1 / 53
第1話:私はこの国を滅ぼすそうです
しおりを挟む
「ジャンティーヌ、君をこの国を滅ぼそうとした罪で逮捕する。今すぐ、ジャンティーヌを地下牢に入れろ。この女は魔力が異常に強いから、十分注意しろよ」
婚約者でもあるこの国の王太子、アーロン様に呼び出されたと思ったら、あろう事か犯罪者扱い。全く意味が分からない。
「お言葉ですがアーロン様、私が一体何をしたと言うのですか?私は悪い事などしておりません」
私を捕まえようとやって来た魔術師たちが近づけない様、バリア魔法を掛けながら、彼に話しかけた。
「ここにいる占い師のマリアンが“この国はジャンティーヌによって滅ぼされる”と予言したのだ。だから君はれっきとした犯罪者だろう」
アーロン様の隣には、赤い髪に緑の瞳をしたナイスなボディをした令殿が、アーロン様に寄り添っている。そう言えば最近、アーロン様はこのマリアン様の美貌にノックアウトされたなんて噂もあった。それでも私とアーロン様は強い絆で結ばれていたはずだ。それなのに、一体どうして…
「私はこの国を滅ぼしたりはしませんわ。アーロン様、どうか私を信じて下さい。私達は婚約してからずっと、仲睦まじく過ごしてきたではありませんか?」
私とアーロン様が婚約を結んだのは、今から10年前、私が6歳、アーロン様が8歳の時だ。当時病に伏せられていた亡き王妃殿下たっての希望で、私たちは婚約を結んだ。
それでもこの10年、私たちはお互いを尊重し合い、仲良くやって来たのだ。
「仲睦まじくだって?それは君が勝手に思っているだけだろう。僕はずっと生き苦しかったんだ。魔力が他の人間より少し高いというだけで、大きな顔をして。僕にいちいち指図してくる君が本当に煩わしかった。そんな時、マリアンに出会ったんだ。彼女は僕の気持ちに寄り添ってくれた。だから僕は、君と婚約破棄をして、マリアンと結婚するつもりで動いていたんだ。そんな時、マリアンが“ジャンティーヌがこの国を滅ぼす魔女だ!”と教えてくれたんだ」
「私は魔女ではありません。私はただ、アーロン様の事を思って、言いたくもない事も言ってきたのです。それもこれも、あなた様を思って…」
「君の戯言はもう聞きたくはないよ。マリアンは、占い師としての力は絶大と言われているのだ。そんなマリアンが、君の事を魔女だというのだから、きっと君は魔女に違いない。とにかくこの女をすぐに地下牢へ」
そんな…
私はただ、アーロン様が立派な国王になれる様に、支えて来ただけなのに…
この10年、いつも優しく微笑んで私の傍にいてくれたアーロン様、あれは偽りの姿だったというの?私はずっとアーロン様に嫌われていただなんて…
あまりのショックに、全身の力が抜け、その場に座り込んでしまった。その瞬間、10人がかりで私に襲い掛かって来る魔術師たち。あっという間に、魔力無力化リングを付けられてしまった。
「この魔力無力化リングは、王家に伝わる秘宝なのだよ。このリングはかつて絶対的魔力を持つとされる伝説の聖女が作ったものだ。いくら魔力が強い君にも壊せまい。さあ、すぐに連れて行け」
魔力無力化リング…こんなものまで準備していただなんて…
気が付くと涙が溢れていた。抵抗する気も起らず、そのまま地下牢へと連れて行かれる。そして、そのまま牢の中に入れられた。薄暗くて気味が悪い。
その場に座り込み、この10年の日々を思い出す。王妃殿下の最後の望みを叶えるため、私たちは婚約した。
私たちが婚約した翌日、眠る様に息を引きっとった王妃殿下。
“ジャンティーヌちゃん…アーロンは少し抜けているところがあるの…どうか、あなたが支えてあげてね。アーロンの事、よろしくお願いします…”
