あなた達のお望みどおりにして差し上げますわ~追放聖女は絶体絶命王子と幸せになります~

Karamimi

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第44話:クリスティル王国が大変な事になっている様です

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ジルド様の国王就任式も無事に終わった翌日。

「ジャンティーヌ様、カルスティア公爵様とご夫人、ジャクソン様がいらっしゃっております」

「お父様とお母様、お兄様も?」

一体どうしたのかしら?昨日正式にジルド様が国王に就任した。グリーズン王国は、平穏な生活を取り戻したのだ。両親とお兄様は、避難場所でもあるラッセル王国に戻り、クリスティル王国に戻る準備をすると言っていたはずだけれど…一体どうしたのかしら?

急いで両親とお兄様の元へと向かった。

「お父様、お母様、お兄様、急にどうされたのですか?あら?ジルド様とシルビア殿下もいらっしゃるのですね」

もしかして、シルビア殿下とお兄様の結婚についての話かしら?それにしては、なぜかジルド様が暗い顔をしている。何が起こったのだろう。なんだか不安になって、その場に固まっている私の元に、ジルド様がやって来た。

「ジャンティーヌ、そんなところに立っていないで、こっちにおいで」

私の手を引き、隣に座らせると、ギュッと手を握って来たのだ。どうしてそんな不安そうな顔をしているのだろう。

「ジルド様?一体どうしたのですか?」

ジッと私を見つめるジルド様が気になって、声を掛けた。

「いいや、何でもない。ただ…君が私の傍から離れてしまう様な気がして、不安なんだ…すまない、いつから私は、こんな弱い男になってしまったのだろう…」

訳の分からない事を言って、ジルド様が私を抱きしめる。

「ジルド殿下、ジャンティーヌはもう、あなた様の婚約者です。それにあなた様とジャンティーヌには、既に深い絆があるのですから、そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。ただ…私たちのいざこざに、あなた様達を巻き込む形になってしまって、本当に申し訳ないとは思っています」

「公爵殿、何をおっしゃっているのですか?あなた様達には、どれほど助けられたか!私共に出来ることがあれば、何でも言って下さい!と言いたいところですが、結局動くのは、ジャンティーヌになるのですよね」

「ジャンティーヌはもう、あなた様の婚約者。この国の王妃になる人間です。そんなジャンティーヌを巻き込むのですから、あなた様に迷惑を掛ける事と同じ事。それに、せっかくジャクソンに嫁ぐと決意してくれた、シルビア殿下にも、迷惑を掛ける形になってしまって…」

「公爵様、私の事は気にしないで下さい。私は本当にあなた様達に感謝しております。それに、ジャクソン様と幸せになれるのでしたら、私はどんな苦労をしてもかまいませんわ。ただ…ジャンティーヌちゃんを巻き込むことになってしまって…」

ちょっと!皆。さっきから何を訳の分からない事を言っているのよ!私を置き去りにして、話しを進めないでよ!

「皆様、おっしゃっている意味がさっぱり分かりません。私にも、分かるように説明してください!」

そんな思いで、皆に問いかけた。

「ジャンティーヌには全く何も話していなかったな。すまなかった。実はジャンティーヌが魔女を倒した事で、世界中からグリーズン王国に集まっていた魔物たちが、元居る場所に戻っていたんだ。とはいっても、大半の国が、聖女や魔術師たちによって、魔物が国を襲う事を食い止める事に成功している。ただ…」

「ただ、どうされたのですか?」

「我が国、クリスティル王国は違った。今クリスティル王国は、魔物たちに襲われて大変な事になっているのだよ。たった1ヶ月で、王都まで魔物たちが迫って来ている様なんだ。必死に貴族や魔術師、騎士団たちが食い止めているが、かなりの犠牲が出ているらしい」

「一体どういう事ですか?我が国にも立派な魔術師たちがいるではありませんか!それなのに、どうして?」

「ジャンティーヌには話していなかったが、我が国には魔物からこの国を守る一族が存在しているの。その一族の中で、一番魔力が強い人間、すなわち他国で言う聖女の様な存在の人間が、国に結界を張る柱を作る事で、魔物たちから国を守って来たの」

我が国にそんな一族がいたですって?一体どういうこと?そんな話、聞いたことがないわ。

「その結界はね、一度張ると、本人が居なくても約10年前後効果を持続すると言われているの。前回その結界の柱を作ったのが、今から13年前。本来は10年毎に国王陛下の指示の元、結界を作り直すのだけれど…」

「なるほど、今の国王陛下は、アーロン様。それに、全ての魔物たちがこのグリーズン王国に集まっていた為、結界の柱を作り直さなかったという訳ですね。それなら、今すぐにでも、結界の柱を作るよう、その一族に指示を出せばいいのではないですか?なぜアーロン様はそれを行わないのですか?もしかして、結界の柱は、魔物たちが入り込んだ後では作れないのですか?」

「いいえ、魔物たちが入り込んだ後でも、結界の柱を作る事は可能よ。ただ…」

なぜか言葉を濁すお母様。

いくら頭の悪いアーロン様でも、王都まで魔物が迫ってきているのなら、すぐにでも結界の柱を作る様に指示を出せばいいはずだ。それなのに、どうして…
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