あなた達のお望みどおりにして差し上げますわ～追放聖女は絶体絶命王子と幸せになります～

第38話：無事帰って来た～ジルド視点～

「おかえりなさい！急に空が晴れたから、もしかしてと思ったのだけれど、さっき市民たちに聞いたわ。ジャンティーヌちゃんが、魔女を倒したのですってね。て、ジャンティーヌちゃん！」

私に抱かれてぐったりしているジャンティーヌ殿をみた姉上が、真っ青な顔をして飛んできたのだ。後ろにいる家臣や民たちも、心配そうだ。

「シルビア殿下、ただいま！ジャンティーヌは魔力を使いすぎて、寝ているだけだよ。だから心配しなくていい。すぐに起きるだろう」

「本当に眠っているだけなのですか？きっとジャンティーヌちゃん、無理をしたのね。さあ、ちょっとした屋敷を建てたの。ここで休んで」

ふと姉上が指さす方を見ると、何と外に小さいながら石で作った家が建てられていた。どうやらそこらへんにあった石を使って、魔法で作った様だ。市民から魔女が居なくなったと聞いて、急いで建てたのだろう。魔女が居なくなったと同時に、魔物たちもいなくなった。きっと森の奥に帰って行ったのだろう。

よく見ると、あちこちに市民が小さな家を建てている。

「ジルド殿下、魔女もいなくなった事ですし、本格的に復興作業に取り掛かりましょう。とりあえず森から木を調達しないといけないですな。それから、王都や他の街でも、積極的に植林を行わないと。魔法で成長を促せば、数週間で成長いたします。それに王宮も早急に復旧作業に取り掛からないといけませんな。やる事が多すぎて、目が回りそうだ」


「王宮は後でいいよ。それよりも、民たちの生活が第一だ」

「ジルド殿下は相変わらずですね。さあ、ジャンティーヌ殿をベッドで寝かせてあげましょう」

早速姉上たちが準備してくれた家に入る。そしてジャンティーヌ殿を、ベッドに寝かせた。スヤスヤ眠るジャンティーヌ殿。

「ジャンティーヌ殿、お疲れ様。君は本当に、私の聖女様だ」

眠るジャンティーヌ殿の頬に、口づけをする。真っ白に透き通った肌、すっと伸びた鼻、キラキラと光る金色の髪。彼女は本当に美しいな。太陽の下で見ると、なおの事美しさに磨きがかかっている。

「ジルド、ジャンティーヌちゃんが寝ているのをいい事に、今あなた口づけをしたでしょう？寝ている女性にその様な事をするのは、いかがなものかと思うわよ」

「うわ！姉上。いつからいたのですか？それよりも、ジャクソン殿と話をしていたのではないのですか？」

「ええ、色々と聞いたわ。あなたがジャンティーヌちゃんを守るため、魔女の夫になろうとした事も。それを阻止するために、ジャンティーヌちゃんが命をかけ魔女と戦って勝ったという事も。私の知らないところで、２人ともそんな大変な思いをしていたのね。ジルド、よく頑張ったわね」

姉上が私を抱きしめてくれた。でも…

「よく頑張ったのは、ジャンティーヌ殿です。彼女は命をかけて私を、この国を救ってくれたのですから」

「そうね、ありがとう、ジャンティーヌちゃん。ジルド、お腹が空いているでしょう？ジャンティーヌちゃんは私が見ているから、食事をしてきて。それから、ジャクソン様が後で話があるとおっしゃっていたわ」

「私はジャンティーヌ殿の傍にいます。ジャクソン殿が？一体何の話だろう」

もしかして、姉上を嫁に欲しいと言う話か？それなら、私は大歓迎なのだが…

「そう言うと思った。それじゃあ、食事をここに運んでもらうわ。私もよく分からないけれど、今一時的にラッセル王国にお戻りになられたの。その事と何か関係があるのではないかしら？それじゃあ、ジャクソン様がお戻りになったら、声を掛けるわね」

姉上が出て行った後、家臣たちが食事を運んできてくれた。本当にジャンティーヌ殿は、目覚めるのだろうか？もしこのまま目覚めなかったら…

ついそんな事を考えてしまう。その時だった。

「ジルド殿下、少しお話をしたいのですが、よろしいですか？」

やって来たのは、ジャクソン殿だ。

「ジャンティーヌ、よく頑張ったわね」

「ジルド殿下、今回の魔女との戦いの件、息子から聞きました。ジャンティーヌの為に、魔女にご自分を捧げようとしてくださったのですね。ありがとうございます」

ジャンティーヌ殿のご両親も一緒に部屋に入って来たのだ。ジャンティーヌ殿の母親は、涙を流して彼女を抱きしめている。

「ジャンティーヌ殿のご両親、私は感謝される様なことはしておりません。結局最後は、彼女に助けられましたし…」

そう、私は結局ジャンティーヌ殿に助けられたのだ。それが悔しくて、唇を噛む。

「ジャンティーヌ殿の魔力は恐ろしい程強いのです。それにしても、あの程度の魔女の魔力でやられそうになるだなんて、情けない…私たちが教えた事の、半分も出来ておりませんでした…その上疲れて眠ってしまわれるだなんて。感情に任せて、変な使い方をするからですよ、全く！」

魔術師たちがなぜか訳の分からない事を言って怒っている。

「ジルド殿下、この国の復興の件ですが、ラッセル王国にも協力を依頼しました。木材などはもちろん、復興に必要な人たちもラッセル王国から手配してもらう事で話は纏まっています」

なんと、ラッセル王国が私たちの国の復興の手伝いをしてくれるだって！