あなた達のお望みどおりにして差し上げますわ~追放聖女は絶体絶命王子と幸せになります~

Karamimi

文字の大きさ
上 下
40 / 53

第40話:話が進みすぎていて付いていけません

しおりを挟む
「う…ん」

ゆっくり瞼を上げると、薄暗い部屋が目に入る。あら?ここは、地下の私のお部屋?でもなんだか雰囲気が違うわ。

「ジャンティーヌ様、目を覚まされたのですね。すぐに殿下を呼んで参ります」

見た事のない女性が、嬉しそうに部屋から出て行った。あの人は一体誰だろう。

「ジャンティーヌちゃん、目が覚めたのね。よかったわ。魔術師様の話では、明日の朝くらいに目を覚まされるとおっしゃっていたから」

嬉しそうにお部屋に入って来たのは、シルビア殿下だ。彼女が入って来ると同時に灯りが灯された。このお部屋は一体?

「シルビア殿下、ここは一体どこですか?」

「ここは地下があった場所の地上よ。ジャンティーヌちゃんのお陰で、魔女や魔物たちがいなくなったら、急遽地上に小さな屋敷を建てたの。まだ資材がなかったら、石や土のお家だけれどね」

「そうだったのですね。よく見たら窓もある。確かに地上だわ」

「ジャンティーヌちゃん、魔女を倒してくれて、本当にありがとう。その上、命がけでジルドを守ってくれたのでしょう?本当になんとお礼を言ったらいいか」

「私たちからもお礼を言わせてください。ジャンティーヌ様、いいえ、聖女様!我が国を救って下さり、本当にありがとうございました。お陰で私どもも、王都に戻って来られましたわ」

シルビア殿下や私と同じ歳の女性たちから、お礼を言われた。

「彼女たちは、皆貴族令嬢ですわ。魔物から身を守るため、地方に避難していたのですが、魔女がジャンティーヌちゃんによって倒されたと聞いて、家族と共に戻って来たのです。今後国外に避難している貴族たちも、続々と帰国する予定ですわ」

「まあ、この国の貴族の方たちでしたのね。あなた様達も、大変な暮らしをされていたのでしょう?戻って来て頂けて良かったですわ。それでその…ジルド殿下は?」

ジルド殿下の姿が見られないのだ。というより、男性陣の姿が一切見当たらない。

「ジルドは家臣や戻って来てくれた貴族たち、さらにジャンティーヌちゃんのご両親やジャクソン様と一緒に、今王宮や王都の街の復旧を行っているわ。ジャンティーヌちゃんのご両親から、沢山の資材と人員を援助してもらったのよ。本当に、何とお礼を言っていいか。今使いを出して、ジャンティーヌちゃんが目覚めたとジルドに伝えに言ったから、すぐに戻ってくると思うわ」

私が眠っている間に、色々と話が進められている様だ。

「あの、それで私はどれくらい眠っていたのですか?」

「そうね、半日も眠っていらっしゃらなかったのではないかしら?魔女をジャンティーヌちゃんが倒したのはお昼前くらいでしょう?今は夜の8時ごろなので」

まだ魔女を倒して1日も経っていなかったのか。それにしては、随分と復旧に関する動きが早いのね。

「ジャンティーヌちゃん、お腹が空いているのではなくって。すぐに食べ物を準備するわ」

そう言えば、お腹が空いているわ。ただ、この国に初めて来た時よりかはまだまだ余裕がある。という事は…

私、実は半分の魔力も使っていなかったのかしら?でも、私は十分魔力を使ったはずなんだけれど…

過ぎた事は仕方がない。魔女を倒したのだから、気にしない事にしよう。

「ありがとうございます、頂きますわ」

次々とお料理が運ばれてくる。どうやらかつて使用人として働いていた人たちも来てくれている様で、テキパキとセッティングしてくれた。ただなぜか皆

「さあ、聖女様、お料理の準備が整いました。どうか沢山召し上がってください」

と、私を聖女扱いするのだ。私は聖女ではないのだが…

そう言いたいが、あまりにも目を輝かせて言われるので、否定する事が出来ない。せっかくなので、美味しいお料理を頂いた。

その時だった。

「ジャンティーヌ殿、目覚めたのだってね」

急いでやって来たのは、ジルド殿下だ。後ろにはお兄様や両親の姿もある。そのままジルド殿下に抱きしめられた。

「私のせいで無理をさせてしまって、すまなかった。でもよかった、目覚めてくれて!」

「ジルド殿下、ご心配をおかけして申し訳ございません。私はこの通り、元気ですわ」

そう、思ったよりも元気なのだ。

「ジルド殿下、ジャンティーヌは魔力を最後まで使いこなせていなかった様なので、ぴんぴんしていますよ。ジャンティーヌ、魔術師の方たちが怒っていたぞ。自分たちが教えた事の半分も出来ていなかったと」

「まあ、魔術師の方たちがですか?」

やっぱり見破られていたのね。

「それでもジャンティーヌは、魔女を倒したのだからいいじゃない。ジャクソン、あまり妹を責めないであげて。それにジャンティーヌのお陰で、あなたもシルビア殿下と結婚できるのだから」

「えっ?お兄様とシルビア殿下が?」

ビックリして2人の顔を交互に見る。

「ああ、さっきシルビア殿下から、了承の返事をもらった。この国が落ち着いたら、クリスティル王国に戻って、シルビア殿下と結婚する予定だ」

「ちょっと待って下さい、クリスティル王国ではきっと、私のせいで皆指名手配されているはずですわ。国に戻ったら、確実に捕まります」

「その件ならきっと大丈夫よ。本当に愚かな国王だ事…恩を仇で返すのだから…」

お母様、一体何を言っているの?全く意味が分からない。

「そうそう、ジャンティーヌ殿、明日魔女を倒した事を正式に国民たちに知らせようと思っている。その時、君も紹介するつもりだから、どうか心の準備をしておいてくれ」

「えっ?私をですか?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす

まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。  彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。  しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。  彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。  他掌編七作品収録。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」  某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。 【収録作品】 ①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」 ②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」 ③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」 ④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」 ⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」 ⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」 ⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」 ⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

旦那様には愛人がいますが気にしません。

りつ
恋愛
 イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」 婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。 もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。 ……え? いまさら何ですか? 殿下。 そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね? もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。 だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。 これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。 ※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。    他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

【完結】今世も裏切られるのはごめんなので、最愛のあなたはもう要らない

曽根原ツタ
恋愛
隣国との戦時中に国王が病死し、王位継承権を持つ男子がひとりもいなかったため、若い王女エトワールは女王となった。だが── 「俺は彼女を愛している。彼女は俺の子を身篭った」 戦場から帰還した愛する夫の隣には、別の女性が立っていた。さらに彼は、王座を奪うために女王暗殺を企てる。 そして。夫に剣で胸を貫かれて死んだエトワールが次に目が覚めたとき、彼と出会った日に戻っていて……? ──二度目の人生、私を裏切ったあなたを絶対に愛しません。 ★小説家になろうさまでも公開中

処理中です...