呪いをかけられた王子を助けたら愛されました

Karamimi

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第11話:地獄に落とされるとはこう言うことだ~リベリオ視点~

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僕は子供の頃から、第三王子として両親はもちろん、兄上たちからも可愛がられて育ってきた。使用人たちも僕の成長を温かく見守っていてくれた。

特に母上からの溺愛は半端なく
“リベリオはなんて可愛いのかしら。あなたが私の傍にいてくれるだけで、私は本当に幸せよ。可愛い私のリベリオ”

そう言って抱きしめてくれた。そんな僕は、この国で一番の美少年と言われ、令嬢たちからもチヤホヤされていた。そう、僕は美しくて誰からも愛される、生きているだけで尊い存在。ずっとそう思っていた。でもそんな僕を地獄に叩き落す事件が起きた。

それは交友国でもあるブルシャ王国の王族を招き入れた時の事だった。僕の美しさにノックアウトされたブルシャ王国の第一王女、キャロル殿下に求婚されたのだ。

キャロル殿下は非常に我が儘な性格で、独占欲も強く僕の苦手なタイプだった。だから、はっきりと断りを入れた。物凄く怒っていたキャロル殿下だったが、父親でもあるブルシャ王国の国王に論され、一旦諦めたかのように見えたが…

「リベリオ殿下、私との結婚を断った事、今後悔させてあげますわ」

王宮主催の夜会に突如現れたキャロル殿下によって、僕は呪いをかけられてしまったのだ。美しかった僕の顔は、見るも無残な姿にさせられ、体も思う様に動かない。それに僕の周りをハエが飛び回る様になった。

夜会は大パニックに陥った。令嬢たちは悲鳴を上げ逃げまどい、貴族たちも僕のあまりにも醜い姿と臭いに、鼻と口を押えていた。それはまるで、地獄の様な光景だった。すぐに夜会は中止された。

「リベリオ…あぁ、何て姿に…」


母上は泣き叫び、父上や兄上たちは顔を引きつらせていた。今まで僕をうっとりと見つめていた使用人たちは、汚いものを見る様な目で見つめ、さらに使用人たちからの心の暴言も聞こえる。

どうして…
僕は誰からも愛される王子だったのに…
どうしてこんな事に…

もちろん両親や兄上たちも黙っておらず、我が国の王宮魔術師はもちろん、ブルシャ王国の魔術師もやって来て、呪いを必死に解こうとしてくれた。

ブルシャ王国からも、かなりの慰謝料をもらった。さらにキャロル殿下を問い詰め、呪いの解き方を聞き出そうとしたが“そんなものは知らない”の一点張りだったらしい。

どうやらキャロル殿下の裏には、優秀な他国の魔術師が付いていたとの話もあったが、真相は分からなかったらしい。

結局誰も僕の呪いを解く事は出来なかった…というより、なぜか僕の傍に来ると、皆体調が悪くなり、何もできなくなるのだ。きっと呪いのせいだろう。

もうこの呪いは解けないのかもしれない…そんな絶望が僕を襲った。

何より辛かったのが、使用人たちが僕の世話をイヤイヤする事だ。

“どうして私がこんな気持ち悪くて臭い妖怪の面倒を見なければいけないの?”

“本当に気持ち悪いわね…早くいなくなってくれないかしら?”

“ここにいると吐き気と頭痛が凄い。いくらお金がいいからって、私にはやっぱり無理だ”


毎日毎日、使用人たちから聞こえてくる暴言の数々。次第に僕の心はすさんで行った。僕が生きている事で、こんなにも誰かに迷惑をかけている。僕はこれ以上、生きていてはいけないのだ…僕が生きているだけで、皆に迷惑がかかる。

そう思ったら、涙が溢れて来た。生きる事に絶望し、何もかも嫌になった僕は、使用人たちが部屋に入る事を拒む様になった。もう誰にも会いたくない!だって僕は、皆に嫌われているのだから。きっと父上や母上、兄上たちも僕がこの世を去れば、面倒ごとから解放され密かに喜んでくれるはずだ。

そう考える様になった。

そんなある日、父上たちが1人の令嬢を連れて来たのだ。彼女は僕の呪いを解くために、連れてこられたとの事。シーツを頭までしっかり被り、僕は姿を隠す。きっと僕の姿を見たら、悲鳴を上げて逃げていくだろう。もう僕は、無駄に傷つきたくないのだ。

案の定、その令嬢はすぐに部屋から出て行った。やっぱり…この部屋に入ると、皆体調が悪くなるからな。あの令嬢も、体調が悪くなって逃げ帰ったのだろう。誰も僕の呪いを解ける人間なんていないのだから。

そう思っていた。でも翌日、僕の部屋に来るなり、訳の分からない呪文を唱えるとともに、魔力を僕に向かってぶつけてきたのだ。どうやら呪いと戦っている様で、激しく魔力同士がぶつかり合うのを感じる。

しばらくすると、何かが割れるような音と共に、令嬢が魔力をぶつけるのを止め、ぐったりとしている。どうやら僕には人を寄せ付けない呪いがかかっていて、それを解いたらしい。

ただ、僕の姿は未だに恐ろしいし、何よりハエが飛び交っている。それなのに、皆嬉しそうな顔をしている。それがなんだか癪に障り、令嬢に出て行くように伝えるとともに、魔力をぶつけた。

痛い思いをすれば、きっと令嬢も出ていくだろう。使用人たちと同じように。そう思ったのだが、僕の魔力を跳ね除けると、まっすぐこっちにやってきたのだ。
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