あなた達のお望みどおりにして差し上げますわ~追放聖女は絶体絶命王子と幸せになります~

Karamimi

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第35話:あなただけは絶対に守りたい…

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「あんたの力はその程度かい?その程度で私をわざわざ呼び出して、私に勝つとほざいていたのかい?本当に、めでたい頭だね」

笑いながら魔力を放出する魔女。私には分かる、あの人、まだ全然本気を出していないという事を。私は受けるだけで精一杯なのに…

一体どれくらいの魔力を秘めているの、この魔女は。でも、絶対に負ける訳にはいかない。

「ジャンティーヌ殿!大丈夫か?このバリアを解いてくれ!」

私が魔女に押されている事に気が付いたのか、必死にジルド殿下が叫んでいる。今バリアを解いたら、きっとジルド殿下も家臣たちも、お兄様も殺されるだろう。そんな事は、絶対に出来ない。

とにかく、もっともっと集中しないと…

でも…

「あんた、自分の魔力を全然引き出せない様だね。本番に弱いタイプかい?さあ、そろそろお遊びはここまでだ。さっさとケリを付けよう!」

そう叫ぶと魔女が、一気に魔力をぶつけて来たのだ。

「キャァァァ」

あまりの凄まじい魔力に、一気に吹き飛ばされた。その瞬間、バリアも崩れ落ちる。

「ジャンティーヌ殿!」

「ジルド…殿下…」

私、あの魔女に勝てなかったのね…認めたくはない、でも…現実は…

気が付くと瞳から涙が溢れ出ていた。

「しぶといね、まだ生きているのかい?」

私の元にやって来たのは、魔女だ。私を庇う様に抱きしめるジルド殿下。

「魔女、頼む、どうか彼女を殺さないでくれ。君は私の両親を恨んでいるのだろう?殺すのなら、私を殺せばいい!」

「ジルド…殿下…ダメ…」

「ジャンティーヌ殿、すまない。君に随分と負担をかけてしまった。すぐに助けるから」

ジルド殿下が、私に治癒魔法を掛けてくれたのだ。

「ジルドと言ったね、その小娘を助けたいのかい?いいだろう、それなら私の言う事を聞けば、助けてやってもいいよ」

「本当か?どうすればいい?彼女の為なら、私は何でもする」

「ダメ、ジルド殿下。私はまだ戦えますわ。どうか…」

「ジャンティーヌ殿、ありがとう。でも、もういいんだ。このままだと、本当に君が殺されてしまう。それで魔女、私はどうすればいい?」

「あんた、本当に元国王にそっくりだね。私の夫になって、生涯傍にいてくれたら、その小娘を見逃してあげるわ」

この魔女、何を言っているの!ふざけないで!ジルド殿下はこの12年、ずっと苦しんできた。それなのに、一生彼を縛り付けると言うの?

「ふざけないで、そんな事、絶対にさせないわ!ジルド殿下、私はまだ戦えます。どうか、魔女のいう事は無視してください」

必死にジルド殿下に訴える。そんな私に優しく微笑んだジルド殿下。そして

「わかったよ、私があなたの夫になれば、ジャンティーヌ殿を助けてくれるんだよね。それじゃあ、私はあなたと結婚するよ」

「それは本当かい?あんたは随分と賢い様だね。いいだろう、あんたをこの国の王にしてあげるよ。この国はあんたのものだ!さあ、こっちにおいで」

嬉しそうに手をのばす魔女。

「ジルド殿下、絶対にダメです。お願い、行かないで。私、必ず魔女を倒します。だから、どうか私の傍にずっといて下さい。私、ジルド殿下が好きです。大好きです。あなたと一緒に、この国で未来を共に歩みたい」

必死にジルド殿下に訴えかける。

「ありがとう、最後にジャンティーヌ殿の気持ちが聞けて嬉しかったよ。どうか、幸せになってくれ。私は君の幸せを、誰よりも願っているから」

そう言うと、すっと魔女の手を握ったのだ。

「賢い子だね。本当に、見れば見るほど男前だね。ジャンティーヌとか言ったね。あんたのお陰で、この子が手に入ったらよかったよ。それじゃあね」

嫌よ…
私は今まで、何の為に訓練を受けて来たの?このままジルド殿下を魔女に取られてしまうだなんて、絶対に嫌!!!

「魔女!まだ戦いは終わっていないわ。ジルド殿下を連れて行くのなら、私を殺してからにしなさい!」


「ジャンティーヌ殿、君は一体何を?」

「ジルド殿下、私はあなたのいない世界でなんて生きていきたくない!何より、あなたを犠牲にしてまで、惨めったらしく生きていくなんて嫌なのです。それなら、正々堂々魔女に殺された方がましですわ!さあ、魔女、戦いの続きをしましょう!」

ジルド殿下を犠牲にしてまで、私は生きるなんて嫌だ。何よりもジルド殿下を、他の女に取られるだなんて…

それならいっその事、死んだほうがましだわ!
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