24 / 53
第24話:ジャンティーヌ殿がいないのダメな様だ~ジルド視点~
しおりを挟む
ジャンティーヌ殿がラッセル王国に向かってから、早2週間。この2週間、考える事と言えば、ジャンティーヌ嬢の事ばかり。
ジャンティーヌ嬢、今頃稽古に励んでいるかな?きっと彼女の事だ、辛い稽古に耐えながら必死で頑張っているのだろう。でも…もし平和なラッセル王国が気に入って、もうこの国には帰ってこなくなったら…
ついそんな事を考えてしまう。
ダメだ、そんな事を考えては。第一、彼女にとってはそのまま平和なラッセル王国で暮らした方が幸せなんだ!そうだ、そうに決まっている。
とにかく、私は少しでもこの国の人々の為にも、魔物たちを減らさないと。そんな思いで、必死に魔物たちと戦っていく。
「殿下、あまり無茶はしないで下さい。万が一あなた様の身に何かあったら、ジャンティーヌ殿が悲しみます」
「分かっている。でも、少しでも魔物を減らさないと!」
私の気持ちとは裏腹に、毎日沢山のケガ人が出ている。いつもならジャンティーヌ殿が治癒魔法を掛けてくれていたが、今は彼女がいない。姉上を含めた女性たちが必死に治癒魔法を掛けているが、追いついていないのだ。
これ以上ケガ人が出るのはまずい。そう思い、魔物との戦いは極力避け、食糧を運ぶ事を重点に置く事にした。
有難い事に、毎日食糧などは欠かさず送られてくるのだ。
「ジルド、今頃ジャンティーヌちゃんはどうしているのかしらね?なんだか最近、地下内の空気も暗いし。やっぱりジャンティーヌちゃんの存在が、かなり大きかったのね。私も早くジャンティーヌちゃんに会いたいわ」
私の横で、姉上がため息を付いている。
「ジャンティーヌ殿は、元々他国の人間なんだ。安全で平和なラッセル王国にいる方が、彼女にとっては幸せだろう。だから、無理して帰ってくる必要は無いんだよ」
本当は一刻も早く帰ってきて欲しい。でも…私にはそんな事を言う権利はない。
「その割には、時間を見てはジャンティーヌちゃんの部屋にいるじゃない。もしかして、ジャンティーヌちゃんとお話しできるとでも思っているのではなくって?そんなに気になるのなら、声を掛けてみたら?」
「わ…私は別に、ジャンティーヌ殿に会いたくて部屋に行っている訳ではない。ただ、異常がないか確認しているだけです」
人聞きの悪い事を言うのは止めて欲しい。本当に姉上は!
「はいはい、分かったわよ。それよりも、ケガ人が多いわ。まずはケガ人を治すことから始めましょう。ジャンティーヌちゃんが帰って来た時、家臣たちが命を落としていたら、きっと悲しむわ」
「そうですね。とにかく、治療に専念しましょう」
ジャンティーヌ殿の為にも、まずはケガ人を減らさないと。そう思い、必死に治癒魔法を掛けていく。私も魔力量が多い方だが、とてもじゃないが、ジャンティーヌ殿には敵わない。
改めてジャンティーヌ殿のすごさを思い知った。
今日もジャンティーヌ殿の家族から届いた食糧を、皆に届けに行く。ただ、最近やたらと魔物が多い。今日もゴブリンの大量の群れに出くわした。
「クソ、なんて多さなんだ…とにかく、一旦引こう…このままでは全滅してしまう」
ケガ人たちを抱えて、急いで戻ってきた。私も今回の戦いで、大けがを負ってしまったのだ。
命からがら地下まで帰って来た。
「皆、大丈夫。凄い怪我だわ。大変、すぐに治癒魔法を」
「シルビア殿下…どうか…ジルド殿下に…」
「いいや…私はいい…とにかく、意識がないものの治療を…優先してくれ…」
私はもうダメかもしれない…それならせめて、ジャンティーヌ殿の部屋で、休みたい。そんな思いから、今日はジャンティーヌ殿の部屋で休むことにした。
夜中、酷い熱にうなされる。苦しい…熱い…深い傷を負った場所が痛くてたまらない…もうダメだ…ジャンティーヌ殿、本当にすまない。せっかく君が私たちを助けるために、ラッセル王国にまで出向いてくれたのに。
でも…
私が死んでも、この国が助かるなら、それはそれでいいのか…
「ジャン…ティーヌ…殿…」
それでもせめて最期に、彼女に会いたい。一目でもいいから、彼女に会いたい、そんな思いから、彼女の名前を呟いてしまう。
その時だった。急に魔法陣が光ったと思ったら、そこには金色の髪に赤い瞳をした女性が立っていた。
「ジャンティーヌ…殿…?」
無意識に彼女に向かって手をのばす。
「大丈夫ですか?私はジャンティーヌの母です。大変、すごい怪我だわ。すぐに治癒魔法を掛けますわ」
ジャンティーヌ殿の母親?よくわからないが、温かい光が体中を覆っていく。ジャンティーヌ殿によく似た光。すると、みるみるうちに、怪我が治っていく。
「お助けいただき、ありがとうございます。私は、ジルドと申します。ジャンティーヌ殿の母上とおっしゃいましたね?あの、ジャンティーヌ殿は元気にしていますか?」
「ええ、元気ですわ。あなた様が、ジャンティーヌが言っていたジルド殿下ですね。それよりも、他に怪我人がいらっしゃるのではないのですか?少しお待ちください」
そう言うと、魔法陣を通り、どこかに行ってしまったジャンティーヌ殿の母上。しばらくすると、男性数名を連れて戻ってきたのだった。
ジャンティーヌ嬢、今頃稽古に励んでいるかな?きっと彼女の事だ、辛い稽古に耐えながら必死で頑張っているのだろう。でも…もし平和なラッセル王国が気に入って、もうこの国には帰ってこなくなったら…
ついそんな事を考えてしまう。
ダメだ、そんな事を考えては。第一、彼女にとってはそのまま平和なラッセル王国で暮らした方が幸せなんだ!そうだ、そうに決まっている。
とにかく、私は少しでもこの国の人々の為にも、魔物たちを減らさないと。そんな思いで、必死に魔物たちと戦っていく。
「殿下、あまり無茶はしないで下さい。万が一あなた様の身に何かあったら、ジャンティーヌ殿が悲しみます」
「分かっている。でも、少しでも魔物を減らさないと!」
私の気持ちとは裏腹に、毎日沢山のケガ人が出ている。いつもならジャンティーヌ殿が治癒魔法を掛けてくれていたが、今は彼女がいない。姉上を含めた女性たちが必死に治癒魔法を掛けているが、追いついていないのだ。
