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第33話:平和な日々が戻ってきました
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王太子殿下が隣国に向かってから、早1ヶ月。ついに王太子殿下が帰国したとの連絡が入った。そして王太子殿下が帰国した翌日から、アナリス殿下は貴族学院に顔を出さなくなった。
カルロス様の話では、あれだけ貴族学院に行ってはいけないと言ったにもかかわらず、無視して行っていた事が王太子殿下にばれ、相当厳しく怒られた様だ。
もちろんそれを許していた陛下や王妃様も、王太子殿下にかなり厳しく怒られたとの事。早速アナリス殿下がこの国を立つ準備が始まっているらしいが、なんせ隣国の王太子殿下の元に嫁ぐとあって、しばらくはまだこの国で準備を整えるらしい。
それでもこの国の王太子殿下の目が光っている為、もう二度と貴族学院にはやってこないだろうと、カルロス様は言っていた。
やっと私たちも、元通りの生活に戻る事が出来たのだ。
「ルミタン、なんだか嬉しそうな顔をしているね。やっぱりルミタンと一緒に食べる昼食は美味しいな。はい、ルミタン、あ~んして」
アナリス殿下が学院に来なくなったことで、今もカルロス様と一緒にお昼ご飯を食べている。
「もう、カルロス様ったら。私はいいので、カルロス様が食べて下さい」
私の方に差し出しているフォークに刺さったお肉を、そのままカルロス様の口に放り込んだ。
「ルミタンが食べさせてくれたお肉は美味しいなぁ。やっぱり食事はルミタンと食べないと!今日ももちろん、騎士団の稽古を見に来てくれるのだろう?」
嬉しそうに問いかけてくるカルロス様。
「朝もお昼も休み時間まで一緒にいますので、放課後の騎士団の稽古は…」
ご遠慮いたしますわ。そう言おうとしたのだが…
「ルミタンが見に来てくれるだけで、俺は力がみなぎるんだ。来てくれるよね?」
真っすぐ私を見つめるカルロス様。そんな目で見つめられたら、なんだか断りづらい。
「分かりましたわ、それでは今日も見学に参りますわ」
アナリス殿下の一件があってから、なんだかカルロス様を強く拒否できなくなってしまった。そう、私にとってカルロス様は、いつの間にか大切な人になっていたからだ…
正直まだ大好きかと言われれば、う~んと思う事もあるが、少なくとも私もカルロス様の事を大切に思っている。
アナリス殿下には色々と振り回され大変な思いもしたが、改めてカルロス様の事を考えるきっかけを作ってくれた事だけは感謝している。
「カルロス様、口にソースが付いていますわ」
そっとハンカチでソースをふき取った。
「ルミタンが俺の口を拭いてくれた。なんて幸せなんだ…こうやってルミタンと一緒に学院で過ごせる日を心待ちにしていたんだよ。本当に幸せだなぁ…」
それはそれは幸せそうに笑うカルロス様。そんな彼を見ていると、私まで笑顔になる。
「本当に平和ですね…この1ヶ月、アナリス殿下の事で色々とありましたから、こんな風にカルロス様と一緒に学院で過ごせるのが不思議な気がしますわ」
「そうだね、彼女には随分振り回されたからね。でも、もう大丈夫だよ。王太子殿下が厳しく監視してくれているから、もう二度と俺たちの前に現れる事はないだろう」
「そう言えば、まだ私に護衛たちが付いておりますが、もう大丈夫なのではないですか?アナリス殿下も隣国に嫁ぐことも決まりましたし。もう会う事もないのですよね」
未だに私には護衛たちが付いているのだ。我が家は相変わらず厳重警戒と言わんばかりに、護衛たちがウロウロとしているし。
「俺もそう思っているのだが…ドリトル…いいや、君の兄上が未だに警戒していてね。“アナリス殿下がこの国を立つまでは油断できない!”と言っているんだよ。本当に君の兄上は心配性だな。ただ…あの人は昔から非常に勘が鋭かったからね。まあ、今回ばかりは、さすがのアナリス殿下も身動きが取れないだろうから、ドリトル先輩の取り越し苦労になるだろうけれどね」
「確かに兄は昔から用心深かったですね。特に父が亡くなってからは、さらに用心深くなったというか…」
お兄様は昔から危機管理意識が非常に高いのだ。さらにカルロス様が言う様に、非常に勘も鋭い。とはいっても、さすがのアナリス殿下も王太子殿下の目が鋭く光っている以上、そうそう身動きも取れないだろう。
「アナリス殿下も、後1ヶ月もすれば隣国に向かうだろうから、それまでの辛抱だ。俺もあまりルミタンに護衛は付けたくはないのだよ。だって俺の手でルミタンを守りたいだろう?他の男が守っていると思うと、腹ただしくて!でも、ドリトルがうるさいから…」
カルロス様が文句を言っている。
「落ち着いて下さい、カルロス様。後1ヶ月の辛抱とおっしゃったではありませんか。私はこの平和な日々が戻ってきただけで十分満足ですわ」
「まあ、確かにそうだね…ルミタン、愛しているよ。ずっとルミタンとこうやって学院で過ごしたかったんだ。もう二度と、誰にも邪魔させないから…」
