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第5話:根はいい人の様です
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「リベリオ、どうしたんだ?さあ、早く食べるんだ」
殿下が声をかけるが、全く動こうとしない。もしかして…
「殿下、気が付かなくてごめんなさい。呪いのせいで、手をうまく使えないのですね」
お爺様も手をあまりうまく使えなくて、使用人に食べさせてもらっていたのを、すっかり忘れていたわ。
近くにあったフォークを持つと、パンケーキを食べやすい様に小さく切った。そして、殿下の口に運ぶ。
「さあ、殿下、食べて下さい」
「いらない…僕はどうせ、近いうちに死ぬのだろう。それなら、食べても無駄だよ…」
悲しそうに呟く殿下。
「なんて事を言うの、リベリオ。大丈夫よ、きっとティア嬢があなたを…」
「母上は黙っていてくれ!僕の顔を見て、大泣きしていたくせに…どうせ僕なんて、王家のお荷物だと思っているのだろう。それならどうか、このまま死なせて…」
「おかしいですわね?あなた様の呪いの中には、性格がひん曲がる呪いや、ネガティブな思考になる呪いはかかっていませんのに…どうしてその様な事を言うのでしょうか?」
コテンと首を傾げ、殿下に向かって呟く。
「な…なんて失礼な令嬢なんだ!君の様な失礼な令嬢は初めてだ!僕はこれでも、第三王子だよ。それなのに…」
「あら?それほど元気に怒れるなら、まだまだあの世には逝けませんわ。それに、陛下も王妃殿下も、王太子殿下もクリストフ殿下も、あなた様を大切に思っていらっしゃいますわ。そうでなかったら、伯爵令嬢の私にまでお声がかかる何て事はありません。それほど、あなた様を助けたいと思っていらっしゃるのでしょう」
それにあなた様に命を落とされたら、私の王宮魔術師の夢も叶わなくなってしまう…という都合の悪い話は、心の中でそっと呟いた。
「ティア嬢の言う通りだ。私達は君を誰よりも大切に思っている。だから、どうか生きる希望を捨てないでくれ」
「そうよ、リベリオ、あなたに先立たれたら私…」
その場で泣き崩れる王妃殿下。
「母上、泣かないでくれ…すまない…わかったよ、食べるよ」
よし、食べる気になってくれた様だ。この人、きっと根はいい人なのよね。呪いのせいで、少し性格が歪んでしまったのだろう。
早速リベリオ殿下の食事のお手伝いをする。
「殿下、このお肉、美味しそうですわよ」
せっかく食べてくれる気になったのだから、この際たくさん食べてもらおうと思って、次から次へと口に食べ物を放り込んでいく。
「ティア嬢だったよね…さすがにもうお腹いっぱいだ。それに、ハエが鬱陶しいし…」
「分かりましたわ、確かにハエが鬱陶しいですわね。このハエたちも、あなた様にかけられた不潔になる呪いのせいで集まっていているのでしょう。歳を取る呪いを解いた後は、不潔になる呪いを解きましょう」
「…ティア嬢…無理をしなくてもいいから…僕は正直諦めているんだ。こんな呪い、誰にも解けないと…だからもし解けなくても、自分を責めないで欲しい…」
切なそうに呟くリベリオ殿下。そんな顔されたら、何が何でも解いてあげたくなるじゃない。
「リベリオ殿下、そんな弱気でどうするのですか?きっと私があなた様の呪いを解いて見せますわ。だから、どうか希望を捨てないで下さい!」
リベリオ殿下の手を握り、そう伝えた。
すると、さっきまでより複雑に絡み合っていた呪いが、少しだけ絡まりが取れたような気がした。
あら?もしかして…
もう一度強くリベリオ殿下の手を握る。
「ティア嬢…そんなに真剣に僕の手を握らなくても…」
「やっぱり…」
「ティア嬢?」
「殿下、どうやらあなた様のネガティブな感情が、より呪いの効力を強くするようです。逆にポジティブな感情を抱けば、呪いの効力が少し弱まる様ですわ。まさか殿下の感情によって、呪いの効力に違いが出るだなんて…これはすごいわ。こんな事があるのね!!」
今までの私の常識を覆す発見に、つい嬉しくて殿下に微笑みかけてしまった。すると、なぜかスッと目線を外された。あら?どうしたのかしら?
