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第38話:やっぱりそうでしたか
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アンネ様に注意されて以降は、出来るだけ大人しく過ごした。どうやらネイサン様も、あの日以降私がネイサン様に意見する事が無くなったため、私が心底反省したと思っている様だ。
それでも私は王宮に出向くと、今まで以上に周りの様子を気にするようにした。時にはネイサン様がメイドや護衛騎士に理不尽な暴言を吐いているシーンも、しっかり録画した。
そして護衛騎士やメイドたちに、声を掛ける。私にできる事は、これくらいしかない。でも、あと少し我慢すれば、きっといい方向に行く。そう信じて、録画し続けた。もちろん私の映像は、ダスディー侯爵率いる第二王子派によって、丁寧に分析、編集してもらっているらしい。
彼らも独自のルートで、王族の悪事の証拠を集めている様だ。毎日忙しく過ごしているうちに、気が付くと私の誕生日まで、後2ヶ月のところまで迫っていた。
その日は珍しく、ダスディー侯爵から通信が入った。いつもアンネ様からなのに、珍しいわね。そう思いながら、通信に答える。
すると、一番最初に通信した時と同じように、たくさんの貴族とネリソン殿下も映っている。どうやら何かしらの発展があった様だ。
“やあ、ジェシカ嬢、久しぶりだね。君が送ってくれた映像の分析と編集がやっと終わったよ。ファレソン侯爵は、随分と罪を犯していたよ。脱税や賄賂、闇の組織との繋がり、この国で禁止されている薬物や保護動物たちの密売、さらに王妃とも繋がりがある事が分かった。王妃もどうやら闇の密売に関与していた様だ”
「そうだったのですね。それで、父は断罪できますか?」
“ああ、もちろんだ。これだけの証拠がそろっていれば、君の父親はもちろん、王妃も断罪できるよ。それから…”
なぜかダスディー侯爵が言いにくそうにしている。
「ダスディー侯爵、私は大丈夫です。真実をすべて話してください」
ヴァンを殺されたあの日から、もう覚悟は出来ているのだ。どんな現実が待ち受けていようとも、もう驚かない。
“そうか、わかったよ。実は君の母親でもある、前ファレソン侯爵夫人だが、侯爵と現夫人によって、毒殺されていたんだ。君も本当は毒殺される予定だったのだが、政治の道具に使えると踏んだ侯爵が、生かしたらしい…”
「そうですか…何となくそんな気がしていました。きっと母は、父と継母に殺されたのだろうって。あの人たちなら、やりかねないですから…」
お母様とお父様は、元々政略結婚だと聞いたことがある。人を平気で殺める人だ、きっとお母様も。そんな気がしていた。でも、まさか私まで殺そうとしていたなんて、さすがにびっくりだけれどね。
“ジェシカ嬢、君って子は…”
なぜか画面越しで、ダスディー侯爵がとても悲しそうな顔をしていた。アンネ様や一部の貴族は泣いている。
「皆様、私の為に色々と気を使ってくださり、ありがとうございます。でも、私は大丈夫ですわ。それで、いつ断罪を行いますか?」
私の誕生日まで、後2ヶ月しかないのだ。早く断罪を行わないと!
「我々が考えている以上に、ジェシカ嬢は強くて聡明な令嬢だったのだね。それで断罪なのだが、これからもう少し資料をまとめ、君の誕生日に行おうと思っている。あの日は王族はもちろん、貴族も皆集まるからね」
私の誕生日に断罪か…
「ダスディー侯爵、最高の誕生日プレゼントですわ。わかりました、私の誕生日に、断罪を行いましょう」
“ジェシカ嬢ならそう言うと思ったよ。それから断罪後は旅に出ると言っていたね。こちらで、旅に必要な資金と船、さらに旅に同行する使用人たちを準備した。他に何か必要な物はあるかい?”
「ありがとうございます。ただ、船と使用人たちはご遠慮いたしますわ。私は自分の事は自分でできますし、自分の足で着の身着のまま旅をしたいのです。資金を準備して頂けるだけで十分です。それから旅とは関係ないのですが、修道院に入れられているカミラ様を、至急出してあげて欲しいです。彼女もネイサン様によって傷つけられた、被害者ですから…」
“ジェシカ嬢は本当に心の優しい令嬢なんだね。分かったよ、彼女が修道院から出られる様、働きかけよう”
「ありがとうございます。これで心置きなく、旅に出られますわ」
出来れば旅に出る前に、カミラ様の姿を見られたら嬉しいわ。彼女の無念も、これで晴らせそうね。つい笑みが漏れてしまう。後2ヶ月で、全てが終わる。
なんだかドキドキしてきた。さあ、後2ヶ月の間に、旅に出る準備を本格的に進めないとね。
それでも私は王宮に出向くと、今まで以上に周りの様子を気にするようにした。時にはネイサン様がメイドや護衛騎士に理不尽な暴言を吐いているシーンも、しっかり録画した。
そして護衛騎士やメイドたちに、声を掛ける。私にできる事は、これくらいしかない。でも、あと少し我慢すれば、きっといい方向に行く。そう信じて、録画し続けた。もちろん私の映像は、ダスディー侯爵率いる第二王子派によって、丁寧に分析、編集してもらっているらしい。
彼らも独自のルートで、王族の悪事の証拠を集めている様だ。毎日忙しく過ごしているうちに、気が付くと私の誕生日まで、後2ヶ月のところまで迫っていた。
その日は珍しく、ダスディー侯爵から通信が入った。いつもアンネ様からなのに、珍しいわね。そう思いながら、通信に答える。
すると、一番最初に通信した時と同じように、たくさんの貴族とネリソン殿下も映っている。どうやら何かしらの発展があった様だ。
“やあ、ジェシカ嬢、久しぶりだね。君が送ってくれた映像の分析と編集がやっと終わったよ。ファレソン侯爵は、随分と罪を犯していたよ。脱税や賄賂、闇の組織との繋がり、この国で禁止されている薬物や保護動物たちの密売、さらに王妃とも繋がりがある事が分かった。王妃もどうやら闇の密売に関与していた様だ”
「そうだったのですね。それで、父は断罪できますか?」
“ああ、もちろんだ。これだけの証拠がそろっていれば、君の父親はもちろん、王妃も断罪できるよ。それから…”
なぜかダスディー侯爵が言いにくそうにしている。
「ダスディー侯爵、私は大丈夫です。真実をすべて話してください」
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「そうですか…何となくそんな気がしていました。きっと母は、父と継母に殺されたのだろうって。あの人たちなら、やりかねないですから…」
お母様とお父様は、元々政略結婚だと聞いたことがある。人を平気で殺める人だ、きっとお母様も。そんな気がしていた。でも、まさか私まで殺そうとしていたなんて、さすがにびっくりだけれどね。
“ジェシカ嬢、君って子は…”
なぜか画面越しで、ダスディー侯爵がとても悲しそうな顔をしていた。アンネ様や一部の貴族は泣いている。
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「我々が考えている以上に、ジェシカ嬢は強くて聡明な令嬢だったのだね。それで断罪なのだが、これからもう少し資料をまとめ、君の誕生日に行おうと思っている。あの日は王族はもちろん、貴族も皆集まるからね」
私の誕生日に断罪か…
「ダスディー侯爵、最高の誕生日プレゼントですわ。わかりました、私の誕生日に、断罪を行いましょう」
“ジェシカ嬢ならそう言うと思ったよ。それから断罪後は旅に出ると言っていたね。こちらで、旅に必要な資金と船、さらに旅に同行する使用人たちを準備した。他に何か必要な物はあるかい?”
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“ジェシカ嬢は本当に心の優しい令嬢なんだね。分かったよ、彼女が修道院から出られる様、働きかけよう”
「ありがとうございます。これで心置きなく、旅に出られますわ」
出来れば旅に出る前に、カミラ様の姿を見られたら嬉しいわ。彼女の無念も、これで晴らせそうね。つい笑みが漏れてしまう。後2ヶ月で、全てが終わる。
なんだかドキドキしてきた。さあ、後2ヶ月の間に、旅に出る準備を本格的に進めないとね。
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