カルロス様がギュッと私を抱きしめてくれる。温かくてなんだか落ち着く。無意識にカルロス様の背中に手を回す。
このままずっと、こんな平和な日々が続くのだろう。だって、やっと平和な日々が戻って来たのだから…
カルロス様の話では、あれだけ貴族学院に行ってはいけないと言ったにもかかわらず、無視して行っていた事が王太子殿下にばれ、相当厳しく怒られた様だ。
もちろんそれを許していた陛下や王妃様も、王太子殿下にかなり厳しく怒られたとの事。早速アナリス殿下がこの国を立つ準備が始まっているらしいが、なんせ隣国の王太子殿下の元に嫁ぐとあって、しばらくはまだこの国で準備を整えるらしい。
それでもこの国の王太子殿下の目が光っている為、もう二度と貴族学院にはやってこないだろうと、カルロス様は言っていた。
やっと私たちも、元通りの生活に戻る事が出来たのだ。
「ルミタン、なんだか嬉しそうな顔をしているね。やっぱりルミタンと一緒に食べる昼食は美味しいな。はい、ルミタン、あ~んして」
アナリス殿下が学院に来なくなったことで、今もカルロス様と一緒にお昼ご飯を食べている。
「もう、カルロス様ったら。私はいいので、カルロス様が食べて下さい」
私の方に差し出しているフォークに刺さったお肉を、そのままカルロス様の口に放り込んだ。
「ルミタンが食べさせてくれたお肉は美味しいなぁ。やっぱり食事はルミタンと食べないと!今日ももちろん、騎士団の稽古を見に来てくれるのだろう?」
嬉しそうに問いかけてくるカルロス様。
「朝もお昼も休み時間まで一緒にいますので、放課後の騎士団の稽古は…」
ご遠慮いたしますわ。そう言おうとしたのだが…
「ルミタンが見に来てくれるだけで、俺は力がみなぎるんだ。来てくれるよね?」
真っすぐ私を見つめるカルロス様。そんな目で見つめられたら、なんだか断りづらい。
「分かりましたわ、それでは今日も見学に参りますわ」
アナリス殿下の一件があってから、なんだかカルロス様を強く拒否できなくなってしまった。そう、私にとってカルロス様は、いつの間にか大切な人になっていたからだ…
正直まだ大好きかと言われれば、う~んと思う事もあるが、少なくとも私もカルロス様の事を大切に思っている。
アナリス殿下には色々と振り回され大変な思いもしたが、改めてカルロス様の事を考えるきっかけを作ってくれた事だけは感謝している。
「カルロス様、口にソースが付いていますわ」
そっとハンカチでソースをふき取った。
「ルミタンが俺の口を拭いてくれた。なんて幸せなんだ…こうやってルミタンと一緒に学院で過ごせる日を心待ちにしていたんだよ。本当に幸せだなぁ…」
それはそれは幸せそうに笑うカルロス様。そんな彼を見ていると、私まで笑顔になる。
「本当に平和ですね…この1ヶ月、アナリス殿下の事で色々とありましたから、こんな風にカルロス様と一緒に学院で過ごせるのが不思議な気がしますわ」
「そうだね、彼女には随分振り回されたからね。でも、もう大丈夫だよ。王太子殿下が厳しく監視してくれているから、もう二度と俺たちの前に現れる事はないだろう」
「そう言えば、まだ私に護衛たちが付いておりますが、もう大丈夫なのではないですか?アナリス殿下も隣国に嫁ぐことも決まりましたし。もう会う事もないのですよね」
未だに私には護衛たちが付いているのだ。我が家は相変わらず厳重警戒と言わんばかりに、護衛たちがウロウロとしているし。
「俺もそう思っているのだが…ドリトル…いいや、君の兄上が未だに警戒していてね。“アナリス殿下がこの国を立つまでは油断できない!”と言っているんだよ。本当に君の兄上は心配性だな。ただ…あの人は昔から非常に勘が鋭かったからね。まあ、今回ばかりは、さすがのアナリス殿下も身動きが取れないだろうから、ドリトル先輩の取り越し苦労になるだろうけれどね」
「確かに兄は昔から用心深かったですね。特に父が亡くなってからは、さらに用心深くなったというか…」
お兄様は昔から危機管理意識が非常に高いのだ。さらにカルロス様が言う様に、非常に勘も鋭い。とはいっても、さすがのアナリス殿下も王太子殿下の目が鋭く光っている以上、そうそう身動きも取れないだろう。
「アナリス殿下も、後1ヶ月もすれば隣国に向かうだろうから、それまでの辛抱だ。俺もあまりルミタンに護衛は付けたくはないのだよ。だって俺の手でルミタンを守りたいだろう?他の男が守っていると思うと、腹ただしくて!でも、ドリトルがうるさいから…」
カルロス様が文句を言っている。
「落ち着いて下さい、カルロス様。後1ヶ月の辛抱とおっしゃったではありませんか。私はこの平和な日々が戻ってきただけで十分満足ですわ」
「まあ、確かにそうだね…ルミタン、愛しているよ。ずっとルミタンとこうやって学院で過ごしたかったんだ。もう二度と、誰にも邪魔させないから…」
カルロス様がギュッと私を抱きしめてくれる。温かくてなんだか落ち着く。無意識にカルロス様の背中に手を回す。
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