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第6話:まだ何もしてないので感謝しないで下さい
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一旦リベリオ殿下の部屋を後にする。すると部屋を出た瞬間
「ティア嬢、リベリオの件、本当にありがとう。私、あの子の顔を見るとどうしても辛くて…魔力の知識はもちろんの事、リベリオを1人の人間として扱ってくれるあなたの様な人を、きっとリベリオは求めていたのだと思うわ。どうかこれからも、リベリオの事をよろしくお願いします」
「王妃殿下、私は…」
「僕たちからもお礼を言わせてほしい。リベリオが呪いをかけられてから、本当に色々な魔術師たちに見てもらった。でも…リベリオのあまりの酷い見た目に、皆引いてしまってね。皆早々に諦めていく者がほとんどだったんだ。リベリオの事をこんなに真剣に考えてくれたのは、君が初めてだ!それに今日、久しぶりにリベリオが笑ったんだ!こんなに嬉しい事はない」
「リベリオの笑った顔、久しぶりに見ましたね。リベリオは生きる希望すら失いかけていた。でも、君が傍にいてくれたら、リベリオも前を向いてくれるような気がする。どうかリベリオを、よろしく頼む!」
なぜか王族たちに頭を下げられた。私の様な伯爵令嬢に頭を下げるなんて!よほど皆リベリオ殿下の事を大切に思っているのだろう。
「皆様、頭を上げて下さい。私にどこまで出来るか分かりませんが、精一杯務めさせていただきますわ。ただ、やはり私では解けそうにない呪いもありそうですので、私の師匠にも相談していきたいとも考えております」
私がキブリス王国へ留学した時にお世話になった師匠だ。私とは比べ物にならない程、魔力に詳しい。よくいえば魔力のスペシャリスト、悪いえば魔力バカなのだ。きっとリベリオ殿下の事を師匠に話せば、すっ飛んでくるだろう。
ただ、あの人もお忙しい人だし…
師匠に相談するのは、最終手段にしようと思っている。
「君に魔力の勉強を教えてくれた師匠にかい?それは心強いな。我が国とキブリス王国は交流がなくて…中々リベリオの事を頼み辛くて。もしティア嬢からその優秀な師匠に我が国に来ていただけるよう話をしてくれるなら、私たちは全力でおもてなしをするよ」
「ありがとうございます、王太子殿下。ただ…あの人はかなり気難しい人なので…それでももしこちらに来ることがあれば、魔法陣を使ってくると思いますので、その時は入国の許可を頂ければ」
「何と!魔法陣だって?!かなりの実力者だな。わかった、その時はいつでも許可を出すから、気軽に相談して欲しい」
「ありがとうございます。それでは私は、これで失礼いたします」
王族の皆様に頭を下げ、一旦自室へと向かう。正直まだ何もしていないのだ。こんな事で感謝されると、逆にやりにくい。とにかくリベリオ殿下の呪いの解き方を調べないと。
早速魔法書を出し、歳を取る呪いを解く方法を調べる。
すると、本が水色に光り、詳細が浮き上がる。呪いを解く方法を読むが、どうやら薬草がいくつか必要のようだ。さらにその呪いの強さにもよる様だが、1ヶ月飲み続けないといけないらしい。
「これは結構大変ね。薬草か…私、薬草を使った魔法は苦手なのよね…」
薬草をうまく配合して、適切な魔力量を加えるのだが、この適切な魔力量の調節が難しく、何度も失敗していたのだ。でも、やらない訳にはいかないわね。
ついでに不潔や臭いに関する呪いも調べた。あの臭い、結構きついのよね。あら?これにも薬草がいるのね。
「もう、どの呪いも薬草を用いる物ばかりだなんて!それも結構貴重な薬草ね。これは集めるのも大変そうだ。それでも、集めてもらわない訳にはいかないわ」
早速近くに控えていた使用人に、必要な薬草のメモを渡した。私の場合、きっと失敗するだろうから、ありったけ持ってきてもらう様に指示を出す。
他にも体が動きにくくなる呪いに関しては、魔力と呪文で何とかなりそうだ。その他の呪いも、解き方をメモしていく。
ただ、呪いの種類が多すぎて、私も全ての呪いを解明する事が出来なかった。その為、分かっている呪いから徐々に解いていき、まだ解明できない呪いを徐々にあぶりだしていく作戦でいる。
ある程度まとめたところで、メイドがやって来た。
「ティア様、昼食のお時間です。こちらにお持ちいたしましたので、どうか召し上がってください」
「ありがとう、早速頂くわ」
頭と魔力を沢山使ったから、お腹ペコペコだ。早速食事を済ます。そうだわ、リベリオ殿下はきちんと食事をとっているかしら?あの人、体が動かしにくいから、使用人たちが食べさせてくれていると思うけれど、なんだか気になるし、見に行ってみよう。
そう思い、リベリオ殿下の部屋へと向かう。そしてドアを開けた瞬間、物凄い負の魔力が、私に襲いかかった。さらに
「そんなに嫌なら、別に食べさせてもらわなくても結構だ!そうだよね、僕の見た目、気持ち悪いもんね。さあ、早く出て行ってくれ!」
「…申し訳ございません…」
リベリオ殿下の叫ぶ声と、メイドが泣きながら去っていく姿が目に入る。
「リベリオ殿下、一体どうされたのですか?」
急いでリベリオ殿下の元へと向かう。すると
「メイドたちは、僕の見た目が気持ち悪から、僕のお世話なんてしたくないんだよ。顔が引きつっているのはまだ許せる。でも…メイドたちの心の声を聞くのが何よりも辛いんだ…イヤイヤ世話をされるくらいなら、僕はもう…」
