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第26話:ジャクソン殿が加わりました~ジルド視点~

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「それでは私たちはそろそろ帰りますわ。ジルド殿下、シルビア殿下、それに家臣の皆様、またいつでも私たちを呼んでください。それでは失礼いたします」

「ちょっと待ってください!シルビア殿下、君は女性だ。魔物にいつ襲われるかもわからず、こんな薄暗い地下にずっといるなんて辛いでしょう。どうかラッセル王国に来てください。俺が必ずあなたを守りますから」

何を思ったのか、ジャクソン殿が姉上にそんな提案をして来たのだ。姉上もびっくりして目を丸くして固まっている。

「確かに、シルビア殿下にとっては、この地は過酷そのものですわね。ジャクソンもそう言っているし、ぜひラッセル王国にいらしてはいかが?」

ジャンティーヌ殿の母上までも、そんな事を言いだしたのだ。確かに姉上にとって、この地は過酷以外何物でもないだろう。

「姉上、せっかくそう言って頂いているのだから、ラッセル王国に避難してはどうですか?」

「ジルドまで、何を言っているの?ジャンティーヌちゃんのお母様、それにお兄様も。私の事を気にかけて下さって、ありがとうございます。お気持ちは嬉しいのですが、私はこの地を離れるつもりはございません。私はこの地で、ジャンティーヌちゃんを待ちますわ」

「でも、この地はとても危険だと聞いています。ジャンティーヌの友人も、地下に隠れていたところを魔物に見つかって殺されたと聞きました。だからどうか…」

「止めろ!ジャクソン。シルビア殿下にはシルビア殿下の思いがあるのだろう。ジャンティーヌからあなた達王族が置かれている状況を、すべて聞いております。シルビア殿下は誰よりも弟思いで、優しい女性という事も。今この状況で、シルビア殿下がジルド殿下を置いてこの国を出る事はないだろう。そんな事くらい、お前も分かっているだろう?シルビア殿下、息子が失礼いたしました」

「いえ、私の方こそ、せっかくのご厚意を無にしてしまい、申し訳ございません」

ジャンティーヌ殿の父上と姉上がそれぞれ頭を下げている。ただ、ジャクソン殿は少し不満な様だ。

「それでは私たちはこれで失礼いたします」

「ジャンティーヌ殿のご両親、それにジャクソン殿、魔術師の皆さん、本当にありがとうございました」

すかさず皆に向かってお礼を伝え、深々と頭を下げる。すると、笑顔で会釈をして、消えてしまった。

「ジャンティーヌちゃんのご家族は、本当に素敵な方だったわね」

「ええ、そうですね」

本当に素敵な家族だったな。それにしてもジャクソン殿、きっと姉上に興味があるのだろう。姉上は今まで色恋などには無縁だった。本人も

“私は誰とも結婚しない”

そう言っていた。でも…正直私は、姉上にも幸せになって欲しい。出来れば他国に嫁いで、この地獄から抜け出して欲しい。そう思っている。

翌日
今日も沢山の食糧が届いた。さらに

「シルビア殿下、ラッセル王国で人気のお菓子を持ってきたよ。一緒に食べよう。それから、ジルド殿下、俺も食糧を配る手伝いをするよ。俺はこう見えて、騎士団で務めていたこともあるんだ。ジャンティーヌ程ではないが、魔力量も多い。きっと役に立つはずだ」

なぜか食糧と共にやって来たジャクソン殿。物凄い笑顔だ。

「ジャクソン殿、有難いのですが、外はとても危険です。もしあなた様に何かあったら…」

「ジャンティーヌも戦っていたのだろう?それに今、ジャンティーヌがいないのですから、ここは俺がジャンティーヌの代わりになります。両親にも許可を取っておりますので。早速食糧を届けに行きましょう」

なぜかものすごく張り切っているジャクソン殿。なんだか断れる空気ではないので、とりあえず彼も一緒に行く事になった。

外に出た瞬間

「これは酷い…ジャンティーヌが何が何でも魔女を倒したいという気持ちもわかるよ。とにかく、どこから魔物が襲ってくるか分からない。警戒して進まないと」

さすが騎士団経験者のジャクソン殿。魔物が現れると、物凄い攻撃魔法で次々と魔物を倒していく。

私も負けていられない、ジャクソン殿に刺激され、いつも以上に魔物を倒していった。ジャクソン殿は周りもよく見ていて、襲われそうになっている家臣たちをうまく助けながら戦っている。

この人、凄い…

素直にそう思った。

「ジャクソン殿はとても強いのですね。それに周りを見ているし、凄いです」

「ジルド殿下だって、かなりお強いではありませんか。私はまだまだです、やはり少し騎士団を離れていると、こんなにも腕が落ちるのですね」

そう言って笑っていた。この人、意外と謙虚な様だ。

無事食糧を配り終えると、地下に戻ってきた。

「おかえりなさい、皆」

「シルビア殿下!ただいま」

嬉しそうにシルビア殿下の方に走っていくジャクソン殿。この人、本当に分かりやすい性格をしているな。

それになんだか、ジャンティーヌ殿とどことなく似ているせいか、とても親近感が湧く…
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