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第24話:全てが終わりました
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夜会翌日、いつもの様に離宮のベッドで目を覚ます。昨日は大変だった。ダラス様が踏んでいた通り、やはりキャロル殿下が現れ、再びリベリオ殿下に呪いをかけようとしたのだ。
キャロル殿下を見たリベリオ殿下は、最初に会った時と同じように、絶望の眼差しをしていた。その瞳を見た瞬間、なにがなんでも彼を助けたい、そう思ったのだ。
そう、私はダラス様に“全ての呪いを解いた今、きっと再び呪いをかけに、キャロル殿下がリベリオ殿下の元に現れるはずだ”と言われたとき、言いようのない怒りがこみ上げて来た。
だからこそ、私の力でリベリオ殿下を助けたい、そして、キャロル殿下には自分がどんなに恐ろしい事をしようとしているのか、身をもって経験して欲しいと思ったのだ。
だから私は、自らダラス様にお願いして“呪いを跳ね返す”魔法を教えてもらったのだ。もちろん、呪いを消滅させる魔法も存在するのだが、私はあえて“跳ね返す”方を選んだのだ。
ダラス様からは“ティアは意外と残酷だね”と言われたが、やはり私は、リベリオ殿下を苦しめたキャロル殿下が許せなかった。
もちろん呪いを跳ね返した事は、今でも後悔はしていない。だって彼女はそれだけの事をしたのだから、そう私は思っている。
「ティア様、そろそろお時間です」
「ありがとう、すぐに行くわ」
実は今日、ダラス様が国に帰る日なのだ。ダラス様の目的だった、キャロル殿下を陰で手助けしていた元王宮魔術師も捕まったため、もうダラス様がこの国にいる理由もなくなった。既に昨日、元魔術師は、キブリス王国に強制送還されているのだ。
急いで部屋から出ると、なぜかリベリオ殿下が待っていた。
「殿下、どうされたのですか?」
「いや…その…ティア嬢を迎えに来たんだ。ほら、昨日君は僕の為に、かなりの魔力を使っただろう。それで、ちょっと心配になって」
「まあ、そうだったのですね。ありがとうございます。でも、もうすっかり元気になりましたわ。それでは一緒に、ダラス様の見送りに行きましょう」
リベリオ殿下と一緒に、ダラス様が待つ部屋へと向かった。すると
「リベリオ殿下、今回の件、本当に申し訳ございませんでした!娘はこのまま、我が国の北の施設に幽閉する事に致しました。二度とリベリオ殿下に近づかせませんので。と言っても、あの姿では、近づきたくても近づけないでしょう…」
ものすごい勢いで頭を下げて来たのは、どうやらブルシャ王国の国王陛下の様だ。そう言えば、魔法陣を使ってブルシャ王国に陛下を呼びに行ったって、ダラス様が言っていたわね。
「ブルシャ王国の国王陛下、どうか頭を上げて下さい。今回は事なきを得ましたので。ただ、我が国に無断で侵入したキャロル殿下には、やはり腹が立ちますので、今回ももちろん慰謝料は請求させていただきます」
「もちろんです、本当に申し訳ございませんでした」
リベリオ殿下ったら、ちゃっかり慰謝料は請求するのね。でも、もらえる物は貰わないと、今回の事件のせいで、夜会も結局中止になってしまったのだから。
「それでは、私共はこれで失礼いたします」
ブルシャ王国の国王の言葉をと共に、近くに控えていた魔術師が、大きなビンの様な者に入ったキャロル殿下を連れて来た。私を見ると、ギロリと睨んでいる。そして何かを叫んでいるが、全く聞こえない。
どうやらキブリス王国の魔術師が、2人を魔法陣で送っていく様だ。
「相変わらず威勢がいいですな…あんな姿になっても、まだティアに文句を言おうとしているのだから…とにかく、早く陛下とキャロル殿下を国まで送ってあげて下さい」
「はい、かしこまりました。それでは、私たちはこれで」
魔術師とブルシャ王国の陛下、さらにキャロル殿下はあっという間に消えてしまった。
「それじゃあ、私たちももう帰ります。キャルン王国の国王陛下、長い間お世話になりました」
「こちらこそ、リベリオの件で大変お世話になりました。本当にありがとうございます。どうかまた、いつでも遊びに来てください。その…我が国の王宮魔術師たちも、熱望しておりますので…」
近くで熱いまなざしを送っている、我が国の王宮魔術師たち。ダラス様も苦笑いしている。
「それじゃあティア、私はもう帰るけれど、何か困った事があったらいつでも通信機で連絡を入れてくれ。それから、たまにはキブリス王国にも遊びに来てくれ。皆君が来るのを、楽しみにしているよ」
「ありがとうございます、ダラス様。そう言えば先日、ひ孫が生まれたのですってね。あなた様ももういい年なのですから、無理はしないで下さいね」
「えっ?いい歳?ひ孫?」
近くにいたリベリオ殿下が、とっさに呟いた。
「そうそう、リベリオ殿下には話していなかったのですが、ダラス様は御年65歳ですわ。優秀な魔術師ですので、若返りの魔法で、実年齢より随分若く見えますが…」
「ティア、私はまだまだ若いぞ。リベリオ殿下、ティアの曾祖母は我が家の出でして。まあ、私とティアは親戚みたいなものですな。リベリオ殿下、ティアはちょっと鈍いところがありますが、あなたの事を大切に思っております。どうかティアの事を、よろしくお願いします。あっ、結婚式はぜひ呼んでくださいね」
「ちょっと、ダラス様、変な事を言わないで下さい!本当にもう!」
「そんなに照れなくてもいいだろう。それじゃあ、ティア、リベリオ殿下、それから王族の皆様、またお会いしましょう」