これ以上ケガ人が出るのはまずい。そう思い、魔物との戦いは極力避け、食糧を運ぶ事を重点に置く事にした。
有難い事に、毎日食糧などは欠かさず送られてくるのだ。
「ジルド、今頃ジャンティーヌちゃんはどうしているのかしらね?なんだか最近、地下内の空気も暗いし。やっぱりジャンティーヌちゃんの存在が、かなり大きかったのね。私も早くジャンティーヌちゃんに会いたいわ」
私の横で、姉上がため息を付いている。
「ジャンティーヌ殿は、元々他国の人間なんだ。安全で平和なラッセル王国にいる方が、彼女にとっては幸せだろう。だから、無理して帰ってくる必要は無いんだよ」
本当は一刻も早く帰ってきて欲しい。でも…私にはそんな事を言う権利はない。
「その割には、時間を見てはジャンティーヌちゃんの部屋にいるじゃない。もしかして、ジャンティーヌちゃんとお話しできるとでも思っているのではなくって?そんなに気になるのなら、声を掛けてみたら?」
「わ…私は別に、ジャンティーヌ殿に会いたくて部屋に行っている訳ではない。ただ、異常がないか確認しているだけです」
人聞きの悪い事を言うのは止めて欲しい。本当に姉上は!
「はいはい、分かったわよ。それよりも、ケガ人が多いわ。まずはケガ人を治すことから始めましょう。ジャンティーヌちゃんが帰って来た時、家臣たちが命を落としていたら、きっと悲しむわ」
「そうですね。とにかく、治療に専念しましょう」
ジャンティーヌ殿の為にも、まずはケガ人を減らさないと。そう思い、必死に治癒魔法を掛けていく。私も魔力量が多い方だが、とてもじゃないが、ジャンティーヌ殿には敵わない。
改めてジャンティーヌ殿のすごさを思い知った。
今日もジャンティーヌ殿の家族から届いた食糧を、皆に届けに行く。ただ、最近やたらと魔物が多い。今日もゴブリンの大量の群れに出くわした。
「クソ、なんて多さなんだ…とにかく、一旦引こう…このままでは全滅してしまう」
ケガ人たちを抱えて、急いで戻ってきた。私も今回の戦いで、大けがを負ってしまったのだ。
命からがら地下まで帰って来た。
「皆、大丈夫。凄い怪我だわ。大変、すぐに治癒魔法を」
「シルビア殿下…どうか…ジルド殿下に…」
「いいや…私はいい…とにかく、意識がないものの治療を…優先してくれ…」
私はもうダメかもしれない…それならせめて、ジャンティーヌ殿の部屋で、休みたい。そんな思いから、今日はジャンティーヌ殿の部屋で休むことにした。
夜中、酷い熱にうなされる。苦しい…熱い…深い傷を負った場所が痛くてたまらない…もうダメだ…ジャンティーヌ殿、本当にすまない。せっかく君が私たちを助けるために、ラッセル王国にまで出向いてくれたのに。
でも…
私が死んでも、この国が助かるなら、それはそれでいいのか…
「ジャン…ティーヌ…殿…」
それでもせめて最期に、彼女に会いたい。一目でもいいから、彼女に会いたい、そんな思いから、彼女の名前を呟いてしまう。
その時だった。急に魔法陣が光ったと思ったら、そこには金色の髪に赤い瞳をした女性が立っていた。
「ジャンティーヌ…殿…?」
無意識に彼女に向かって手をのばす。
「大丈夫ですか?私はジャンティーヌの母です。大変、すごい怪我だわ。すぐに治癒魔法を掛けますわ」
ジャンティーヌ殿の母親?よくわからないが、温かい光が体中を覆っていく。ジャンティーヌ殿によく似た光。すると、みるみるうちに、怪我が治っていく。
「お助けいただき、ありがとうございます。私は、ジルドと申します。ジャンティーヌ殿の母上とおっしゃいましたね?あの、ジャンティーヌ殿は元気にしていますか?」
「ええ、元気ですわ。あなた様が、ジャンティーヌが言っていたジルド殿下ですね。それよりも、他に怪我人がいらっしゃるのではないのですか?少しお待ちください」
そう言うと、魔法陣を通り、どこかに行ってしまったジャンティーヌ殿の母上。しばらくすると、男性数名を連れて戻ってきたのだった。
15
お気に入りに追加
1,280
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。
138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」
お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。
賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。
誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。
そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。
諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌
招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」
毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。
彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。
そして…。
【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」
「恩? 私と君は初対面だったはず」
「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」
「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」
奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。
彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?
【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる