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第10話:さすが薬です
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「それでは、早速薬を飲んでみてください」
改めてスプーンですくった薬を、殿下の口元に持って行く。すると口を開けてくれたので、そのまま薬を放り込んだ。
「これは苦いな…でも、飲まないと呪いが解けないのだよね。これは一気に飲むよ」
そう言うと、震える手で薬を取ると、一気に口に放り込んだ。その瞬間、殿下の体がピンク色に光ると、皺が少し薄くなり、歯と髪が少し生えた。でも、まだまだお爺様だ。
「おお…これはすごい。殿下が少しお若くなられた」
「でも、まだまだだね…」
「1ヶ月のみ続けないといけないので。でも、どうやら成功した様ですわね。次は不潔になる呪いを解く薬です。どうぞ」
「これはまた凄い色だね…これは1回飲むだけでいいのかい?」
「はい、大丈夫ですわ」
「…わかった、飲むよ」
一気に口に含むリベリオ殿下。すると、今までツンとする臭いが漂っていたが、スッと臭いが落ち着いた。ただ、なぜだろう、まだ臭う。もしかして、ずっとお風呂に入っていなかったからかしら?そう思い、心の中で“クリーン”と唱えながら、殿下に魔法をかけた。すると、私のかけた魔法がスッと馴染んで、臭いもしなくなった。それと同時に、ハエもどこかに行ってしまった。
「どうやら不潔になる呪いは解けた様ですわね。よかったですわ」
「本当だ、もう臭くない。殿下、よかったですな。今までは本当に臭くてたまらなかったですから」
魔術師長がとても失礼な事を言って、ガハガハと笑っている。さすがの王太子殿下もリベリオ殿下も、魔術師長を睨んでいる。でもこれで、他の使用人たちもお世話をしてくれるだろう。
「殿下、とりあえず今日から湯あみが出来ますね。ただ、まだまだお年を召された体ですので、ご無理はなさらないで下さいね。王太子殿下、さすがに湯あみは私では無理ですので、どうか男性の使用人を殿下に付けて差し上げて下さい」
「ああ、分かったよ。リベリオ、臭いが無くなって本当によかった。ティア嬢、ありがとう。全て君のお陰だ。本当を言うと、最初はこれっぽっちも期待していなかったんだ。でも今は、君なら全ての呪いを解ける気がするよ」
私の手を握りながら、頭を下げる王太子殿下。これっぽっちも期待していなかったという言葉が引っかかるが、喜んで貰えているし、まあいいか。
「兄上、ティア嬢に気安く触れないでください!それから、これっぽっちも期待していなかっただなんて、ティア嬢に失礼ですよ!本当に兄上は」
そう言うと、王太子殿下から私の手を奪い取ったリベリオ殿下。少しだけ体を動かせるようになったのね。よかったわ。
そうだ、呪いの方はどうかのかしら?
リベリオ殿下の手をギュッと握り、魔力を集中させる。
「ティア嬢、そんなに強く手を握られたら…」
「殿下、呪いの絡まりが少しほどけた様ですわ。ただ、まだまだ色々な呪いがかかっていますわね。それから、殿下が以前話してくださった“殿下にネガティブな感情を抱いている時に聞こえる心の声の呪い”ですが、確かにその様な呪いがかかっている様ですわね。それに…何なのでしょうか?この呪いは…」
私には理解できない呪いが、いくつか存在しているのだ。一番強くかけられている歳を取る呪いを完全に解けば、見えてくるのかしら?
「ティア嬢は殿下の手を握ると、呪いの種類が分かるのですか?どれ、私も握らせてください」
私が握っている反対側の手を握る、魔術師長。
「なるほど、確かに歳を取る呪いを感じます。私が殿下を見た時は、酷い頭痛と吐き気に襲われたので、魔力を感じ取る事が出来なかったが。ただ、私にはこの呪いしか分からないな」
「僕には、人を寄せ付けない呪いがかかっていたからね。それもティア嬢が解いてくれたんだ。本当に彼女は素晴らしい人物だ。それから魔術師長、あまり手を握らないでくれ。気持ち悪い…」
魔術師長が握っている方の手を、すっと引いたリベリオ殿下。ただ私の手はしっかり握っている。
「殿下は随分と辛口な事を言いますな。それにしても、ティア嬢の魔力に関する知識はやはり素晴らしい。どうか今すぐにでも王宮魔術師として迎え入れ…」
「ティア嬢はリベリオの呪いを解く事に専念してもらわないといけないから、今すぐには王宮魔術師にはさせないからね」
すかさず王太子殿下がそう言い放った。
「わかりました。ただ、もし私たちの力が必要になったら、どうか遠慮なく申してくださいね。それから、他の呪いを解くところも拝見したいので、定期的に様子を見に来させていただきます。この魔法書にも興味がありますし」
チラリと私の魔法書を見つめる魔術師長。よほど魔力が好きなのだろう。まあ、魔力好きなら私も負けないが…
「わかりましたわ、では、その時はまたお願いいたしますね」
とにかく心配していた薬作りも、魔術師長のお陰でうまく行ったからよかったわ。
