呪いをかけられた王子を助けたら愛されました

Karamimi

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第4話:リベリオ殿下はお爺様みたいです

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翌日、王族の皆様と一緒に、リベリオ殿下の部屋へと向かう。今日は第二王子のクリストフ殿下も来ている。

早速手に魔力を集中させ、昨日ほぼ徹夜で覚えた呪文で、人を寄せ付けない呪いを解く。ただ…呪いが強すぎて、反発するかのように私の手にバシバシ魔力を受ける。くっ…何のこれしき!

一気に魔力を集中させ、呪いを跳ね除けた。その瞬間、パリンと何かが割れる音が聞こえた。

「はぁ…はぁ…」

たかだか1つの呪いを解くだけで、これほどまでに魔力を使うだなんて…これは一筋縄ではいかないわね。

「ティア嬢、大丈夫かい?」

「はい…大丈夫ですわ。これでもう、体調不良を感じる事もないはずですが、いかがでしょうか?」

「確かに酷い頭痛や吐き気はしないな。ありがとう、ティア嬢、これでリベリオの元にいつでも来られるよ」

そう言って王太子殿下が嬉しそうに笑っている。王妃殿下や陛下、さらにクリストフ殿下も嬉しそうだ。

「何がそんなに嬉しいんだい?またそんな令嬢を連れてきて、とにかく出て行ってくれ」

太い声が聞こえてきたと思ったら、魔力の塊が飛んできた。残っていた魔力で、バリア魔法をかける。

「リベリオ、なんて事をするんだ。この令嬢は、君の呪いを解くために来てくれたんだぞ!」

「呪いを解く?僕の呪いは解けないよ。この国はもちろん、ブルシャ王国の王宮魔術師ですら解けなかったんだよ…僕は一生、この醜い姿で過ごすんだ…」

声の方を見ると、シーツをすっぽりかぶった人間が、ベッドで丸くなっている。きっとあそこに、リベリオ殿下がいらっしゃるのね。

そっとベッドに近づき、勢いよくシーツを外した。そこにいたのは…

「お爺様…」

髪と歯はほとんどが抜け落ち、顔はたるみ、皺とシミだらけ。さらにかなり太っている。それにしても、お風呂に入っていないのかしら?かなり臭うわね…ハエまで飛んでいるし…

「誰がお爺様だ!僕の醜さにびっくりしただろう?悪い事は言わない、とにかく、今すぐにこの部屋から出て行ってくれ」

そう叫ぶと、緑色の瞳からポロポロと涙を流している。その瞳は、絶望に満ち溢れていた。そんな彼の手を握る。

「き…君は何を考えているんだ。こんなにも醜い僕の手を握るだなんて。とにかく放して…」

「少し黙っていてください!!!今呪いがどんな物なのか調べておりますので」

ギャーギャーうるさい男ね。とにかく今は、集中しないと。

「これは…年を取る呪い、それから太る呪い、それに不潔になる呪い、他にも色々な呪いが複雑に絡み合っておりますわ」

糸が絡まる様に、複雑に呪いが絡み合っている。とにかく、1つ1つ丁寧に、糸をほどくように呪いを解いていく必要があるわね。これは相当大変な作業だわ。

「ティア嬢、リベリオの手を握っただけで、呪いの種類がわかるのかい?すごい、さすが魔力大国、キブリス王国に留学していただけの事はあるな。それで、呪いは解けそうかい?」

「そうですね…ただ、私にも理解できない呪いもありますので、調べながら1つづつ呪いを解いていきましょう。かなりの長期戦になるかもしれませんが、出来る事はさせていただきますわ」

「そうか、ありがとう。ティア嬢。よかったな、リベリオ、君の呪いはきっと解けるよ」

嬉しそうにリベリオ殿下の肩を叩く王太子殿下。

「確かリベリオ殿下が呪いをかけられたのは、1年以上も前でしたね?リベリオ殿下にかけられている呪いの1つが、歳を取るというものです。見た感じ、かなりの高齢の様ですので、いつ亡くなるか分からないくらい危険な呪いです」

いくらフラれた腹いせに呪いをかけたからって、寿命を縮めさせる様な呪いをかけるだなんて…

「そんな…それじゃあリベリオは…」

「とにかく、この呪いを最優先に解いていきましょう。リベリオ殿下、あなた様は今、年老いたお爺様と同じ状況です。まずはお体を大切にしていきましょう。いいですね」

まっすぐリベリオ殿下の方を向いてそう伝えた。でも、すっと目線をそらされてしまった。

「リベリオ、聞いたかい?とにかく体を大切にしろとの事だ。今日の朝食もろくに食べていないそうじゃないか。早速食事を準備させよう。しっかり食べないと、病気にもなりやすいからな。すぐに準備をさせよう」

「あ…王太子殿下…」

私の言葉を無視し、すぐに食事の準備をする様に伝える王太子殿下。するとすぐに、豪華な食事が出てきた。

「さあ、リベリオ、好きなだけ食べてくれ!」

嬉しそうにリベリオ殿下に話をする王太子殿下。でもリベリオ殿下は、全く手を付けない。

「殿下、先ほどもお話させていただいた通り、リベリオ殿下は今、高齢のお年寄りと同じ体です。それに歯も抜け落ちておりますし。こんな脂っこい料理は、きっとお口に合わないと思いますわ」

「それじゃあ、どんなものを食べさせればいいのだ?」

う~ん、そうね…
そう言えば家にも一時期、お父様のお爺様が一緒に住んでいた事があった。確かお爺様は、小さく切った野菜のスープやパンケーキ、マッシュポテトなどを食べていた。それに魚やお肉も、小さく切って食べていたわね。

「そうですわね、小さくカットしてしっかり煮込んだ野菜のスープや柔らかいパンケーキ、マッシュポテトなどはいかがですか?魚やお肉は小さく切ると食べやすいと思いますよ」

「わかった、すぐに準備させよう」

近くに控えていた使用人に指示を出す王太子殿下。しばらくすると、野菜スープとパンケーキ、さらに小さく切られたお肉、付け合わせにマッシュポテトも出てきた。でも…やっぱり食べない。どうしたのかしら?
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