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第19話:中々やるわね
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翌日、朝から稽古をしようとしたのだが、昨日コテンパンにやりすぎたせいか、護衛たちは私の顔を見るなり皆逃げて行った。伯爵家の人間を守るのが彼らの仕事なのに、私を見て怯えて逃げていくだなんて、本当に情けない。
「お嬢様、どうか護衛虐めはお止め下さい!お嬢様は誰よりもお強いのですから」
朝からマリアンに怒られてしまった。
「どうして私が怒られないといけないのよ。そもそも、こんな弱い護衛を雇っているお父様が悪いのよ。すぐにお父様に言って、もっと強い護衛を…」
「お嬢様、お取込み中失礼いたします。サフィーロン公爵令息殿がお見えです」
「何ですって?こんなに朝早くにレアが来たですって?なんて非常識な男なの?」
「お言葉ですがお嬢様、既に朝の10時を過ぎております。サフィーロン公爵令息殿が非常識なのではなく、お嬢様の感覚がおかしいのです」
すかさず私に反論するマリアン。今日は無性に腹が立つから、あの男を追いかえして…いいえ、せっかくだからあの男の実力を見てやろうじゃない。
「お嬢様、悪い事を考えているお顔をなされておりますね。どうかこれ以上旦那様や奥様、若旦那様や若奥様の心臓に負担がかかる様なことはお控えください。特に今、若奥様はご懐妊中なのですから」
「マリアン、あなたは何を言っているの?私がいつお父様たちに負担をかけたというのよ。本当に失礼ね。それよりもレアが来ているのでしょう。ちょっと会って来るわ」
「お待ちください、お嬢様。そのだらしのない格好で公爵令息殿に会われるおつもりではありませんよね?」
「もちろんこの格好で会うわよ。これが一番動きやすいのよ」
「いけません。すぐにドレスにお着替えを…お嬢様!!!」
うるさいマリアンを無視し、そのまま部屋を出た。ドレスを着飾った私を求めているのだったら、そんな男こっちから願い下げだ。この格好が嫌なら、早々に帰ってもらえばいい。
そう思い、レアの元に向かうと…
「おはよう、レイリス。今日もとても可愛いね。それが噂に聞く、君が開発した服だね。そういえば街に出ていた時も、そんな恰好をしていたよね。よく似合っているよ」
嬉しそうな顔のレアが、私に抱き着いて来たのだ。だから何なのよ、この男は!必死にもがくが、全く動かない。ただその瞬間、体中に激痛が走った。
「痛い!」
「大丈夫かい?すまない、君に会えた嬉しさから、つい力が入りすぎてしまったようだ。さあ、お茶にしよう。昨日君が食べたそうにしていたお菓子を持ってきたよ。他にもたくさんあるから、いっぱい食べてね」
私を抱きかかえたレアが、そのままソファに座らせた。
一体どうしたのかしら?まだ体が痛いわ。ただ、なぜかこの男に触れると、痛みが和らぐ気がする。
「大丈夫かい?体の調子でも悪いのかい?」
心配そうな顔でレアが話しかけてくる。いけない、しっかりしないと。
「いいえ、何でもないわ。それよりもお菓子を持ってきてくれたのだったわね。早速頂くわ」
目の前には昨日食べ損ねたフワフワの柔らかそうなお菓子が。そうよ、私はこれが食べたかったのだわ。早速1口食べる。
これは!
「なんて美味しいお菓子なの。口に入れた瞬間、甘みが口いっぱいに広がったと思ったら、スッと消えて行ったわ。こんなお菓子、初めてだわ」
お父様が言っていた通り、いいえ、それ以上に美味しいお菓子だわ。それこそ、想像を絶する味だ。これは一体どうやって作っているのかしら?こんな美味しいお菓子がこの世に存在しているだなんて。早速このお菓子を徹底的に研究して、我が家でも食べられる様にしないと!
