8 / 52
第8話:反撃のときです
しおりを挟む
「先生、またジェシカが、カミラに酷い事をしたのです。この机、見て下さい」
先生に鼻息荒く詰め寄るネイサン様。
「これは酷いですね。王太子殿下、どうしてこんな酷い事をした人が、ファレソン嬢だと思うのですか?もちろん、証拠がおありなのでしょう。ぜひ、ご提示お願いいたします」
「証拠…ですか?そんなものはありません。でも、ジェシカは僕の婚約者だ。僕の恋人でもあるカミラを恨んでいてもおかしくはない。それがれっきとした証拠です」
この王太子、馬鹿なのかしら…そんなもの、証拠になる訳がない。
「殿下、それは証拠とは言いませんよ。皆さん、誰かファレソン嬢がギュリネイ嬢の机に落書きをしたり、傷つけていた姿を見た者はいますか?」
先生の問いかけに、誰も答えない。そりゃそうだろう、私は何もしていないのだから。さあ、そろそろ動き出しましょうか?
「先生、よろしいでしょうか?」
「はい、なんでしょう。ファレソン嬢」
「実は私、あの事件の後、自分が犯人に仕立て上げられたことが悲しくて、真犯人を見つけるため、映像型録音機を教室に設置していたのです。多分犯人が映っているはずです」
「なるほど、それでは早速その映像を確認しましょう」
よし、これで犯人を特定できる。そう思ったのだが…
「先生、あの、こんな事を申し上げたくはないのですが、ジェシカ様が準備した機械ですよね。でしたら、自分の都合の良い映像が映る様に、映像を偽造しているのではないでしょうか?例えば、別の人間が机を傷つけている映像に差し替えているとか」
とんちんかんな事を言いだしたのは、カミラ様だ。さすがの先生や他の生徒たちも、目を丸くしている。そりゃそうだ、どうやって映像を偽造しろというのだ。そんな技術、この国にはないだろう。
それなのに…
「そうだ、カミラの言う通りだ。ジェシカが準備した映像なんて、信用できない」
ネイサン様までそんな事を言いだしたのだ。本当にこの男は、どこまで馬鹿なのだろう…
「ギュリネイ嬢、それに殿下、映像を編集するならまだしも、映像自体を別の映像に差し替えるなんて、通常不可能です。あまりにもおかしな言いがかりはやめて下さい。でも、そこまで言うなら、機械に詳しい先生を呼んできますので、少しお待ちください」
急いで教室から出ていく先生。何とも言えない空気が流れている。ただ、相変わらずネイサン様は私を睨んでいるが…
しばらくすると、先生が戻ってきた。早速映像型録音機を提示した。
「これは最新のものですね。殿下たちが疑っているとの事なので、今回は私が準備した機械で映像を確認してもよろしいですか?ファレソン嬢」
「はい、構いません」
「殿下たちも、よろしいですね。私の持ってきた機械なら、信用できるでしょう?」
「はい、大丈夫です」
「でも…」
真っ青な顔をしてまだ反論しようとするカミラ様。
「それでは、再生してみましょう」
そんなカミラ様の言葉を無視し、先生が再生を始めた。そこには昨日の授業風景などが映っていた。そして誰もいなくなった教室に現れたのは…
予想通り、カミラ様だった。
周りをキョロキョロと見渡すと、自分の机に落書きをし始めたのだ。さらにナイフを取り出し、机を思いっきり傷つけている。
そして
「これでおしまいね。ジェシカ・ファレソン。ネイサン様は私のものなんだから!」
そう吐き捨て、それはそれは悪い微笑を浮かべながら去って行った。
これは酷いわね…
「こんなの嘘よ。きっと映像を偽造したに違いありませんわ。先生たちもジェシカ様の協力者なのでしょう」
「そうだ、先生。こんな映像は出鱈目だ。こうなったら王家管轄の鑑定士に分析してもらおう。もし偽造が分かったら、先生たちもただじゃおかないからな」
この期に及んで、まだこんなことを言うなんて…クラスメートたちも、引いている。
「そこまでおっしゃるのでしたら、いいでしょう。そうすれば、きっと全てがわかるはずです」
さすがの先生もイラっとしたのだろう。ただ、この映像を王家管轄の鑑定士に分析してもらうという事は、大事になるという事だ。今回の件、あまり大事にしたくはなかったのだが…
「あの…さすがにそれは…」
大事にしてはマズいと思ったのか、カミラ様が止めに入ったが。
「大丈夫だ、僕が君の汚名を返上してあげるからね。早速鑑定を依頼しよう」
こうして私が録画した映像は、鑑定士に依頼されることになったのだった。
放課後
王宮管轄の鑑定士、さらに陛下まで教室にやって来た。他にも数名の貴族と、お父様、カミラ様のお父様も来ていた。ここまで大事にするなんて。既に真っ青な顔をしているカミラ様を、ネイサン様が抱きしめている。
「鑑定結果を報告いたします。細かく分析した結果、この映像に手を加えられていた形跡はありません。あと、このような事は申し上げたくはないのですが…我が国では映像を加工する技術はございません。なぜわざわざ、こんな映像を鑑定依頼されたのか…」
若干あきれ顔でそう伝えた鑑定士。そもそも鑑定士は非常に忙しいのだ。こんなバカげたことで鑑定させられては、たまったものではないだろう。
「おい、君。鑑定を依頼たのは王太子でもある僕だぞ。本当にきちんと鑑定したのか?」
どうやら鑑定士の言葉が不満だった様で、ネイサン様が詰め寄っている。この人、もう救いようがないわね…
あまりの馬鹿さ加減に飽きている時だった。
先生に鼻息荒く詰め寄るネイサン様。
「これは酷いですね。王太子殿下、どうしてこんな酷い事をした人が、ファレソン嬢だと思うのですか?もちろん、証拠がおありなのでしょう。ぜひ、ご提示お願いいたします」
「証拠…ですか?そんなものはありません。でも、ジェシカは僕の婚約者だ。僕の恋人でもあるカミラを恨んでいてもおかしくはない。それがれっきとした証拠です」
この王太子、馬鹿なのかしら…そんなもの、証拠になる訳がない。
「殿下、それは証拠とは言いませんよ。皆さん、誰かファレソン嬢がギュリネイ嬢の机に落書きをしたり、傷つけていた姿を見た者はいますか?」
先生の問いかけに、誰も答えない。そりゃそうだろう、私は何もしていないのだから。さあ、そろそろ動き出しましょうか?
