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第22話:何が起こったんだ?~リベリオ視点~
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「ティア様、こんばんは。そのドレス、とても似合っていますわ」
「本当ですわね。それにしても、お二人の姿。ティア様、私はあなたが義理の妹になる事を歓迎しますわ」
僕たちが入って来た途端、話しかけてきたのは兄上たちの配偶者たちだ。今日は兄上たちの配偶者たちも来ている。既にティア嬢も何度か会っていて、なんだかんだ言って、女性陣達は仲良しなのだ。
「何をおっしゃっているのですか?私はそんな…」
ティア嬢が顔を真っ赤にして反論している。照れる彼女も可愛いな。照れるティア嬢を見つめていると、クルリとこちらを向いたと思ったら
「リベリオ殿下、やはり王族でもない私が、王族の方々と一緒に入場するのはいかがなものかと…」
ここに来て、ティア嬢がそんな事を言いだしたのだ。
「何を言っているのだい。君は僕の命の恩人なんだ。それに今日、僕を助けてくれた令嬢として、父上から君の紹介もあるんだ。僕は、夜会の…皆が見ている前であの女に呪いをかけられたからね。だからこそ君を紹介して、呪いを解いてもらったとみんなに知ってもらいたいんだよ」
「そうよ、ティア嬢。あなたはリベリオの命の恩人なのですもの。大きな顔をして、王族と一緒に入場すればいいのよ」
僕と母上の言葉を聞き、考え直してくれたのか
「…分かりましたわ。土壇場で変な事を申してしまい、申し訳ございませんでした」
そう言ってティア嬢が頭を下げた。
「ティア嬢が謝る事ではないよ。さあ、そろそろ行こうか」
ティア嬢の手を取り、ホールの入口に向かった。ゆっくり扉が開くと同時に、それぞれがパートナーを連れ、ゆっくり入場していく。三男でもある僕は、一番最後だ。今まではずっとパートナーを伴わずに入場してきたが、今日は隣にティア嬢がいる。
それが嬉しくてたまらない。そう言えばダラス殿はどこにいるのだろう?もしかしたら、会場のどこかにいるのかもしれないな。
僕の姿を見た貴族たちから“殿下が元のお姿に”という声が漏れている。皆の見ている前で呪いをかけられた事で、醜い姿を皆に見られてしまった。あの時は、絶望しかなかった。正直夜会なんて参加したくなかった。あの時の悪夢が蘇るからだ。でも、ティア嬢が隣にいてくれるだけで、なんだか心が軽くなる。
ティア嬢がいてくれたから僕は、もう一度夜会に出ようと思えたのだ。
「ありがとう、ティア嬢」
ポツリと呟いた。
「殿下、急にどうされたのですか?」
不思議そうな顔で、ティア嬢が僕を見つめている。
「何でもないよ。ただお礼が言いたかっただけだよ」
本当は伝えたい事が沢山ある。でも今は、夜会に集中しないと。そう思い、濁しておいた。そして父上の挨拶が始まった。
「皆の者、今日は大事な報告がある。我が息子、リベリオの件だが、呪いは無事解かれた。ここにいるファリスティ伯爵家の令嬢、ティア嬢によって。今日はその事を知らせたくて、リベリオのパートナーとして彼女にも参加してもらった。ティア嬢、改めてリベリオの件、本当に感謝している」
父上がティア嬢に向かってほほ笑んだ。
「あの…」
ティア嬢が何かを言いかけた時、周りから大きな拍手が沸き起こった。
「呪いを解いてくれたティア嬢と伯爵家には、後日褒美を与えるものとする。私の話は以上だ。どうか夜会を存分に楽しんでいって欲しい」
父上が上手くまとめ、夜会スタート…と思った時だった。
「お久しぶりですわ。リベリオ殿下」
この声は!
ゆっくり声の方を振り向くと、そこには不敵な笑みを浮かべたにっくき女、キャロル殿下の姿が。どうして彼女がここにいるのだろう。近くには黒いフードを被った人間が。
この光景…
忘れもしない、呪いをかけられたときと同じ状況だ。
「おのれ、あの女を捕まえろ!」
父上の言葉で護衛騎士たちがすぐにキャロル殿下とフードを被った人間を捕まえようと護衛たちが走ってやってきたが、フードを被った男が魔法で追いやってしまった。
嫌だ…
やっと…やっと呪いが解けたのに…
なぜまたあの女がここにいるんだ?