そう言うと、スッと消えてしまった。もう、本当に好き勝手言う人なのだから…
でも、何はともあれ、これで全て解決ね。
キャロル殿下を見たリベリオ殿下は、最初に会った時と同じように、絶望の眼差しをしていた。その瞳を見た瞬間、なにがなんでも彼を助けたい、そう思ったのだ。
そう、私はダラス様に“全ての呪いを解いた今、きっと再び呪いをかけに、キャロル殿下がリベリオ殿下の元に現れるはずだ”と言われたとき、言いようのない怒りがこみ上げて来た。
だからこそ、私の力でリベリオ殿下を助けたい、そして、キャロル殿下には自分がどんなに恐ろしい事をしようとしているのか、身をもって経験して欲しいと思ったのだ。
だから私は、自らダラス様にお願いして“呪いを跳ね返す”魔法を教えてもらったのだ。もちろん、呪いを消滅させる魔法も存在するのだが、私はあえて“跳ね返す”方を選んだのだ。
ダラス様からは“ティアは意外と残酷だね”と言われたが、やはり私は、リベリオ殿下を苦しめたキャロル殿下が許せなかった。
もちろん呪いを跳ね返した事は、今でも後悔はしていない。だって彼女はそれだけの事をしたのだから、そう私は思っている。
「ティア様、そろそろお時間です」
「ありがとう、すぐに行くわ」
実は今日、ダラス様が国に帰る日なのだ。ダラス様の目的だった、キャロル殿下を陰で手助けしていた元王宮魔術師も捕まったため、もうダラス様がこの国にいる理由もなくなった。既に昨日、元魔術師は、キブリス王国に強制送還されているのだ。
急いで部屋から出ると、なぜかリベリオ殿下が待っていた。
「殿下、どうされたのですか?」
「いや…その…ティア嬢を迎えに来たんだ。ほら、昨日君は僕の為に、かなりの魔力を使っただろう。それで、ちょっと心配になって」
「まあ、そうだったのですね。ありがとうございます。でも、もうすっかり元気になりましたわ。それでは一緒に、ダラス様の見送りに行きましょう」
リベリオ殿下と一緒に、ダラス様が待つ部屋へと向かった。すると
「リベリオ殿下、今回の件、本当に申し訳ございませんでした!娘はこのまま、我が国の北の施設に幽閉する事に致しました。二度とリベリオ殿下に近づかせませんので。と言っても、あの姿では、近づきたくても近づけないでしょう…」
ものすごい勢いで頭を下げて来たのは、どうやらブルシャ王国の国王陛下の様だ。そう言えば、魔法陣を使ってブルシャ王国に陛下を呼びに行ったって、ダラス様が言っていたわね。
「ブルシャ王国の国王陛下、どうか頭を上げて下さい。今回は事なきを得ましたので。ただ、我が国に無断で侵入したキャロル殿下には、やはり腹が立ちますので、今回ももちろん慰謝料は請求させていただきます」
「もちろんです、本当に申し訳ございませんでした」
リベリオ殿下ったら、ちゃっかり慰謝料は請求するのね。でも、もらえる物は貰わないと、今回の事件のせいで、夜会も結局中止になってしまったのだから。
「それでは、私共はこれで失礼いたします」
ブルシャ王国の国王の言葉をと共に、近くに控えていた魔術師が、大きなビンの様な者に入ったキャロル殿下を連れて来た。私を見ると、ギロリと睨んでいる。そして何かを叫んでいるが、全く聞こえない。
どうやらキブリス王国の魔術師が、2人を魔法陣で送っていく様だ。
「相変わらず威勢がいいですな…あんな姿になっても、まだティアに文句を言おうとしているのだから…とにかく、早く陛下とキャロル殿下を国まで送ってあげて下さい」
「はい、かしこまりました。それでは、私たちはこれで」
魔術師とブルシャ王国の陛下、さらにキャロル殿下はあっという間に消えてしまった。
「それじゃあ、私たちももう帰ります。キャルン王国の国王陛下、長い間お世話になりました」
「こちらこそ、リベリオの件で大変お世話になりました。本当にありがとうございます。どうかまた、いつでも遊びに来てください。その…我が国の王宮魔術師たちも、熱望しておりますので…」
近くで熱いまなざしを送っている、我が国の王宮魔術師たち。ダラス様も苦笑いしている。
「それじゃあティア、私はもう帰るけれど、何か困った事があったらいつでも通信機で連絡を入れてくれ。それから、たまにはキブリス王国にも遊びに来てくれ。皆君が来るのを、楽しみにしているよ」
「ありがとうございます、ダラス様。そう言えば先日、ひ孫が生まれたのですってね。あなた様ももういい年なのですから、無理はしないで下さいね」
「えっ?いい歳?ひ孫?」
近くにいたリベリオ殿下が、とっさに呟いた。
「そうそう、リベリオ殿下には話していなかったのですが、ダラス様は御年65歳ですわ。優秀な魔術師ですので、若返りの魔法で、実年齢より随分若く見えますが…」
「ティア、私はまだまだ若いぞ。リベリオ殿下、ティアの曾祖母は我が家の出でして。まあ、私とティアは親戚みたいなものですな。リベリオ殿下、ティアはちょっと鈍いところがありますが、あなたの事を大切に思っております。どうかティアの事を、よろしくお願いします。あっ、結婚式はぜひ呼んでくださいね」
「ちょっと、ダラス様、変な事を言わないで下さい!本当にもう!」
「そんなに照れなくてもいいだろう。それじゃあ、ティア、リベリオ殿下、それから王族の皆様、またお会いしましょう」
そう言うと、スッと消えてしまった。もう、本当に好き勝手言う人なのだから…
でも、何はともあれ、これで全て解決ね。
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