呪いをかけられた王子を助けたら愛されました

Karamimi

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第9話:王宮魔術師はやっぱり凄いです

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薬草を煮込んでいる間に、不潔になる呪いを解く薬を作っていく。こっちは5種類の薬草をすりつぶし、そして魔力を入れるのだ。

よし、薬草をすりつぶすことが出来た。後は魔力を込めるだけ。ゆっくり深呼吸をして、手に魔力を集中させる。そして、魔力を注いだ。その瞬間。

ボフン!!!

という大きな音と共に、薬草が木っ端みじんになり散らばってしまった。やっぱり失敗してしまったわ…

「申し訳ございません、もう一度行いますので」

もう一度薬草をすりつぶし、魔力を込めるが、やはり爆発してしまった。何度も何度も爆発させ、王太子殿下と王宮魔術師の顔が引きつっていく。

「ティア嬢、大丈夫だよ。君なら出来るよ!」

後ろから必死にリベリオ殿下が慰めてくれる。その時だった。

「あの、ティア嬢。この書物に書かれている様に、魔力を注げばいいのですよね。私にさせていただけないでしょうか?」

そう声をかけてきたのは、1人の王宮魔術師だ。

「はい、それではお願いします」

すりつぶした薬草を、王宮魔術師に渡す。すると光と共にピンク色の液体になった。

「凄いですわ…あの難しい魔法を一発で…」

さすが王宮魔術師、これが彼らの実力なのね…

「さすが魔術師長、いとも簡単に薬に出来てしまうだなんて…」

「いやぁ、ティア嬢が薬の作り方を教えてくれたから作れたのですよ。ティア嬢、この魔法書、キブリス王国のものですな。私も初めて見ましたが、素晴らしいです。どうかお願いします、少しだけ…少しだけ見せて頂けないでしょうか?」

目を輝かせて、私に訴えかけてくる魔術師長。

「どうぞご覧になってください!と言いたいのはやまやまなのですが、この魔法書は私の魔力にしか反応しない様に出来ておりますの。ですので、申し訳ございません」

「何と!持ち主の魔力にしか反応しないだなんて…素晴らしい魔法書だ!なんて素晴らしいんだ」

うっとりと魔法書を見つめる魔術師長と他の魔術師たち。この人たちも私と同じように、魔力が大好きなのね。

「それでしたら、次は歳を取る呪いを解く薬を作るので、また手伝って頂けますか?作り方を今出しますね」

魔法書に魔力を加え、知りたい情報を念じる。

「おお!別の文字が浮き出てきた。これはすごい!次は煮込んだ薬草に魔力を加えればよろしいのですね。ただこの薬は、1ヶ月は飲み続けないといけないのですな。なるほど、かなり強力な呪いなのでしょう。こんなに細かく記載されているだなんて!」

興奮した魔術師長が魔法書に触れると、途端に文字が消えた。

「何と!別の人間が触れると、文字が消えてしまうだなんて。確かに私たちが読むことは難しそうだ。すまない、ティア嬢、また出してもらえますか?」

「はい、もちろんですわ」

再び魔力書を手に取り、念じる。

「それでは魔力を注いでいただけますか?」

「もちろんです」

そう言うと、魔術師長が魔力を込める。すると今度は、緑色の薬が出来た。凄いわ、これまた一発で完成させる打なんて。

「魔術師長様、さすがですわ。いとも簡単に薬を作ってしまわれるだなんて。私など、足元にも及びません」

リベリオ殿下があまりにも私を褒めるものだから、つい調子に乗って“王宮魔術師になれたら、すぐに魔術師長になれる”なんて少しでも考えた自分が恥ずかしいわ。

「いいや、君は素晴らしい魔力と知識を持っていますよ。私達はリベリオ殿下の呪いを解明する事が出来なかったので…でも君は、すぐに解明したそうじゃないですか。きっとキブリス王国でたくさん学んだ賜物なのでしょう。ぜひ君には王宮魔術師として、私たちの仲間になって欲しいと思っています。君から学べることは多そうですから」

そう言ってほほ笑んでくれた魔術師長。

「ありがとうございます、私も皆様と一緒に仕事が出来る事を、楽しみにしておりますわ。その為にも、リベリオ殿下の呪いを解かないと。そうだ、薬!」

出来立ての薬をもって、リベリオ殿下の元へと向かう。

「殿下、薬が完成いたしましたわ。まずは歳を取る呪いを解く方から飲みましょう。ただこの薬は、完全に呪いが解けるまで1ヶ月間毎日飲まないといけないものです。飲み忘れるとリセットされてしまいますので、気を付けましょう」

そう言って薬を殿下に渡そうとしたのだが、なぜか不機嫌そうな顔であちらの方を向いている。あら?どうしたのかしら?

「殿下?見た目はあまり美味しそうではありませんが、呪いを解くためです。どうか飲んでください」

もしかして自分では飲めないのかしら?そう思い、スプーンにすくって殿下の口元に持って行く。すると

「僕は時間がかかってもいいから、ティア嬢の作った薬を飲みたかったんだ…ティア嬢、明日からは君の作った薬を出してほしい」

そう呟いたのだ。

「殿下、でも私が作ると、先ほどご覧になられた様に爆発してしまいますし、それに…」

「ティア嬢、ごめんね。リベリオが我が儘を言って。薬草ならいくらでもあるから、何度でも爆発させてもらっても構わない。だから、明日から君が作ってあげてくれるかい?兄バカだと思われるかもしれないが、リベリオの願いを叶えてあげたくてね。それに君も、いずれ王宮魔術師になるのなら、自分で作れる様になっておいた方がいいだろう」

確かにこの機会に苦手を克服しておいた方がいいだろう。魔術師長の実力も見せつけられたし。

「分かりましたわ、それでは明日からは、私が作らせていただきます」

「ありがとう、ティア嬢」
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