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第53話:どうしてですか?
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「次はどこに行こうか?」
「あのお店に行きたいのですが?」
私が気になったのは、アクセサリーのお店だ。
「それじゃあ行こうか?」
早速お店に入ってみる。ここも最近できたお店の様で、動物や植物の形をした宝石のアクセサリーがたくさん売られていた。
「この蝶のネックレス、可愛いですわ。こっちの花のイヤリングも。どれもとても手が込んでいますわ」
とても細かい部分まで再現されていて、素敵だ。
「この青い鳥、ルミタンの瞳の色とよく合っているね。こっちの蝶も可愛いよ」
次々と選んでいくカルロス様。
「この狼、赤い髪をしていますわ。珍しい、カルロス様みたい。これも買いましょう」
赤い髪にグリーンの瞳をした珍しい狼をモチーフにしたブローチを発見したのだ。なんだかカルロス様みたいで、ついカゴに入れてしまった。
結局このお店で、8点もの宝石を購入し、次のお店へと向かう。次はドレスのお店だ。さすがにドレスは…そう思ったが、カルロス様がどうしてもというので、緑色のドレスを購入した。
その後も色々なお店を見て回る。気が付くと、辺りが暗くなっていた。
「そろそろ帰ろうか。あまり遅くなると、ドリトル殿が鬼のような顔をして待っていると面倒だ」
そう言って笑うカルロス様。確かにお兄様なら、怖い顔をして待っていそうだわ。
「そうですね、帰りましょう」
2人で馬車に乗り込み、侯爵家を目指す。
「カルロス様、今日はありがとうございました。とても楽しかったですわ」
「それは良かった。また街に来ようね」
「はい」
そっとさっき購入した狼のブローチを取り出す。見れば見るほど、カルロス様に似ているわ。これ、私の宝物にしよう。
「よかった、やっとルミタンが笑ってくれたね。最近元気がない様だったから、心配していたんだよ」
「えっ?」
「俺はルミタンをずっと見ているからわかるんだ。ごめんね、心配かけて」
そう言って抱きしめてくれるカルロス様。もしかして私がずっと心配していたことに、気が付いていたの?だから今日、街に連れて行ってくれたの?
カルロス様はいつもそうだ。私の事を常に考えてくれている。
「カルロス様、私…」
ちょうどそのタイミングで、屋敷に着いた。
「おかえり、今日はずいぶん遅かったね…」
カルロス様の予想通り、お兄様が怖い顔で待っていた。ただ…
「まあ、今日は見逃してあげるよ。カルロス殿、君も夕食を食べていくだろう?さあ、皆で食事をしよう」
あら?珍しいわ。お兄様が何も言わないだなんて。でも、ラッキーね。
この後2人で食堂に向かうと、なぜかカルロス様のご両親もいた。一体どうしたのかしら?
「ルミナスとカルロス殿の快気祝いを行っていなかったからね。せっかくだから家で行おうという事になって。それでクラッセル公爵と夫人も招待したんだよ。さあ、早速食事をしよう」
確かにいつもより豪華な夕食が並んでいる。せっかくなので、皆で食事を頂いた。こうやって皆で食事をするのもいいな。
「ルミタン、はい、あーんして」
いつもの様に、私に食べ物を与えるカルロス様。私もカルロス様の口に、食べ物を運ぶ。
「相変わらずカルロスとルミナスちゃんは仲良しね」
そう言って夫人がくすくすと笑っている。家族の前でこういう事をするのも、すっかり慣れた。
食後は皆でティータイムだ。
「ルミタン、大事な話があるんだ」
急に真剣な表情でそう言ったカルロス様。その顔を見た瞬間、嫌な予感がした。
「どうしたのですか、急に。カルロス様、このクッキー、甘さ控えめで美味しいですよ。はい、あ~んして下さい」
必死に話題を変えようとするが
「ルミタン、俺は明日、魔物討伐部隊に合流する事になった。しばらく会えなくなってしまうが、必ず戻って来る。だから…」