「ティア嬢…嬉しそうなのは結構だが、さっきからずっと僕の手を握りっぱなしなのだが…」
「あら、ごめんなさい。嬉しい発見があったので、つい。それでは私はこれで失礼いたしますわ。それからリベリオ殿下、どうか心穏やかで過ごしてくださいませ。そうする事で、呪いの効力も少し弱まる様です。あら?少し若返ったのではありませんか?」
そんな気がして、殿下に鏡を見せた。でも…
「何をどうしたら若返ったように見えるんだい?全然変わっていないではないか。いい加減な事は言わないでくれ!」
そう言って怒られてしまったのだ。ふと王族たちに目をやると、皆苦笑いをしている。私には若返ったように見えたのだが…どうやら変わっていないようだ。
おかしいわね?私の目が変なのかしら?
訳が分からず、首をかしげる。すると…
「君って分かりやすい性格だね」
そう言って笑い出したリベリオ殿下。一体何が可笑しいのかしら?笑われた意味が分からず、増々首をかしげる。すると…
「あれ…手が動くようになった…」
「リベリオ、君の顔のしわが少し減ったよ。それに髪も少し生えてきたし…これは一体…」
「だから申し上げたでしょう?リベリオ殿下が心穏やかに過ごせば、呪いの効力も弱まるのです。ただ…根本的な解決にはなりませんが…」
効果が弱まるだけで、呪いが解ける訳ではない。やはり呪いを解く事が、根本的な解決に繋がる。しいては、私の王宮魔術師への道へと繋がるのだ。よし、頑張るぞ!
殿下が声をかけるが、全く動こうとしない。もしかして…
「殿下、気が付かなくてごめんなさい。呪いのせいで、手をうまく使えないのですね」
お爺様も手をあまりうまく使えなくて、使用人に食べさせてもらっていたのを、すっかり忘れていたわ。
近くにあったフォークを持つと、パンケーキを食べやすい様に小さく切った。そして、殿下の口に運ぶ。
「さあ、殿下、食べて下さい」
「いらない…僕はどうせ、近いうちに死ぬのだろう。それなら、食べても無駄だよ…」
悲しそうに呟く殿下。
「なんて事を言うの、リベリオ。大丈夫よ、きっとティア嬢があなたを…」
「母上は黙っていてくれ!僕の顔を見て、大泣きしていたくせに…どうせ僕なんて、王家のお荷物だと思っているのだろう。それならどうか、このまま死なせて…」
「おかしいですわね?あなた様の呪いの中には、性格がひん曲がる呪いや、ネガティブな思考になる呪いはかかっていませんのに…どうしてその様な事を言うのでしょうか?」
コテンと首を傾げ、殿下に向かって呟く。
「な…なんて失礼な令嬢なんだ!君の様な失礼な令嬢は初めてだ!僕はこれでも、第三王子だよ。それなのに…」
「あら?それほど元気に怒れるなら、まだまだあの世には逝けませんわ。それに、陛下も王妃殿下も、王太子殿下もクリストフ殿下も、あなた様を大切に思っていらっしゃいますわ。そうでなかったら、伯爵令嬢の私にまでお声がかかる何て事はありません。それほど、あなた様を助けたいと思っていらっしゃるのでしょう」
それにあなた様に命を落とされたら、私の王宮魔術師の夢も叶わなくなってしまう…という都合の悪い話は、心の中でそっと呟いた。
「ティア嬢の言う通りだ。私達は君を誰よりも大切に思っている。だから、どうか生きる希望を捨てないでくれ」
「そうよ、リベリオ、あなたに先立たれたら私…」
その場で泣き崩れる王妃殿下。
「母上、泣かないでくれ…すまない…わかったよ、食べるよ」
