上 下
27 / 53

第27話:ジャクソン殿と仲良くなりました~ジルド視点~

しおりを挟む
「ジャクソン殿、今日は本当にありがとうございました。よかったら一緒に食事をしませんか?ただ、こんな地下での食事ですので、無理にとは言いませんが」

すかさずジャクソン殿を食事に誘った。

「ちょっと、ジルド。あなたは何を言っているの?こんな薄暗い地下で、ジャクソン様が食事をするだなんて。ジャクソン様には、ちゃんと帰る家があるのだから…」

「いいのですか!それじゃあ、俺も一緒に食事をします。さあ、シルビア殿下、一緒に食事をしましょう。そうそう、朝も言いましたが、ラッセル王国で人気のお菓子を持ってきたのです。後で一緒に食べましょう。皆さんの分もありますからね」

せっかくなので、ジャクソン殿も一緒に皆で食事をした。気さくで話しやすいジャクソン殿下は、すっかり皆に溶け込んでいた。

「ジャクソン殿は本当にジャンティーヌ殿に似ていらっしゃいますね。あなた様がいると、ジャンティーヌ殿が戻って来てくれたみたいです。彼女は本当に明るくて、今のあなた様みたいに、こうやって場の空気を和ませてくれていたのですよ」

「ジャンティーヌと私は、性格がよく似ておりますので。頑固なところとか、こうと決めたら絶対に譲らないところとかもそっくりなんですよ。あれ?シルビア殿下、全然食べていないじゃないですか?このお肉、美味しいですよ。ぜひ食べて下さい。こっちの野菜も、今日取れたばかりです」

ジャクソン殿がすかさず姉上の世話を焼く。

「そう言えばジャンティーヌ殿も、よくそうやってジルド殿下の世話を焼いていましたな。そんなところまで、兄妹そっくりだ」

そう言って家臣たちが笑っている。ジャンティーヌ殿は、いつも私の事を気にかけてくれていたな。それが嬉しくて…ジャンティーヌ殿の事を思い出したが、なんだか無性に彼女に会いたくなった。

その後も楽しい食事の時間が続いた。

食後はジャクソン殿を見送り、自室に戻ってきた。すると

「ジルド殿下、少し話をしたいのですが、いいですか?」

私の元にやって来たのは、ジャクソン殿だ。

「ジャクソン殿、国に戻ったのではないのですか?」

「そのつもりだったのですが、どうしてもあなたとお話をしたくて、戻ってきました」

「そうだったのですね。どうぞ」

ジャクソン殿を部屋に招き入れた。

「ジルド殿下、ジャンティーヌから色々とあなたのお話しは聞いております。非常に優秀で、とてもお優しい方だと。実は俺、どうしてジャンティーヌがこの国の為に、ここまで尽くすのか全く理解できなかったのです。確かに愚かなアーロン殿下に国を追い出され、死にかけていたところを助けられたと言っても、命をかけてまで戦うだなんて!と。でも、昨日あなた達に会って、何となくジャンティーヌの気持ちが分かりました。あなた達を見ていると、なんだかじっとなんてしていられないと言う気持ちになるんですよね」

アーロン殿下とは、ジャンティーヌ殿の元婚約者の名前だろう。

「ジャンティーヌ殿は、きっと情が深いのでしょう。それにしてもジャクソン殿とジャンティーヌ殿は、よく似ていますね。あなたといると、ジャンティーヌ殿が傍にいる様な気持ちになります。ジャンティーヌ殿は元気にしておりますか?」

「ええ、元気ですよ。ただ、毎日騎士団長にしごかれて、クタクタですが。その上、夜は魔術師たちと勉強をしている様で。まあ、死にはしないでしょうから、気にしないで下さい」

「死にはしないとは、一体どういう事ですか?それほどまでに過酷な事を、ジャンティーヌ殿はしているのですか?万が一体を壊したらどうするのです。すぐに止めさせてください」