「どうしてですか?カルロス様はまだ学生でしょう?学生は討伐部隊には参加しないはずです。そうでしょう?お兄様」
必死にお兄様に訴える。
「通常であればそうなのだが…本人が希望すれば、行く事は可能なんだ」
「そんな…お願いです、カルロス様。行かないで下さい。どうかお願いします」
お願い、行かないで。もう私は、魔物に大切な人を奪われたくはない。
「すまない、ルミタン…騎士団長が怪我をしてしまったんだ。俺が行かないと、指揮をとる人間がいない。それに何より、仲間が必死に戦っているのに、俺だけ王都でのうのうとしているなんて出来ないんだ。必ず帰って来るから」
必ず帰って来る…
「嘘よ…お父様もそう言って討伐に向かったわ。“すぐに帰って来る、安心しろ”て。でもお父様は、帰ってこなかった!カルロス様、あなた私に言いましたよね。私の事が一番大切だって。それなら、どうか私の願いを聞き入れて下さい」
自分でもわかっている、カルロス様がどんな思いで討伐部隊に参加する事を決めたかくらい。本来なら、笑顔で送り出してあげないといけないことぐらい。でも私は、そんな出来た人間ではないのだ…
「すまない…俺は困っている民たちを見殺しにすることは出来ないんだ…」
辛そうに呟くカルロス様。
「結局あなたも、任務の方が大切なのですね…わかりました、もう二度と私に会いに来ないで下さい…魔物討伐でも何でも、好きな場所に行ってください!!」
自分でも酷い事を言っているのは分かっている。でも、口が勝手に動くのだ。私はそのまま部屋から飛び出した。
「待ちなさい、ルミナス」
「ルミタン」
後ろで皆が私を呼ぶことが聞こえるが、その場を後にし、自室へと向かった。そして部屋に鍵を掛ける。
結局カルロス様も、魔物討伐に行ってしまう。
あの時のお父様と重なる。きっとカルロス様も…そう考えたら、胸が張り裂けそうなくらい苦しくて、涙が止まらず、ただただ泣き続けたのだった。
「あのお店に行きたいのですが?」
私が気になったのは、アクセサリーのお店だ。
「それじゃあ行こうか?」
早速お店に入ってみる。ここも最近できたお店の様で、動物や植物の形をした宝石のアクセサリーがたくさん売られていた。
「この蝶のネックレス、可愛いですわ。こっちの花のイヤリングも。どれもとても手が込んでいますわ」
とても細かい部分まで再現されていて、素敵だ。
「この青い鳥、ルミタンの瞳の色とよく合っているね。こっちの蝶も可愛いよ」
次々と選んでいくカルロス様。
「この狼、赤い髪をしていますわ。珍しい、カルロス様みたい。これも買いましょう」
赤い髪にグリーンの瞳をした珍しい狼をモチーフにしたブローチを発見したのだ。なんだかカルロス様みたいで、ついカゴに入れてしまった。
結局このお店で、8点もの宝石を購入し、次のお店へと向かう。次はドレスのお店だ。さすがにドレスは…そう思ったが、カルロス様がどうしてもというので、緑色のドレスを購入した。
その後も色々なお店を見て回る。気が付くと、辺りが暗くなっていた。
「そろそろ帰ろうか。あまり遅くなると、ドリトル殿が鬼のような顔をして待っていると面倒だ」
そう言って笑うカルロス様。確かにお兄様なら、怖い顔をして待っていそうだわ。
「そうですね、帰りましょう」
2人で馬車に乗り込み、侯爵家を目指す。
「カルロス様、今日はありがとうございました。とても楽しかったですわ」
「それは良かった。また街に来ようね」
「はい」
そっとさっき購入した狼のブローチを取り出す。見れば見るほど、カルロス様に似ているわ。これ、私の宝物にしよう。
「よかった、やっとルミタンが笑ってくれたね。最近元気がない様だったから、心配していたんだよ」
「えっ?」
「俺はルミタンをずっと見ているからわかるんだ。ごめんね、心配かけて」
そう言って抱きしめてくれるカルロス様。もしかして私がずっと心配していたことに、気が付いていたの?だから今日、街に連れて行ってくれたの?
カルロス様はいつもそうだ。私の事を常に考えてくれている。
「カルロス様、私…」
ちょうどそのタイミングで、屋敷に着いた。
「おかえり、今日はずいぶん遅かったね…」
カルロス様の予想通り、お兄様が怖い顔で待っていた。ただ…
「まあ、今日は見逃してあげるよ。カルロス殿、君も夕食を食べていくだろう?さあ、皆で食事をしよう」
あら?珍しいわ。お兄様が何も言わないだなんて。でも、ラッキーね。
この後2人で食堂に向かうと、なぜかカルロス様のご両親もいた。一体どうしたのかしら?
「ルミナスとカルロス殿の快気祝いを行っていなかったからね。せっかくだから家で行おうという事になって。それでクラッセル公爵と夫人も招待したんだよ。さあ、早速食事をしよう」
確かにいつもより豪華な夕食が並んでいる。せっかくなので、皆で食事を頂いた。こうやって皆で食事をするのもいいな。
「ルミタン、はい、あーんして」
いつもの様に、私に食べ物を与えるカルロス様。私もカルロス様の口に、食べ物を運ぶ。
「相変わらずカルロスとルミナスちゃんは仲良しね」
そう言って夫人がくすくすと笑っている。家族の前でこういう事をするのも、すっかり慣れた。
食後は皆でティータイムだ。
「ルミタン、大事な話があるんだ」
急に真剣な表情でそう言ったカルロス様。その顔を見た瞬間、嫌な予感がした。
「どうしたのですか、急に。カルロス様、このクッキー、甘さ控えめで美味しいですよ。はい、あ~んして下さい」
必死に話題を変えようとするが
「ルミタン、俺は明日、魔物討伐部隊に合流する事になった。しばらく会えなくなってしまうが、必ず戻って来る。だから…」
「どうしてですか?カルロス様はまだ学生でしょう?学生は討伐部隊には参加しないはずです。そうでしょう?お兄様」
必死にお兄様に訴える。
「通常であればそうなのだが…本人が希望すれば、行く事は可能なんだ」
「そんな…お願いです、カルロス様。行かないで下さい。どうかお願いします」
お願い、行かないで。もう私は、魔物に大切な人を奪われたくはない。
「すまない、ルミタン…騎士団長が怪我をしてしまったんだ。俺が行かないと、指揮をとる人間がいない。それに何より、仲間が必死に戦っているのに、俺だけ王都でのうのうとしているなんて出来ないんだ。必ず帰って来るから」
必ず帰って来る…
「嘘よ…お父様もそう言って討伐に向かったわ。“すぐに帰って来る、安心しろ”て。でもお父様は、帰ってこなかった!カルロス様、あなた私に言いましたよね。私の事が一番大切だって。それなら、どうか私の願いを聞き入れて下さい」
自分でもわかっている、カルロス様がどんな思いで討伐部隊に参加する事を決めたかくらい。本来なら、笑顔で送り出してあげないといけないことぐらい。でも私は、そんな出来た人間ではないのだ…
「すまない…俺は困っている民たちを見殺しにすることは出来ないんだ…」
辛そうに呟くカルロス様。
「結局あなたも、任務の方が大切なのですね…わかりました、もう二度と私に会いに来ないで下さい…魔物討伐でも何でも、好きな場所に行ってください!!」
自分でも酷い事を言っているのは分かっている。でも、口が勝手に動くのだ。私はそのまま部屋から飛び出した。
「待ちなさい、ルミナス」
「ルミタン」
後ろで皆が私を呼ぶことが聞こえるが、その場を後にし、自室へと向かった。そして部屋に鍵を掛ける。
結局カルロス様も、魔物討伐に行ってしまう。
あの時のお父様と重なる。きっとカルロス様も…そう考えたら、胸が張り裂けそうなくらい苦しくて、涙が止まらず、ただただ泣き続けたのだった。
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