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第39話:ついにこの日がやって来ました

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ダスディー侯爵やネリソン殿下と細かな打ち合わせなどを行っているうちに、あっという間に2ヶ月が過ぎた。そして、今日はいよいよ私の17歳の誕生日だ。

1年前、体調が悪い私を心配してくれたヴァン。熱が出た私の傍にずっといてくれた。でも、そのせいでヴァンは、殺されてしまった。

いつもの様に水色のドレスに着替えさせられた私は、胸にはお母様の形見でもある、貝殻のネックレスを。そして耳にはヴァンの形見でもある、イヤリングを付けている。

ちなみに今日は私とネイサン様が結婚する日&ネイサン様が国王に就任する日なのだが、あまりにも急だったので、今日はサインなどの書類だけを整え、私たちが貴族学院を卒業した後、改めて結婚式と就任式を行うらしい。

そのため、今日の舞台は去年と同じ、ファレソン侯爵家だ。昨日のうちに必要な荷物は既にまとめておいた。旅に必要な書類等も、ダスディー侯爵が準備してくれている。

後は今日の断罪が成功する事を祈るだけだ。なんだか緊張してきたわ。

その時だった、通信機がなったのだ。急いで通信機を手に取った。

“ジェシカ様、おはようございます。ご体調はいかがですか?”

「アンネ様、ありがとうございます。正直少し緊張しておりますが、大丈夫ですわ。いよいよ今日、決着が付くのですね。でも、うまく行きますでしょうか?」

こんな大掛かりな断罪劇、小説やテレビの中でしか見た事がないから、なんだか緊張してきたのだ。テレビや小説の世界なら、うまく行くとこが分かっているから安心していられるが、ここは現実の世界。本当にうまく行くのか不安なのだ。

“実は私も、緊張しておりますの。でも、きっと大丈夫ですわ。ジェシカ様には、私たちが付いておりますもの。それに、この日の為に何度も打ち合わせをして作戦を立てたのですから、失敗するはずはございませんわ”

「そうですわよね。アンネ様、ありがとうございます。あなた様の姿を見たら、少し不安が消えた気がしますわ」

“それはよかったです。それから、断罪中は私がずっと傍におりますので。今までは傍に付いていたくてもそれが出来ませんでしたから。私、今日はジェシカ様を守る様、父から言われているのです。だから、安心してください”

そう言って、にっこり笑ったアンネ様。

「それは心強い限りですわ」

“それでは後程”

アンネ様との通信を切った後、今日の会場でもあるホールへと向かう。既にお父様と継母、異母弟が待っていた。

「ジェシカ、遅いぞ。相変わらずノロマだな。まあいい、今日からお前は王妃だ。そして私は、王妃の父親だ。これで増々、我がファレソン侯爵家が権力を持つことになる。いずれは公爵になるかもしれないな」

ガハガハと下品な笑いを見せるお父様。さらに

「公爵か、異母姉上でも我が家の役に立つことがあるのですね。それにしても殿下もこんな女を妻にしないといけないだなんて、可哀そうですね。まあ、そのお陰で僕は、いずれ公爵になれそうですけれど」

「グラッシュが次期公爵だなんて、素敵だわ。さすが私の息子ね」

訳の分からない事で盛り上がっている継母と異母弟。大丈夫よ、あなた達は公爵どころか、もうすぐ貴族ですらなくなるのだから。そう言いたいが、ぐっと我慢する。しばらくすると、王族がやって来た。

「やあ、ジェシカ、今日のドレスも素敵だね。今日は僕たちが主役なんだ。君も今日から王妃だよ、嬉しいだろう?」

相変わらずこの男は…
そもそも今日は私の誕生日なのだが…
まあいいか。

ネイサン様と王妃様、陛下の後ろには、ネリソン殿下の姿も。軽くネリソン殿下に頭を下げた。それに気が付いたのは、ネイサン様だ。

「ジェシカ、ネリソンなんかに挨拶をする必要は無いよ。一応彼も王族だから、父上が連れて来たんだよ。別に来なくてもいいのにね」

イヤイヤ、ネリソン殿下も陛下の正当な血を引く王子なのだから、来るのは当たり前だろう。本当にこの男は、何を言っているのだか。

私が呆れていると、何を思ったのかネリソン殿下が私の傍にやって来た。そして

「ジェシカ嬢、17歳の誕生日、おめでとうございます。どうかあなた様にとって、幸せな日でありますように」

そう言うと、笑顔を見せるネリソン殿下。幸せな日…

「はい、ありがとうございます。ネリソン殿下」

私にとっても、あなた様にとっても、どうか幸せな日でありますように…そっと心の中で呟いた。

「おい、ネリソン、彼女に近づくな!ジェシカも、こんな奴に挨拶をする必要は無い。君は僕の婚約者…いいや、妻だろう。本当に、油断も隙も無い。ネリソン、国王でもある僕の妻に手を出したのだから、厳罰に処すからな!」

何を訳の分からない事を言っているのだろう…さすがのネリソン殿下も苦笑いをしている。

「ネイサン、訳の分からない事を言って、2人を困らせるな!本当にお前は…さあ、そろそろ式が始まるぞ」

陛下がすかさずネイサン様を叱った。そして、いよいよ式が始まる様だ。
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