私たちの為に、そんな辛い思いをしているだなんて!彼女には辛い思いなんて、して欲しくない。

「ジルド殿下は、ジャンティーヌの事を大切に思ってくれているのですね。でも、ジャンティーヌは好きでやっているのです。毎日生き生きとしたジャンティーヌの顔を見ていたら、とても俺には止められません。あんなにも生き生きとしたジャンティーヌの顔を見たのは、初めてです。きっとジャンティーヌを変えたのは、あなたなのでしょう」

「私は何もしていません。むしろ、私の方が彼女に変えてもらったくらいですから…」

ジャンティーヌ殿のお陰で、私は随分と前向きになれた。それに彼女がいてくれたら、どんな事でも頑張れる、そんな気がする。

「そうですか、それじゃあ、お互いがいい方向で変わっているという事ですね。ジャンティーヌは素敵な男性を見つけたものだ。俺もあなたたちみたいな関係になれる様に、頑張らないと」

そう言ってジャクソン殿が笑っている。

「あの…ジャクソン殿は、その…姉上の事が…」

「ええ、好きです。彼女を初めて見た瞬間、ビビッと来たのです。一目ぼれという奴ですね。実を言うと俺、20年間ずっと女性に興味がなかったのです。それでも俺は、公爵家の嫡男。いずれ誰かと結婚しないと、そう思っていました。でも…」

ジャクソン殿が天井を見上げた。

「どんなに美しい女性を見ても、全く心が動かないのです。それがどうしようもなく苦しくて…そんな俺を見た両親が“無理に結婚する必要は無い。もしジャクソンが結婚しないなら、養子を迎えればいいから”と言ってくれて。そんな中、彼女に出会った。俺はこのチャンスを逃したくはないと思っています。もちろん、無理やり手に入れたりはしませんから、安心してください。いつかシルビア殿下に受け入れてもらえる様、頑張るつもりですよ」

そう言って笑ったジャクソン殿。彼ならきっと、姉上を幸せにしてくれる。なんだかそんな気がした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ほらやっぱり、結局貴方は彼女を好きになるんでしょう?

望月 或
恋愛
ベラトリクス侯爵家のセイフィーラと、ライオロック王国の第一王子であるユークリットは婚約者同士だ。二人は周りが羨むほどの相思相愛な仲で、通っている学園で日々仲睦まじく過ごしていた。 ある日、セイフィーラは落馬をし、その衝撃で《前世》の記憶を取り戻す。ここはゲームの中の世界で、自分は“悪役令嬢”だということを。 転入生のヒロインにユークリットが一目惚れをしてしまい、セイフィーラは二人の仲に嫉妬してヒロインを虐め、最後は『婚約破棄』をされ修道院に送られる運命であることを―― そのことをユークリットに告げると、「絶対にその彼女に目移りなんてしない。俺がこの世で愛しているのは君だけなんだ」と真剣に言ってくれたのだが……。 その日の朝礼後、ゲームの展開通り、ヒロインのリルカが転入してくる。 ――そして、セイフィーラは見てしまった。 目を見開き、頬を紅潮させながらリルカを見つめているユークリットの顔を―― ※作者独自の世界設定です。ゆるめなので、突っ込みは心の中でお手柔らかに願います……。 ※たまに第三者視点が入ります。(タイトルに記載)

ふしだらな悪役令嬢として公開処刑される直前に聖女覚醒、婚約破棄の破棄?ご冗談でしょ(笑)

青の雀
恋愛
病弱な公爵令嬢ビクトリアは、卒業式の日にロバート王太子殿下から婚約破棄されてしまう。病弱なためあまり学園に行っていなかったことを男と浮気していたせいだ。おまけに王太子の浮気相手の令嬢を虐めていたとさえも、と勝手に冤罪を吹っかけられ、断罪されてしまいます。 父のストロベリー公爵は、王家に冤罪だと掛け合うものの、公開処刑の日時が決まる。 断頭台に引きずり出されたビクトリアは、最後に神に祈りを捧げます。 ビクトリアの身体から突然、黄金色の光が放たれ、苛立っていた観衆は穏やかな気持ちに変わっていく。 慌てた王家は、処刑を取りやめにするが……という話にする予定です。 お気づきになられている方もいらっしゃるかと存じますが この小説は、同じ世界観で 1.みなしごだからと婚約破棄された聖女は実は女神の化身だった件について 2.婚約破棄された悪役令嬢は女神様!? 開国の祖を追放した国は滅びの道まっしぐら 3.転生者のヒロインを虐めた悪役令嬢は聖女様!? 国外追放の罪を許してやるからと言っても後の祭りです。 全部、話として続いています。ひとつずつ読んでいただいても、わかるようにはしています。 続編というのか?スピンオフというのかは、わかりません。 本来は、章として区切るべきだったとは、思います。 コンテンツを分けずに章として連載することにしました。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