「レイリスが喜んでくれて、よかったよ。次はこれを食べてみて。料理長新作お菓子で、まだ一度も夜会などで出した事のないものなんだ。ぜひレイリスに食べて欲しくてね」
今度は別のお菓子を手渡してきたレア。これは砂糖菓子?それにしては、とても美しいわ。
レアが渡してきたのは、光の加減で色が変わる不思議なお菓子なのだ。見た感じ砂糖菓子の様に見えるのだが。
早速口に入れた。噛んだ触感は砂糖菓子の様だ。でも…
「えっ?何なのこれは。触感は砂糖菓子だったのに、中から温かくて甘い液が出てきたわ。この液、美味しすぎない?それに外のサクサク菓子との相性も抜群だし。これは本当にこの世に存在するお菓子なの?」
さっきのフワフワなお菓子も神的に美味しかったが、このお菓子はそれを上回る美味しさだ。この様なお菓子が、この世に存在するだなんて。
「レイリス、僕と結婚すれば、珍しいお菓子が沢山食べられるよ。我が家には料理長が3人いて、お菓子に特化した者、食事に特化した者、他国の料理を研究し、珍しい料理を作ってくれる者がいるのだよ。食べる事が好きな君にも、魅力的な話だろう?」
「料理長が3人いるですって?」
さすが天下のサフィーロン公爵家だわ。要するに私を食べ物で釣る作戦なのね。でも、そう簡単に釣られるものですか。
「お嬢様、どうか護衛虐めはお止め下さい!お嬢様は誰よりもお強いのですから」
朝からマリアンに怒られてしまった。
「どうして私が怒られないといけないのよ。そもそも、こんな弱い護衛を雇っているお父様が悪いのよ。すぐにお父様に言って、もっと強い護衛を…」
「お嬢様、お取込み中失礼いたします。サフィーロン公爵令息殿がお見えです」
「何ですって?こんなに朝早くにレアが来たですって?なんて非常識な男なの?」
「お言葉ですがお嬢様、既に朝の10時を過ぎております。サフィーロン公爵令息殿が非常識なのではなく、お嬢様の感覚がおかしいのです」
すかさず私に反論するマリアン。今日は無性に腹が立つから、あの男を追いかえして…いいえ、せっかくだからあの男の実力を見てやろうじゃない。
「お嬢様、悪い事を考えているお顔をなされておりますね。どうかこれ以上旦那様や奥様、若旦那様や若奥様の心臓に負担がかかる様なことはお控えください。特に今、若奥様はご懐妊中なのですから」
「マリアン、あなたは何を言っているの?私がいつお父様たちに負担をかけたというのよ。本当に失礼ね。それよりもレアが来ているのでしょう。ちょっと会って来るわ」
「お待ちください、お嬢様。そのだらしのない格好で公爵令息殿に会われるおつもりではありませんよね?」
「もちろんこの格好で会うわよ。これが一番動きやすいのよ」
「いけません。すぐにドレスにお着替えを…お嬢様!!!」
うるさいマリアンを無視し、そのまま部屋を出た。ドレスを着飾った私を求めているのだったら、そんな男こっちから願い下げだ。この格好が嫌なら、早々に帰ってもらえばいい。
そう思い、レアの元に向かうと…
「おはよう、レイリス。今日もとても可愛いね。それが噂に聞く、君が開発した服だね。そういえば街に出ていた時も、そんな恰好をしていたよね。よく似合っているよ」
嬉しそうな顔のレアが、私に抱き着いて来たのだ。だから何なのよ、この男は!必死にもがくが、全く動かない。ただその瞬間、体中に激痛が走った。
「痛い!」
「大丈夫かい?すまない、君に会えた嬉しさから、つい力が入りすぎてしまったようだ。さあ、お茶にしよう。昨日君が食べたそうにしていたお菓子を持ってきたよ。他にもたくさんあるから、いっぱい食べてね」
私を抱きかかえたレアが、そのままソファに座らせた。
一体どうしたのかしら?まだ体が痛いわ。ただ、なぜかこの男に触れると、痛みが和らぐ気がする。
「大丈夫かい?体の調子でも悪いのかい?」
心配そうな顔でレアが話しかけてくる。いけない、しっかりしないと。
「いいえ、何でもないわ。それよりもお菓子を持ってきてくれたのだったわね。早速頂くわ」
目の前には昨日食べ損ねたフワフワの柔らかそうなお菓子が。そうよ、私はこれが食べたかったのだわ。早速1口食べる。
これは!
「なんて美味しいお菓子なの。口に入れた瞬間、甘みが口いっぱいに広がったと思ったら、スッと消えて行ったわ。こんなお菓子、初めてだわ」
お父様が言っていた通り、いいえ、それ以上に美味しいお菓子だわ。それこそ、想像を絶する味だ。これは一体どうやって作っているのかしら?こんな美味しいお菓子がこの世に存在しているだなんて。早速このお菓子を徹底的に研究して、我が家でも食べられる様にしないと!
「レイリスが喜んでくれて、よかったよ。次はこれを食べてみて。料理長新作お菓子で、まだ一度も夜会などで出した事のないものなんだ。ぜひレイリスに食べて欲しくてね」
今度は別のお菓子を手渡してきたレア。これは砂糖菓子?それにしては、とても美しいわ。
レアが渡してきたのは、光の加減で色が変わる不思議なお菓子なのだ。見た感じ砂糖菓子の様に見えるのだが。
早速口に入れた。噛んだ触感は砂糖菓子の様だ。でも…
「えっ?何なのこれは。触感は砂糖菓子だったのに、中から温かくて甘い液が出てきたわ。この液、美味しすぎない?それに外のサクサク菓子との相性も抜群だし。これは本当にこの世に存在するお菓子なの?」
さっきのフワフワなお菓子も神的に美味しかったが、このお菓子はそれを上回る美味しさだ。この様なお菓子が、この世に存在するだなんて。
「レイリス、僕と結婚すれば、珍しいお菓子が沢山食べられるよ。我が家には料理長が3人いて、お菓子に特化した者、食事に特化した者、他国の料理を研究し、珍しい料理を作ってくれる者がいるのだよ。食べる事が好きな君にも、魅力的な話だろう?」
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さすが天下のサフィーロン公爵家だわ。要するに私を食べ物で釣る作戦なのね。でも、そう簡単に釣られるものですか。
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