呪いをかけられた王子を助けたら愛されました

Karamimi

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第16話:やはりリベリオ殿下はお美しい方です

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リベリオ殿下に歳を取る呪いを解く薬を飲んでもらい始めてから、2週間が過ぎた。今日も朝から、薬作りに精を出す。

ボフン!

「ティア嬢、大丈夫かい?怪我はないかい?」

「ええ、大丈夫ですわ。でも、やっぱり私は薬を作るのが苦手な様で…」

相変わらず魔力を入れるのが苦手な私は、今日もしっかり爆発させてしまった。そんな私の元に、心配そうに駆けつけてくれたのは、リベリオ殿下だ。2週間薬を飲み続けているお陰か、だいぶ若返って来た。今は大体30代後半くらいかしら?

美しい銀髪も元に戻り、歯もしっかり生えそろった。さすが国一番の美少年と言われていただけの事はある。かなり男前で、メイドたちがたまにうっとりと見つめている。ただ、今まで散々酷い心の声を聞いてきたリベリオ殿下は、メイドが嫌いの様で、未だに一切寄せ付けないのだ。

それになぜかメイドたちも、自ら近づいてくることもない。もしかしたら、近づく事を禁止されているのかもしれないわね。

おっと話がそれてしまった。

とにかく薬を完成させないと!そう思い、再び煮詰めた薬草に魔力を込める。すると、ピンク色に変わった。どうやら成功した様ね。

「ティア嬢、凄いじゃないか。今日は3回目で成功したよ。さすがだね。この2週間で、随分と上達したね」

「ありがとうございます、殿下。最初の頃に比べれば随分マシになりましたが、まだまだですわ。さあ、早速今日の分を飲んでください」

出来たてホヤホヤの薬を、リベリオ殿下に渡した。リベリオ殿下が一気に飲み干すと、光に包まれた。ただ、あまり見た目は変わっていないが…

「相変わらず苦い薬だね。どうだい?僕の見た目、変わったかい?」

「いいえ、ほとんど変わっておりませんわ。ちょっと失礼しますね」

すっとリベリオ殿下の手を握る。確かに昨日よりかは、呪いの効力が弱まっているわ。

ちなみに殿下を悩ませていた、殿下に関して負の感情を抱いた場合に聞こえる心の声も、先日私が呪いを解いた。ほとんどの呪いを順調に解いて来たのだが、まだ解明されていない呪いが2つほど残っているのだ。

今日もまだこの呪いは分からずじまいか…

「ティア嬢、どうしたんだい?そんなに悲しそうな顔をして。もしかして、何か辛い事でもあったのかい?」

心配そうに私の顔を覗き込んでくるリベリオ殿下。近い…近いわ。さすがに私だって、こんな美しい殿方に至近距離で見つめられたら、緊張するじゃない。

「な…何でもありませんわ。ただ、殿下にかけられている残り2つの呪いの正体が分からないだけです。もしかしたら、歳を取る呪いが完全に解けるまでは、分からないかもしれませんね」

すっとリベリオ殿下から距離を取り、そう伝えた。

「そうか、僕にはまだ歳を取る呪い以外に2つ呪いがかけられているのか。でも、その呪いが何なのかは分からないけれど、生活には支障はないし、歳を取る呪いさえ解ければ僕はそんなに気にしないよ。そうだ、来月は王宮主催の夜会があるんだ。この分だと僕も参加できそうだから、その時はティア嬢、僕と一緒に参加してくれるかい?」

「えっ、夜会ですか。申し訳ございませんが、私はその様な華やかな場所は苦手なのです。ですから、どうか他の方を…」

「僕が呪いをかけられてから、令嬢は僕の姿を見ると悲鳴を上げて逃げていった。それが未だにトラウマで…ティア嬢が参加してくれないなら、僕も参加するのはやめるよ」

悲しそうに呟くリベリオ殿下。もう、そうやって悲しそうな顔をすれば、私がいう事を聞くと思って!

「分かりましたわ。来月の夜会まで、後1ヶ月ですよね。それまでに、何とか呪いを完全に解き切りましょう。と言っても、少なくとも歳を取る呪いは完全に解けるでしょうけれど」

「よかった。早速デザイナーを呼ばないと。君のドレスや宝石は、僕が贈らせてもらうよ。ティア嬢は僕の命の恩人、生きる希望だからね。どんなドレスがいいかな?そうだ、僕とお揃いの色のドレスなんていいよね。でも…やっぱり僕の瞳に合わせた、緑のドレスがいいな。宝石は、ティア嬢の瞳に合わせた青い宝石…う~ん、僕はあまり宝石の事は分からないな。母上に相談してみよう」

何やら訳の分からない事をブツブツと呟いているリベリオ殿下。ただ、殿下が楽しそうなので何よりだ。初めてお会いした時は、絶望に満ちた瞳をしていた。だからこそ、彼にはこれから幸せになって欲しいのだ。

リベリオ殿下が笑ってくれていると、なぜか私も嬉しいし、心が温かい気持ちになるのだ。

「さあ、リベリオ殿下、そろそろ稽古のお時間でしょう?」

「ああ、そうだね。なまった体を鍛え直さないと」

「あまり無理はしないで下さいね。あなた様の呪いはまだ解けていないのですから」

「ああ、分かっているよ。稽古が終わったら、一緒にお茶をしようね。それじゃあ、行ってくるね」

満面の笑みで、手を振りながら去っていくリベリオ殿下。そんな殿下を、笑顔で見送ったのだった。
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