よし、食べる気になってくれた様だ。この人、きっと根はいい人なのよね。呪いのせいで、少し性格が歪んでしまったのだろう。
早速リベリオ殿下の食事のお手伝いをする。
「殿下、このお肉、美味しそうですわよ」
せっかく食べてくれる気になったのだから、この際たくさん食べてもらおうと思って、次から次へと口に食べ物を放り込んでいく。
「ティア嬢だったよね…さすがにもうお腹いっぱいだ。それに、ハエが鬱陶しいし…」
「分かりましたわ、確かにハエが鬱陶しいですわね。このハエたちも、あなた様にかけられた不潔になる呪いのせいで集まっていているのでしょう。歳を取る呪いを解いた後は、不潔になる呪いを解きましょう」
「…ティア嬢…無理をしなくてもいいから…僕は正直諦めているんだ。こんな呪い、誰にも解けないと…だからもし解けなくても、自分を責めないで欲しい…」
切なそうに呟くリベリオ殿下。そんな顔されたら、何が何でも解いてあげたくなるじゃない。
「リベリオ殿下、そんな弱気でどうするのですか?きっと私があなた様の呪いを解いて見せますわ。だから、どうか希望を捨てないで下さい!」
リベリオ殿下の手を握り、そう伝えた。
すると、さっきまでより複雑に絡み合っていた呪いが、少しだけ絡まりが取れたような気がした。
あら?もしかして…
もう一度強くリベリオ殿下の手を握る。
「ティア嬢…そんなに真剣に僕の手を握らなくても…」
「やっぱり…」
「ティア嬢?」
「殿下、どうやらあなた様のネガティブな感情が、より呪いの効力を強くするようです。逆にポジティブな感情を抱けば、呪いの効力が少し弱まる様ですわ。まさか殿下の感情によって、呪いの効力に違いが出るだなんて…これはすごいわ。こんな事があるのね!!」
今までの私の常識を覆す発見に、つい嬉しくて殿下に微笑みかけてしまった。すると、なぜかスッと目線を外された。あら?どうしたのかしら?
「ティア嬢…嬉しそうなのは結構だが、さっきからずっと僕の手を握りっぱなしなのだが…」
「あら、ごめんなさい。嬉しい発見があったので、つい。それでは私はこれで失礼いたしますわ。それからリベリオ殿下、どうか心穏やかで過ごしてくださいませ。そうする事で、呪いの効力も少し弱まる様です。あら?少し若返ったのではありませんか?」
そんな気がして、殿下に鏡を見せた。でも…
「何をどうしたら若返ったように見えるんだい?全然変わっていないではないか。いい加減な事は言わないでくれ!」
そう言って怒られてしまったのだ。ふと王族たちに目をやると、皆苦笑いをしている。私には若返ったように見えたのだが…どうやら変わっていないようだ。
おかしいわね?私の目が変なのかしら?
訳が分からず、首をかしげる。すると…
「君って分かりやすい性格だね」
そう言って笑い出したリベリオ殿下。一体何が可笑しいのかしら?笑われた意味が分からず、増々首をかしげる。すると…
「あれ…手が動くようになった…」
「リベリオ、君の顔のしわが少し減ったよ。それに髪も少し生えてきたし…これは一体…」
「だから申し上げたでしょう?リベリオ殿下が心穏やかに過ごせば、呪いの効力も弱まるのです。ただ…根本的な解決にはなりませんが…」
効果が弱まるだけで、呪いが解ける訳ではない。やはり呪いを解く事が、根本的な解決に繋がる。しいては、私の王宮魔術師への道へと繋がるのだ。よし、頑張るぞ!
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