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第34話:魔女とご対面です
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すると、再び見る見る分厚い雲がやって来た。そして
「私の邪魔をするのは、あんただね、ジャンティーヌ」
私の前に姿を現したのは、真っ黒な髪を腰まで伸ばし、黒い服を着た女性だ。
「あなたが魔女ね。どうして私の名前を知っているの?」
「どうして?私は何でも知っているよ。あそこにいるのは、国王の息子だね。あの人によく似ている。私を裏切った、あの人に」
魔女の視線の先には、ジルド殿下が。彼に向かって攻撃を仕掛けようとしている。もちろん、ジルド殿下に手を出させるつもりはない。
“バリア”
魔力を集中させ、後ろにいたジルド殿下を始め、家臣やお兄様たちをバリア魔法で囲った。その瞬間、魔女の魔力がバリアを襲ったが、破られることはなかった。
「あんた、バリア魔法を使ったね。私の攻撃を跳ね除けるだなんて、中々だね」
魔女がニヤリと笑う。何だろう、この感じは…
体中が凍り付くような、そんな笑みを浮かべる魔女に、一瞬ひるみそうになるのを、必死に堪えた。
「ジャンティーヌ殿、一体何をしたんだい?何も聞こえないし、魔女の攻撃が跳ね返って行ったよ」
必死にジルド殿下が叫んでいる。そう、私の掛けたバリア魔法は、バリアの内側にいる人間には、外側にいる人間の声などは聞こえないのだ。ただし、内側の人間の声は聞こえる。
「ジルド殿下、落ち着いて下さい。ジャンティーヌはバリア魔法を使ったのでしょう。要するに、魔女は私が倒すから、お前たちはそこで見ていろとでも言いたいのでしょう」
はぁ~っと、お兄様がため息を付いている。その通り、さすがお兄様だ。
「外野がうるさいが、まあいい。あんた、クリスティル王国の王太子殿下…いいえ、国王に捨てられたんだろう?あんた、アーロンとかいう国王が憎くないのかい?」
「アーロン様が国王ですって?まさか…」
「情報に疎い子だね、クリスティル王国の元国王は、2ヶ月前に亡くなったよ。それで今は、あんたの元婚約者が国王って訳さ。私はね、このコウモリを使って、色々な国の情報を集めているからね。もちろん、この国の王族たちの情報も知っているよ」
それならどうして、今まで沈黙を守って来たのかしら?この人、ジルド殿下やシルビア殿下の命を奪おうとしていたのではないの?
「それならどうして王族をさっさと殺さないかって?そんな事をしたら、つまらないじゃないか。あいつらには生き地獄を味合わせてやった方がいいだろう。それなのに、お前が現れた。でも私は、寛大な心を持っているからね。どうだい?私と手を組んで、ついでにクリスティル王国も魔物たちの住処にしてしまわないかい?お前、あの国王が憎いだろう?一緒に復讐をしよう」
クリスティル王国を、魔物の住処にですって?
「ふざけないで!確かにアーロン様には幻滅したわ。でも、そこに住む民たちまで巻き込む様なことは、絶対に私はしない!あなたと一緒にしないで!」
この女の醜い嫉妬心のせいで、どれほど沢山の人が命を落とし、涙を流してきたか。リマだって!悔しくて悲しくて、涙が溢れそうになるのを必死に堪えた。
「そうかい、思ったより愚かなんだね。もっと賢いと思ったのだけれど。言っとくが、あんたは私には勝てないよ。私はね、ずっと魔力を磨いてきたのよ。たかだが16歳の小娘に負ける程、私の魔力を甘く見ないで」
「それはやってみないと分からないでしょう!私は絶対に、あなたを倒して見せるわ。この国の人たちの為にも、ジルド殿下の為にも!」
「なんだ、あんた、あの男が好きなんだね。確かに男前だものね。若い頃の陛下にそっくり。あの人も私を選んでおけば、あんな形で死ぬこともなかったのに。バカな男…」
切なそうに呟く魔女。その顔を見た瞬間、きっとこの人はジルド殿下のお父様の事が本当に好きだったのだろう。だからと言って、魔女がやった事は許される事でもないし、全く理解しがたい。どうして好きな人を苦しめる様なことをするのだろう…
「最後にもう一度聞くよ。私と手を組む気はないかい?あんたが私と手を組めば、あの男の命だけは助けてやろう。どうだい?」
「何度も申し上げているでしょう。私はあなたと手なんて組まないわ。絶対にね!」
誰が魔女なんかと手を組むものですか。私は絶対に、魔女を許さない。
「そうか…それじゃあ、この場で息絶える事だね」
魔女が一気に魔力を放出してきた。私も手に魔力を集中させ、一気に魔力を放出する。
ものすごい魔力がぶつかり合い、周りはすごい風が吹き荒れている。何なの、この魔力は…
今までに感じた事のない凄まじい魔力が、私に襲い掛かる。もちろん、負ける訳にはいかない。魔術師たちの言葉を思い出し、精神を集中させた。
こうして私と魔女との戦いの火ぶたが、切って落とされたのだった。
「私の邪魔をするのは、あんただね、ジャンティーヌ」
私の前に姿を現したのは、真っ黒な髪を腰まで伸ばし、黒い服を着た女性だ。
「あなたが魔女ね。どうして私の名前を知っているの?」
「どうして?私は何でも知っているよ。あそこにいるのは、国王の息子だね。あの人によく似ている。私を裏切った、あの人に」
魔女の視線の先には、ジルド殿下が。彼に向かって攻撃を仕掛けようとしている。もちろん、ジルド殿下に手を出させるつもりはない。
“バリア”
魔力を集中させ、後ろにいたジルド殿下を始め、家臣やお兄様たちをバリア魔法で囲った。その瞬間、魔女の魔力がバリアを襲ったが、破られることはなかった。
「あんた、バリア魔法を使ったね。私の攻撃を跳ね除けるだなんて、中々だね」
魔女がニヤリと笑う。何だろう、この感じは…
体中が凍り付くような、そんな笑みを浮かべる魔女に、一瞬ひるみそうになるのを、必死に堪えた。
「ジャンティーヌ殿、一体何をしたんだい?何も聞こえないし、魔女の攻撃が跳ね返って行ったよ」
必死にジルド殿下が叫んでいる。そう、私の掛けたバリア魔法は、バリアの内側にいる人間には、外側にいる人間の声などは聞こえないのだ。ただし、内側の人間の声は聞こえる。
「ジルド殿下、落ち着いて下さい。ジャンティーヌはバリア魔法を使ったのでしょう。要するに、魔女は私が倒すから、お前たちはそこで見ていろとでも言いたいのでしょう」
はぁ~っと、お兄様がため息を付いている。その通り、さすがお兄様だ。
「外野がうるさいが、まあいい。あんた、クリスティル王国の王太子殿下…いいえ、国王に捨てられたんだろう?あんた、アーロンとかいう国王が憎くないのかい?」
「アーロン様が国王ですって?まさか…」
「情報に疎い子だね、クリスティル王国の元国王は、2ヶ月前に亡くなったよ。それで今は、あんたの元婚約者が国王って訳さ。私はね、このコウモリを使って、色々な国の情報を集めているからね。もちろん、この国の王族たちの情報も知っているよ」
それならどうして、今まで沈黙を守って来たのかしら?この人、ジルド殿下やシルビア殿下の命を奪おうとしていたのではないの?
「それならどうして王族をさっさと殺さないかって?そんな事をしたら、つまらないじゃないか。あいつらには生き地獄を味合わせてやった方がいいだろう。それなのに、お前が現れた。でも私は、寛大な心を持っているからね。どうだい?私と手を組んで、ついでにクリスティル王国も魔物たちの住処にしてしまわないかい?お前、あの国王が憎いだろう?一緒に復讐をしよう」
クリスティル王国を、魔物の住処にですって?
「ふざけないで!確かにアーロン様には幻滅したわ。でも、そこに住む民たちまで巻き込む様なことは、絶対に私はしない!あなたと一緒にしないで!」
この女の醜い嫉妬心のせいで、どれほど沢山の人が命を落とし、涙を流してきたか。リマだって!悔しくて悲しくて、涙が溢れそうになるのを必死に堪えた。
「そうかい、思ったより愚かなんだね。もっと賢いと思ったのだけれど。言っとくが、あんたは私には勝てないよ。私はね、ずっと魔力を磨いてきたのよ。たかだが16歳の小娘に負ける程、私の魔力を甘く見ないで」
「それはやってみないと分からないでしょう!私は絶対に、あなたを倒して見せるわ。この国の人たちの為にも、ジルド殿下の為にも!」
「なんだ、あんた、あの男が好きなんだね。確かに男前だものね。若い頃の陛下にそっくり。あの人も私を選んでおけば、あんな形で死ぬこともなかったのに。バカな男…」
切なそうに呟く魔女。その顔を見た瞬間、きっとこの人はジルド殿下のお父様の事が本当に好きだったのだろう。だからと言って、魔女がやった事は許される事でもないし、全く理解しがたい。どうして好きな人を苦しめる様なことをするのだろう…
「最後にもう一度聞くよ。私と手を組む気はないかい?あんたが私と手を組めば、あの男の命だけは助けてやろう。どうだい?」
「何度も申し上げているでしょう。私はあなたと手なんて組まないわ。絶対にね!」
誰が魔女なんかと手を組むものですか。私は絶対に、魔女を許さない。
「そうか…それじゃあ、この場で息絶える事だね」
魔女が一気に魔力を放出してきた。私も手に魔力を集中させ、一気に魔力を放出する。
ものすごい魔力がぶつかり合い、周りはすごい風が吹き荒れている。何なの、この魔力は…
今までに感じた事のない凄まじい魔力が、私に襲い掛かる。もちろん、負ける訳にはいかない。魔術師たちの言葉を思い出し、精神を集中させた。
こうして私と魔女との戦いの火ぶたが、切って落とされたのだった。
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