緑色の瞳から、ポロポロと涙を流しながらそう訴えるリベリオ殿下。心の声が聞こえるですって?もしかして…
「ティア嬢、リベリオの件、本当にありがとう。私、あの子の顔を見るとどうしても辛くて…魔力の知識はもちろんの事、リベリオを1人の人間として扱ってくれるあなたの様な人を、きっとリベリオは求めていたのだと思うわ。どうかこれからも、リベリオの事をよろしくお願いします」
「王妃殿下、私は…」
「僕たちからもお礼を言わせてほしい。リベリオが呪いをかけられてから、本当に色々な魔術師たちに見てもらった。でも…リベリオのあまりの酷い見た目に、皆引いてしまってね。皆早々に諦めていく者がほとんどだったんだ。リベリオの事をこんなに真剣に考えてくれたのは、君が初めてだ!それに今日、久しぶりにリベリオが笑ったんだ!こんなに嬉しい事はない」
「リベリオの笑った顔、久しぶりに見ましたね。リベリオは生きる希望すら失いかけていた。でも、君が傍にいてくれたら、リベリオも前を向いてくれるような気がする。どうかリベリオを、よろしく頼む!」
なぜか王族たちに頭を下げられた。私の様な伯爵令嬢に頭を下げるなんて!よほど皆リベリオ殿下の事を大切に思っているのだろう。
「皆様、頭を上げて下さい。私にどこまで出来るか分かりませんが、精一杯務めさせていただきますわ。ただ、やはり私では解けそうにない呪いもありそうですので、私の師匠にも相談していきたいとも考えております」
私がキブリス王国へ留学した時にお世話になった師匠だ。私とは比べ物にならない程、魔力に詳しい。よくいえば魔力のスペシャリスト、悪いえば魔力バカなのだ。きっとリベリオ殿下の事を師匠に話せば、すっ飛んでくるだろう。
ただ、あの人もお忙しい人だし…
師匠に相談するのは、最終手段にしようと思っている。
「君に魔力の勉強を教えてくれた師匠にかい?それは心強いな。我が国とキブリス王国は交流がなくて…中々リベリオの事を頼み辛くて。もしティア嬢からその優秀な師匠に我が国に来ていただけるよう話をしてくれるなら、私たちは全力でおもてなしをするよ」
「ありがとうございます、王太子殿下。ただ…あの人はかなり気難しい人なので…それでももしこちらに来ることがあれば、魔法陣を使ってくると思いますので、その時は入国の許可を頂ければ」
「何と!魔法陣だって?!かなりの実力者だな。わかった、その時はいつでも許可を出すから、気軽に相談して欲しい」
「ありがとうございます。それでは私は、これで失礼いたします」
王族の皆様に頭を下げ、一旦自室へと向かう。正直まだ何もしていないのだ。こんな事で感謝されると、逆にやりにくい。とにかくリベリオ殿下の呪いの解き方を調べないと。
早速魔法書を出し、歳を取る呪いを解く方法を調べる。
すると、本が水色に光り、詳細が浮き上がる。呪いを解く方法を読むが、どうやら薬草がいくつか必要のようだ。さらにその呪いの強さにもよる様だが、1ヶ月飲み続けないといけないらしい。
「これは結構大変ね。薬草か…私、薬草を使った魔法は苦手なのよね…」
薬草をうまく配合して、適切な魔力量を加えるのだが、この適切な魔力量の調節が難しく、何度も失敗していたのだ。でも、やらない訳にはいかないわね。
ついでに不潔や臭いに関する呪いも調べた。あの臭い、結構きついのよね。あら?これにも薬草がいるのね。
「もう、どの呪いも薬草を用いる物ばかりだなんて!それも結構貴重な薬草ね。これは集めるのも大変そうだ。それでも、集めてもらわない訳にはいかないわ」
早速近くに控えていた使用人に、必要な薬草のメモを渡した。私の場合、きっと失敗するだろうから、ありったけ持ってきてもらう様に指示を出す。
他にも体が動きにくくなる呪いに関しては、魔力と呪文で何とかなりそうだ。その他の呪いも、解き方をメモしていく。
ただ、呪いの種類が多すぎて、私も全ての呪いを解明する事が出来なかった。その為、分かっている呪いから徐々に解いていき、まだ解明できない呪いを徐々にあぶりだしていく作戦でいる。
ある程度まとめたところで、メイドがやって来た。
「ティア様、昼食のお時間です。こちらにお持ちいたしましたので、どうか召し上がってください」
「ありがとう、早速頂くわ」
頭と魔力を沢山使ったから、お腹ペコペコだ。早速食事を済ます。そうだわ、リベリオ殿下はきちんと食事をとっているかしら?あの人、体が動かしにくいから、使用人たちが食べさせてくれていると思うけれど、なんだか気になるし、見に行ってみよう。
そう思い、リベリオ殿下の部屋へと向かう。そしてドアを開けた瞬間、物凄い負の魔力が、私に襲いかかった。さらに
「そんなに嫌なら、別に食べさせてもらわなくても結構だ!そうだよね、僕の見た目、気持ち悪いもんね。さあ、早く出て行ってくれ!」
「…申し訳ございません…」
リベリオ殿下の叫ぶ声と、メイドが泣きながら去っていく姿が目に入る。
「リベリオ殿下、一体どうされたのですか?」
急いでリベリオ殿下の元へと向かう。すると
「メイドたちは、僕の見た目が気持ち悪から、僕のお世話なんてしたくないんだよ。顔が引きつっているのはまだ許せる。でも…メイドたちの心の声を聞くのが何よりも辛いんだ…イヤイヤ世話をされるくらいなら、僕はもう…」
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