※次回、リベリオ殿下視点です。
よろしくお願いしますm(__)m
改めてスプーンですくった薬を、殿下の口元に持って行く。すると口を開けてくれたので、そのまま薬を放り込んだ。
「これは苦いな…でも、飲まないと呪いが解けないのだよね。これは一気に飲むよ」
そう言うと、震える手で薬を取ると、一気に口に放り込んだ。その瞬間、殿下の体がピンク色に光ると、皺が少し薄くなり、歯と髪が少し生えた。でも、まだまだお爺様だ。
「おお…これはすごい。殿下が少しお若くなられた」
「でも、まだまだだね…」
「1ヶ月のみ続けないといけないので。でも、どうやら成功した様ですわね。次は不潔になる呪いを解く薬です。どうぞ」
「これはまた凄い色だね…これは1回飲むだけでいいのかい?」
「はい、大丈夫ですわ」
「…わかった、飲むよ」
一気に口に含むリベリオ殿下。すると、今までツンとする臭いが漂っていたが、スッと臭いが落ち着いた。ただ、なぜだろう、まだ臭う。もしかして、ずっとお風呂に入っていなかったからかしら?そう思い、心の中で“クリーン”と唱えながら、殿下に魔法をかけた。すると、私のかけた魔法がスッと馴染んで、臭いもしなくなった。それと同時に、ハエもどこかに行ってしまった。
「どうやら不潔になる呪いは解けた様ですわね。よかったですわ」
「本当だ、もう臭くない。殿下、よかったですな。今までは本当に臭くてたまらなかったですから」
魔術師長がとても失礼な事を言って、ガハガハと笑っている。さすがの王太子殿下もリベリオ殿下も、魔術師長を睨んでいる。でもこれで、他の使用人たちもお世話をしてくれるだろう。
「殿下、とりあえず今日から湯あみが出来ますね。ただ、まだまだお年を召された体ですので、ご無理はなさらないで下さいね。王太子殿下、さすがに湯あみは私では無理ですので、どうか男性の使用人を殿下に付けて差し上げて下さい」
「ああ、分かったよ。リベリオ、臭いが無くなって本当によかった。ティア嬢、ありがとう。全て君のお陰だ。本当を言うと、最初はこれっぽっちも期待していなかったんだ。でも今は、君なら全ての呪いを解ける気がするよ」
私の手を握りながら、頭を下げる王太子殿下。これっぽっちも期待していなかったという言葉が引っかかるが、喜んで貰えているし、まあいいか。
「兄上、ティア嬢に気安く触れないでください!それから、これっぽっちも期待していなかっただなんて、ティア嬢に失礼ですよ!本当に兄上は」
そう言うと、王太子殿下から私の手を奪い取ったリベリオ殿下。少しだけ体を動かせるようになったのね。よかったわ。
そうだ、呪いの方はどうかのかしら?
リベリオ殿下の手をギュッと握り、魔力を集中させる。
「ティア嬢、そんなに強く手を握られたら…」
「殿下、呪いの絡まりが少しほどけた様ですわ。ただ、まだまだ色々な呪いがかかっていますわね。それから、殿下が以前話してくださった“殿下にネガティブな感情を抱いている時に聞こえる心の声の呪い”ですが、確かにその様な呪いがかかっている様ですわね。それに…何なのでしょうか?この呪いは…」
私には理解できない呪いが、いくつか存在しているのだ。一番強くかけられている歳を取る呪いを完全に解けば、見えてくるのかしら?
「ティア嬢は殿下の手を握ると、呪いの種類が分かるのですか?どれ、私も握らせてください」
私が握っている反対側の手を握る、魔術師長。
「なるほど、確かに歳を取る呪いを感じます。私が殿下を見た時は、酷い頭痛と吐き気に襲われたので、魔力を感じ取る事が出来なかったが。ただ、私にはこの呪いしか分からないな」
「僕には、人を寄せ付けない呪いがかかっていたからね。それもティア嬢が解いてくれたんだ。本当に彼女は素晴らしい人物だ。それから魔術師長、あまり手を握らないでくれ。気持ち悪い…」
魔術師長が握っている方の手を、すっと引いたリベリオ殿下。ただ私の手はしっかり握っている。
「殿下は随分と辛口な事を言いますな。それにしても、ティア嬢の魔力に関する知識はやはり素晴らしい。どうか今すぐにでも王宮魔術師として迎え入れ…」
「ティア嬢はリベリオの呪いを解く事に専念してもらわないといけないから、今すぐには王宮魔術師にはさせないからね」
すかさず王太子殿下がそう言い放った。
「わかりました。ただ、もし私たちの力が必要になったら、どうか遠慮なく申してくださいね。それから、他の呪いを解くところも拝見したいので、定期的に様子を見に来させていただきます。この魔法書にも興味がありますし」
チラリと私の魔法書を見つめる魔術師長。よほど魔力が好きなのだろう。まあ、魔力好きなら私も負けないが…
「わかりましたわ、では、その時はまたお願いいたしますね」
とにかく心配していた薬作りも、魔術師長のお陰でうまく行ったからよかったわ。
※次回、リベリオ殿下視点です。
よろしくお願いしますm(__)m
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