【完結】名ばかりの妻を押しつけられた公女は、人生のやり直しを求めます。2度目は絶対に飼殺し妃ルートの回避に全力をつくします。

yukiwa (旧PN 雪花)
恋愛
*タイトル変更しました。(旧題 黄金竜の花嫁~飼殺し妃は遡る~) パウラ・ヘルムダールは、竜の血を継ぐ名門大公家の跡継ぎ公女。 この世を支配する黄金竜オーディに望まれて側室にされるが、その実態は正室の仕事を丸投げされてこなすだけの、名のみの妻だった。 しかもその名のみの妻、側室なのに選抜試験などと御大層なものがあって。生真面目パウラは手を抜くことを知らず、ついつい頑張ってなりたくもなかった側室に見事当選。 もう一人の側室候補エリーヌは、イケメン試験官と恋をしてさっさと選抜試験から引き揚げていた。 「やられた!」と後悔しても、後の祭り。仕方ないからパウラは丸投げされた仕事をこなし、こなして一生を終える。そしてご褒美にやり直しの転生を願った。 「二度と絶対、飼殺しの妃はごめんです」 そうして始まった2度目の人生、なんだか周りが騒がしい。 竜の血を継ぐ4人の青年(後に試験官になる)たちは、なぜだかみんなパウラに甘い。 後半、シリアス風味のハピエン。 3章からルート分岐します。 小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。 表紙画像はwaifulabsで作成していただきました。 https://waifulabs.com/

舞台装置は壊れました。

ひづき
恋愛
公爵令嬢は予定通り婚約者から破棄を言い渡された。 婚約者の隣に平民上がりの聖女がいることも予定通り。 『お前は未来の国王と王妃を舞台に押し上げるための装置に過ぎん。それをゆめゆめ忘れるな』 全てはセイレーンの父と王妃の書いた台本の筋書き通り─── ※一部過激な単語や設定があるため、R15(保険)とさせて頂きます 2020/10/30 お気に入り登録者数50超え、ありがとうございます(((o(*゚▽゚*)o))) 2020/11/08 舞台装置は壊れました。の続編に当たる『不確定要素は壊れました。』を公開したので、そちらも宜しくお願いします。

いなくなった幼馴染の身代わり婚約者となった私。でも今になってその幼馴染が見つかったそうです

新野乃花(大舟)
恋愛
シュノード第一王子が心から慕っていた婚約者エリスは、ある日突然その姿を消してしまう。打ちひしがれるシュノードであったものの、その時彼の目に一人の貴族令嬢の姿が映る。名をセレーナと言う彼女のその姿は、いなくなったエリスと完全に瓜二つであり、シュノードはエリスの身代わり婚約者として、セレーナにエリスを演じさせることを命令する。セレーナとしての自分を押し殺し、シュノードが理想とするエリスになるべく懸命に頑張るセレーナは、日に日に自分を失っていく。しかしそんなある日の事、それまで姿を消していたエリスが突然にシュノードのもとに帰ってくる。その時、シュノードは信じられない決断を下すのだった…。

婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした

アルト
ファンタジー
今から七年前。 婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。 そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。 そして現在。 『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。 彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。

完結 裏切られて可哀そう?いいえ、違いますよ。

音爽(ネソウ)
恋愛
プロポーズを受けて有頂天だったが 恋人の裏切りを知る、「アイツとは別れるよ」と聞こえて来たのは彼の声だった

処理中です...