王妃殿下はそう呟いて息を引き取ったのだ。
王妃殿下の言葉はもちろんの事、不器用で少し抜けているけれど、それでもいつも私に優しく話し掛けてくれるアーロン様に、私は次第に惹かれていった。そんな中、私達が婚約してから5年後、今度は国王陛下が病に倒れてしまったのだ。
もし陛下にもしもの事があったら…
そう考え、私は必死に王妃教育もこなし、さらにアーロン様を支えられる様、王政についても勉強した。すべてはアーロン様と、より良い未来を築く為に。もちろん、アーロン様との時間も大切にした。すべては彼と共に、この国を支えて行くために。
でも…私は結局、彼に愛されていなかった様だ…まさか、あそこまで嫌われていただなんて…
再び涙が溢れ出す。私は何を間違えたのかしら?私はただ、アーロン様と共に、生きていきたかっただけなのに…
~あとがき~
新連載始めました。
よろしくお願いいたしますm(__)m
婚約者でもあるこの国の王太子、アーロン様に呼び出されたと思ったら、あろう事か犯罪者扱い。全く意味が分からない。
「お言葉ですがアーロン様、私が一体何をしたと言うのですか?私は悪い事などしておりません」
私を捕まえようとやって来た魔術師たちが近づけない様、バリア魔法を掛けながら、彼に話しかけた。
「ここにいる占い師のマリアンが“この国はジャンティーヌによって滅ぼされる”と予言したのだ。だから君はれっきとした犯罪者だろう」
アーロン様の隣には、赤い髪に緑の瞳をしたナイスなボディをした令殿が、アーロン様に寄り添っている。そう言えば最近、アーロン様はこのマリアン様の美貌にノックアウトされたなんて噂もあった。それでも私とアーロン様は強い絆で結ばれていたはずだ。それなのに、一体どうして…
「私はこの国を滅ぼしたりはしませんわ。アーロン様、どうか私を信じて下さい。私達は婚約してからずっと、仲睦まじく過ごしてきたではありませんか?」
私とアーロン様が婚約を結んだのは、今から10年前、私が6歳、アーロン様が8歳の時だ。当時病に伏せられていた亡き王妃殿下たっての希望で、私たちは婚約を結んだ。
それでもこの10年、私たちはお互いを尊重し合い、仲良くやって来たのだ。
「仲睦まじくだって?それは君が勝手に思っているだけだろう。僕はずっと生き苦しかったんだ。魔力が他の人間より少し高いというだけで、大きな顔をして。僕にいちいち指図してくる君が本当に煩わしかった。そんな時、マリアンに出会ったんだ。彼女は僕の気持ちに寄り添ってくれた。だから僕は、君と婚約破棄をして、マリアンと結婚するつもりで動いていたんだ。そんな時、マリアンが“ジャンティーヌがこの国を滅ぼす魔女だ!”と教えてくれたんだ」
「私は魔女ではありません。私はただ、アーロン様の事を思って、言いたくもない事も言ってきたのです。それもこれも、あなた様を思って…」
「君の戯言はもう聞きたくはないよ。マリアンは、占い師としての力は絶大と言われているのだ。そんなマリアンが、君の事を魔女だというのだから、きっと君は魔女に違いない。とにかくこの女をすぐに地下牢へ」
そんな…
私はただ、アーロン様が立派な国王になれる様に、支えて来ただけなのに…
この10年、いつも優しく微笑んで私の傍にいてくれたアーロン様、あれは偽りの姿だったというの?私はずっとアーロン様に嫌われていただなんて…
あまりのショックに、全身の力が抜け、その場に座り込んでしまった。その瞬間、10人がかりで私に襲い掛かって来る魔術師たち。あっという間に、魔力無力化リングを付けられてしまった。
「この魔力無力化リングは、王家に伝わる秘宝なのだよ。このリングはかつて絶対的魔力を持つとされる伝説の聖女が作ったものだ。いくら魔力が強い君にも壊せまい。さあ、すぐに連れて行け」
魔力無力化リング…こんなものまで準備していただなんて…
気が付くと涙が溢れていた。抵抗する気も起らず、そのまま地下牢へと連れて行かれる。そして、そのまま牢の中に入れられた。薄暗くて気味が悪い。
その場に座り込み、この10年の日々を思い出す。王妃殿下の最後の望みを叶えるため、私たちは婚約した。
私たちが婚約した翌日、眠る様に息を引きっとった王妃殿下。
“ジャンティーヌちゃん…アーロンは少し抜けているところがあるの…どうか、あなたが支えてあげてね。アーロンの事、よろしくお願いします…”
王妃殿下はそう呟いて息を引き取ったのだ。
王妃殿下の言葉はもちろんの事、不器用で少し抜けているけれど、それでもいつも私に優しく話し掛けてくれるアーロン様に、私は次第に惹かれていった。そんな中、私達が婚約してから5年後、今度は国王陛下が病に倒れてしまったのだ。
もし陛下にもしもの事があったら…
そう考え、私は必死に王妃教育もこなし、さらにアーロン様を支えられる様、王政についても勉強した。すべてはアーロン様と、より良い未来を築く為に。もちろん、アーロン様との時間も大切にした。すべては彼と共に、この国を支えて行くために。
でも…私は結局、彼に愛されていなかった様だ…まさか、あそこまで嫌われていただなんて…
再び涙が溢れ出す。私は何を間違えたのかしら?私はただ、アーロン様と共に、生きていきたかっただけなのに…
~あとがき~
新連載始めました。
よろしくお願いいたしますm(__)m
13
お気に入りに追加
1,278
あなたにおすすめの小説
離縁してくださいと言ったら、大騒ぎになったのですが?
ネコ
恋愛
子爵令嬢レイラは北の領主グレアムと政略結婚をするも、彼が愛しているのは幼い頃から世話してきた従姉妹らしい。夫婦生活らしい交流すらなく、仕事と家事を押し付けられるばかり。ある日、従姉妹とグレアムの微妙な関係を目撃し、全てを諦める。
【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
王太子妃よりも王弟殿下の秘書の方が性に合いますので
ネコ
恋愛
公爵令嬢シルヴィアは、王太子から強引に婚約を求められ受け入れるも、政務も公務も押し付けられ、さらに彼が侍女との不倫を隠そうともしないことにうんざり。まさに形だけの婚約だった。ある日、王弟殿下の補佐を手伝うよう命じられたシルヴィアは、彼の誠実な人柄に触れて新たな生き方を見出す。ついに堪忍袋の緒が切れたシルヴィアは王太子に婚約破棄を宣言。二度と振り返ることなく、自らの才能を存分に活かす道を選ぶのだった。
願いの代償
らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。
公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。
唐突に思う。
どうして頑張っているのか。
どうして生きていたいのか。
もう、いいのではないだろうか。
メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。
*ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。
転生したので前世の大切な人に会いに行きます!
本見りん
恋愛
魔法大国と呼ばれるレーベン王国。
家族の中でただ一人弱い治療魔法しか使えなかったセリーナ。ある出来事によりセリーナが王都から離れた領地で暮らす事が決まったその夜、国を揺るがす未曾有の大事件が起きた。
……その時、眠っていた魔法が覚醒し更に自分の前世を思い出し死んですぐに生まれ変わったと気付いたセリーナ。
自分は今の家族に必要とされていない。……それなら、前世の自分の大切な人達に会いに行こう。そうして『少年セリ』として旅に出た。そこで出会った、大切な仲間たち。
……しかし一年後祖国レーベン王国では、セリーナの生死についての議論がされる事態になっていたのである。
『小説家になろう』様にも投稿しています。
『誰もが秘密を持っている 〜『治療魔法』使いセリの事情 転生したので前世の大切な人に会いに行きます!〜』
でしたが、今回は大幅にお直しした改稿版となります。楽しんでいただければ幸いです。
【完結】私のことを愛さないと仰ったはずなのに 〜家族に虐げれ、妹のワガママで婚約破棄をされた令嬢は、新しい婚約者に溺愛される〜
ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
とある子爵家の長女であるエルミーユは、家長の父と使用人の母から生まれたことと、常人離れした記憶力を持っているせいで、幼い頃から家族に嫌われ、酷い暴言を言われたり、酷い扱いをされる生活を送っていた。
エルミーユには、十歳の時に決められた婚約者がおり、十八歳になったら家を出て嫁ぐことが決められていた。
地獄のような家を出るために、なにをされても気丈に振舞う生活を送り続け、無事に十八歳を迎える。
しかし、まだ婚約者がおらず、エルミーユだけ結婚するのが面白くないと思った、ワガママな異母妹の策略で騙されてしまった婚約者に、婚約破棄を突き付けられてしまう。
突然結婚の話が無くなり、落胆するエルミーユは、とあるパーティーで伯爵家の若き家長、ブラハルトと出会う。
社交界では彼の恐ろしい噂が流れており、彼は孤立してしまっていたが、少し話をしたエルミーユは、彼が噂のような恐ろしい人ではないと気づき、一緒にいてとても居心地が良いと感じる。
そんなブラハルトと、互いの結婚事情について話した後、互いに利益があるから、婚約しようと持ち出される。
喜んで婚約を受けるエルミーユに、ブラハルトは思わぬことを口にした。それは、エルミーユのことは愛さないというものだった。
それでも全然構わないと思い、ブラハルトとの生活が始まったが、愛さないという話だったのに、なぜか溺愛されてしまい……?
⭐︎全56話、最終話まで予約投稿済みです。小説家になろう様にも投稿しております。2/16女性HOTランキング1位ありがとうございます!⭐︎
離れた途端に「戻ってこい」と言われても困ります
ネコ
恋愛
田舎貴族の令嬢エミリーは名門伯爵家に嫁ぎ、必死に家を切り盛りしてきた。だが夫は領外の華やかな令嬢に夢中で「お前は暗くて重荷だ」と追い出し同然に離縁。辛さに耐えかね故郷へ帰ると、なぜかしばらくしてから「助けてくれ」「戻ってくれ」と必死の嘆願が届く。すみませんが、そちらの都合に付き合うつもりはもうありません。
【本編完結】婚約者を守ろうとしたら寧ろ盾にされました。腹が立ったので記憶を失ったふりをして婚約解消を目指します。
しろねこ。
恋愛
「君との婚約を解消したい」
その言葉を聞いてエカテリーナはニコリと微笑む。
「了承しました」
ようやくこの日が来たと内心で神に感謝をする。
(わたくしを盾にし、更に記憶喪失となったのに手助けもせず、他の女性に擦り寄った婚約者なんていらないもの)
そんな者との婚約が破談となって本当に良かった。
(それに欲しいものは手に入れたわ)
壁際で沈痛な面持ちでこちらを見る人物を見て、頬が赤くなる。
(愛してくれない者よりも、自分を愛してくれる人の方がいいじゃない?)
エカテリーナはあっさりと自分を捨てた男に向けて頭を下げる。
「今までありがとうございました。殿下もお幸せに」
類まれなる美貌と十分な地位、そして魔法の珍しいこの世界で魔法を使えるエカテリーナ。
だからこそ、ここバークレイ国で第二王子の婚約者に選ばれたのだが……それも今日で終わりだ。
今後は自分の力で頑張ってもらおう。
ハピエン、自己満足、ご都合主義なお話です。
ちゃっかりとシリーズ化というか、他作品と繋がっています。
カクヨムさん、小説家になろうさん、ノベルアッププラスさんでも連載中(*´ω`*)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる