上 下
52 / 53

第52話:ついにクリスティル王国は滅びます

しおりを挟む
慌てて外に出てみると、そこには今まで見た事のない程、沢山の民たちが集まっていたのだ。

「聖女様を追い出し、この国を滅茶苦茶にした国王を、私たちは絶対に許さない!今すぐ国王に裁きを!」

ものすごい勢いで王宮に侵入しようとする民たち。

「ぼ…僕は悪くない…ジャンティーヌ、助けてくれ…」

民たちのあまりの迫力に、完全に腰を抜かしているアーロン様。本当に情けない男だ。怒り狂う民たちの前に出る。

「聖女様!皆、この国を救って下さった聖女様だ。絶対に手を出すな」

私の姿を見た民たちが、一気に足を止めた。

「皆様、どうか落ち着いて下さい。現国王は今まさに、貴族会議によって、国王の座をはく奪されました。今後は今までの悪事を洗い出し、裁判にかけ、裁きを受ける予定です。唯一の王族でもある現国王陛下が失脚したことで、クリスティル王国は近々滅びます。そして、新しい国に生まれ変わる予定です。皆様のお怒りはごもっともです。ですが、どうか新しい国に生まれ変わろうとしているこの国を、見守っては頂けないでしょうか?」

彼らに向かって、必死に訴えた。すると…

「聖女様がそうおっしゃっているのだ。今の国王が失脚し、新しい国に生まれ変わるなら、私は賛成だ」

「私たちもです。聖女様、昔の様な健全な国に、どうか生まれ変わらせてください。お願いします」

民たちが私に頭を下げたのだ。でも…

「皆様、私は近く、グリーズン王国に戻ります。私はここにいるグリーズン王国の国王陛下、ジルド陛下と共に歩む未来を選んだのです。ですが、もちろんこの国を見捨てた訳ではありません。新しい国王には私の兄でもある、ジャクソンをと考えております。そしてジャクソンの妻として、私の大切な友人で義理姉に当たる、グリーズン王国の王女、シルビアを妻にと考えております。彼女は誰よりも民に寄り添い、12年もの間、必死に魔物と戦って来た1人です。私なんかよりもずっと、皆様たちの心に寄り添ってくださるはずです。もちろん、私も結界の柱を建設いたします。ですから、どうかよろしくお願いいたします」

民たちに頭を下げた。

「国民の皆さん、我がカルスティア公爵家は、代々聖女を生み出してきた一族です。そんな一族が王族になる事に、抵抗を持つ方もいるかもしれません。それでも私たちは、今の国ではよくない、一度リセットさせ、新しい国を作りたいと考えております。どうかご理解のほど、よろしくお願いいたします」

「クリスティル王国の国民の皆様、初めまして。私はグリーズン王国の第一王女、シルビアと申します。12年前、魔女に国を支配され、地獄の様な日々を送って参りました。自分たちのせいで民たちを苦しませていると悩み、苦しんだこともありました。生きる事に絶望し、未来を見る事を諦めた事もありました。そんな中、ジャンティーヌちゃんが我が国を救ってくれたのです。そしてここにいるジャクソン様はじめ、カルスティア公爵家の方たちに支えられ、グリーズン王国は生まれ変わる事が出来たのです。今度は私が、新しく生まれ変わるこの国の手助けがしたいと考えております。どうか、よろしくお願いいたします」

