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第8話:初参戦です

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「ジャンティーヌ殿のお陰で、久しぶりに皆、お腹いっぱい食事をする事が出来たよ」

食後部屋から出ると、ジルド殿下とシルビア殿下が話掛けて来た。丁度良かったわ。

「実はまた大量に両親から食糧が届きまして。他の方にも配りたいのですが」

せっかくならここの地下以外に避難している人たちにも、食糧を配りたいと思ったのだ。

「それは有難い、それじゃあ、早速明日の朝にでも配らせてもらうよ。何から何まで、本当にありがとう」

ジルド殿下がなぜか少し悲しそうな顔で呟いたのだ。一体どうしたのかしら?まあいいわ。

「ジルド殿下、食糧を配りにいくの、私もお手伝いさせていただきますわ」

任せて下さいと言わんばかりに、胸を叩いたのだが…

「君は令殿なのだろう?魔物がウジャウジャいる地上には連れて行けないよ!とにかく、しばらくはここでゆっくり過ごしてくれ。君のご両親が健在なら、何とかラッセル王国に送り届けてあげたいのだが…そうだ、魔法陣を使えば、瞬間移動が出来るはずだ。早速魔法陣を使って…」

「ジルド殿下、私はあなた様に命を救われた身です。それにあれほどまでの惨状を見て、私だけおちおち逃げ出すような事はしたくありません。両親ともその件については話し合いました。私が魔物たちと戦える様に、こんなにも魔物に関する本を送ってくれたのです。とにかく私は、なんと言われようが、この地が改善されるまでは離れるつもりはありません!」

ジルド殿下に向かって、はっきりとそう告げた。

「何を言っているのだい?君は元々この国の人間ではないのだよ。ましてやご両親も他国にいるのなら、君はご両親の元に…」

「私は皆を見捨てて逃げる様な卑怯者にはなりたくないのです。たとえ両親の元に戻ったとしても、後悔の念で、気がおかしくなってしまいますわ。私は自分の気持ちに正直に生きたいのです!今までもそうやって生きてきましたから。私、とても頑固なのです。ジルド殿下がなんと言おうが、私はこの地を去るつもりはありませんわ。もちろん、地上にも出ますから」

「ジャンティーヌ殿、君は何を…」

「ジルド、諦めなさい。ジャンティーヌさんがそう言っているのなら、無理やり追い出そうとしても無駄よ。ジャンティーヌさん、ここに残ってくれることを決めてくれてありがとう。でも、もしあなたが辛くてご両親の元に帰りたくなったら、いつでも帰ってもらってもいいからね」

私たちの会話に入って来たのは、シルビア殿下だ。

「ありがとうございます、シルビア殿下」

笑顔でシルビア殿下にお礼を言った。

「ほら、ジルド、ジャンティーヌさんが休めないわ。私達は部屋から出ましょう。それじゃあジャンティーヌさん、おやすみなさい」

不満そうな顔のジルド殿下の背中を押しながら部屋から出ていくシルビア殿下。2人を見届けた後、早速魔物に関する書物を開いた。実は私、攻撃魔法をあまり使った事がないのだ。

まずは攻撃魔法を覚えないと。

ただ、バリア魔法はよく使っていたから、魔物たちにも有効だろう。それでも魔物たちの攻撃を防いでいるだけでは、意味がない。と言っても、攻撃魔法も全く使えない訳ではない。まあ、何とかなるだろう。

後はどの魔物にどんな攻撃が有効かをしっかり勉強しないと!明日はいよいよ魔物との初対決ね。なんだか楽しみになって来たわ。

その日は夜遅くまで、勉強に励んだのだった。


翌日
今日も家族からたくさんのお料理や食材が届いた。早速朝食を済ませると、地上に出る準備をする。

「ジャンティーヌ殿、本当に外に出るのかい?外は危険だ。君だって昨日、身をもって体験しただろう」

私の隣で、まだそんな事をジルド殿下が呟いている。いい加減諦めて欲しいのだが…シルビア殿下もあきれ顔だ。

「ジルド殿下、私はお腹を空かせている人たちの為に、食糧を届けに行きますわ。それに、魔物とも戦いたいですし。私、今日もたっぷり食事をしたので、魔力は有り余っておりますの。ドラゴンだろうがサンダーバードだろうがゴブリンだろうが、どんとこいですわ!」

胸を叩いてアピールをする。

「は~、わかったよ。それじゃあ、そろそろ行こうか…いいかい、どうか私の傍を離れないで欲しい。わかったね」

「はい、大丈夫ですわ。それではシルビア殿下、皆さま、行って参りますわ」

「ジャンティーヌさん、くれぐれも気を付けてね。あなたのあの素晴らしい魔力なら、きっと大丈夫だと私は信じているわ」

「ありがとうございます。行ってきます」

シルビア殿下並びにお見送りに来てくれている皆に手を振り、意気揚々と地上へと上がっていく。

ただ…

地上に出た瞬間、何とも言えない気持ちになった。相変わらず空は分厚い雲で覆われているうえ、周りは廃墟だ。

「いいかい?すぐ近くには魔物もいるはずだから、油断は出来ないよ。ほら、来た!」

後ろから大きなゴブリンの群れが襲ってくる。さらに空からも魔物たちが攻撃を仕掛けて来た。

ジルド殿下含め、皆が一斉に戦いだす。私も戦わないと。でも…

改めて魔物を目の前にした私は、急に足がすくんでしまった。私ったら何をしているの?戦わないといけないのに。

その時だった。大きなデビルが、私めがけて襲い掛かって来たのだ。

「危ない、ジャンティーヌ殿!」

間一髪のところで、またジルド殿下に助けられた。ただ、私を助けた時にデビルの攻撃を受けてしまった様で、左手に怪我を負ってしまった。

私は何をしているのかしら?これじゃあただの足手まといじゃない…
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