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Karamimi

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番外編

ジェシカとの出会い~ヴァン視点~

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私の名前は、ヴァンヴィーノ・ディア・エルピス。エルピス王国の第二王子として、両親や兄上に囲まれ何不自由ない生活を送っていた。

そんな私が14歳の時、国王でもある父と一緒に、海外に視察に行ったことから、すっかり旅の魅力のハマってしまった。

両親の反対を押し切り、そのまま旅に出た私は、色々な国を見て回った。もちろん、ただ遊んでいる訳ではない。きちんと貿易をしながら、旅を続けたのだ。最初は反対をしていた両親や兄上だったが、私が貿易で成果を上げ続けたおかげか、次第に何も言わなくなった。

それでも父上からは

「ヴァンビーノのお陰で、随分とこの国も潤った。ただ…やはりお前には結婚をして幸せな家庭を築いて欲しい。そろそろ国に帰って来てはどうか?」

そう言われることもしばしば。正直結婚など興味がない。私はこのまま自由気ままに旅を続けたい、そう思っていた。そんな中、事件は起きた。

アペルピシア王国の近くを運航している時、高波に襲われたのだ。正直あの時の記憶はほとんどない。でも次に目が覚めると…

「よかった、目を覚まされたのですね」

美しいグリーンの瞳をした令嬢と目が合う。心底ほっとした表情を浮かべる彼女こそ、ジェシカだ。すぐに医者を呼んでくれたジェシカは、その後も自ら私の看病を行った。

私が熱でうなされると、すぐに汗を拭き、必死に看病をしてくれる。ただ、やはり慣れていないのか、水をこぼしてしまう事もしばしば…

それでも必死に私を看病する姿が健気で、そんなジェシカの姿にくぎ付けになった。そしてそれと同時に、心の中が温かい物で包まれる様な、不思議な感覚に襲われる。この感情は、一体何なんだろう…

ジェシカの看病のお陰で、すっかり体調が良くなった。お礼を言って、また旅を続けようと思ったのだが…

彼女はきっと私が行くところがないと思ったのだろう。必死に自分の父親に、私をこの家においてもらう様に頼んでいた。よほど父親が怖いのか、震える体で必死に頼んでいたのだ。

その姿を見た時、この子の傍にもっといたい、この子を守りたい、そんな感情が生まれた。ジェシカの必死さが伝わったのか、私は無事彼女の従者になったのだ。

従者になってわかった事、それはジェシカが家族からも婚約者からも冷遇され悲しんでいるという事。正直今すぐ彼女を連れ出し、この地獄の様な場所から助けてあげたい、そう思った。

でも…

「確かにジェシカ様の置かれている状況は悲惨です。でも、殿下のエゴでジェシカ様を連れ出すのはいかがなものかと」

私を心配し私の元にやって来ていた家臣たちに、そう忠告された。確かに家臣たちの言う通りだ、ジェシカが望まない事を、私が勝手にする訳にはいかない。

そうは思っても、ジェシカに暴力を振るう侯爵、ジェシカの大切な物を奪い暴言を吐く侯爵夫人、ジェシカという婚約者がいるのに、あろう事か男爵令嬢にうつつを抜かす王太子、どいつもこいつも、腹が立って仕方がない。

そこで私は、侯爵や夫人に関する情報を調べ出した。すると、出るわ出るわ、悪事の数々。さらに侯爵夫人は、複数の男性と密な関係になっていたことも分かった。実は私も侯爵夫人に誘われたが、きっぱり拒否した。

それが気に入らなかったのか、何かにつけて私をクビにしようとする侯爵夫人。クビになるとジェシカの傍にいられなくなる、何より今のジェシカを1人にはしておけない、そんな思いから、侯爵と夫人、それぞれに彼らの弱みを握っている事を伝えた。

そうすることで、私に手出しは出来なくなった2人。ただ…王太子の方は、頭が弱いくらいで、特に悪事を働いていなかった。

そんな中、ジェシカが急に前世とやらの記憶を取り戻したと言い出したのだ。今までのジェシカとは打って変わって

「私は浮気男のネイサン様と婚約破棄をしたい」

と言い出したのだ。さらにジェシカは私と一緒で、前世では旅が好きだったとの事。その事実を知った時、私は運命的なものを感じた。

そしてジェシカは、私に向ってこう言ったのだ。

「あなたさえよければ、私が無事婚約破棄出来てこの家を出るときに、私と一緒に付いて来てくれる?」

ジェシカは私と一緒に旅をしたい、そう思ったらしい。

正直私はジェシカと結婚できるのなら、大好きな旅も辞め、エルピス王国でジェシカとのんびり暮らすのも悪くないと思っていた。でも、まさかジェシカと旅が出来るなんて!

そう思ったら、嬉しくてたまらなかった。それでも私はジェシカの従者、必死に冷静を装う。

そして、私はジェシカを陰で支える事にした。本当は王族でもある私が、この国の国王に話しを付けようかとも考えたが、今のジェシカならそれをきっと望まないだろう。これ以上ジェシカに辛い思いはさせたくはないが、仕方なくジェシカを見守り続ける事にした。

そんな中、事件が起きたのだ。

ジェシカの16歳の誕生日パーティーで、彼女は熱で倒れてしまった。きっと色々と無理をして来たから、疲れが出たのだろう。珍しく私に甘えるジェシカ、こうやって甘えられると嬉しいものだ。

「今日はずっと傍にいて」

少し恥ずかしそうにそう言ったジェシカを見た時は、このまま連れ去ろうとも思ったくらいだ。だが…あいつらがついに動き出したのだ。


~あとがき~
ヴァン視点です。
ヴァン視点の後は、ネイサンのその後も投稿予定です!
どうぞよろしくお願いいたしますm(__)m
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