「先生、よろしいでしょうか?」
「はい、なんでしょう。ファレソン嬢」
「実は私、あの事件の後、自分が犯人に仕立て上げられたことが悲しくて、真犯人を見つけるため、映像型録音機を教室に設置していたのです。多分犯人が映っているはずです」
「なるほど、それでは早速その映像を確認しましょう」
よし、これで犯人を特定できる。そう思ったのだが…
「先生、あの、こんな事を申し上げたくはないのですが、ジェシカ様が準備した機械ですよね。でしたら、自分の都合の良い映像が映る様に、映像を偽造しているのではないでしょうか?例えば、別の人間が机を傷つけている映像に差し替えているとか」
とんちんかんな事を言いだしたのは、カミラ様だ。さすがの先生や他の生徒たちも、目を丸くしている。そりゃそうだ、どうやって映像を偽造しろというのだ。そんな技術、この国にはないだろう。
それなのに…
「そうだ、カミラの言う通りだ。ジェシカが準備した映像なんて、信用できない」
ネイサン様までそんな事を言いだしたのだ。本当にこの男は、どこまで馬鹿なのだろう…
「ギュリネイ嬢、それに殿下、映像を編集するならまだしも、映像自体を別の映像に差し替えるなんて、通常不可能です。あまりにもおかしな言いがかりはやめて下さい。でも、そこまで言うなら、機械に詳しい先生を呼んできますので、少しお待ちください」
急いで教室から出ていく先生。何とも言えない空気が流れている。ただ、相変わらずネイサン様は私を睨んでいるが…
しばらくすると、先生が戻ってきた。早速映像型録音機を提示した。
「これは最新のものですね。殿下たちが疑っているとの事なので、今回は私が準備した機械で映像を確認してもよろしいですか?ファレソン嬢」
「はい、構いません」
「殿下たちも、よろしいですね。私の持ってきた機械なら、信用できるでしょう?」
「はい、大丈夫です」
「でも…」
真っ青な顔をしてまだ反論しようとするカミラ様。
「それでは、再生してみましょう」
そんなカミラ様の言葉を無視し、先生が再生を始めた。そこには昨日の授業風景などが映っていた。そして誰もいなくなった教室に現れたのは…
予想通り、カミラ様だった。
周りをキョロキョロと見渡すと、自分の机に落書きをし始めたのだ。さらにナイフを取り出し、机を思いっきり傷つけている。
そして
「これでおしまいね。ジェシカ・ファレソン。ネイサン様は私のものなんだから!」
そう吐き捨て、それはそれは悪い微笑を浮かべながら去って行った。
これは酷いわね…
「こんなの嘘よ。きっと映像を偽造したに違いありませんわ。先生たちもジェシカ様の協力者なのでしょう」
「そうだ、先生。こんな映像は出鱈目だ。こうなったら王家管轄の鑑定士に分析してもらおう。もし偽造が分かったら、先生たちもただじゃおかないからな」
この期に及んで、まだこんなことを言うなんて…クラスメートたちも、引いている。
「そこまでおっしゃるのでしたら、いいでしょう。そうすれば、きっと全てがわかるはずです」
さすがの先生もイラっとしたのだろう。ただ、この映像を王家管轄の鑑定士に分析してもらうという事は、大事になるという事だ。今回の件、あまり大事にしたくはなかったのだが…
「あの…さすがにそれは…」
大事にしてはマズいと思ったのか、カミラ様が止めに入ったが。
「大丈夫だ、僕が君の汚名を返上してあげるからね。早速鑑定を依頼しよう」
こうして私が録画した映像は、鑑定士に依頼されることになったのだった。
放課後
王宮管轄の鑑定士、さらに陛下まで教室にやって来た。他にも数名の貴族と、お父様、カミラ様のお父様も来ていた。ここまで大事にするなんて。既に真っ青な顔をしているカミラ様を、ネイサン様が抱きしめている。
「鑑定結果を報告いたします。細かく分析した結果、この映像に手を加えられていた形跡はありません。あと、このような事は申し上げたくはないのですが…我が国では映像を加工する技術はございません。なぜわざわざ、こんな映像を鑑定依頼されたのか…」
若干あきれ顔でそう伝えた鑑定士。そもそも鑑定士は非常に忙しいのだ。こんなバカげたことで鑑定させられては、たまったものではないだろう。
「おい、君。鑑定を依頼たのは王太子でもある僕だぞ。本当にきちんと鑑定したのか?」
どうやら鑑定士の言葉が不満だった様で、ネイサン様が詰め寄っている。この人、もう救いようがないわね…
あまりの馬鹿さ加減に飽きている時だった。
22
お気に入りに追加
1,760
あなたにおすすめの小説
もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」
婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。
もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。
……え? いまさら何ですか? 殿下。
そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね?
もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。
だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。
これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。
※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。
他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

私を運命の相手とプロポーズしておきながら、可哀そうな幼馴染の方が大切なのですね! 幼馴染と幸せにお過ごしください
迷い人
恋愛
王国の特殊爵位『フラワーズ』を頂いたその日。
アシャール王国でも美貌と名高いディディエ・オラール様から婚姻の申し込みを受けた。
断るに断れない状況での婚姻の申し込み。
仕事の邪魔はしないと言う約束のもと、私はその婚姻の申し出を承諾する。
優しい人。
貞節と名高い人。
一目惚れだと、運命の相手だと、彼は言った。
細やかな気遣いと、距離を保った愛情表現。
私も愛しております。
そう告げようとした日、彼は私にこうつげたのです。
「子を事故で亡くした幼馴染が、心をすり減らして戻ってきたんだ。 私はしばらく彼女についていてあげたい」
そう言って私の物を、つぎつぎ幼馴染に与えていく。
優しかったアナタは幻ですか?
どうぞ、幼馴染とお幸せに、請求書はそちらに回しておきます。
【完結】婚約を解消して進路変更を希望いたします
宇水涼麻
ファンタジー
三ヶ月後に卒業を迎える学園の食堂では卒業後の進路についての話題がそここで繰り広げられている。
しかし、一つのテーブルそんなものは関係ないとばかりに四人の生徒が戯れていた。
そこへ美しく気品ある三人の女子生徒が近付いた。
彼女たちの卒業後の進路はどうなるのだろうか?
中世ヨーロッパ風のお話です。
HOTにランクインしました。ありがとうございます!
ファンタジーの週間人気部門で1位になりました。みなさまのおかげです!
ありがとうございます!

【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。
やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。
落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。
毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。
様子がおかしい青年に気づく。
ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。
ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
最終話まで予約投稿済です。
次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。
ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。
楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。
【本編完結】婚約者を守ろうとしたら寧ろ盾にされました。腹が立ったので記憶を失ったふりをして婚約解消を目指します。
しろねこ。
恋愛
「君との婚約を解消したい」
その言葉を聞いてエカテリーナはニコリと微笑む。
「了承しました」
ようやくこの日が来たと内心で神に感謝をする。
(わたくしを盾にし、更に記憶喪失となったのに手助けもせず、他の女性に擦り寄った婚約者なんていらないもの)
そんな者との婚約が破談となって本当に良かった。
(それに欲しいものは手に入れたわ)
壁際で沈痛な面持ちでこちらを見る人物を見て、頬が赤くなる。
(愛してくれない者よりも、自分を愛してくれる人の方がいいじゃない?)
エカテリーナはあっさりと自分を捨てた男に向けて頭を下げる。
「今までありがとうございました。殿下もお幸せに」
類まれなる美貌と十分な地位、そして魔法の珍しいこの世界で魔法を使えるエカテリーナ。
だからこそ、ここバークレイ国で第二王子の婚約者に選ばれたのだが……それも今日で終わりだ。
今後は自分の力で頑張ってもらおう。
ハピエン、自己満足、ご都合主義なお話です。
ちゃっかりとシリーズ化というか、他作品と繋がっています。
カクヨムさん、小説家になろうさん、ノベルアッププラスさんでも連載中(*´ω`*)
表紙絵は猫絵師さんより(。・ω・。)ノ♡

婚約破棄?とっくにしてますけど笑
蘧饗礪
ファンタジー
ウクリナ王国の公爵令嬢アリア・ラミーリアの婚約者は、見た目完璧、中身最悪の第2王子エディヤ・ウクリナである。彼の10人目の愛人は最近男爵になったマリハス家の令嬢ディアナだ。
さて、そろそろ婚約破棄をしましょうか。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌
招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」
毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。
彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。
そして…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる