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第59話:これが現地の惨状です
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馬車が現地に向けて出発する。
「現地まではどれくらい時間が掛かるのですか?」
「そうだな、大体ほぼ休憩なしで、丸1日くらいかな。急いで行きたいから、途中で馬を休ませるため、別の馬に変えて休みなしで走らせ続ければ、明日の夕方には着くだろう」
「カリオスティーノ侯爵、ルミナス嬢も一緒に乗っているのだよ。さすがに休憩なしは辛いだろう。どこかホテルに泊まって行く事にしよう」
公爵様が私に気を使って、ホテルに泊まる提案をしてくれた。でも私は…
「公爵様、お気遣いありがとうございます。でも私は大丈夫ですわ。予定通り、休憩なしで進んでください。一刻も早く、カルロス様の元に向かいたいので」
「しかし…」
難色を示す公爵様。
「ルミナスは我が儘で付いて来ているのです。ルミナスへの気遣いは無用ですよ。とにかく、カルロス殿が心配です。一刻も早く向かいましょう」
お兄様が私の肩をバシバシ叩いて、そんな事を言っている。
「君たちがそう言うなら構わないが…後でカルロスに怒られないだろうか…」
何やらブツブツと公爵様が呟いているが、そっとしておいた。
お兄様が言った通り、ほとんど休憩なく進んでいく。たまにトイレ休憩を挟むくらいだ。食事も近くで買ったサンドウィッチを食べる。
「ルミナス、そろそろ寝るぞ。ほら、毛布だ」
私に毛布を掛けると、さっさと寝てしまったお兄様。公爵様も眠る様だ。よくこんな狭い馬車の中でよく眠られるわね。でも、私も眠っておかないと!そう思い、眠りについたのだった。
「…ミナス、おい、ルミナス、いい加減に起きろ!」
う~ん、この声はお兄様?
ゆっくり目を開けると、お兄様の顔が飛び込んできた。よく見ると、お兄様の膝を枕にして眠っていた様だ。
「ごめんなさい、昨日はあまり寝付けなくて…」
「何が寝付けなくて…だ!お昼前まで眠っていてよく言うよ。それも俺の膝を枕にして。そのせいで、トイレにも行けなかったじゃないか!」
隣でブーブー文句を言うお兄様。もうお昼ですって?
慌てて飛び起き、窓の外を見ると、田園風景が広がっていた。
「まあまあ、カリオスティーノ侯爵。ルミナス嬢も慣れない旅で疲れていたのだろう。実は私は、ルミナス嬢にとって馬車泊は辛いのではないかと思っていたのだが、あれだけ眠れれば大丈夫だろう」
そう言って公爵様が笑っている。なんだか恥ずかしいわ。
「寝坊助のルミナスも起きた事ですし、この辺りで食事にしましょう。現地についたら、食事は出来ないでしょうから。少し多めに買い込んでおきましょう。ルミナス、戦場はお前が考える以上に悲惨な状況だ。覚悟しておけよ」
もう、お兄様ったら誰が寝坊助よ。でも、もうすぐカルロス様がいる現地に着くのね。どうか無事でいて欲しい…
昼食を食べた後、沢山の食料を買い込み現地へと向かう。そして日が沈みかけた頃、魔物が襲った街へとやって来た。
「ここが、魔物に襲われた街なのですね…なんて酷い…」
馬車が通れる道は何とか確保されているものの、建物は破壊され、あちこちで煙が上がっている。瓦礫の周りには、沢山の魔物たちが横たわっていた。そんな魔物たちを処理するため、必死に運ぶ騎士団員たち。
その中には、魔物の処理を手伝っている民たちの姿も見うけられる。
「どうだ、酷いありさまだろう…また元の街に戻すためには、莫大な費用と時間が必要になるんだ。それに今回の討伐で、沢山の民と騎士団員たちが命を落としたのだよ。今も生死を彷徨っている騎士たちもいる…」
「魔物討伐が終わっても、全てが解決ではないのですね…」
ふと馬車の窓から、騎士団員たちに涙を流しながら頭を下げている住民たちの姿を目にした。手には食べ物が握られている。
きっと彼らは騎士団員に助けられたのだろう。
初めて現地に足を運んだことで、魔物と戦う事がどれほど大切で、どれだけの人の命を救う事になるのか改めて分かった。
それなのに私は“私より任務の方が大事なのか”と、カルロス様に暴言を吐いてしまった。今この惨劇を見ても、同じ事が言えるのか!そう言われれば、私は口が裂けても言えないだろう。
お父様がどうして名誉騎士団長と言われたのか、この状況を目の当たりにして改めて分かった。もしお父様やカルロス様、他の騎士団員の人たちが討伐に行かなければ、きっともっと広範囲でこれらの犠牲が出ていただろう。もしかしたら王都でも…
そう考えると、お父様やカルロス様の偉大さを、改めて実感した。お母様が言っていた、“魔物討伐は、家族や大切な人を守る事にもつながる”と言った意味が今ならわかる。
私、魔物討伐の現場を全く知らなかった。無知って本当に恥ずかしいわ…
「ルミナス、大丈夫かい?やっぱり君には刺激が強すぎたかな?」
お兄様が心配そうに話しかけて来た。
「いいえ…大丈夫ですわ。逆にこの惨劇の地を自分の目で見られてよかったですわ。お父様やカルロス様、さらに騎士団員の方たちの偉大さを、改めて実感しました。私は彼らを、心から尊敬いたします」
「そうか…それならここにルミナスを連れて来た意味はあったな。さあ、そろそろ病院につくぞ」
