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第8話:薬草が届きました
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離宮に来てから、1週間が過ぎた。有難い事に、リベリオ殿下との関係は良好で、時間があるときは引きこもりがちなリベリオ殿下を車いすに乗せて、中庭を散歩する事もある。
ただ呪いのせいで疲れやすいみたいで、お散歩は大体30分程度で抑えている。初めて会った時より随分と心が落ち着いているのか、少しだけ若返ったような気がする。
そして私が基本的にリベリオ殿下のお世話をする事を伝えると、王族の皆様や使用人たちが、なぜか喜んでいた。使用人たちが喜ぶのは何となくわかるが、なぜ陛下たちまで喜ぶのはよくわからない。
まあ、お世話と言っても、食事を食べさせるくらいしかしていないが、それでも十分との事。
ただ、まだ薬草が届いておらず、リベリオ殿下の呪いを解く方の作業が進んでいないのだ。一応魔力だけで解ける呪いは少しずつ解いているのだが、肝心の歳を取る呪いと、不潔になる呪いが全く手つかずなのだ。
とにかく薬草が届くのを待つしかない。
今日も天気がいいので、リベリオ殿下とお散歩をしている。
「殿下、見て下さい。ラベンダーのいい匂いがしますわ」
ラベンダーの花をいくつか摘んで、殿下に渡した。
「本当だ、いい匂いがするね。それに外に出ていると、心もなんだか明るくなる。太陽の光はやっぱり気持ちいいな…ティア嬢、いつも僕の為に散歩に付き合ってくれてありがとう。車いすを押すの、大変ではないかい?」
「私は大丈夫ですわ。それより殿下、帽子がずれております」
外れかけている帽子を直そうとした時だった。
「ティア様、お取込み中失礼いたします。薬草がやっと届きました。今ティア様のお部屋に準備してございます」
「まあ、それは本当なの?ありがとう、それじゃあ、早速準備に取りかからないとね。リベリオ殿下、申し訳ございません。お散歩はここまでにしましょう」
そう伝え、リベリオ殿下を連れ、部屋へと戻る。
「ねえ、ティア嬢、その薬草を使って呪いを解く薬を作る作業、僕も見学してもいいかな?もちろん、君の邪魔をしないから」
「殿下、申し訳ございませんが、私は薬を作るのが苦手でございます。爆発を起こすといけませんので、どうか…」
「大丈夫だよ。僕、魔力は強い方から。僕の為に薬を作ってくれているティア嬢を、見守りたいんだ。だからお願い、絶対に邪魔しないから」
しわくちゃの手で必死に拝むリベリオ殿下。そんな風に拝まれたら、断れないじゃない。
「分かりましたわ。ただ、爆発すると危険ですので、少し距離を置いた場所から見守っていてくださいね」
「ありがとう、ティア嬢」
リベリオ殿下が嬉しそうに微笑んでいる。こうやって笑うと、リベリオ殿下って可愛い顔をしているのね。なんだかお爺様を思い出すわ。
「それでは一旦私は部屋に戻り、薬草と魔法書を持ってまいりますので。少々お待ちいただけますか?」
リベリオ殿下に部屋で待っていてもらい、自室に戻る。そして大切に保管している魔法書を手に取った。
「悪いのだけれど、薬草は外の訓練場に持って行ってくれるかしら?陛下や王太子殿下には、あそこで薬を作る許可をとっているから。それからリベリオ殿下が見学できる様、柔らかめのソファを準備してあげて。疲れたらすぐに横になれるように」
「かしこまりました。すぐに準備いたします」
近くに控えていた使用人に指示を出す。そしてそのままリベリオ殿下を迎えに行き、2人で訓練場へと向かった。
既に使用人たちが先回りして準備してくれていた様で、沢山の薬草とフカフカのソファが置いてある。
「それでは殿下はここで見学していてくださいね。それから…何度か失敗して爆発を起こすかもしれませんが、どうか笑わないで下さい…」
「僕が君の失敗を笑う訳がないだろう。僕の為に一生懸命薬を作ろうとしてくれているのだから。僕の事は気にせず、好きなだけ爆発させてもらって構わない」
好きなだけ爆発って…まあいいわ。
念のため、殿下に被害が及ばない様にバリア魔法をかけておく。
さて、早速薬を作らないと。まずは歳を取る呪いを解く薬からよね。えっとこの薬草とこの薬草を煮込むのよね。煮込んでいる間に、不潔になる呪いを解く薬を作らないと。
その時だった。
「ティア嬢、早速薬を作っているそうだな。なんだ、リベリオも来ていたのか」
やって来たのは王太子殿下と、さらにあの衣装は…
「実は君の話をしたら、是非ティア嬢に会ってみたいと我が国の王宮魔術師が言うものだから、連れてきたよ」
やっぱり、この国の王宮魔術師の方たちだわ。皆貫禄があるわね。
「君がティア嬢だね。君の能力や魔力は殿下から伺っている。どうか薬を作る様子を、私達にも見せてくれるだろうか?」
