呪いをかけられた王子を助けたら愛されました

Karamimi

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第14話:こんな気持ちは初めてだ~リベリオ視点~

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ティア嬢が離宮に来てから早1週間。毎日朝僕の元にやって来て、夜ご飯が終わるまでほどんど傍にいてくれるティア嬢。

彼女の話では、僕の呪いを解くための薬草がまだ届かないため、準備が出来ないとの事。

「リベリオ殿下、ごめんなさい。年老いた体だと、あちこち痛みが出てくるし、辛いですよね。早く呪いを解いて差し上げたいのですが…」

そう言って毎日僕にマッサージをしてくれるのだ。確かに早く呪いが解けると嬉しい。でも僕は、昔ほど呪いに関してネガティブな感情を抱いていない。

きっとティア嬢が僕を1人の人間として扱ってくれるからだろう。それに彼女といると、自分が呪いをかけられているという事を忘れるくらい、幸せなのだ。

そう、僕はどうやらティア嬢を好きになってしまった様だ。今まで特定の令嬢を好きになる事なんてなかった。どんなに美しい令嬢を見ても、何とも思わなかったのだ。

呪いをかけられてから、辛くて悲しくて生きる希望を失いかけた事もあった。でも、彼女が僕を地獄から救い出してくれたのだ。そんな彼女に、惚れるなという方が無理だろう。

母上も僕の気持ちに気が付いている様で

「リベリオ、よかったわね。いい令嬢に巡り合えて。ティア嬢ならきっと、あなたを幸せにしてくれるわ。呪いが解けた暁には、早速伯爵家に婚約を申し込まないとね」

そう言って笑っていた。母上め、こっそり僕たちの様子をニヤニヤしながら盗み見している事を、僕は知っているんだぞ。本当に盗み見だなんて、趣味が悪いのだから。

それでも母上が昔の様に僕に笑いかけてくれるようになったことは、素直に嬉しい。それもこれも、きっとティア嬢のお陰だろう。彼女は本当に女神の様な女性だ。結婚するなら、絶対にに彼女が良いと考えている。

そして今日もティア嬢に車いすを押してもらい、中庭を散歩している。いつもの様に僕に微笑みかけながら、ゆっくりと車いすを押してくれるティア嬢。この時間は僕にとって、一番幸せな時間なのだ。

その時だった、ティア嬢付きのメイドがやって来て、薬草が準備できたと伝えて来たのだ。その瞬間、ティア嬢の顔がぱぁぁっと明るくなった。早速薬草を使って、呪いを解く薬を作るらしい。

そう言えばティア嬢は薬を作るのが苦手で、何度か爆発させるかもしれないと言っていたな。万が一ティア嬢が怪我をしたら大変だ。そんな思いから、僕も傍で様子を見せてもらう事になった。

早速僕の為に準備されたソファに座って、ティア嬢の様子を伺う。いつもの優しい微笑とはうって変わって、美しい水色の髪を一つに束ねると、真剣な表情で薬草を煮詰め始めた。

その時だった。兄上が王宮魔術師たちを連れて、やって来たのだ。僕の姿を見るなり、一目散に逃げていった、役立たずの魔術師たちなんかを連れて、一体何をしに来たんだ!そんな思いから、兄上と王宮魔術師を睨むが、全くこちらを気にしていない様子。

クソ、僕の存在は完全無視か!

どうやらティア嬢は魔術師たちが来た事で緊張している様で、顔が引きつっている。そのせいか、一度目の魔力を注ぎ込むところで、爆発させてしまったのだ。

申し訳なさそうにティア嬢が、兄上や魔術師たちに頭を下げている。さらに何度も何度も爆発を繰り返している。動揺するティア嬢を見ていたら、何とかしてあげたくてティア嬢に声をかけた。

すると僕の方を見て、少し安心した表情を浮かべてくれた。よかった、これで落ち着いてくれたら、そう思っていたら、なんと魔術師長が、自分が魔力を入れたいと、ふざけたことを言い出したのだ!

さらに一発で成功させてしまったのだ!何なんだあの男は!いいところだけかっさらって。そもそもティア嬢が、呪いを解く薬を調べてくれたのに…

言いようのない怒りが、僕の心を支配していく。でも当のティア嬢は、なぜか魔術師長を尊敬の眼差しで見つめている。もしかしてティア嬢は、魔術師長の様な男が好きなのか?そもそもあの男は、何もできずにさっさと僕の元から退散した男なのに…

その後もティア嬢と魔術師長は、楽しそうに話しをしながら薬を作っていく。そして完成した薬を持って、嬉しそうに僕の元にやって来たティア嬢。

誰があんな男の魔力が込められた薬なんて飲むものか!そんな思いから、プイっとあちらの方向を向いた。

そんな僕に対し、ティア嬢は僕が手を動かせないから飲めないと思った様で、スプーンにすくって口元に運んできたのだ。

だから僕は、君が作った薬が飲みたいんだ!そんな思いから

「僕は時間がかかってもいいから、ティア嬢の作った薬を飲みたかったんだ…ティア嬢、明日からはきみの作った薬を出してほしい」

そう伝えた。最初は困惑していたティア嬢だったが、兄上のアシストで、明日からは自分で作った薬を出してくれると約束してくれたのだ。

兄上からは嫉妬深い男だと思われた様だが、別に兄上にどう思われようが関係ない。とにかく僕は、ティア嬢が作ってくれた薬しか飲むつもりはないのだから。
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