ふと窓の外を見ると、壊れかけの病院が目に入った。あそこにカルロス様がいらっしゃるのね…
「現地まではどれくらい時間が掛かるのですか?」
「そうだな、大体ほぼ休憩なしで、丸1日くらいかな。急いで行きたいから、途中で馬を休ませるため、別の馬に変えて休みなしで走らせ続ければ、明日の夕方には着くだろう」
「カリオスティーノ侯爵、ルミナス嬢も一緒に乗っているのだよ。さすがに休憩なしは辛いだろう。どこかホテルに泊まって行く事にしよう」
公爵様が私に気を使って、ホテルに泊まる提案をしてくれた。でも私は…
「公爵様、お気遣いありがとうございます。でも私は大丈夫ですわ。予定通り、休憩なしで進んでください。一刻も早く、カルロス様の元に向かいたいので」
「しかし…」
難色を示す公爵様。
「ルミナスは我が儘で付いて来ているのです。ルミナスへの気遣いは無用ですよ。とにかく、カルロス殿が心配です。一刻も早く向かいましょう」
お兄様が私の肩をバシバシ叩いて、そんな事を言っている。
「君たちがそう言うなら構わないが…後でカルロスに怒られないだろうか…」
何やらブツブツと公爵様が呟いているが、そっとしておいた。
お兄様が言った通り、ほとんど休憩なく進んでいく。たまにトイレ休憩を挟むくらいだ。食事も近くで買ったサンドウィッチを食べる。
「ルミナス、そろそろ寝るぞ。ほら、毛布だ」
私に毛布を掛けると、さっさと寝てしまったお兄様。公爵様も眠る様だ。よくこんな狭い馬車の中でよく眠られるわね。でも、私も眠っておかないと!そう思い、眠りについたのだった。
「…ミナス、おい、ルミナス、いい加減に起きろ!」
う~ん、この声はお兄様?
ゆっくり目を開けると、お兄様の顔が飛び込んできた。よく見ると、お兄様の膝を枕にして眠っていた様だ。
「ごめんなさい、昨日はあまり寝付けなくて…」
「何が寝付けなくて…だ!お昼前まで眠っていてよく言うよ。それも俺の膝を枕にして。そのせいで、トイレにも行けなかったじゃないか!」
隣でブーブー文句を言うお兄様。もうお昼ですって?
慌てて飛び起き、窓の外を見ると、田園風景が広がっていた。
「まあまあ、カリオスティーノ侯爵。ルミナス嬢も慣れない旅で疲れていたのだろう。実は私は、ルミナス嬢にとって馬車泊は辛いのではないかと思っていたのだが、あれだけ眠れれば大丈夫だろう」
そう言って公爵様が笑っている。なんだか恥ずかしいわ。
「寝坊助のルミナスも起きた事ですし、この辺りで食事にしましょう。現地についたら、食事は出来ないでしょうから。少し多めに買い込んでおきましょう。ルミナス、戦場はお前が考える以上に悲惨な状況だ。覚悟しておけよ」
もう、お兄様ったら誰が寝坊助よ。でも、もうすぐカルロス様がいる現地に着くのね。どうか無事でいて欲しい…
昼食を食べた後、沢山の食料を買い込み現地へと向かう。そして日が沈みかけた頃、魔物が襲った街へとやって来た。
「ここが、魔物に襲われた街なのですね…なんて酷い…」
馬車が通れる道は何とか確保されているものの、建物は破壊され、あちこちで煙が上がっている。瓦礫の周りには、沢山の魔物たちが横たわっていた。そんな魔物たちを処理するため、必死に運ぶ騎士団員たち。
その中には、魔物の処理を手伝っている民たちの姿も見うけられる。
「どうだ、酷いありさまだろう…また元の街に戻すためには、莫大な費用と時間が必要になるんだ。それに今回の討伐で、沢山の民と騎士団員たちが命を落としたのだよ。今も生死を彷徨っている騎士たちもいる…」
「魔物討伐が終わっても、全てが解決ではないのですね…」
ふと馬車の窓から、騎士団員たちに涙を流しながら頭を下げている住民たちの姿を目にした。手には食べ物が握られている。
きっと彼らは騎士団員に助けられたのだろう。
初めて現地に足を運んだことで、魔物と戦う事がどれほど大切で、どれだけの人の命を救う事になるのか改めて分かった。
それなのに私は“私より任務の方が大事なのか”と、カルロス様に暴言を吐いてしまった。今この惨劇を見ても、同じ事が言えるのか!そう言われれば、私は口が裂けても言えないだろう。
お父様がどうして名誉騎士団長と言われたのか、この状況を目の当たりにして改めて分かった。もしお父様やカルロス様、他の騎士団員の人たちが討伐に行かなければ、きっともっと広範囲でこれらの犠牲が出ていただろう。もしかしたら王都でも…
そう考えると、お父様やカルロス様の偉大さを、改めて実感した。お母様が言っていた、“魔物討伐は、家族や大切な人を守る事にもつながる”と言った意味が今ならわかる。
私、魔物討伐の現場を全く知らなかった。無知って本当に恥ずかしいわ…
「ルミナス、大丈夫かい?やっぱり君には刺激が強すぎたかな?」
お兄様が心配そうに話しかけて来た。
「いいえ…大丈夫ですわ。逆にこの惨劇の地を自分の目で見られてよかったですわ。お父様やカルロス様、さらに騎士団員の方たちの偉大さを、改めて実感しました。私は彼らを、心から尊敬いたします」
「そうか…それならここにルミナスを連れて来た意味はあったな。さあ、そろそろ病院につくぞ」
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