8 / 53
第8話:初参戦です
しおりを挟む
「ジャンティーヌ殿のお陰で、久しぶりに皆、お腹いっぱい食事をする事が出来たよ」
食後部屋から出ると、ジルド殿下とシルビア殿下が話掛けて来た。丁度良かったわ。
「実はまた大量に両親から食糧が届きまして。他の方にも配りたいのですが」
せっかくならここの地下以外に避難している人たちにも、食糧を配りたいと思ったのだ。
「それは有難い、それじゃあ、早速明日の朝にでも配らせてもらうよ。何から何まで、本当にありがとう」
ジルド殿下がなぜか少し悲しそうな顔で呟いたのだ。一体どうしたのかしら?まあいいわ。
「ジルド殿下、食糧を配りにいくの、私もお手伝いさせていただきますわ」
任せて下さいと言わんばかりに、胸を叩いたのだが…
「君は令殿なのだろう?魔物がウジャウジャいる地上には連れて行けないよ!とにかく、しばらくはここでゆっくり過ごしてくれ。君のご両親が健在なら、何とかラッセル王国に送り届けてあげたいのだが…そうだ、魔法陣を使えば、瞬間移動が出来るはずだ。早速魔法陣を使って…」
「ジルド殿下、私はあなた様に命を救われた身です。それにあれほどまでの惨状を見て、私だけおちおち逃げ出すような事はしたくありません。両親ともその件については話し合いました。私が魔物たちと戦える様に、こんなにも魔物に関する本を送ってくれたのです。とにかく私は、なんと言われようが、この地が改善されるまでは離れるつもりはありません!」
ジルド殿下に向かって、はっきりとそう告げた。
「何を言っているのだい?君は元々この国の人間ではないのだよ。ましてやご両親も他国にいるのなら、君はご両親の元に…」
「私は皆を見捨てて逃げる様な卑怯者にはなりたくないのです。たとえ両親の元に戻ったとしても、後悔の念で、気がおかしくなってしまいますわ。私は自分の気持ちに正直に生きたいのです!今までもそうやって生きてきましたから。私、とても頑固なのです。ジルド殿下がなんと言おうが、私はこの地を去るつもりはありませんわ。もちろん、地上にも出ますから」
「ジャンティーヌ殿、君は何を…」
「ジルド、諦めなさい。ジャンティーヌさんがそう言っているのなら、無理やり追い出そうとしても無駄よ。ジャンティーヌさん、ここに残ってくれることを決めてくれてありがとう。でも、もしあなたが辛くてご両親の元に帰りたくなったら、いつでも帰ってもらってもいいからね」
私たちの会話に入って来たのは、シルビア殿下だ。
「ありがとうございます、シルビア殿下」
笑顔でシルビア殿下にお礼を言った。
「ほら、ジルド、ジャンティーヌさんが休めないわ。私達は部屋から出ましょう。それじゃあジャンティーヌさん、おやすみなさい」
不満そうな顔のジルド殿下の背中を押しながら部屋から出ていくシルビア殿下。2人を見届けた後、早速魔物に関する書物を開いた。実は私、攻撃魔法をあまり使った事がないのだ。
まずは攻撃魔法を覚えないと。
ただ、バリア魔法はよく使っていたから、魔物たちにも有効だろう。それでも魔物たちの攻撃を防いでいるだけでは、意味がない。と言っても、攻撃魔法も全く使えない訳ではない。まあ、何とかなるだろう。
後はどの魔物にどんな攻撃が有効かをしっかり勉強しないと!明日はいよいよ魔物との初対決ね。なんだか楽しみになって来たわ。
その日は夜遅くまで、勉強に励んだのだった。
翌日
今日も家族からたくさんのお料理や食材が届いた。早速朝食を済ませると、地上に出る準備をする。
「ジャンティーヌ殿、本当に外に出るのかい?外は危険だ。君だって昨日、身をもって体験しただろう」
私の隣で、まだそんな事をジルド殿下が呟いている。いい加減諦めて欲しいのだが…シルビア殿下もあきれ顔だ。
「ジルド殿下、私はお腹を空かせている人たちの為に、食糧を届けに行きますわ。それに、魔物とも戦いたいですし。私、今日もたっぷり食事をしたので、魔力は有り余っておりますの。ドラゴンだろうがサンダーバードだろうがゴブリンだろうが、どんとこいですわ!」
胸を叩いてアピールをする。
「は~、わかったよ。それじゃあ、そろそろ行こうか…いいかい、どうか私の傍を離れないで欲しい。わかったね」
「はい、大丈夫ですわ。それではシルビア殿下、皆さま、行って参りますわ」
「ジャンティーヌさん、くれぐれも気を付けてね。あなたのあの素晴らしい魔力なら、きっと大丈夫だと私は信じているわ」
「ありがとうございます。行ってきます」
シルビア殿下並びにお見送りに来てくれている皆に手を振り、意気揚々と地上へと上がっていく。
ただ…
地上に出た瞬間、何とも言えない気持ちになった。相変わらず空は分厚い雲で覆われているうえ、周りは廃墟だ。
「いいかい?すぐ近くには魔物もいるはずだから、油断は出来ないよ。ほら、来た!」
後ろから大きなゴブリンの群れが襲ってくる。さらに空からも魔物たちが攻撃を仕掛けて来た。
ジルド殿下含め、皆が一斉に戦いだす。私も戦わないと。でも…
改めて魔物を目の前にした私は、急に足がすくんでしまった。私ったら何をしているの?戦わないといけないのに。
その時だった。大きなデビルが、私めがけて襲い掛かって来たのだ。
「危ない、ジャンティーヌ殿!」
間一髪のところで、またジルド殿下に助けられた。ただ、私を助けた時にデビルの攻撃を受けてしまった様で、左手に怪我を負ってしまった。
私は何をしているのかしら?これじゃあただの足手まといじゃない…
食後部屋から出ると、ジルド殿下とシルビア殿下が話掛けて来た。丁度良かったわ。
