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第37話:彼女はこの国の聖女だ~ジルド視点~
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ものすごい爆音と砂嵐が丘を覆いつくす。今まさに魔女とジャンティーヌ殿の激しい戦いが繰り広げられていたのだ。
すると次の瞬間、ジャンティーヌ殿が掛けてくれたバリアがスッと解けたのだ。
まさか…
「ジルド殿下、しっかりしてください!ジャンティーヌは大丈夫です。あの時ジャンティーヌの魔力は、今までに感じたことないほど高まっていました。きっとジャンティーヌは大丈夫ですよ」
「でも…」
その瞬間、やっと砂嵐が落ち着き始めると同時に、雲が晴れ、太陽が姿を現したのだ。そして、2人の姿を確認することが出来た。ジャンティーヌ殿は…
よかった!生きている。
しっかり立っているジャンティーヌ殿の姿が目に入った。
「ジャンティーヌ殿」
居てもたってもいられなくて、私はジャンティーヌ殿の元に急いだ。同じく兄でもあるジャクソン殿も、ジャンティーヌ殿の方に向かって走っている。
私の姿に気が付いたジャンティーヌ殿が、ニコリとほほ笑んだのだ。よかった、元気そうだ。そう思ったのも束の間、そのまま倒れ込んでしまったのだ。
「ジャンティーヌ殿!」
間一髪のところで、何とか抱きとめる事が出来た。ただ、意識を失っている様だ。顔色もあまり良くない。
「ジャンティーヌ殿、しっかりしてくれ。頼む、死なないでくれ!」
嫌だ、君が死んでしまったら、私はこれからどうやって生きていけばいいんだ。私はジャンティーヌ殿がいない世界でなんて、とても生きていく事なんて出来ない!
「ジルド殿下、落ち着いて下さい。ジャンティーヌはどうやら眠っているだけです。ほら、心臓も動いているし、寝息も聞こえる。それにしても、戦いの後にすぐに寝るだなんて、一体どういう神経をしているのだ?こいつは…」
そう言ってあきれ顔のジャクソン殿。なんだ、寝ているだけか…よかった!
「その場で眠ってしまうほどの魔力を使い、疲れたのでしょう。ジャンティーヌ殿、お疲れ様」
ギュッとジャンティーヌ殿を抱きしめた。温かくて柔らかい…もう二度と、彼女を離すものか!
「ジルド殿下、魔女ですが、完全に亡くなっております。どうしますか?」
魔女の亡骸を確認していた家臣たちが、私の元にやって来た。
「悪いが埋葬してやってくれ」
「埋葬するのですか?こいつは陛下や王妃殿下、さらに沢山の民たちを殺した女ですよ!遺体を晒して見世物にするくらいの事をしないと!」
「確かにこの女は、沢山の人を殺し、12年もの間人々を苦しめた。でも…遺体を晒し見世物にするなど、野蛮な事はよせ。そんな事、きっとジャンティーヌ殿は望まない!とにかく、この丘の上に埋葬して欲しい」
「…かしこまりました。二度と蘇らない様に、魔法を掛けておきます」
少し不満そうな家臣だったが、すぐに魔女を埋葬していた。ただし、犯罪者が眠る場所として、二度と蘇らない様にと魔法を必死に掛けていたが…
まあ、彼らの気持ちは分からなくもないので、そっとしておいた。
「さあ、シルビア殿下の元に戻りましょう。きっと俺たちの事を心配しているでしょうし」
「ええ、そうですね。帰りましょう。姉上の元に」
地下に戻るついでに、家臣たちが別の地下に避難している民たちに、報告してまわった。信じられないと言った感じの民たちが、一斉に外に出てくる。
「本当だ…やっと太陽の光を浴びる事が出来た」
「本当に魔女を倒してくださったのですね。ジルド殿下、ありがとうございます」
私たちにお礼を言う民たち。
「皆、礼ならここで眠るジャンティーヌ殿に言ってやってくれ。魔女を倒したのは、彼女だよ」
「何と、この少女…失礼、女性が魔女を倒したのですか?意識がないようですが?」
「眠っているだけだよ。魔女との激しい戦いで、かなりの魔力を消耗してしまったからね」
「そうだったのですか?もしやこの方は、聖女様!皆、聖女様が我が国を助けてくれたぞ」
「聖女様が!聖女様、ありがとうございます」
どこからともなく集まって来た民たちが、一斉にジャンティーヌ殿を拝みだしたのだ。
「やっぱりジャンティーヌ殿は、聖女様だったのですね」
「ジャンティーヌは聖女に興味がないから、きっと本人は全力で否定するぞ」
家臣たちやジャクソン殿が笑っている。確かにジャクソン殿言う通り、きっとジャンティーヌ殿は怒るだろう。でも、やっぱり君は、この国の聖女なんだ…
眠るジャンティーヌ殿のおでこに、そっと口づけをした。
「さあ殿下、シルビア殿下がお待ちです。急いで帰りましょう。殿下、ずっとジャンティーヌ殿を抱いていて大変でしょう。私が代わります」
家臣がスッと手をのばしてきたのだ。
「いいや、大丈夫だ。それよりも、姉上たちもきっと、心配しているだろう。急ごう」
ジャンティーヌ殿を他の男たちに触らせたくない。私にもこんな独占欲があったのだな。家臣たちも苦笑いしているし…
気を取り直して姉上が待つ地下を目指すが、既に魔女を倒したと言う噂を聞きつけた民たちに、あちこちで囲まれた。そのたびに、ジャンティーヌ殿は崇拝される。結局3時間近くかかって、地下のある場所に戻って来たのだった。
すると次の瞬間、ジャンティーヌ殿が掛けてくれたバリアがスッと解けたのだ。
まさか…
「ジルド殿下、しっかりしてください!ジャンティーヌは大丈夫です。あの時ジャンティーヌの魔力は、今までに感じたことないほど高まっていました。きっとジャンティーヌは大丈夫ですよ」
「でも…」
その瞬間、やっと砂嵐が落ち着き始めると同時に、雲が晴れ、太陽が姿を現したのだ。そして、2人の姿を確認することが出来た。ジャンティーヌ殿は…
よかった!生きている。
しっかり立っているジャンティーヌ殿の姿が目に入った。
「ジャンティーヌ殿」
居てもたってもいられなくて、私はジャンティーヌ殿の元に急いだ。同じく兄でもあるジャクソン殿も、ジャンティーヌ殿の方に向かって走っている。
私の姿に気が付いたジャンティーヌ殿が、ニコリとほほ笑んだのだ。よかった、元気そうだ。そう思ったのも束の間、そのまま倒れ込んでしまったのだ。
「ジャンティーヌ殿!」
間一髪のところで、何とか抱きとめる事が出来た。ただ、意識を失っている様だ。顔色もあまり良くない。
「ジャンティーヌ殿、しっかりしてくれ。頼む、死なないでくれ!」
嫌だ、君が死んでしまったら、私はこれからどうやって生きていけばいいんだ。私はジャンティーヌ殿がいない世界でなんて、とても生きていく事なんて出来ない!
「ジルド殿下、落ち着いて下さい。ジャンティーヌはどうやら眠っているだけです。ほら、心臓も動いているし、寝息も聞こえる。それにしても、戦いの後にすぐに寝るだなんて、一体どういう神経をしているのだ?こいつは…」
そう言ってあきれ顔のジャクソン殿。なんだ、寝ているだけか…よかった!
「その場で眠ってしまうほどの魔力を使い、疲れたのでしょう。ジャンティーヌ殿、お疲れ様」
ギュッとジャンティーヌ殿を抱きしめた。温かくて柔らかい…もう二度と、彼女を離すものか!
「ジルド殿下、魔女ですが、完全に亡くなっております。どうしますか?」
魔女の亡骸を確認していた家臣たちが、私の元にやって来た。
「悪いが埋葬してやってくれ」
「埋葬するのですか?こいつは陛下や王妃殿下、さらに沢山の民たちを殺した女ですよ!遺体を晒して見世物にするくらいの事をしないと!」
「確かにこの女は、沢山の人を殺し、12年もの間人々を苦しめた。でも…遺体を晒し見世物にするなど、野蛮な事はよせ。そんな事、きっとジャンティーヌ殿は望まない!とにかく、この丘の上に埋葬して欲しい」
「…かしこまりました。二度と蘇らない様に、魔法を掛けておきます」
少し不満そうな家臣だったが、すぐに魔女を埋葬していた。ただし、犯罪者が眠る場所として、二度と蘇らない様にと魔法を必死に掛けていたが…
まあ、彼らの気持ちは分からなくもないので、そっとしておいた。
「さあ、シルビア殿下の元に戻りましょう。きっと俺たちの事を心配しているでしょうし」
「ええ、そうですね。帰りましょう。姉上の元に」
地下に戻るついでに、家臣たちが別の地下に避難している民たちに、報告してまわった。信じられないと言った感じの民たちが、一斉に外に出てくる。
「本当だ…やっと太陽の光を浴びる事が出来た」
「本当に魔女を倒してくださったのですね。ジルド殿下、ありがとうございます」
私たちにお礼を言う民たち。
「皆、礼ならここで眠るジャンティーヌ殿に言ってやってくれ。魔女を倒したのは、彼女だよ」
「何と、この少女…失礼、女性が魔女を倒したのですか?意識がないようですが?」
「眠っているだけだよ。魔女との激しい戦いで、かなりの魔力を消耗してしまったからね」
「そうだったのですか?もしやこの方は、聖女様!皆、聖女様が我が国を助けてくれたぞ」
「聖女様が!聖女様、ありがとうございます」
どこからともなく集まって来た民たちが、一斉にジャンティーヌ殿を拝みだしたのだ。
「やっぱりジャンティーヌ殿は、聖女様だったのですね」
「ジャンティーヌは聖女に興味がないから、きっと本人は全力で否定するぞ」
家臣たちやジャクソン殿が笑っている。確かにジャクソン殿言う通り、きっとジャンティーヌ殿は怒るだろう。でも、やっぱり君は、この国の聖女なんだ…
眠るジャンティーヌ殿のおでこに、そっと口づけをした。
「さあ殿下、シルビア殿下がお待ちです。急いで帰りましょう。殿下、ずっとジャンティーヌ殿を抱いていて大変でしょう。私が代わります」
家臣がスッと手をのばしてきたのだ。
「いいや、大丈夫だ。それよりも、姉上たちもきっと、心配しているだろう。急ごう」
ジャンティーヌ殿を他の男たちに触らせたくない。私にもこんな独占欲があったのだな。家臣たちも苦笑いしているし…
気を取り直して姉上が待つ地下を目指すが、既に魔女を倒したと言う噂を聞きつけた民たちに、あちこちで囲まれた。そのたびに、ジャンティーヌ殿は崇拝される。結局3時間近くかかって、地下のある場所に戻って来たのだった。
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