「ええ、構いませんわ…」
どうしよう、王宮魔術師の人がいる前で、爆発させたら…そう思いつつも、断る事なんて出来ない。とにかく、やるしかない。
ただ呪いのせいで疲れやすいみたいで、お散歩は大体30分程度で抑えている。初めて会った時より随分と心が落ち着いているのか、少しだけ若返ったような気がする。
そして私が基本的にリベリオ殿下のお世話をする事を伝えると、王族の皆様や使用人たちが、なぜか喜んでいた。使用人たちが喜ぶのは何となくわかるが、なぜ陛下たちまで喜ぶのはよくわからない。
まあ、お世話と言っても、食事を食べさせるくらいしかしていないが、それでも十分との事。
ただ、まだ薬草が届いておらず、リベリオ殿下の呪いを解く方の作業が進んでいないのだ。一応魔力だけで解ける呪いは少しずつ解いているのだが、肝心の歳を取る呪いと、不潔になる呪いが全く手つかずなのだ。
とにかく薬草が届くのを待つしかない。
今日も天気がいいので、リベリオ殿下とお散歩をしている。
「殿下、見て下さい。ラベンダーのいい匂いがしますわ」
ラベンダーの花をいくつか摘んで、殿下に渡した。
「本当だ、いい匂いがするね。それに外に出ていると、心もなんだか明るくなる。太陽の光はやっぱり気持ちいいな…ティア嬢、いつも僕の為に散歩に付き合ってくれてありがとう。車いすを押すの、大変ではないかい?」
「私は大丈夫ですわ。それより殿下、帽子がずれております」
外れかけている帽子を直そうとした時だった。
「ティア様、お取込み中失礼いたします。薬草がやっと届きました。今ティア様のお部屋に準備してございます」
「まあ、それは本当なの?ありがとう、それじゃあ、早速準備に取りかからないとね。リベリオ殿下、申し訳ございません。お散歩はここまでにしましょう」
そう伝え、リベリオ殿下を連れ、部屋へと戻る。
「ねえ、ティア嬢、その薬草を使って呪いを解く薬を作る作業、僕も見学してもいいかな?もちろん、君の邪魔をしないから」
「殿下、申し訳ございませんが、私は薬を作るのが苦手でございます。爆発を起こすといけませんので、どうか…」
「大丈夫だよ。僕、魔力は強い方から。僕の為に薬を作ってくれているティア嬢を、見守りたいんだ。だからお願い、絶対に邪魔しないから」
しわくちゃの手で必死に拝むリベリオ殿下。そんな風に拝まれたら、断れないじゃない。
「分かりましたわ。ただ、爆発すると危険ですので、少し距離を置いた場所から見守っていてくださいね」
「ありがとう、ティア嬢」
リベリオ殿下が嬉しそうに微笑んでいる。こうやって笑うと、リベリオ殿下って可愛い顔をしているのね。なんだかお爺様を思い出すわ。
「それでは一旦私は部屋に戻り、薬草と魔法書を持ってまいりますので。少々お待ちいただけますか?」
リベリオ殿下に部屋で待っていてもらい、自室に戻る。そして大切に保管している魔法書を手に取った。
「悪いのだけれど、薬草は外の訓練場に持って行ってくれるかしら?陛下や王太子殿下には、あそこで薬を作る許可をとっているから。それからリベリオ殿下が見学できる様、柔らかめのソファを準備してあげて。疲れたらすぐに横になれるように」
「かしこまりました。すぐに準備いたします」
近くに控えていた使用人に指示を出す。そしてそのままリベリオ殿下を迎えに行き、2人で訓練場へと向かった。
既に使用人たちが先回りして準備してくれていた様で、沢山の薬草とフカフカのソファが置いてある。
「それでは殿下はここで見学していてくださいね。それから…何度か失敗して爆発を起こすかもしれませんが、どうか笑わないで下さい…」
「僕が君の失敗を笑う訳がないだろう。僕の為に一生懸命薬を作ろうとしてくれているのだから。僕の事は気にせず、好きなだけ爆発させてもらって構わない」
好きなだけ爆発って…まあいいわ。
念のため、殿下に被害が及ばない様にバリア魔法をかけておく。
さて、早速薬を作らないと。まずは歳を取る呪いを解く薬からよね。えっとこの薬草とこの薬草を煮込むのよね。煮込んでいる間に、不潔になる呪いを解く薬を作らないと。
その時だった。
「ティア嬢、早速薬を作っているそうだな。なんだ、リベリオも来ていたのか」
やって来たのは王太子殿下と、さらにあの衣装は…
「実は君の話をしたら、是非ティア嬢に会ってみたいと我が国の王宮魔術師が言うものだから、連れてきたよ」
やっぱり、この国の王宮魔術師の方たちだわ。皆貫禄があるわね。
「君がティア嬢だね。君の能力や魔力は殿下から伺っている。どうか薬を作る様子を、私達にも見せてくれるだろうか?」
「ええ、構いませんわ…」
どうしよう、王宮魔術師の人がいる前で、爆発させたら…そう思いつつも、断る事なんて出来ない。とにかく、やるしかない。
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