お兄様とシルビアお義姉様も、民たちに頭を下げたのだ。

「公爵令息殿とグリーズン国の王女様が、私たち平民に頭を下げるだなんて…」

「公爵令息様、王女様、どうか頭を上げて下さい。あなた様達の気持ち、私達に十分届きました。どうかより良い国を作ってください。もちろん、我々も協力いたします」

「もちろん、我が貴族たちも全力でフォローしていきます。ジャクソン殿、シルビア殿下、どうかこれからもよろしくお願いいたします」

「「「「「お願いいたします」」」」」

貴族たちも声をそろえた。

でも、新国王は通常、貴族会議で決めるのだけれど、よかったのかしら?まあ、皆も認めてくれているのだから、よかったわよね。

「それじゃあ、早速そこにいるアーロン元国王と、マリアン殿をすぐに王宮の地下牢に連れて行ってくれ!」

「はっ!」

お兄様の指示で、騎士たちがアーロン様とマリアン様を捕らえた。

「ちょっと待ってくれ。頼む、ジャンティーヌ、僕を助けてくれ。僕たち、昔は仲睦まじかったじゃないか」

「ジャンティーヌ様、どうかご慈悲を。あなたは聖女なのでしょう?それなら、私たちを助けてよ」

私に向かって必死に叫ぶ2人の元へと向かう。

「お2人とも、私にした仕打ちを忘れたのですか?そもそもこの未来は、あなた様が占ったのでしょう?“私がこの国を滅ぼす”と。だからあなた様の占い通り、動いて差し上げただけですわ。マリアン様、あなた様の占い、当たってよかったですわね。2人仲良く、裁きを受けて下さい」

2人に笑顔を向けて手を振ってあげた。もう二度と、2人に会う事はないだろう。

「嫌だ…僕は王族なんだ。尊い存在なんだ…それなのに、どうして…」

「嫌、私は悪くないわ。嫌…」

泣き叫ぶ2人を見送る。

さようなら、アーロン様、マリアン様。

心の中でそっと2人にお別れを言ったのだった。


~あとがき~
ちなみに…
アーロンとマリアンのその後ですが、その日のうちに裁判にかけられた。彼らのせいで国が甚大な被害が出た事、沢山の人が命を落とした事もあり、翌日2人は公開処刑に処されることになった。
刑執行にはたくさんの人たちが見に来たとの事。民たちの怒りは相当だった様で、2人が処刑場に現れると、罵声が飛び交い、刑が執行されると歓喜に沸いたそうだ。

最期まで泣きながら抵抗していた2人は、苦しみながらこの世を去ったのだった。



※次回、最終話です。
よろしくお願いいたします。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~

コトミ
恋愛
 結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。  そしてその飛び出した先で出会った人とは? (できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです) hotランキング1位入りしました。ありがとうございます

【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。

曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」 「分かったわ」 「えっ……」 男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。 毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。 裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。 何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……? ★小説家になろう様で先行更新中

別れてくれない夫は、私を愛していない

abang
恋愛
「私と別れて下さい」 「嫌だ、君と別れる気はない」 誕生パーティー、結婚記念日、大切な約束の日まで…… 彼の大切な幼馴染の「セレン」はいつも彼を連れ去ってしまう。 「ごめん、セレンが怪我をしたらしい」 「セレンが熱が出たと……」 そんなに大切ならば、彼女を妻にすれば良かったのでは? ふと過ぎったその考えに私の妻としての限界に気付いた。 その日から始まる、私を愛さない夫と愛してるからこそ限界な妻の離婚攻防戦。 「あなた、お願いだから別れて頂戴」 「絶対に、別れない」

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

婚約破棄が成立したので遠慮はやめます

カレイ
恋愛
 婚約破棄を喰らった侯爵令嬢が、それを逆手に遠慮をやめ、思ったことをそのまま口に出していく話。

【完結】捨てられ正妃は思い出す。

なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」    そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。  人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。  正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。  人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。  再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。  デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。  確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。 ––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––  他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。  前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。  彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。  

気がついたら無理!絶対にいや!

朝山みどり
恋愛
アリスは子供の頃からしっかりしていた。そのせいか、なぜか利用され、便利に使われてしまう。 そして嵐のとき置き去りにされてしまった。助けてくれた彼に大切にされたアリスは甘えることを知った。そして甘えられることも・・・ やがてアリスは自分は上に立つ能力があると自覚する

処理中です...