「実はまた大量に両親から食糧が届きまして。他の方にも配りたいのですが」
せっかくならここの地下以外に避難している人たちにも、食糧を配りたいと思ったのだ。
「それは有難い、それじゃあ、早速明日の朝にでも配らせてもらうよ。何から何まで、本当にありがとう」
ジルド殿下がなぜか少し悲しそうな顔で呟いたのだ。一体どうしたのかしら?まあいいわ。
「ジルド殿下、食糧を配りにいくの、私もお手伝いさせていただきますわ」
任せて下さいと言わんばかりに、胸を叩いたのだが…
「君は令殿なのだろう?魔物がウジャウジャいる地上には連れて行けないよ!とにかく、しばらくはここでゆっくり過ごしてくれ。君のご両親が健在なら、何とかラッセル王国に送り届けてあげたいのだが…そうだ、魔法陣を使えば、瞬間移動が出来るはずだ。早速魔法陣を使って…」
「ジルド殿下、私はあなた様に命を救われた身です。それにあれほどまでの惨状を見て、私だけおちおち逃げ出すような事はしたくありません。両親ともその件については話し合いました。私が魔物たちと戦える様に、こんなにも魔物に関する本を送ってくれたのです。とにかく私は、なんと言われようが、この地が改善されるまでは離れるつもりはありません!」
ジルド殿下に向かって、はっきりとそう告げた。
「何を言っているのだい?君は元々この国の人間ではないのだよ。ましてやご両親も他国にいるのなら、君はご両親の元に…」
「私は皆を見捨てて逃げる様な卑怯者にはなりたくないのです。たとえ両親の元に戻ったとしても、後悔の念で、気がおかしくなってしまいますわ。私は自分の気持ちに正直に生きたいのです!今までもそうやって生きてきましたから。私、とても頑固なのです。ジルド殿下がなんと言おうが、私はこの地を去るつもりはありませんわ。もちろん、地上にも出ますから」
「ジャンティーヌ殿、君は何を…」
「ジルド、諦めなさい。ジャンティーヌさんがそう言っているのなら、無理やり追い出そうとしても無駄よ。ジャンティーヌさん、ここに残ってくれることを決めてくれてありがとう。でも、もしあなたが辛くてご両親の元に帰りたくなったら、いつでも帰ってもらってもいいからね」
私たちの会話に入って来たのは、シルビア殿下だ。
「ありがとうございます、シルビア殿下」
笑顔でシルビア殿下にお礼を言った。
「ほら、ジルド、ジャンティーヌさんが休めないわ。私達は部屋から出ましょう。それじゃあジャンティーヌさん、おやすみなさい」
不満そうな顔のジルド殿下の背中を押しながら部屋から出ていくシルビア殿下。2人を見届けた後、早速魔物に関する書物を開いた。実は私、攻撃魔法をあまり使った事がないのだ。
まずは攻撃魔法を覚えないと。
ただ、バリア魔法はよく使っていたから、魔物たちにも有効だろう。それでも魔物たちの攻撃を防いでいるだけでは、意味がない。と言っても、攻撃魔法も全く使えない訳ではない。まあ、何とかなるだろう。
後はどの魔物にどんな攻撃が有効かをしっかり勉強しないと!明日はいよいよ魔物との初対決ね。なんだか楽しみになって来たわ。
その日は夜遅くまで、勉強に励んだのだった。
翌日
今日も家族からたくさんのお料理や食材が届いた。早速朝食を済ませると、地上に出る準備をする。
「ジャンティーヌ殿、本当に外に出るのかい?外は危険だ。君だって昨日、身をもって体験しただろう」
私の隣で、まだそんな事をジルド殿下が呟いている。いい加減諦めて欲しいのだが…シルビア殿下もあきれ顔だ。
「ジルド殿下、私はお腹を空かせている人たちの為に、食糧を届けに行きますわ。それに、魔物とも戦いたいですし。私、今日もたっぷり食事をしたので、魔力は有り余っておりますの。ドラゴンだろうがサンダーバードだろうがゴブリンだろうが、どんとこいですわ!」
胸を叩いてアピールをする。
「は~、わかったよ。それじゃあ、そろそろ行こうか…いいかい、どうか私の傍を離れないで欲しい。わかったね」
「はい、大丈夫ですわ。それではシルビア殿下、皆さま、行って参りますわ」
「ジャンティーヌさん、くれぐれも気を付けてね。あなたのあの素晴らしい魔力なら、きっと大丈夫だと私は信じているわ」
「ありがとうございます。行ってきます」
シルビア殿下並びにお見送りに来てくれている皆に手を振り、意気揚々と地上へと上がっていく。
ただ…
地上に出た瞬間、何とも言えない気持ちになった。相変わらず空は分厚い雲で覆われているうえ、周りは廃墟だ。
「いいかい?すぐ近くには魔物もいるはずだから、油断は出来ないよ。ほら、来た!」
後ろから大きなゴブリンの群れが襲ってくる。さらに空からも魔物たちが攻撃を仕掛けて来た。
ジルド殿下含め、皆が一斉に戦いだす。私も戦わないと。でも…
改めて魔物を目の前にした私は、急に足がすくんでしまった。私ったら何をしているの?戦わないといけないのに。
その時だった。大きなデビルが、私めがけて襲い掛かって来たのだ。
「危ない、ジャンティーヌ殿!」
間一髪のところで、またジルド殿下に助けられた。ただ、私を助けた時にデビルの攻撃を受けてしまった様で、左手に怪我を負ってしまった。
私は何をしているのかしら?これじゃあただの足手まといじゃない…
14
お気に入りに追加
1,278
あなたにおすすめの小説
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~
コトミ
恋愛
結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。
そしてその飛び出した先で出会った人とは?
(できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです)
hotランキング1位入りしました。ありがとうございます
【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。
曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」
「分かったわ」
「えっ……」
男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。
毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。
裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。
何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……?
★小説家になろう様で先行更新中
御機嫌ようそしてさようなら ~王太子妃の選んだ最悪の結末
Hinaki
恋愛
令嬢の名はエリザベス。
生まれた瞬間より両親達が創る公爵邸と言う名の箱庭の中で生きていた。
全てがその箱庭の中でなされ、そして彼女は箱庭より外へは出される事はなかった。
ただ一つ月に一度彼女を訪ねる5歳年上の少年を除いては……。
時は流れエリザベスが15歳の乙女へと成長し未来の王太子妃として半年後の結婚を控えたある日に彼女を包み込んでいた世界は崩壊していく。
ゆるふわ設定の短編です。
完結済みなので予約投稿しています。
【完結】捨てられ正妃は思い出す。
なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」
そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。
人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。
正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。
人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。
再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。
デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。
確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。
––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––
他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。
前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。
彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。
気がついたら無理!絶対にいや!
朝山みどり
恋愛
アリスは子供の頃からしっかりしていた。そのせいか、なぜか利用され、便利に使われてしまう。
そして嵐のとき置き去りにされてしまった。助けてくれた彼に大切にされたアリスは甘えることを知った。そして甘えられることも・・・
やがてアリスは自分は上に立つ能力があると自覚する
大嫌いな幼馴染の皇太子殿下と婚姻させられたので、白い結婚をお願いいたしました
柴野
恋愛
「これは白い結婚ということにいたしましょう」
結婚初夜、そうお願いしたジェシカに、夫となる人は眉を顰めて答えた。
「……ああ、お前の好きにしろ」
婚約者だった隣国の王弟に別れを切り出され嫁ぎ先を失った公爵令嬢ジェシカ・スタンナードは、幼馴染でありながら、たいへん仲の悪かった皇太子ヒューパートと王命で婚姻させられた。
ヒューパート皇太子には陰ながら想っていた令嬢がいたのに、彼女は第二王子の婚約者になってしまったので長年婚約者を作っていなかったという噂がある。それだというのに王命で大嫌いなジェシカを娶ることになったのだ。
いくら政略結婚とはいえ、ヒューパートに抱かれるのは嫌だ。子供ができないという理由があれば離縁できると考えたジェシカは白い結婚を望み、ヒューパートもそれを受け入れた。
そのはず、だったのだが……?
離縁を望みながらも徐々に絆されていく公爵令嬢と、実は彼女のことが大好きで仕方ないツンデレ皇太子によるじれじれラブストーリー。
※こちらの作品は小説家になろうにも重複投稿しています。
石女を理由に離縁されましたが、実家に出戻って幸せになりました
お好み焼き
恋愛
ゼネラル侯爵家に嫁いで三年、私は子が出来ないことを理由に冷遇されていて、とうとう離縁されてしまいました。なのにその後、ゼネラル家に嫁として戻って来いと手紙と書類が届きました。息子は種無しだったと、だから石女として私に叩き付けた離縁状は無効だと。
その他にも色々ありましたが、今となっては心は落ち着いています。私には優しい弟がいて、頼れるお祖父様がいて、可愛い妹もいるのですから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる