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第33話:魔女を呼び出します

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翌朝、いつもの様に朝早く起きた私は、日課でもある筋力トレーニングを行った。そしていつもの様に着替えを済ませる。今日の衣装は、女騎士団の姿だ。戦いに行くのなら、やっぱりこの衣装よね。

そしていつもの様に、食糧などを持って皆の元へと向かった。

「おはようございます、皆様」

「おはよう、ジャンティーヌ殿。今日の衣装、なんだか新鮮だね。女騎士の衣装か」

私の元にやって来たのは、ジルド殿下だ。昨日の事を思い出し、なんだか恥ずかしくなり、目をスッとそらした。て、私は何をしているのかしら?しっかりしないと。

「ええ、そうですわ。騎士団で稽古を積んでいた時は、ずっとこの衣装でしたので」

「ジャンティーヌ殿は、男どもが沢山いる騎士団で稽古をしていたのだったね。その…口説かれたりしなかったかい?」

ん?私が口説かれる?

「ジルド殿下、ジャンティーヌを口説こうだなんて猛者はあなたくらいですよ。なあ、ジャンティーヌ」

「ちょっとお兄様!それはどういう意味ですか?」

すかさず口を挟むお兄様、本当に失礼しちゃうわ。これでも令嬢なのよ!

ただ、お兄様のお陰で空気が和らいだ気がする。そのまま和やかな空気のまま、朝食を頂いた。

そしていよいよ、外に出る。

“リマ、私、今から魔女と戦ってくるわ。どうか見守っていてね”

胸からぶら下がっているリマから貰った大切なお守りを握りしめた。

「ジャンティーヌ殿、そろそろ行こう」

「ええ、分かりましたわ」

ジルド殿下と数名の家臣、お兄様と一緒に外に出る準備をする。残りの者たちは、地下で待機だ。今日は外に出ない様に、他の地下に避難している人達にも伝えてある。その為に、昨日多めに食糧も運んだのだ。

「ジルド、ジャンティーヌちゃん、それからジャクソン様、どうか…どうか無理をなさらずに。無事に生きて帰って来てください。私は何も出来ないけれど、この場所でずっと祈っているから」

今にも泣きそうな顔のシルビア殿下。

「大丈夫ですわ、私が誰も死なせませんから。どうかシルビア殿下は、ここで美味しいお料理を作って待っていて下さい。それでは、行ってきます」

「シルビア殿下、この戦いが終わったら、どうか俺と結婚して欲しい。その為にも、必ず生きて帰って来るから」

「ジャクソン様…」

お兄様ったら、こんな時に愛の告白をするだなんて。まあ、ジルド殿下も似たようなのもか…

シルビア殿下や家臣、平民たちと挨拶を交わした後、地上に出る。相変わらず分厚い雲が覆っている。

「ジャンティーヌ殿、戦いの地は、あの丘の上がいいと考えているのだが…」

「ええ、もちろん大丈夫ですわ。それでは参りましょう」

あの場所なら、多少暴れても問題ないだろう。きっとジルド殿下も、地下の人々に被害が及ばない様に、考えてくれたのだろう。ジルド殿下らしいわ。そんなところも、素敵なのよね。

私達は丘を目指して歩き始めた。ただ、丘は思った以上に遠く、さらに魔物たちからの攻撃も受けるため、中々到着できない。それでも、何とか1時間半かけて、丘までやって来た。

「ジャンティーヌ、どうやって魔女を呼び寄せるつもりだい?」

お兄様が私に問いかけて来た。

「まあ見ていてください。お兄様、それに皆様も、少し私から離れて下さいますか?」

そう、私には秘策があるのだ。一旦私から皆を遠ざけた。

皆が離れたのを確認すると、両手を空に向かって広げる。そして

“雲よ、散れ”

魔力を集中させ、天に向かって魔力を放出する。すると次の瞬間

「雲がどんどん消えていく…青空だ!青空が見えたぞ。太陽の光だ、なんて温かいんだ!」

「太陽だ…太陽の光だ」

家臣たちが一斉に歓喜の声を上げだした。

「ジャンティーヌ殿、君は本当に聖女なのではないのかい?こんな事が出来るだなんて」

嬉しそうに私の元にやって来たのは、ジルド殿下だ。

「殿下、どうかまだ私の傍に近づかないで下さい。それに、これからが本番ですわ」


そう、ここからが本番なのだ。さあ、いらっしゃい、魔女さん。
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