気が付くと体がガタガタ震えていた。すると
「リベリオ殿下、大丈夫ですわ。あなた様は私が必ず守りますから」
ギュッと僕の手を握り、優しい眼差しで僕を見つめるティア嬢。
「あなたがティアとかいう女ね。私がせっかくリベリオ殿下にかけた呪いを全て解いてくれたそうじゃない。だからね、私、もっともっと素敵な呪いを準備してきたの。今度はそう簡単には解けない、とっておきの呪いをね。さあ、受けなさい!私からの最高のプレゼントを」
そう叫ぶと、僕に向かって魔力を放出するキャロル殿下。あの時と同じように、真っ黒な靄が僕に向かって飛んでくる。
結局僕は、また呪いをかけられてしまうのか…
「本当ですわね。それにしても、お二人の姿。ティア様、私はあなたが義理の妹になる事を歓迎しますわ」
僕たちが入って来た途端、話しかけてきたのは兄上たちの配偶者たちだ。今日は兄上たちの配偶者たちも来ている。既にティア嬢も何度か会っていて、なんだかんだ言って、女性陣達は仲良しなのだ。
「何をおっしゃっているのですか?私はそんな…」
ティア嬢が顔を真っ赤にして反論している。照れる彼女も可愛いな。照れるティア嬢を見つめていると、クルリとこちらを向いたと思ったら
「リベリオ殿下、やはり王族でもない私が、王族の方々と一緒に入場するのはいかがなものかと…」
ここに来て、ティア嬢がそんな事を言いだしたのだ。
「何を言っているのだい。君は僕の命の恩人なんだ。それに今日、僕を助けてくれた令嬢として、父上から君の紹介もあるんだ。僕は、夜会の…皆が見ている前であの女に呪いをかけられたからね。だからこそ君を紹介して、呪いを解いてもらったとみんなに知ってもらいたいんだよ」
「そうよ、ティア嬢。あなたはリベリオの命の恩人なのですもの。大きな顔をして、王族と一緒に入場すればいいのよ」
僕と母上の言葉を聞き、考え直してくれたのか
「…分かりましたわ。土壇場で変な事を申してしまい、申し訳ございませんでした」
そう言ってティア嬢が頭を下げた。
「ティア嬢が謝る事ではないよ。さあ、そろそろ行こうか」
ティア嬢の手を取り、ホールの入口に向かった。ゆっくり扉が開くと同時に、それぞれがパートナーを連れ、ゆっくり入場していく。三男でもある僕は、一番最後だ。今まではずっとパートナーを伴わずに入場してきたが、今日は隣にティア嬢がいる。
それが嬉しくてたまらない。そう言えばダラス殿はどこにいるのだろう?もしかしたら、会場のどこかにいるのかもしれないな。
僕の姿を見た貴族たちから“殿下が元のお姿に”という声が漏れている。皆の見ている前で呪いをかけられた事で、醜い姿を皆に見られてしまった。あの時は、絶望しかなかった。正直夜会なんて参加したくなかった。あの時の悪夢が蘇るからだ。でも、ティア嬢が隣にいてくれるだけで、なんだか心が軽くなる。
ティア嬢がいてくれたから僕は、もう一度夜会に出ようと思えたのだ。
「ありがとう、ティア嬢」
ポツリと呟いた。
「殿下、急にどうされたのですか?」
不思議そうな顔で、ティア嬢が僕を見つめている。
「何でもないよ。ただお礼が言いたかっただけだよ」
本当は伝えたい事が沢山ある。でも今は、夜会に集中しないと。そう思い、濁しておいた。そして父上の挨拶が始まった。
「皆の者、今日は大事な報告がある。我が息子、リベリオの件だが、呪いは無事解かれた。ここにいるファリスティ伯爵家の令嬢、ティア嬢によって。今日はその事を知らせたくて、リベリオのパートナーとして彼女にも参加してもらった。ティア嬢、改めてリベリオの件、本当に感謝している」
父上がティア嬢に向かってほほ笑んだ。
「あの…」
ティア嬢が何かを言いかけた時、周りから大きな拍手が沸き起こった。
「呪いを解いてくれたティア嬢と伯爵家には、後日褒美を与えるものとする。私の話は以上だ。どうか夜会を存分に楽しんでいって欲しい」
父上が上手くまとめ、夜会スタート…と思った時だった。
「お久しぶりですわ。リベリオ殿下」
この声は!
ゆっくり声の方を振り向くと、そこには不敵な笑みを浮かべたにっくき女、キャロル殿下の姿が。どうして彼女がここにいるのだろう。近くには黒いフードを被った人間が。
この光景…
忘れもしない、呪いをかけられたときと同じ状況だ。
「おのれ、あの女を捕まえろ!」
父上の言葉で護衛騎士たちがすぐにキャロル殿下とフードを被った人間を捕まえようと護衛たちが走ってやってきたが、フードを被った男が魔法で追いやってしまった。
嫌だ…
やっと…やっと呪いが解けたのに…
なぜまたあの女がここにいるんだ?
気が付くと体がガタガタ震えていた。すると
「リベリオ殿下、大丈夫ですわ。あなた様は私が必ず守りますから」
ギュッと僕の手を握り、優しい眼差しで僕を見つめるティア嬢。
「あなたがティアとかいう女ね。私がせっかくリベリオ殿下にかけた呪いを全て解いてくれたそうじゃない。だからね、私、もっともっと素敵な呪いを準備してきたの。今度はそう簡単には解けない、とっておきの呪いをね。さあ、受けなさい!私からの最高のプレゼントを」
そう叫ぶと、僕に向かって魔力を放出するキャロル殿下。あの時と同じように、真っ黒な靄が僕に向かって飛んでくる。
結局僕は、また呪いをかけられてしまうのか…
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