋敷に入ろうとするお義母様。でも…
「旦那様、勝手に出かけてごめんなさい。私は旦那様と結婚できただけで、十分幸せです。さあ、旦那様も一緒に食事にしましょう。お土産もたくさん買って来たのですよ」
旦那様の手を取った。
「マリアンヌちゃんは本当に優しいのね。どうしてあなたの元婚約者は、マリアンヌちゃんと婚約破棄したのかしら?」
コテンと首をかしげるお義母様。相変わらず思った事を言ってしまうところは、健在の様だ。すかさず旦那様が
「母上!どうしてあなたは、そんな言わなくてもいい事を言うんだ。そもそも、彼女の元婚約者は大バカ者なんだ。そんな事はわかりきっている事だ!」
そう言って怒っていた。
その後は4人で夕ご飯を食べた。相変わらず無口な旦那様と旦那様のお父様。そんな2人をよそに、私とお義母様が、話しに花を咲かせた。
「グリム、あなたも一度領地にいらっしゃい。もちろん、マリアンヌちゃんを連れて。マリアンヌちゃん、随分と領地に興味を持っていたわよ。ねえ、マリアンヌちゃん」
「はい、海で泳いだり、綺麗な魚を見たり、考えただけでワクワクしますわ」
「そうか…君がそう言うなら、領地に行くのもいいかもしれないな。落ち着いたら一度、領地に行くよ」
「まあ、本当ですか!それは楽しみですわ」
そんな話をしながら、食事をする。こうやって皆で楽しくお話をしながら食事をするなんて、実家にいた時以来ね。
翌日も、その翌日も、お義母様や旦那様、旦那様のお父様と一緒に過ごした。結局お義母様たちは2週間滞在して、領地に戻る事になったのだ。
そして今日は、ご両親が領地に帰る日。
「マリアンヌちゃん、この2週間、とても楽しかったわ。必ず領地にも遊びに来てね。待っているから」
「私の方こそ楽しかったです。ありがとうございました。必ず旦那様と一緒に、領地に遊びに行きますわ」
この2週間、本当に楽しかった。ずっといてくれてもいいくらいだけれど、そういう訳にもいかないのだろう。
その時だった。
「マリアンヌ嬢、息子は私に似て口下手だ。でも、私に似て誠実な男だ。どうか息子を信じて、付いて行ってやってほしい」
この2週間、ほとんど話さなかった旦那様のお父様が、話しかけて来たのだ。真っすぐ私を見つめる旦那様のお父様の瞳は、真剣そのものだった。
「はい、もちろんです。私にとって旦那様は、誰よりも大切な人ですから」
旦那様のお父様の目を見て、そう伝えた。
まだまだ旦那様とはぎこちない部分も多い。でも、これからもっと距離を縮めて行けたらと考えている。
「ありがとう、マリアンヌ嬢」
ふと笑った旦那様のお父様。その笑顔は、まるで旦那様の様だった。無口な方だけれど、きっととても優しい方なのだろう。その瞳を見たら、なんだかそんな気がした。
「それじゃあ、私たちはもう行くわね。2人とも、仲良くね」
「ありがとうございます。また王都にも遊びに来てください」
ご両親を乗せた馬車が、ゆっくりと走り出した。窓を開け、大きく身を乗り出し、手を振ってくれるお義母様。もちろん、私も手を振り返した。馬車が見えなくなるまで、ずっと。
「さあ、そろそろ屋敷に入ろう。君もこの1週間、母上の相手で疲れただろう。ゆっくり休んでくれ」
「ありがとうございます、旦那様。でも、私はこの1週間、とても楽しかったですわ。侯爵家の領地にも増々興味が湧きましたし」
「そうか。君が望むなら、時間を見て必ず領地に足を運ぼう…」
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「旦那様、今日まで騎士団はお休みですよね。宜しければ、今から王都のレストランに行きませんか?領地の魚を食べられるレストランです」
お義母様と一緒に行ったあのレストランに、旦那様と一緒に行きたいと思っていたのだ。
「君は領地の魚料理を随分と気にいっていた様だな。わかった、早速行こう。君と街に行くのは初めてだね」
「はい、楽しみですわ」
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